お気付きの方もいらっしゃると思いますが、サブタイトルに付ける色の順番はビリヤードの球の番号と同じです。
そんな色遊びも今回で終わりとなると少し寂しいです。
それでどうぞ!
黒崎 真白side 3日目 15時20分
「わぁーー! かんせーい!」
朝から降り続いている憂鬱な雨をかき消すような明るい声が廊下に響く。
その声の持ち主である由紀先輩は今、脚立に跨って、[生徒会室]と書かれたプレートの上から[学園生活部]と書かれた紙をセロハンテープで張り付けた所だ。
今日は朝から、みんなで昨日残した場所の清掃をしていた。
掃除も大変だったが、“かれら”や人の死体を運ぶのも大変だった。・・・死体は後日、晴れた日に火葬することになっている。
「それじゃあ、みんなドアの前に並んで。 記念写真撮りましょう。」
由紀先輩が脚立から降りると、佐倉先生はそう言ってポラロイドカメラを取り出した。
「はーい、それじゃあ撮るわよ~。」
左から悠里先輩、私、由紀先輩、胡桃先輩の順に元生徒会室であり今は学園生活部の部室となった教室の前に並び、佐倉先生に写真を撮って貰った。
「あ、先生。」
『パシャリ』と写真が撮れた音が聞こえると悠里先輩が佐倉先生の方に行く。そして、きょとんとした表情をした先生に「代わります、顧問の先生が入らないと。」と言って、カメラ役を引き受けた。
「めぐねえ、こっちこっち。」「先生は真ん中ね。」
「えぇっ!?」
由紀先輩が引っ張ってきた先生を真ん中に立たせ、その前に私がしゃがみ、両脇を胡桃先輩と由紀先輩が固める。
「それじゃあ撮りますよ~。はい、チーズ。」
撮る瞬間、由紀先輩が佐倉先生に抱き付いた。
「びっくりしたじゃない、丈槍さん。」
『パシャリ』と写真が撮れた音が聞こえた後、佐倉先生が「もぅ!」と、可愛らしく由紀先輩を怒る。
「ごめんね、めぐねえ。」
「あ、出てきたわよ。」
「ねぇ、私目瞑ってなかった? 撮り直さない?」
「ちゃんと写ってるよ、めぐねえ♪」
その後撮影係をみんなで交代して何枚か写真を撮り、解散となった。
解散後、私と胡桃先輩はバリケードの見回りの為に部室に置いてある武器を持って中央側と北側の階段にそれぞれ向かった。
悠里先輩は部室にある調理道具と、食料の確認をする為に部室に残った。
佐倉先生は再開する授業の教材を取りに職員室に入って行った。
そして由紀先輩は鼻歌を唄いながらどこかへ駆けて行った。
恵飛須沢 胡桃side 15時40分
私は今、バリケードの見回りの為に1人で北側の階段に向かって歩いている。
「そう言えば1人って久しぶりだな。・・・てか初めてか。」
ふとそんな事に気が付く。
おととい校舎の中に入ってから“やつら”と戦う時や、見回りをする時はいつも真白と一緒にしていたので単独行動はこれが初めてだ。
意外と言えば意外だった。これが初の単独行動だという事はもちろんだが、あの日からまだ3日しか経っていないというのにも驚きだった。
「おとといか・・・。あれから全然経ってないんだな、もっと前の事かと思ってた。」
1日中3階の清掃をしていた今日は別として、この数日悪い意味で濃厚だった。
“やつら”が現れて、先輩をこの手で殺して、真白と一緒に安全圏を広げて、3階を制圧して・・・。
ずっとモップを持っていたせいか、今日初めて握るシャベルがいつもより重く感じる。
そんな事を考えていた時、私の目的地である北側な階段の方から、何かが崩れる轟音と共に“やつら”唸り声が聞こえて来た。
「! 何だ今の・・・。まさか!」
駆け出して資料室を通り過ぎ、階段に辿り着く。
そこで私が見たのは、踊り場の崩れたバリケードと、ものすごい数の“やつら”が階段を上がってくる光景だった。
カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーー!!
