今回、[白音暮らし]を読んでいただきありがとうございます。
これが処女作になるので至らない点が多数あると思うのでおかしいと思ったらどんどんご指摘下さい。
最初に数話プロローグを挟んで本編に入ろうと思います。
これを読んで、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ!
プロローグ 残滓のキオク
周りを見渡しても炎と車の残骸しか見えず、口で呼吸をする度に炎の熱気が喉を刺激し、鼻で呼吸をする度に金属の燃える匂いに混じって、微かに肉の焼ける匂いが鼻を突いた。聞こえるのは炎の音、車の残骸が崩れる音、そして微かに助けを求める人の声が耳に届く。
おれはその助けを求める声を全て無視し、ふらふらと覚束ない足取りで炎の海の中を歩く。
行き先なんて分からない。炎のせいでどこに向かって歩いているのかも分からず、ただ炎の少ない方に向かって歩く。
ふいに頬に何かが当たった。見上げると、空から雫が落ちてくる。
(・・・雨だ。)
次第に勢いを増していく雨に、炎の勢いも少し収まっていき、徐々に視界も晴れていく。
そして、すぐ傍にあった車の残骸が崩れた時、その向こうに燃えていない空間が見えた。
(・・・出口だ。)
そう思ったおれは最後の力を振り絞り、その空間に行く。
そこは火の外だった。火の海から出たおれは、安堵した事により緊張の糸が切れ、その場に倒れる。そしてそのまま意識を失った。
意識を失う直前、誰かがおれの方に駆けてくるのが見えたような気がした。
火事の光景。それが、
0日目 4時47分
「っは! はぁはぁ。」
荒い息と共に俺、
「・・・夢、か。」
暫く荒い呼吸を繰り返した後、先程まで見えていた光景は夢だと理解し、落ち着きを取り戻した俺はベッドから身体を起こす。その拍子に掛かっていた布団が身体からズレ落ちた。
時計を見ると、いつも起きる時間までまだ10分も時間があるが2度寝するのもどうかと思い、起きる事にした俺はベッドから離れ、部屋のカーテンを開けると空はまだ暗く、窓を開けると少し冷たい風が頬を撫でる。
「・・・また、魘されたな。」
虚空に向かってポツリとつぶやく。
さっきまで見ていたのは俺が幼稚園に通っていた時に遭った交通事故の夢。
大規模な事故だったらしい。車が何十台も巻き込まれ、事故後発生した火災は2日間燃え続け、俺の両親も含め多くの人の命を遺体共々燃やしつくした。
俺はなんとか5体満足の状態で救助されたが何週間も眠り続け、目覚めた時、事故のショックで自分の名前とあの日以前の記憶を無くしていた。・・・その記憶は事故から12年経ったが未だに何も思い出せてはいない。
「汗、ヤバいな・・・。シャワー、浴びよ・・・。」
魘された時にかいた汗のせいで、着ているTシャツが身体に張り付いて気持ち悪い。日課のランニングに出かける前にシャワーを浴びる事にした俺は、箪笥からジャージを取り出し、風呂場のある1階に向かった。
脱衣所でTシャツを脱ぐ。その身体にはうっすらとだが、あの事故で負った傷とその後の手術で出来た痕が無数に刻まれていた。
シャワーを終え、脱衣所でジャージを着た俺は、とある部屋の戸を開け、中に入る。
その部屋は4年前に60歳でこの世を去ったじいさんの部屋だ。
じいさんは12年前の事故で記憶を無くし、身元を証明する物も無い独りの俺を、養子として引き取ってくれた人だ。
俺は、じいさんの写真が立ててある仏壇の鈴を鳴らし線香を立てる。そして、手を合わせ瞳を閉じる。
(じいさん、俺も
立てた線香が根元まで灰になった頃、瞳をゆっくり開けた俺はじいさんの部屋から出て、玄関で運動靴を履き、外に出た。
現在の時刻は5時20分。太陽は東の空から少し顔を出した所で、空はまだうす暗かった。空には雲は無く、今日も1日良い天気になるだろう。
