FINAL FANTASY X ≪ーAnother story≫   作:ふゆー

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第二章 見え始めた歴史
❶スフィアプール


ルカはスピラで二番目に大きな都市と呼ばれている。

他の街では見ないような大きな建物や賑やかな街並みがあり、港町として古くから栄え、様々な交易と流通の場として発展してきた。

『シン』がいた時代も、この街は必死に守られ続け、そして今は以前よりさらに発展し建物の数が増え、街全体の規模が大きくなっている。

ルカの大通りは人で溢れ、活気が灯っていた。

大人子供と性別問わず、みな笑顔で闊歩している。

ルカ中央広場は人でもみくちゃとなり、この時期はブリッツの開催と相余って、お祭り騒ぎの様相をみせていた。

人が濁流のうねりのように一方では押し寄せては、他方では引いていく流れを作りあげている。

ルカ界隈のいくつもの通りには様々な店が所狭しと軒を連ねていた。

広場にも即席で作られた簡易式の露店も多数出店していた。食べ物やアクセサリー、骨董品、民族の品、怪しげな商品、と様々なものが売り買いされている。

この街では様々な人種の人たちがみな活気あふれ、和やかなムードの中、人種関係なく楽しそうにしていた。

その上空。

鳥たちが羽ばたくさらにはるか上を飛ぶ影があった。

一千年前の眠りから目覚めた機械仕掛けの巨体をもつ飛空艇は優雅に空を縦断していく。

機械文明時代に建造されたといわれる飛空艇。

『コンチネルサーカス』と呼ばれるその飛空艇は、召喚士とガードと共にシンに立ち向かい、永遠のナギ説のため貢献したのは人々の記憶にまだ新しい。

高速で移動する飛空艇は、未練なくルカを通過していった。

大通りに並ぶ中に一軒のショップがある。

そこには、雑貨やアクセサリー、武器、そして衣服など、いろんなものが揃えられていた。

道行く人たちは、ディスプレイに並べられている服に目を惹かれ、服を眺める者がいる。

店内は人で賑わっていた。みなが目新しい服を買い求めている。

試着室の前に立つライナーはじっくりとティーダを眺めていた。

「良い感じじゃねぇか!」

ティーダは自らが選んだ新しい服装に身を包んでいた。

右肩から手にかけてマントのような羽織を流している。

「これ、変装でもなんでもないよな?」

自分の格好を見やるティーダ。

ライナーは自信ありげに

「問題ねぇ」

と言うが、ひとつ思うところがあり首を傾げた。

「にしても‥異常な急成長だな。前の寸法が合わないなんて」

「なんか背筋も痛むっス」

大きく背伸びをするティーダ。体の節々の痛みに多少ぎこちない動きになる。

肩口につく髪がかすかに揺れた。

自身の変化にはそれほど違和感を感じていないらしく、とくに気にする様子はない。

横に並ぶとライナーと身長がほぼ等しくなった。

「そうだ」

ライナーは大切なことを思い出し、ポケットに手を突っ込む。

「大事なもん渡しそびれてた」

ポケットから出てきたのは、アルベド族が使用するゴーグルであった。

「受け取れ」

ティーダはそれを見て、アルベド族として参加をするための変装ということを理解し、なるほどと納得する。

ライナーからゴーグルを受け取るティーダ。

「良いか、〝試合″が終わってもルカを出るまではゴーグルを絶対に外すな」

必要以上に念押しするライナー。

聞きながらティーダはゴーグルを首にかけた。

真面目な顔をしてうなづくティーダだったが、ブリッツに出れることへの興奮する気持ちから、すぐに笑顔がこぼれ出してしまう。

どこまで分かっているのやらとライナーは半信半疑で眺めていた。

ふとティーダは神妙な顔をして

「相手は優勝候補で、しかも決勝戦って・・」

少し戸惑うように間ができ、そして

「そんな大事な試合に俺達が出て良いのかよ!?」

逸る気持ちはあったが、本当に自分が試合に出ていいものかライナーに問いかけた。

その質問を受けるライナーは憂いを帯びる。

ため息をつきながら、少しだけ落胆した声をだした。

「前半戦だけで選手に怪我人が続出してんだ」

穏やかじゃないライナーの言葉を聞いて、ティーダから笑顔が消える。

「・・アルベドはどうも好かれなくてよ」

ライナーは、バツが悪そうに喋る。

「スカウトにしろ簡単には代りが見付かんねーの」

「怪我人続出ってのは?」

疑問に思うティーダの問いにライナーの口調が厳しくなる。

「なめてんだよ。本来のブリッツを忘れてやがる」

「・・?」

息を軽く吐き、気持ちを切り替えるライナー。

