「一件落着だな。」
使えなくなった戦闘体をトリガーホルダーに戻しながら、俺はつぶやいた。
「よくあの状況で諦めなかったわね。」
霊夢が言った。
「外の世界に性格がとても熱い人がいるのさ。その人が言ってたんだよ。絶対にどんな時でも諦めるなって。そしてこうも言ってたよ。無理だと思う前にもう少し頑張ってみろってね。あの人の言葉がなかったら俺は諦めてたかもしれないな。」
「へぇ、じゃあその人のに感謝しなきゃね。」
「ああ。」
俺は、目の前に広がる光景を見ながら言った。
「それにしても、やっぱり姉妹の仲ってもんはそう簡単には崩れないもんだな。」
「ええ。見てて微笑ましいわね。」
「なんか、羨ましいな。ああいうのって。」
「なんで?」
「俺には兄弟もいないし、両親も小さい頃に死んだんだ。だから、まともな愛情ってものをあんまり受けてないのさ。だから羨ましいんだ。」
「ふーん。あんたも苦労してんのね。」
「ああ。」
「・・・今度人里で、何か奢ってあげるわよ。」
「いいのか?あんまりお金無いんだろ?」
「細かい事は気にしなくていいの。私が奢るって言ってんだから感謝しなさいよね。」
「うん、ありがとな。霊夢。」
「な、なんかこう面と向かって感謝の気持ちを言われるのって、なんか恥ずかしいわね。」
「はは、なんだよそれ。霊夢らしくないなぁ。」
「うるさいわね!」
こうして、紅い霧が空を覆う異変は、見事に解決した。
「あなた、紅魔館の執事になりなさい。」
「え?」
「は?」
霧の異変も終わり、いよいよ帰ろうとした時にレミリアからそう声を掛けられた。
「あんたねぇ、蒼也は今私の神社に住んでるのよ。勝手に引き抜かないでくれる?」
「いいじゃない別に。あんたの神社貧乏なんでしょ。」
「うっ・・・そう言われると返す言葉が・・・」
「どう?蒼也。紅魔館の執事にならない?」
「うーん、誘ってくれるのは嬉しいけど、今回は遠慮させてもらうよ。」
「どうして?」
「だって俺この世界に来て一週間も経ってないんだぞ。なのにいきなり執事の仕事は、少々荷が重い。だから無理だ。あと、霊夢にも食い物を奢ってもらわなきゃなんないしな。」
「そういうことね・・・なら仕方ないわ。」
「意外とあっさり引いてくれたな。」
「変えられない運命だもの。しょうがないわ。」
「まあまあ、そんな落ち込んだ顔すんなって。幻想郷に慣れてきたら、また遊びに来るから。」
「本当?約束してくれる?」
「ああ。約束する。」
「蒼也ー、ごちゃごちゃやってないでさっさと帰るわよー。」
霊夢の声が聞こえた。どうやら早く帰りたいらしい。
「それじゃあな、レミリア。また会おう。」
「ええ。さようなら。蒼也。」
こうして、俺達は帰路に着いた。
「不思議なお方でしたね。」
「そうね。食卓に並べるにはもったいない人だったわね。」
「まぁでも食肉を調達する私がこのざまじゃ、食卓に並べるのにも一苦労といった所ですかね。」
「あら、咲夜。蒼也に負けてしまったの?」
「この格好を見て少しは察して下さい・・・」
「ふふ、ごめんなさいね。」
ボロボロの咲夜を見ながら私は言った。
「そうそう、あなたの着替えのついででいいから紅茶を持ってきて頂戴。喉が渇いちゃったわ。」
「はい。少々お待ち下さい。」
そう言って咲夜は消えてしまった。
「蒼也・・・」
私はあの外来人のことを思い出していた。不思議な力を持ち、決して諦めないような不屈の精神力を持ちながらも、自分のするべきことが終わったら颯爽と去っていく。そんな人間は500年生きてきて初めて見た。
「ぜひ、紅魔館の執事として迎え入れたかったんだけどねぇ。」
まあ、来てくれるのを信じて待つしかないか。
「あら?どうして私はあいつの事を、こんなにも考えているのかしら。」
なぜだろう?蒼也のことが頭から離れない。それに、蒼也の事を考えると胸の奥がちょっぴり痛い。
「紅茶をお持ちしました。」
この気持ちについてもっと考えたかったのだが、咲夜が紅茶を持って来たので考えるのをやめた。
「お味はいかがですか?」
「甘すぎるわ。もうちょっと砂糖を少なくして頂戴。」
「申し訳ありませんでした。すぐに別の紅茶を持って来ます。」
咲夜が消えたことでまた考えようかと思ったが、考え事をするには先程の紅茶の後味は、いささか甘すぎるようだった。
紅魔館の執事は、後の方で主人公にやらせますので楽しみに待ってて下さい。
それと、文章中に出てきた、外の世界にいた性格がとても熱い人。モデルは松〇修造さんです。どーでもいいですね(笑)すみません。では次回もお楽しみに。