幾重にも重なった“やつら”の唸り声が聞こえてくる。
「くっそっ!」
その数の多さに戦う事は無謀だと判断した私は身体を翻し、来た廊下を走り出した。
若狭 悠里side 15時45分
「なに・・・今の音。」
学園生活部の部室となった元生徒会室にいた私は下から聞こえてきた大きな音に作業していた手を一旦止める。
そうしていると、部室の扉が勢いよく開き、めぐねえが「何が起こったの!?」と慌てた様子で入って来た。しかし、私も何が何なのか理解出来ていない状態である。
そうしていると、胡桃と真白さんが部室に駆け込んできた。
「大変だ! “やつら”がバリケードを壊して、上がって来やがった。」
切羽詰まった表情で胡桃は言う。
その言葉に私達に戦慄が走った。
「・・・丈槍さんはどこ?」
「「「!」」」
めぐねえの言葉に、由紀ちゃんがここにいない事に気付き私達はハッとする。
「くそっ!」
胡桃が部室から出て行った。
「胡桃先輩! っ! 先生達は隣の放送室に避難して下さい。ここよりは扉が堅牢だし外開きですから安全です。」
そう言って真白さんも部室から出て行った。
佐倉 慈side 15時55分
恵飛須沢さんと黒崎さんが部室から出て行って7分がたった。
そして、私達が放送室に避難して、5分が経った。
だけどまだ丈槍さんは現れない。
扉に近付く。
耳を澄ませば微かに恵飛須沢さんと黒崎さんが戦っている音が聞こえてくる。
生徒を危険な所に行かせておいて私は安全な所で待っている。そんな状況が嫌だった。
私には2人みたいに“かれら”と戦う事は出来ない。
だけど、今みたいに丈槍さんを探す位なら出来る。
「・・・めぐねえ?」
意を決してドアノブに触れようとした時、後ろから若狭さんが声をかけてきた。
振り向くと、彼女は不安そうな目で私を見つめていた。
私と若狭さんは考え方とか好みが似ている部分が多い。
彼女を見ているとよくそう思う。
だけど、いくら考え方や好みが似ていても、私は教師で、彼女は生徒だ。
教師は生徒を守らなければならない。
そして守らなければならない対象は彼女だけではない。今、行方不明となっている丈槍さんもそうだ。
「ちょっと丈槍さんを探して来るわ。」
そう言って、私は廊下に出た。後ろから聞こえてくる若狭さんの声を無視して・・・。
黒崎 真白side 16時00分
「はぁぁぁ!!」「やぁぁぁ!!」
掛け声と共に私達は“かれら”を殺していく。
しかし、倒しても倒してもその後ろから次々と“かれら”がやってくる。
その多さに、床にいる“かれら”に刺さっている棒を抜く暇もない。
既にバックの中の棒は使いきり、残っているのは手に持っている2本しかない。
「くっそ、多過ぎる! どこの無双ゲームだよ!」
「的を射過ぎていて笑えませんよ、その冗談!」
少しずつ後退して行く私達は化学実験室と音楽室の間の廊下まで来ていた。
「・・・先輩、合図したら化学実験室の前の扉を開けてLL準備室横まで下がって下さい。」
教室を半分も過ぎた所で、私は先輩に声を飛ばす。
「そこまで下がったら放送室まで後がなくなるぞ。」
「後がないなら作れば良いんです。カウント3でいきますよ。」
「わけわかんねえよ! あー、もう分かった。やってやる!」
「ありがとうございます。・・・3,2,1 GO!」
私達は同時に身を翻して走り出し、私は音楽室の、胡桃先輩は化学実験室の前の扉をそれぞれ開け、準備室横で止まると、“かれら”は開けた扉に次々と入って行き、私達を追いかけて来たのは10体程度だった。
「なるほどな、これなら!」
「はい。でも、油断せずに行きましょう。」
「あぁ、・・・行くぞ!」