「とにかくこれで飛機の件もチャラにしてくれんだ!」

ライナーは肩を回しながら、陰気な気持ちを吹き飛ばす。

「試合は最後の〝後半戦" 夜の部だ」

意思の込もった視線をティーダに投げかけた。

「俺達は〝アルベド=サイクス"として出場する」

「うーっス!」

ティーダは威勢良く拳を握り前に突き出し、ジャブをするようなしぐさをする。

「お前は先にトレーニングルームに行っててくれ」

言いながらライナーは歩き出した。

「俺はちょい要件済ましてから向かう」

ライナーは軽く手をあげながら店から出て行く。

その後を続くようにティーダも扉をあけて外へと出る。

ライナーが歩いていったであろう方角を見やると、その背中はすぐに人混みに紛れ、見えなくなった。

ティーダも雑踏に揉まれ始めながら進み出した。

人ごみの中、空を見上げるティーダ。

いつも以上に青く澄み切って晴れ渡る空がそこにはあった。

試合が楽しみな気持ちがそう見えさせるのか。

“嬉しかった。理由はどうあれブリッツが出来る”

ティーダは自分の頬を両手で叩くとスタジアムへ向かった。

海風に髪を洗われながら、颯爽と歩き出す。

 

 

ブリッツスタジアムの正面玄関にあたるメインゲートには大きな鉄格子の門があった。

今はその門は開放され、スタジアムから階段で降りて来る客と、観戦するために登っていく客で賑わっている。

その両脇には数名の警備員が監視、巡回を怠らず行っている。

門の近くにある掲示板には、様々な選手の顔写真、プロフィールが所狭しと張り出されていた。

有名、人気選手ほど貼られているポスターの幅が大きくなってゆく。

そこには群がる人だかりが出来ていた。

ほとんどが女性で人気選手たちに黄色い声援が飛び交っていた。

また露店には様々なファングッズも販売されている。

そこにも若い女の子たちが囲むように群がっていた。

その群がりが越えたところにメインストリートとなる大通りがあり、そこからいくつもの小道が枝分かれし、抜け道として活用されている。

人通りが少ない小道にも賑やかな声は届いてきた。

そこを一人歩くティーダ。

両側を壁に挟まれ日の光はここまで入ってこないので、薄暗くじめっとした雰囲気をともなう。

「そもそもさ・・、トレーニングルームって何処だ・・」

直感を頼りにここまで来たのだが、一向にそれらしきとこにつく気配がない。

左右をきょろきょろ見ながら歩くティーダ。

ティーダの横をお菓子をもった子供たちが走り抜けていく。

ぼんやりとしながら歩くティーダに、ふいに胸のあたりに何かがぶつかり、鈍い衝撃が来た。

「うお」

反動で仰け反るティーダ。

慌てて正面を向くとそこには、甲冑で身を包んだ軽装の男性がよろけていた。

「すまない」

軽装姿の男性は、姿勢をなおしながらティーダに謝罪をする。

「あ、平気っス!こっちこそ」

ティーダもすぐに返事をかえし、軽く頭をさげた。

男性は顔を上げ、そして目を細めた。

「・・?」

ティーダはきょとんとする。

何を話すわけでもなく、しばし見つめ合う二人。

「え?」

ティーダはなぜ男性がずっと見つめてくるか分からずに戸惑う。

どちらかが話すこともなく、気まづい空気が二人の間をはびこっていた。

その沈黙を破ったのはひとつの軽快な足音。

男性の後方から音は近づいてきて、そしてティーダたちのすぐ側で止まる。

そこには若き兵士が立っていた。

兵士は金の装飾が施された兜をかぶっており、目元まで隠れていて表情を読み取ることができない。

「ヴァンマ様!許可が下りました」

駆け寄ってきた若い兵士は、ヴァンマと呼ぶ軽装姿の男性へ報告をする。

「本当か!?・・。〝総卿師″にあいさつへ参る」

「はッ!」

敬礼をする若き兵士。

ヴァンマは流暢(りゅうちょう)な動きでティーダを再び見た。

「失礼・・先を急ぐもので。またの機会に是非」

丁寧な挨拶、そしてお辞儀をするヴァンマ。

最後ににこやかな笑顔を向け、ティーダに背を向けた。

若き兵士はその一部始終を横でみていたが、ヴァンマが歩き出すとともに、後ろを付き従っていく。

「え、・・ぁあ」

ティーダが返事をしたときにはすでに、ヴァンマと若き兵士は歩き出していた。

一人取り残されたティーダは腕を組みながら、考え悩む。

「・・誰だっけ?」

思考を巡らすも、全く心当たりはない。

「お!?居たいた」

声に反応して振り返るティーダ。

そこには手を挙げるライナーがいた。

「ライナー」

ティーダは頬面を崩しながら、すぐにライナーに駆け寄った。

 

