デート・ア・ライブ 精霊剣客浪漫譚   作:ソード.

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第二話 プリンセス

少女は――〈プリンセス〉と呼ばれる彼女は困惑していた。何時ものごとくこちらの世界に現れてみれば目の前に見知らぬ二人の男がいた。

毎度自分に襲いかかってくるおかしな服を着た人間の群れと格好は違うし、何より積極的な攻撃もしてこない。だが、これも何かの策に違いない。

 

人間は自分を殺そうとする――してきた。

 

目の前の二人の内一人も例に漏れず、自分と戦うことに吝かではないようだ。

だが、今自分と対峙している男は何者なのか純粋に疑問に思った。

何となく、自分と似ているような――

 

「お前は……何者だ」

 

男は刀を無形の位に構えたままその問いに答える。

 

「ちょっと変わった剣客だよ」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「最後の警告だ。剣を捨てて両手を頭の後ろで組め」

 

彩人は刀を左手に持ち替え右手を刀身に添える。少女は今更退けるかと言わんばかりに鋭く睨んできた。

 

「そこまで手加減できないからな!」

 

神速とも言える速度で彩人は何故彼女の身体の前に滑り込む。

 

龍翔閃(りゅうしょうせん)!!」

 

左手で握った刀の側面に右の掌を添え一気に斬り上げた。少女は反応が一瞬遅れ顎を刀の側面で打ち上げられる。

 

「くっ……舐めるな!」

 

「こっちの台詞だ!!」

 

少女は空中で体勢を立て直し、応戦してきた。彼女の剣と彩人の刀が常人には捉えられないほどの超高速の攻防を繰り広げる。

ただでさえボロボロになっていた辺りの地面は罅割れ、揺れる。さっきの士道とか言う少年が離れていてよかった。もし近くにいれば剣戟の余波で怪我をさせていたかもしれない。

 

ほんの数分の戦闘。お互いに本気ではないものの互角の戦いを繰り広げている。

 

「お前もっ……!!」

 

「?」

 

「お前も、私を殺すのか……!!」

 

「またそれかよッ……」

 

さっきと同じ台詞。さっきと同じ警戒と孤独を抱えた表情。

 

何だよ。何でそんな顔をしてるんだよ、お前は。

 

彩人の思考を遮るように今度は遥か上空から大量の何かが接近してきた。

 

「新手!?」

 

援軍かと考えたが、目の前の少女が顔を曇らせてその方向へ一瞬視線を傾けたことからそれはないだろう。

となれば、全く別の勢力。つまりは敵だ。

その奇妙な服装の人間たちは手に持った武器からミサイルのようなものを彩人と少女に向けて放ってきた。

 

「ちっ!」

 

彩人は着弾点から離れて回避、少女は逃げることもせずそのミサイルを空中で止めていた。少女が剣を持っていない方の手を握るとミサイルは空中で破裂した。

 

「そこの少年! 武器を下ろして手を上げなさい!」

 

空から響く人間の声。声から推測するに成人した女性のようだ。彩人は一応さっきまで戦っていた黒髪の少女を確認する。どうやら自分に警告してきた人間の仲間と戦っている最中のようだ。

それなら、と彩人は刀を腰に下げた鞘に納める。警告を受け取ったと見た女性は地面に降りて怪しげな目で彩人を見つめる。

 

「君、何者? まさかと思うけど空間震警報が鳴ってたのに街の中を走ってたなんて言わないよね?」

 

「いや、その通りなんだが」

 

「でも、あれとまともにやり合えるなんてどう考えてもおかしいし……」

 

「いや、だから何なんだよ。あんたたちは、あの子は、一体誰なんだ? あの子は空間震に何か関係があるのか?」

 

その女性は図星を突かれたようにほんの少しだけ顔を歪めた。彩人にとってこれは暗に肯定しているのと同義だ。

 

「とにかく……ここであったことは忘れて、早く帰りなさい。もう二度と警報の中外に出たら駄目だからね」

 

「ちょっと待てって! 俺と一緒にいた奴はどうした? 俺の鞄持ってるから返してもらわないと――」

 

ぐいぐい背中を押して帰らせようとしてくる女性に問うてみるも、はいはいと聞く耳持たずのようだ。

だが、あの少女の相手はこの人たちの領分のようだし、この平成の時代に人を簡単に殺すわけでもあるまい。

自分もこの力を不特定多数の人間に見られるわけにはいかないので、大人しく帰ることにした。

 

「って、あれ? いない……」

 

相変わらず後ろで奇妙な服の集団と黒髪の少女がドンパチやってるが、肝心の士道がいない。まさか彩人の鞄を持ったまま何処かへ行ってしまったのではなかろうか。

あの鞄には彩人の生活品や財布なども入っている。無くなれば間違いなくホームレス直行だ。書類の住所欄に『橋の下』と記入しなくてはならない。

 

彩人がサアーッと青褪めた瞬間、身体が重力による影響を失ったかのような感覚に包まれた。

突然の事態に驚いている間に視界に映っていた景色は荒廃した街並みからやけに清潔感のある機械的な部屋へと変わっていた。

 

「何処だ、ここ?」

 

「空中艦、〈フラクシナス〉の中よ」

 

彩人の呟きに答える声があった。彩人の死角となっていた部屋の影から軍服を着た少女が顔を出した。

赤い髪をツインテールにしてそれを黒いリボンで括っている中学生くらいの小さな子だ。

普通なら可愛らしい容姿と結論づけられるが、目の前の少女の立ち振舞いがそれを感じさせない。

 

「初めまして、ちょっと変わった剣客さん」

 

さっきの台詞を言われて少し恥ずかしさと苛立ちを感じたのは内緒だ。




お察しの通り主人公はまだ本気じゃないです。まあ作中のどのキャラくらいの強さになるかはわかりませんが。

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