シロオト暮らし   作:ミツフミ

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第3話でも言いました、タイトルの言葉遊び、0章では、4話以外の漢字部分に3.2.1と数字が隠れてましたが、1章ではカタカナの部分に色が隠れてます。
ちなみに今回は紫色。[紫]ンジル気持ちです。

それでは第8話をどうぞ!


シンジル気持ち

黒崎 音緒side 6時30分

「よ、漸く辿り着いた・・・。」

 家を出発して約12時間後、俺は学校に到着した。

 姉さんが働いている、鞣河小学校に。

「にしても、時間かかったな・・・。」

 普段なら30分もあれば到着する距離。だが、ここまで時間がかかってしまったのは、途中でホームセンターに寄ったり睡眠休憩を挟んだりと様々な要因があるのだが、一番の要因は道中事故で通れなかった道が多々あり、何度も迂回しなければならなかった点だろう。

 

 見える範囲には数体の“やつら”が見えたが、距離が遠く、殺す必要もなかったので、俺は“やつら”に構わず正面玄関から学校に侵入した。

 

 中は酷い有様だった。

 廊下にはあちらこちらに血が飛び散っており、窓やドアのガラスのほとんどが割られていた。その割れた窓から教室を見ると、中には何体もの“やつら”がいた。

 

 曲がり角に来た。そこから覗くと階段があり、そのわきの通路から1体の“やつら”と化した学生と遭遇する。

 

 刀を鞘から抜く。そして、数歩の踏み込みで懐に入ると、そこにいた1体の首を刀で刎ねる。

 首を失った1体は、バランスを崩し倒れ、その衝撃で首のあった部分から血が零れた。

「・・・ごめんな。」

 そう呟き手を合わせた後、俺は2階に上がった。

 

 

 2階は1階よりは被害は少なかった。俺は“やつら”を警戒しながら廊下を歩き出す。

 

『~~~♪』

(ん?)

 とある教室を通り過ぎた時、その教室の中から歌が聞こえてきた。

 その歌はとても小さく、こんな静かな世界でなければ聞こえない位、小さい声量だった。

 ・・・そして、その歌は聞き覚えがあった。

 

 俺はその教室の扉を開けようとする。

 しかし、ドアに鍵がかかっており、開くことはなかった。

 

「おい、誰かいないのか!」

 俺は大声でドアを叩いた。

 

 

 

黒崎 葵side 6時40分

『おい、誰かいないのか!』

 聞き覚えのあるその声でぱっと顔を上げると、ドアの所に人影が見えた。

 

 立ち上がろうとしたら、袖を引っ張られる。

 振り向くと若狭さんが震えながら私の服を引っ張っていた。

 私は震えている彼女の両手を私の両手包み、膝をついて視線を合わせ、「大丈夫だよ。」と、笑顔で言うと若狭さんは震えながらもコクンと頷いてくれた。

 

 私は若狭さんと手を繋いで、ドアまで行き、鍵を開けドアを開ける。

 

「久しぶり、葵姉さん。」

 そこにいたのは音緒だった。

「遅すぎだよ、ばか。」

 そう言った私の頬にはいつの間にか1筋の涙が流れていた。

 

 

 あの後、音緒を教室に入れ、若狭さんと自己紹介させ、若狭さんの症状を軽く説明する。

 そして音緒が持ってきた食料を食べながら、音緒にこの学校の状況を聞いたら、「俺もそこまでしっかりと探したわけではないけど」と、前置きを言ってから、渋い表情で1階の様子を話してくれた。

 

 ・・・音緒が言うには1階には既に生存者はいないようだ。前置きからある程度予想していたけど、結構ショックを受ける。

 

 それにしてもこんなに食事に感謝したのは久しぶりだ。食料がとても美味しい。約18時間ぶりの食事だから、ただの缶詰もいつも以上に美味しく感じた。若狭さんもいつも給食で見せている時よりも良い食べっぷりだった。

 

 食事を終えた私達は手早く支度を整え、教室から出る。廊下は酷い状況だった。音緒が言うにはこれでも1階よりかはマシらしい。

 

 前を歩くのは音緒だ。音緒は自ら“かれら”との戦闘を買って出た。私も戦おうとしたけど止められた。「ここには姉さんに見知ったヒトが多いから、姉さんが戦うと辛い思いをしてしまうから。」と。そう言われた時、私は何も反論出来なかった。

 

 音緒の後ろを私と若狭さんが歩く。私の背中には音緒のリュックが背負われており、左手には若狭さんの右手を握っている。

 そして右手にはもし何かあった時の為に教室から武器として持ってきたモップが握られていた。これを使う時が来ない事を祈っている・・・。

 

ア゛ア゛ア゛ア゛ーー!

