・・・さて、プロローグ[ゼロ]です。ついに“あれ”が起こってしまいます。果たして主人公達の運命やいかに。
それではどうぞ!!!!
黒崎 真白side 16時40分
教室に戻った私は、ふと校庭が騒がしい事に気が付き、窓から校庭を見た。
「なに・・・これ・・・。」
そこには、地獄のような光景が広がっていた。
校門から次々と校庭に入ってくる肌が黒く変色しのろのろと動くヒト型の“何か”。それに襲われ文字通り身体を食べられている人達は暫くすると肌を黒く変色させ、のろのろと動きだし人を襲いだした。
その光景は、まるでゾンビ映画を見ているかのようだった。
“かれら”は音に反応しているみたいで、声を上げている人ほど、沢山の“かれら”から襲われていた。
「!」
そうしている内に校庭にいた生徒達が校舎に入って来るのが見えた。そしてその生徒達を追って、“かれら”も覚束ない足取りで校舎の中に入ってくる。
「ど、どうしよう。・・・とりあえず、ドアを閉めなきゃ。」
恐怖に駆られた私は、教室の前と後ろにあるドアと窓を閉め鍵をかけた。
数分もしない内に鍵をかけたドアの向こうで、逃げている人達の悲鳴や怒号に続き、“かれら”の呻き声が聞こえてきた。
私は助けを求める人の声や、何度もドアを叩く音を全て無視し、耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ。塞いだ手から漏れる声に震えながら・・・。
あれからかなりの時間が経った。
最初は聞こえていた悲鳴や怒号や助けを呼ぶ声もついさっき、呻き声にすべて変わったっていた。
そんな中、下校を知らせる校内放送のチャイムが校舎に鳴り渡る。
たった数時間前に聞いたその音がえらく懐かしく感じる。
あの時はみんな一緒だったのに、今はみんながどうなっているのか分からない・・・。連絡を取りたいけど、ケータイは屋上の鞄の中に入っているからそれも出来ない。
そう言えば、チャイムが鳴ってから呻き声が聞こえなくなった。
その事に気付いた私は、塞いでいた手を耳から離す。
「・・・?」
数時間ぶりに直に聞いた世界の音はとても静かで、耳を澄ましても“かれら”の呻き声は聞こえてこなかった。
私は音を立てないようにして窓に寄り、外を見る。
「・・・・。」
夕暮れに照らされ赤橙色になった校庭。そのあちこちには人の死体や血だまりが出来ていた。
その校庭を覚束ない足取りで歩く、“かれら”は次々と校庭から出て行っていた。まるで下校しているように・・・。
視線を上げると遠くに見える高層ビルから煙が上がっているのが見えた。
頬に雫が流れる。
いつの間にか私は泣いていた。この涙の意味が、悲しみから来ているのか、絶望から来ているのかは分からない・・・。さっきから心がぐちゃぐちゃで上手く考える事が出来ないのだ。
「・・・どうしてこんな事になっちゃったんだろう・・・?」
元の扉の前まで戻り、座った私の口からおもわず漏れた呟きは、私以外いない教室に虚しく響いた。
黒崎 音緒side 18時00分
ドーーン!!
その音で俺は夢から無理やり現実に引き戻された。
(な、なんだ!? 爆発!?)
