2週間も間が空いてしまい申し訳ございません。
今回は漫画の2話+3話一部の話で、時系列を若干戻しています。
PS.今までの話で真白達のsideの話のあとがきに、箒の残数を付け加え、12話のコクベツの文も若干付けたしました。
それでは14話をどうぞ!
恵飛須沢 胡桃side
最近同じ夢を見る。
屋上の落下防止柵に寄りかかる私と先輩。
空は綺麗な夕焼けで、私達の間はほんの数cmしか離れていない。
心臓がドキドキする。顔が暑い。チラリと先輩を盗み見るともっとドキドキするし、顔も暑くなった。
「どうした?」
「! いえ、何でもないです。」
先輩がこっちを向いたから慌てて顔を逸らした。
絶対不自然だっただろう。きっと後ろにいる先輩の顔はキョトンとしていると思う。
「恵飛須沢。」
先輩に呼ばれ、心臓が跳ね上がる。振り向くと、先輩が私に手を伸ばして来ていた。
先輩の手が私に近付いてくる。
その手が、先輩の顔が先輩の肌が徐々に黒くなっていた。
「せん、ぱい・・・? うわっ!」
私は先輩に突き飛ばされ、尻餅をついてしまう。
見上げると、先輩のいた場所に1体の“やつら”がいた。
私は尻餅をついた状態からなんとか後ずさりをして逃げようとするが、追う先輩の方が早い。
そして先輩の手が私に触れる・・・その前に手にシャベルが触れた。
「うわぁぁ!」
私はそのシャベルを掴み、“やつら”となった先輩に思いっきり振った。
手に確かな手応えが伝わる。そして顔に先輩だった者の血が付着する。
めぐねえがいなくなってから私は先輩を殺す夢を見るようになっていた。
5日目 7時20分
「ッ!?」
目を覚ますとそこはおとといから寝室として使っている放送室の部屋だった。
「夢か・・・。はぁ。」
大きなため息を吐く。
ふと、左を見るとりーさんと真白は起きているらしく、2人の布団は既に畳まれていた。そして、右を見ると、
「う~ん、むにゃむにゃ。」
と、寝息を立てながら熊のぬいぐるみを抱きしめた由紀がぐっすりと眠っていた。
「由紀朝だぞ、遅刻するぞ。」
そろそろ朝食の時間になるので私は由紀を揺すった。
若狭 悠里side 7時25分
家計簿って頼もしい。つけているとなんと来週の事が分かるのだ!
この部活が始まった頃は明日の事も分からなかった。
来月の事はまだよく分からない。
・・・来年、私達はどうしているのだろう。
「電気足りないわね・・・。」
「あー、この所、晴れなかったですからね。」
部室で家計簿を書きながら呟くと、後ろで朝食を作っている真白さんがそう返してきた。
この学校は太陽光発電のおかげで電気が使えるのだが、今日を入れて4日連続で天気が悪く、電気が不足していた。
不足しているのは電気だけじゃない。最近ばたばたしていたせいで、物資もかなり減って来ていた。
そろそろ真白さん達に調達をお願いしなければならない。
「おはよう!」「おはよ~」
部室のドアが開き由紀ちゃんと胡桃が入ってくる。
由紀ちゃんは元気いっぱいだったけど、胡桃はまだ少し眠そうに見える。
「こ、この匂いは、カレーだ!」
突然、部室中に由紀ちゃんの明るい声が響く。そう、真白さんが朝食として作っていたのはカレーだった。
「ホントだ! 早く食おうぜ!」
さっきまで眠そうだった胡桃も目覚め、自分の席に座った。
「「「「いただきまーす!」」」」
みんなで合掌をして食べ始める。
「ごちそうさん。」
まず食べ終えたのは胡桃だった。
「胡桃先輩食べ終えるの早いですよ、太っちゃいますよ?」
「良いんだよ、運動部だから!」
「え? うちって運動部だっけ?」
「「「!」」」
由紀ちゃんのその言葉に私達の間に緊張感が走る。
私達が何も言えない中、由紀ちゃんは1つだけ空いている、めぐねえが座っていた席を少し見つめた後、「あー、水やりとか疲れるもんね~。」とまるで会話が続いているかのように話す。
それに続き胡桃も「だろ? 雑用ばっか。」と、多少焦りながらも自然な会話になるように言葉を選ぶ。
現実逃避をしている由紀ちゃんの瞳には行方不明になっためぐねえが今も変わらずにいるらしい。昨日はその事でかなり戸惑ったが、今日になって漸く慣れてきた。