 

合流したティーダたちは、トレーニングルームへと向かう。

案内をするライナー。

スタジアム裏口、選手専用の入口から入場し、細長い通路を歩いていく。

通路両脇には、今季のブリッツボールのポスターが綺麗に横一列に貼られていた。

しばらく歩いた後、ライナーはひとつの扉の前でとまった。

その扉をあけると、簡素なつくりの選手控え室が広がっていた。

控え室には、椅子がいくつかとロッカーがあるのみで、あとはフロアの床がだだっ広くあるだけであった。

壁の一面は鏡貼りとなっていて、選手たちが自身のフォームを確認したりしている。

部屋の奥でアルベド=サイクス、チーム選手たちが雑談をしていた。

活気なく静かな雰囲気が部屋の中に蔓延っている。

ティーダたちが入って来たことに気づかないらしく選手たちは何やら真剣に話し合っていた。

ライナーが挨拶をすると、選手たちが振り返る。

チームメンバーの顔に笑顔が灯った。

選手たちは、駆け足で近づいてくる。

部屋の中央にてティーダはアルベド=サイクスらと対面した。

選手たちの興味をもった眼差しがティーダに集まる。

ライナーは、ティーダの肩を軽くたたいた。

「ノトフラムヤラ。モミムダ〝ガキ"ガ!(遅くなったな。こいつが〝ダチ″だ!)」

ライナーはアルベド=サイクスの選手にティーダを紹介した。

ライナーのアルベド語を聞き、目が点になるティーダ。

「すげー、アルベド人みたいだ!?」

ティーダは驚きつつも、ライナーの流暢なアルベド語に感動を覚えていた。

ティーダはライナーに促され、アルベド=サイクスのチーム選手たちが見守る中、正面に立つ。

ティーダは、その場にいるみんなに軽い挨拶をかわし、そしてライナーの方を振り返る。

チームリーダーのエイガーがライナーのもとにやってきた。

エイガーは完全に気落ちしていた様子をみせている。

「ライナー、ヌハラミラ・・。(すまないな・・。)」

それを聞いたライナーは気にとめずに

「シリヌンラコ(気にすんなよ)」

と、軽くエイガーの肩をたたいて笑ってみせた。

力ない笑みを返すエイガー。

「カンヤヨラ、ヌハラミ。(あんたもな、すまない。)」

エイガーは申し訳なさそうにティーダを見る。

「え!?・・っと」

言葉がわからないティーダは返答に困り、助け船を求めるようにライナーをみた。

ライナーは、ティーダにわかるように説明をした。

「こいつら、3年前に〝他のチーム″に悪やってよ。それで次の年は謹慎くらって去年は惨敗に終わった」

「・・3年前?」

ハッとするティーダには、心当たりがあった。

初めてルカを訪れたあの日、ユウナを攫ったあのアルベド族たち。

そのときのメンバーが今ここにいたのだ。

ティーダの記憶に未だ鮮明に残っている。

「イムオヨラミハエニヤ(みっともないまねした)」

エイガーは頭を垂らし、反省した様子をみせる。

しかし、エイガーの瞳と声に力が宿った。

口調が変わる。

「トメゲヨノメヤキ、カメワサハギネリマムケシヤ!!!(それでも俺達、あれから真面目にやって来た!!!)」

エイガーのその言葉の裏には、これまで陰でどれだけ努力をしてきたかが伺えた。

ライナーはエイガーの意図を汲み、ティーダに彼の言葉を伝えた。

「心入れ替えて必死に練習積んで挑んだ試合だ」

ティーダはチームメンバー全員をみる。

「この決勝戦、こいつらにとって・・いや」

ライナーは、そこで一旦言葉を切った。

「?」

喋るのを途中でやめたライナーを不思議そうにみるティーダ。

「アルベド族にとって貴重な試合だ」

再び喋るライナーの言葉に熱がこもる。

「優勝出来たら・・きっと大喜びするだろうな!」

ライナーの優しい笑みにつられ、ティーダも自然と笑顔になる。

「・・?」

しかし、ティーダにはそれが誰のことを言っているのかよくわからなかった。

この一戦が大事な試合ということがわかり、より一層モチベーションがあがった。

「んじゃ、まぁ。さっそく練習あるのみ!」

ティーダはみんなに掛け声をかけた。

それに応じるアルベド=サイクスのメンバーたちは全員で一丸となり手を挙げ、一致団結する。

 