「「!」」

 獣のような呻き声と共に前方の教室から“かれら”となった生徒が2体現れた。

 “かれら”を見た瞬間、音緒が“かれら”に向かって駆け出す。

 音緒から出る殺気のような気配を感じた私は、急いで若狭さんの眼を手で覆った。

 ぎりぎりだったけど、なんとか若狭さんに音緒が“かれら”を殺す瞬間を見せずに済んだ。・・・教室での光景を見せておいて今更だと思うが、これ以上私は、この子に誰かが“かれら”を殺す所を見せるのは危険だと感じていたから。

 

「・・・終わったよ、姉さん。」

 音緒はそう言いながら、刀に付いた血を払って鞘に納める。その一連の動作は既に板についており、音緒がこの短時間で何体も“かれら”を殺してきたのだという事が分かった。

 その事に気付いてしまい、少し悲しくなった。私は「・・・うん。」と、返事をして、若狭さんに“かれら”の死体を見せないように気を付けて、再び歩き出した。

 

 

 

黒崎 音緒side 7時50分

 結局生存者を見つける事は出来なかった。2階にある全ての教室を見回り、1階のまだ見ていなかった所を見回っても、だ。

 遅過ぎたのだ。そう強く思ったのは、ドアを開けてすぐの所に、机で出来たバリケードのある教室を見つけた時だった。

 

 中には他の教室同様“やつら”が何体もいた。だけど、この教室には他の教室にないものもあった。

 それは食料だった。食料とは言っても1袋のスナック菓子で、教室の真ん中に落ちてあったその袋には何度も踏まれた跡が付いていた。

 

 そして、教室のあちらこちらには、噛み傷の代わりに何か棒状の物で何度も叩かれて出来た傷のある子供の死体もあった。

 

 これは、生き残った者同士で食料を奪い合った形跡。食料を奪い合う上で、真っ先に子供が狙われて殺された形跡だ。

 ・・・袋が開けられていないのと、“やつら”が教室内にいる事から、奪い合っている内になんらかの拍子で誰かが感染して全滅してしまったようだ。

 

 この光景を見た瞬間、おもわずドア横の壁を怒り任せに殴り、その音で“やつら”を呼び寄せてしまった。かなり強く殴ったらしく後で見たその壁にはヒビが入っていた。

 

 

 学校の捜索を終えた俺達は、駐車場に停めてある姉さんの車を見つけ、姉さん達を車の中に避難させると、俺は別の所に停めたバイクを回収しに向かった。

 

 

 回収したバイクを姉さんの車の横に停めた後、ちらっと車の中を見ると、やはりあの教室では、きちんと眠れなかったのか、“やつら”のいる外に出て精神的に疲れたのか、運転席にいる姉さんと後部座席にいる瑠璃ちゃんは眠っていた。

 俺は“やつら”の血で汚れたコートを、バイクにかけた後、姉さんの車の助っ席に座って背もたれを少し倒す。

 移動するのは2人が起きた後で良いだろう。この車を運転出来るのは姉さんだけなのだから。

 それに今は登校や出社の時間帯と被っているので道路に“やつら”も多く危険だ。

 “やつら”が少なくなるまでの短い時間だが、その間に2人には暫しの休息で疲れを取って欲しい。そう思っていると瞼がだんだんと重くなってきたので俺も寝る事にした。

 

 

 その後、昨日の事を思い出して泣き始めた瑠璃ちゃんの声で飛び起きた俺と姉さんは、瑠璃ちゃんをあやした後、真白のいるであろう学校に行く前に、食料と衣服を調達する為、次の行き先をモールに決め、俺の運転するバイクを先頭に崩壊した街を走り出した。

 




音緒が葵さんとるーちゃんと合流しました〜。


・プロフィール公開
今回は音緒です。

名前:黒崎 音緒
髪:ショート。色は黒。髪型はストレート。
瞳:黒。
年齢:17歳。高校3年生
趣味:運動。
特技:どんなスポーツでもすぐにコツを掴む。
武器:日本刀、アウトドアナイフ×2。
服装:タンクトップ、長袖のシャツとパンツ、大きめのコート。色は全部黒色。

備考:
12年前、当時5歳の時に事故で両親を亡くし、自身も記憶を失う。その後病院で治療を受けた後、じいさんに引き取られ、黒崎家に来る。
剣道はじいさんと葵に習った。

明記してなかったが、友哉と冬華と共によく運動部のヘルパーをしていた。
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