そんな精神的に危うい状態の由紀ちゃんにこれ以上刺激を与えないように、私達は彼女に合わせる事にした。
・・・なんて事言っているけど本当は、めぐねえがいなくなった悲しみを、現実逃避をしている由紀ちゃんのお世話をすることによって紛らわせているだけなのだ。
・・・私なんて特にそう。
「胡桃先輩。学園生活部、心得第2条。」
「え!? 第2条・・・だい2じょう・・・。」
「『学園生活部は施設を借りるにあたり、必ずその恩に報いるべし』だよ、胡桃ちゃん。」
胡桃が言えなかった心得を由紀ちゃんが代わりに言う。
「由紀先輩、ありがとうございます。胡桃先輩、だから雑用とか言っちゃダメですよ? 借りた恩は報いなきゃいけないんですから。」
「分かったよ・・・。」
胡桃は少し頬を膨らませ、返事をした。
「それじゃあ、先行くね。」
「いってらっしゃーい」
朝食を終えた由紀ちゃんは“授業”に行く為に教室を出て行った。
「ちょっと、危なかったわね。」
扉が閉まって足音が遠くなってから私は胡桃と真白さんに詰め寄った。
「ごめん、口が滑った。」「私も考えなしでした。」
2人は苦笑いして、それぞれの武器を手に取りドアに手をかける。
「では、恵飛須沢 胡桃、心入れ替え朝の見回りに行ってきます。」
「黒崎 真白も同じく心入れ替え、朝の見回りに行ってきます。」
「2人とも気を付けてね」
「「はーい」」
私は部室で2人を見送った。
黒崎 真白side
「さて、どこから行こうか?」
部室の扉を閉めた先輩が聞いてきた。
「そうですね・・・。とりあえず、近くから見て行きましょう。」
「そうだな。」
私達がまず向かう事にしたのは、部室から一番近い南のバリケードに決まった。
職員更衣室を出て、エレベーター前の小さなスペースに出る。
ここは一昨日、胡桃先輩が由紀先輩を見つけた場所。
あの時、“やつら”が侵入出来たのは、踊り場にあるバリケードの一番下の机が潜れば通れるスペースが開いていたからだった。今はそうならないように、塞いでいるが・・・。
私はワイヤーを少し揺らし、ピンと張ってある事を確かめる。
「異常なし。胡桃先輩、次行きましょう。」
「待て、真白。・・・あれ。」
「っ!」
先輩が指差した先、階段の下側から2体の“やつら”が上がってくるのが見えた。
「狙えるか?」
「・・・無理ですね。ここからだと手すりが邪魔ですし、バリケードの上からだと天井が邪魔になります。」
「そっか、じゃあ、」「直接叩くしかないですね。」
私達は無言で頷き、音を立てないようにしてバリケードを登る。
「私があっちをしますから胡桃先輩はこっちをお願いします。」
「りょーかい」
短い打ち合わせをした後、私はバックのポケットからピンポン玉を取り出すと、それを“やつら”の向こう側に向かって思いっ切り投げる。
音に反応する習性を持つ“やつら”はピンポン玉を追って階段を降りて行く。
((今だ!!))
私達はバリケードから飛び降り、私は棒で、先輩はシャベルでそれぞれ“やつら”を後ろから殺す。
「・・・おやすみなさい。」
殺す直前、胡桃先輩がそう呟いたのが聞こえた。
戦闘を終え、残りのバリケードでも数度の戦闘を行った私達は、屋上に行き、武器に付いた血を洗い落す。
武器が綺麗になった頃、りーさんがやって来た。
「またやったの? 見回りだけでいいのに・・・。」
「良い位置にいましたから。」
「危ないわよ?」
「2人だから大して危険はないよ。りーさん心配しすぎ。」
「部長ですから!」
悠里先輩が「えっへん」と胸を張る。
「学園生活部、ちゅうもーく!」
その声と共に部室のドアがおもいっきり開き、案の定、中から由紀先輩が現れた。
由紀先輩は何故か頭に白い三角頭巾を被っており、私達の所に駆けてくると、
「肝試しやろ、肝試し!」
と、提案してきた。
原作との相違点
・時系列
13話の方が時系列的にこの14話より後になる。
[おもいで]と[らいねん]が一緒になっている。
・バリケードの位置
漫画やアニメでは階段下だったが、この小説では踊り場にある。
箒の残数:8本