驚愕している俺の耳に獣のような呻き声のような声が聞こえた。その声は外から聞こえたので、俺は部屋のカーテンを開く。
(な、何だ!? これは・・・。)
視線の先には煙を上げているビルが何棟も見えた。そして視線を下げると・・・。
「人が人を・・・食べてるのか!?」
俺は夕日に照らされたその光景に思わず目を疑った。
逃げ惑う人達を襲う肌を黒く変色した人型のモノは人を襲い文字通りその身体を噛み千切る。襲われた人は、暫くすると肌を黒く変色し、欠けた体のまま起き上がり、生きている人たちを襲い始めていた。そうして、“やつら”の数は徐々に増えていく。そして見た感
じ疲れも見れなかった。
(なんだこれ・・・。まるでゾンビ映画じゃないか・・・。)
俺は悪態をつく。そうでもしないと、この現実を受け入れる事は出来なかった。
「っ! 真白、姉さん」
机の上にある携帯を取り、2人に連絡する・・・が、2人とも電話に出なかった。
そうしている内に圏外となる。
「くっそ!」
ベッドに携帯を投げた。
あれから1時間が経った。外は暗くなり、道路を歩くのは“やつら”だけとなった。
俺はこの1時間、“やつら”を観察し、音と光に反応するのを見つけた。それに加えして、“やつら”が生前の記憶に影響されているのに気が付いた。
それに気が付いたのは“やつら”が暗くなるにつれ、数が減り、それぞれの家に帰るのが見えたからだ。
今、俺は身支度を整えている。
服は動きやすい服装に着替え、その上から返り血防止として大きめの黒色のコートを羽織り、学校指定の鞄に缶詰、ライトや衣服等を入れた。
そして“やつら”戦う為の武器を手に入れるため、じいさんの部屋に入った。じいさんの部屋には仏間があり、そこには日本刀が飾られていた。
模造品などでなく、本物の真剣である。
「じいさん、真白と姉さんを助けに行く為にこの刀を少しの間、貸してくれ。」
俺はじいさんの仏壇に手を合わせた後、刀を取り、腰に差した。
そして廊下に出て鞄を肩にかけ、玄関で靴を履くと、
「行ってきます。」
と、いつも通りに言ってから家を出た。外には“やつら”の姿はなく、家の鍵を閉め、軽く準備運動をすると、地を蹴って崩壊した街を走り出した。
走り続けて30分後、俺は近場の大型のホームセンターにやってきた。
店内には何体もの“やつら”がいたが、生存者はいなかった。
俺は“やつら”を倒しながら目的の売り場を目指す。
(あった、あった。)
目的の売り場に辿り着く。そこは大工や電気屋の人が仕事の時に、道具などを入れる腰に巻いて使う作業ベルトがあった。
売り場にある中から、出来るだけ目立たない色の物を選んで、それにサイドポケットを3つとアウトドアナイフの入ったケースを2つとフック付きのロープを取り付け腰に巻いた。
そしてサイドポケットに他の売り場で見つけたペンライトやケミカルライト、鉛筆大の金属棒、防犯ブザーを入れていく。
売り場を移動し、靴売り場ではブーツ型の安全靴を、軍手売り場で革製の指ぬきグローブを入手し、鞄売り場で手に入れた登山用の大きめのリュックに持ってきた荷物を移し替え、食料品の売り場にあった保存の効く食料や水も入れていく。
(・・・こんなもんか。そろそろ出よう。)
他にも色々入れたリュックを肩に背負うとかなり重くなっていた。
通路にいる“やつら”を倒しながら、俺は店を後にし、駐車場に停めてあった比較的無事そうな、鍵の付いたままのバイクを見つけ、それに跨りヘルメットを着ける。
ブレーキペダルを握りながら、エンジンキーを回すと、エンジンは無事かかった。
「さて、じゃあ行きましょうか。」
その掛け声と共にハンドルを回し、地を蹴ってバイクを発進させると、再び崩壊した街を今度はバイクで走り出した。
黒崎 葵side 19時00分
私はこの子たちを守れなかった。
何のために身体を鍛えているんだ。何のためにおじいちゃんに剣道を習ったんだ。何のために・・・。
ア゛ア゛ア゛ーー!
近くで“かれら”となった元人間の呻き声が聞こえる。その声に反応した腕の中の女の子が震えだし私を見つめる。
『くろの先生、わたしこわい・・・。』
女の子の口がそう動いた。私は女の子を抱きしめる。
「大丈夫、先生がついているから。」
私はそう言ってこの子を落ち着かせる為に、何度も彼女の頭を優しく撫でる。
「だから、一緒にがんばろう。若狭さん。」
そう呟くと腕の中の女の子はコクンと小さく頷いた。