胡桃先輩の掛け声を合図に、3分の1になった“かれら”の群れに突っ込んで行った。
「ぜぇぜぇ。」「はぁはぁ。」
廊下に私と胡桃先輩の荒い息が響く。
その私達の前には、動かなくなった“かれら”の死体が廊下一面に横たわっていた。
「「終わった~。」」
武器を放り投げ廊下に寝転ぶと程よく冷たく、疲労から徐々に瞼が重くなってくる。
「2人とも無事!?」
放送室の扉が開き、悠里先輩が顔を出した。
「大丈夫です。2人とも無事です。」
まどろみの中答えた私の耳に、悠里先輩の「あれっ?」と言う声が届く。
「りーさん、どうした?」
「ねぇ、めぐねえは・・・?」
「「え?」」
3人の間に静寂が包んだ。
恵飛須沢 胡桃side 16時15分
「2人が出て行って少ししてからだったと思うわ、めぐねえが出て行ったのは。」
そう語ったりーさんの声は微かに震えていた。
めぐねえは私らが“やつら”を討伐しに行ってすぐ、由紀を探しに放送室を出て行ったらしい。
「廊下に出ていたのに、私も真白もそれに気付かなかったのなら、私らの方には来ていないな。私は南側を探す。りーさんと真白は由紀を探しに北側を頼む。」
「分かったわ。」「分かりました。」
私らは放送準備室の前の廊下で別れ、めぐねえと由紀を探し始めた。
「くっそ!」
今日何度目かになるその悪態と共に職員用休憩室の扉を閉めると、扉に付いていたガラスの破片数枚が床に落ちて砕けた。
私がこんなに苛立ってる理由、それは未だに2人が見つかっていないからだ。
「・・・後はここだけか。」
残ったのは職員室の最南端の扉から行ける小さなスペースだけ。
そこはエレベーターや階段がある場所だった。
扉を開けるとそこには4体の “やつら”の死体が転がっていた。
「なっ、なんでだよ!?」
この場所は今日綺麗にしたばっかりだ。“やつら”の死体があるわけがない。
よく見ると死んでいる4体は共に下半身、または足を失っていた。
それを見て1つの考えが浮かぶ。
その考えを確かめる為に、階段を半分降りた先にあるバリケードを調べると、案の定バリケードの下部分の机に“やつら”が通り抜けた跡があった。
這って移動している内にバリケードを越えたのだろう。
だとすると、別の疑問が生まれる。
(なんで“やつら”はここで死んでいるんだ?)
「・・・ん?」
ふと、階段の上の“やつら”に視線を向けると、“やつら”がエレベーターの付近で死んでいるのに気が付く。
「・・・まさかな。・・・でも一応探してみるか。」
多少の疲労はあったが身体に鞭打ってエレベーターのドアを開けると、
「! おい、由紀!」
中には気を失って眠っている由紀がおり、由紀のその手にはめぐねえが付けていた十字架のネックレスと白いリボンが握られていた。
その後、私の声を聞きつけてやって来たりーさんと真白と共に由紀を起こそうとするが、由紀は起きず、仕方ないので由紀を放送室に運び、3人でもう一度3階をくまなく探した。
しかし、めぐねえはどこにもおらず、暗くなりこれ以上の捜索は危険だと判断し、部室に帰った私達を待っていたのは・・・。
虚空に向かって話している由紀の姿だった。
▼めぐねえがパーティから退出した。
▼由紀がバッドステータス[現実逃避]となった。
箒の残数:2本
前書きでも言いましたが、これにて第1章は終了です。
活動報告の方でも言いましたが、暫し[シロオト暮らし]を休載させて頂きます。
再開はいつになるかは分かりませんが、出来るだけ早く再開出来るように頑張ります。
拙い文章で申し訳ありませんでしたが、[シロオト暮らし]を読んで頂き、ありがとうございました。
それでは、また会う日まで。