シロオト暮らし   作:ミツフミ

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前回言いましたか、今回も真白sideの話です。


セイゾンシャタチ

 その後私達は、私が今朝購買部から取って来たものと、園芸部で育てた野菜を朝食として食べた。

 野菜はドレッシングなんて物は無いから、生でそのまま食べるしかなく、文字通り味気なかった。

 

 食事を取りながら、私はみんなに、下の様子―2-Bの教室は使える事、2階と3階の階段付近は制圧出来たけど“かれら”が多くなって来たからここに避難してきた事―を話し、“かれら”は生前の記憶に従って行動している節があり、今下に行くのは“かれら”が多くて危険だと伝えると、下に行くのは“かれら”が下校した後という事になり、丁度食事も終えたという事で一旦解散となった。

 食後、私は落下防止柵に寄り掛かり思案を始まる。

 

 

 “かれら”は少なければ倒すのはそんなに難しくはない。

 机を積んでバリケードを作れば安全圏を確保する事が出来る。

 バリケードの材料である机と紐だが、机は2-Bの教室のを使えばよく、紐は何故か各教室に丈夫な紐があるので、幸運な事に作る事は可能だ。

 何も問題は無い。・・・あるとすれば、私自身の事だ。

 

 さっきチャイムが鳴ってから急激に増幅した恐怖という感情に私は今、支配されていた。きっとこのまま下に降りても、“かれら”の仲間入りをして終わるだけだろう。

(・・・どうにかしないと。・・・ん?)

 

 ふと横を見ると、丈槍先輩と佐倉先生がそこに立っていた。

 

 私が再び屋上に来てから私は塞ぎこんで震えている丈槍先輩しか見た事がないのだが、先輩は今、震えながらも佐倉先生を支えて貰いながらもそこに立っていた。

「ねぇ、1つ教えて?」

 丈槍先輩が口を開く。やはりその声は震えていた。

「何ですか?」

 

「あなたはどうしてそんなに平気なの? おかしいよ! 下に行くのが怖くないの? ここは安全じゃん! なんで危険を冒してまで下に行く必要があるの!?」

 先輩は震える自分の身体を抱きしめ膝をつく。

「まだ無理しちゃダメよ。」と横にいる佐倉先生が先輩の肩に手を置く。

 

 

「・・・平気じゃないですよ、全然。今も手は震えてるし、心臓も煩いです。」

 そう言って私は先輩達に近付き、先輩の右手を両手で持つと、私の左胸に当てた。

「ふぇっ!?//」「ちょっ/// 黒崎さん!?」

 私のいきなりの行動に2人は驚き、顔を赤くする。多分私の顔も赤いのだろう。だけど、今はそれを無視して話を進める。

 

「先輩、私の手、怖くて震えてるの分かりますか? 私の心臓の鼓動が早いの感じますか?」

「・・・うん、分かるよ// 手、震えてるのも、心臓の音も。・・・そっか、あなたも怖いんだね。でも怖いなら、余計にここにいれば良いじゃん。・・・なんで、なの?」

 

「後悔したくないからです。」

 

「・・・え!?」

「私は昨日、自分が助かる為に、多くの人を見殺しにしました。もうあんな思いをするのは嫌なんです。・・・だから私は必死にもがいているだけなんです。」

「・・・強いんだね。私には無理、だな。私、力も弱いし、頭も良くないし。こんなんじゃ駄目だよね・・・。」

「ううん、そんな事はないわ。ゆきちゃんにも良いとこあるわよ?」

 そう言って佐倉先生は丈槍先輩の頭を撫でる。

「・・・どこなの?」

「その笑顔よ。」

「・・・それあんまり嬉しくないかも。」

「そんな事ないわ。笑顔になれば人は元気が出るし、笑顔を見れば人は元気を貰えるものよ。」

「・・・そんなの嘘だよ。」

「いいえ、嘘じゃないわ。だって、私はゆきちゃんの笑顔を見て、毎日元気を貰ってたもの。」

「・・・ホント?」

「もちろん♪」

 

「・・・ましろさんも、私の笑顔で元気、出る?」

「勿論です。先輩、私に元気を下さい。」

「うん、わかった。」

 そう言ってハニカミながらも笑顔を見せてくれた丈槍先輩を見て、私の手の震えはいつの間にか収まっていた。

 

 

 あれから数時間がたった。そして先程、下校を知らせるチャイムが鳴った。

 私達は今、円になって座っている。

 

「・・・さて、チャイムも鳴りましたが、下にはまだ下校していないのもいると思うので、私が先に1人で安全を確保して来ます。みなさんはその間、準備をしておいて下さい。」

 私の“かれら”を怖いと思う感情は丈槍先輩の一件でどこかに消えていた。

「1人で行くの!? 駄目よ、危ないわ!」

 私が偵察を名乗り出ると、佐倉先生が過敏に反論する。

 

「大丈夫です。“かれら”の倒し方ならもう・・・染みつきましたから。」

 佐倉先生にそう言うと、先生は悲しそうな顔をして黙った。

 この数時間、何度か先生と話していて気付いたのだが、先生は生徒を危険な所に行かせるのを良く思っていないようだ。

 出来れば自分で何とかしたい。しかし、自分が行けばきっと犠牲者を増やすだけ。そんな二律背反の中、先生は苦しんでいた。

 そしてその苦しみは、同じ性格である若狭先輩も同じだった。

 

 朝食の時、下の様子を話してから、先輩は私を見る度に、申し訳ない顔をしていたから。

 