そんな空の元、軽く準備運動を終えた俺はランニングを始めた。
黒崎 葵 side 6時30分
ピッピピ、ピッピピ、ピッ
いつもの時間にケータイのアラームの音で目覚めた私は、眠い目を擦りながらベッドから身体を起こし2,3度伸びをすると、昨日用意していた服に着替える。その後、部屋のカーテンと窓を開け、鏡台の前で寝癖が無いかをチェックする。どうやら寝癖は無いようだ。
脱衣所で顔を洗い、祖父の部屋に行くと、
私も線香を立て、鈴を鳴らし数分の黙祷をする。
(お爺ちゃん、いつまでも私達を見守っていて下さい。)
眼を開けた時、写真の中のお爺ちゃんは、いつもより優しい目をしているような気がした。
部屋を出た私は台所に移動する。
そこには妹の真白が制服の上に桜色のエプロンを着て、茶色の長い髪をポニーテールにしたいつものスタイルで、朝食と昼食に食べるお弁当を作っていた。
そしてコンロの横にはお弁当に入れると思われるから揚げが美味しそうに出来ていた。
私の中で悪戯心が花を咲かす。
私は真白に近付く。足音はテレビの音で消えるので真白に気付かれずに背後に立つことが出来た。
真白の背後からそろっと手を伸ばし、出来上がったから揚げの中から湯気の出ていない1つを摘まんで口に入れる。から揚げを噛むたびに口の中にジューシーな肉汁が広がり、とても美味しく出来ていた。
「! お姉ちゃん、つまみ食いしちゃダメでしょ!」
私のつまみ食いに気付いた真白が振り向き、頬を膨らませて抗議する。
「ごめんごめん、手が勝って伸びちゃって。でも美味しかったよ、また腕を上げたね。」
そう言って真白を撫でると真白は恥ずかしそうに照れて俯いた。
(かわいいなぁ、もう!)
真白の表情に思わず胸がキュンとしてしまう。
私より9歳年下の真白と8歳年下音緒、そして私の3人は誰も血が繋がっていない。
この家で血縁関係にあるのは私と亡くなったお爺ちゃんだけ。
音緒と真白、そして私にはとある共通点がある。それは3人とも両親を12年前の大規模な交通事故で亡くしている、という点だ。
あの日の事は今でも覚えている。
『今日の午後5時頃、東巡ヶ丘高速道路で大規模な交通事故が発生しました。
この事故により発生した火災は今も消える事はなく、尚も勢いを増しています。』
当時中学生だった私は学校から帰って来た時にテレビの報道でその事故の事を知った。
事故の光景がテレビ画面に映される。
両車線を何mにも渡り、赤々と燃える車の列が並んでいるその光景は、まるで赤い蛇みたいだった。
そしてその後すぐにお爺ちゃんからお父さんとお母さんが亡くなったのを知らされた。
当時、軍の教官をしていたお爺ちゃんは事故の後、軍を引退し私を引き取った。
そして、この家に住み始めてから2ヶ月後に真白が、その3ヶ月後に音緒がやって来た。
「姉さーん!」
暫く真白と話していると、玄関の方から私を呼ぶ声が聞こえてきた。どうやら音緒がランニングから帰って来たようだ。
「はーい、今行くー! じゃあ、私は道場に行ってくるわ。」
「分かった。行ってらっしゃーい。」
真白に見送られ、私は家から出て離れにある道場に行く。
「姉さんおはよう。」
中では既に胴着に着替えた音緒が待っていた。
お爺ちゃんが生きていた頃は私達3人、毎日のようにここで剣道を教わっていたのだが、お爺ちゃんが亡くなってからは真白は来なくなった。
今、この道場を使っているのは私達位で、私達は毎日ここで打ち合っている。
更衣室で着替えた私は竹刀を取り、音緒の前に立つ。そして、互いに礼をした後、私達は打ち合いを始めた。
読んでくださりありがとうございます。
前書きにも書きましたが、最初に数話プロローグを入れます。
後、この後書き部分で何かおまけもしようかと思っています。
それではまた、お会いできたら嬉しいです。