 そこまで分かっておきながら結局私は先生にも先輩にも何も言えなかった。

 そして今も、先生達に何も言えずに立ち上がり、干してあったジャージに着替え、ドアの方に向かおうとすると、誰かに肩を掴まれる。振り向くと、恵飛須沢先輩だった。

 

「私も連れて行け。」

「え!?」「!?」「恵飛須沢さん!?」

 彼女の言葉に私と若狭先輩と佐倉先生は驚く。

 

「私は昨日、“やつら”になった先輩をこの手で殺した。・・・だから!」

 先輩の瞳はしっかりとした決意が秘められていた。

 

「・・・分かりました。」

 

「黒崎さん!」

「佐倉先生、大丈夫です。恵飛須沢先輩は私が守りますから。でも恵飛須沢先輩、一応何か武器があった方が良いのでこれを使ってください。」

 私はバックの中から、棒となった箒を先輩に渡すが、先輩は手で押し返した。

「いや、いい。私には・・・これがあるから。」

 そう言って先輩は壁にかけてあったシャベルを掴む。

 それは、今朝この屋上に来た時に恵飛須沢先輩が持っていたものだった。シャベルには拭き取れなかった血の跡が残っている。佐倉先生に聞いた話によると、あの日、恵飛須沢先輩はあのシャベルで彼女の先輩を殺めたらしい・・・。

「・・・分かりました。では、行きましょう。」

「あぁ。」

 

「ましろさん!」

 私はドアノブに手をかけようとすると、後ろから丈槍先輩の声が聞こえてきた。

 振り向くと、先輩が若狭先輩の横に立ち、若狭先輩に小さい声で何やら言っている。

 ずっと元気がなかった丈槍先輩だが、朝食後の笑顔の一件で徐々に元気を取り戻し、笑顔を見せてくれるようになった。

 一方若狭先輩とは朝食を食べて以降何も話していない。

 

 暫く2人を見ていると、丈槍先輩と話しがついたのか、若狭先輩は「真白さん」といつものように私の名を呼ぶと、辛そうな、悲しそうな、そんな複雑な表情をした後、「・・・気を付けてね。」と、最後は笑って言ってくれた。

「はい、行ってきます!」

 私も先輩に笑顔で返し、鍵をカチャリと開けると、3人に見送られて屋上を後にした。

 

 

 

恵飛須沢胡桃side 17時20分

 扉の向こうには人の死体が転がっていた。それを見て、私は吐き気を我慢する為に口に手を当てた。

「先輩、大丈夫ですか?」

 隣にいた黒崎が心配そうに見つめてきた。

(・・・なんでこいつは平気なんだ。)と、内心悪態をつきながらも、「大丈夫だ。」と言い、黒崎について3階に下りた。

 

「・・・・。」

 3階には更に多くの死体が転がっていた。その光景に私はおもわず目を背けそうになるが、資料室の方から“やつら”が2体やってくるのが見えた。先輩と同じ、肌を黒くした“やつら”が・・・。

 

「先輩、ちょっと離れて下さい。」

 “やつら”の姿を見た黒崎はそう言って私を手で制すと、テニスのバックから棒となった箒を1本取り出す。そして、それを右手に逆手で持ち、2.3歩の助走の後、やり投げの要領で投擲した。

 

 投擲された棒は“やつら”の内1体の頭部に突き刺さり、そいつは倒れ動きを停止する。

「なっ!?」

 私が驚いている内に、黒崎は再びバックから棒を1本取り出し、残っていた1体も同じようにして殺した。

 

 

 “やつら”を殺した後、黒崎は死体が転がっている廊下を平然と歩き、今殺した“やつら”の頭部に刺さっている棒を何の躊躇もなく引き抜いた。

 その姿を見て、私は何も言えなかった。

 そして、ふと周りをよく見たら、廊下で死んでいる“やつら”の頭部や心臓部には、今殺した“やつら”と同じ穴が開いているのに気付く。

 

 その時点で私は理解した。こいつは、ここで生き残る為に、色んな物を捨ててしまったんだという事に。そして多分、私も近い内にそうなってしまうんだという事に・・・。

 

 そうして、下の安全が確保できた所で、めぐねえ達を呼んだ。

 めぐねえ達も3階の光景を見て気分の悪そうな顔をしていた。

 

 

 その後、5人で2-Bや他の教室から、まだ使える机や椅子を運んでバリケードを作り、物理実験室から2-Dの教室までの安全を確保した。

 そして、私と黒崎が2階にある購買部から取って来たものを夕食として食べて2-Bの教室にブルーシートを敷いて睡眠を取った。

 

 購買部に行く時に私も数度、“やつら”と戦闘を行ったが、結局私は最後まで黒崎みたいに平然と“やつら”を殺すなんてことは出来なかった。




今回、真白とりーさんの間が遠のいて近付きました。

・補足説明
前半りーさんが真白に話かけなかったのは真白の下での事を聞いて罪悪感を感じたから。
それで、下に行く数時間の間に元気になった由紀がりーさんを説得して、扉前のシーンになりました。


・突然ですが、真白のプロフィール公開
名前:黒崎 真白
髪:ロング。色はライトブラウン。髪型はポニーテールにしている事が多い。
瞳:ブラウン。
年齢:16歳。高校2年。
趣味:料理。
特技:家事。
武器:T箒20本(現時点では4分の3が棒化しており、その内の6分の1が曲がっている。)
服装:半袖の体操服上下と長袖の体操服の上着。合流してからは屋上で洗っている。
備考:
12年前の事故で両親を亡くし、一旦孤児院に預けられた後、おじいさんに引き取られ黒崎家に来る。
家事はおじいさんと葵に習う。


次はsideが変わります。
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