 

スフィアプールを取り囲むように巨大なスタジアムが隣接する。

スタジアムはすでに満席で、座れない人たちは手すりなどにもたれながら決勝後半戦の観戦を待ち望んでいた。

観客たちは前半戦の試合の内容、そして次の後半戦の話題で大いに盛り上がっていた。

遠方から訪れた人も少なくない。

観客席中央席付近に一般の観客席とは別の区画をされ、エボン卿守軍と呼ばれる兵たちの警護によって囲まれている席がある。

卿守軍とは、エボンの中で軍部を管轄する組織で、主に要人の警護を担っている。

卿守軍に囲まれたその席の中央に若い女性が座っていた。

水色と紫の高貴な色合いで整ったエボン高僧が着用する服を着ている。

彼女の服は動きやすいように、他のエボン高僧がきる服よりも生地が薄く体の線に合うように絞られており、関節部分には折れ目がはいっている特別仕様となっていた。

「この席、よーく見える」

女性は正面、スフィアプールを眺めながら、後方にいる僧官の長らしき人物に語りかけた。そこはスフィアプールが一望出来る特別席であった。

長い髪を束ねる髪飾りには、白の真珠がいくつもあしらわれており、輝いていた。

微かに見え隠れする尖った耳はまとまる髪に紛れてその存在を隠しているかのようだ。

切れ長の目と眉は、鋭い印象を与える。

とても静かな眼差しでもう一度スタジアムを見つめた。

女性の投げかけに対し、僧官の長は自信ありげに胸を張る。

「スフィアプールを挟んでいても、試合中選手の顔はもちろん、表情まで緊迫感溢れる試合を体感できると評判の見物席ゆえ」

僧官の長は、この席についての素晴らしさを饒舌に話す。

そして、十分に間をもたせたあとに、待ってましたといわんばかりにこう言った。

「〝ノネ様″に打って付けの場所ですぞ」

ノネと呼ばれた女性は、しかしながら反応は薄い。

僧官の長にたいして一瞥の視線があるのみであった。

僧官の長は予想していた反応とは、あきらかに違う反応が来て、目が点になる。

自分の説明にいささか不足する点があっただろうか、とそんなことを考える。

ノネは今度はあからさまに態度に出した。

「不愉快」

スフィアプールを睨みながら言い放つノネ。

「へ?」

ほうけた顔をし、間抜けな声をあげる僧官の長。

自分が何を言われたのか未だに理解できない。

そしてノネがなぜ怒っているのかも全然分からない。

ため息まじりに、ノネは僧官の長を振り返った。

「よーく見えて。前半戦のあの試合は何!?」

僧官の長の顔色がみるみるうちに引きつっていく。

「〝ルカ=ゴワーズ″の違反・・すぐにでも競技官が問題点として改善すべき事!」

僧官の長の額から大量の汗が滲む。

さらにノネは続けた。

「各地からお越しくださって居る方々に失礼極まりない。ホクヨ師これは儀礼や教えを整備しているあなたの問題でもあるのよ」

ホクヨとよばれた僧官の長は、完全に顔が青ざめていた。

「い、急ぎ競技官に!」

ホクヨがノネに背を向け一目散に駆けだしていく。

ノネはしばらくホクヨを見送っていたが、再び前を向き長い吐息をついた。

空はこんがりと赤く染まり、夜が来るのを今か今かと待ち構えているようだった。

 

 

 

 

しばらくのち、空の色が完全に落ち、夜の世界が幕を開ける。

スタジアム全体をいくつもの照明が照りつけ昼間のような明るさを保っていて、スフィアプールには夜でも見渡せるようにいくつものスポットライトがプールを貫いていた。

観客達は、後半戦が近づくにつれて、期待と興奮で熱気が高まっている。

試合開始の時間が迫ってきた。

電光掲示板に、決勝開始の字幕が浮かび上がる。

観客たちが、わっと歓声をあげる。

《さーーて、いよいよ選手達の登場です!〝後半戦″スタート!》

アナウンスの声で、会場が一気に盛り上がる。

それぞれのチームを応援する声援がどんどん高まっていく。

様々な楽器の音色も声援に紛れて響き始めた。

歓声に埋もれるノネは、しかしながら冷静そのものであった。

この決勝の試合を純粋に楽しむことができず、不正行為に対して汚らわしい気持ちを抱いてしまい、そして期待を一抹も込めずに正面を向いた。

 

 

スフィアプール内に満たされる水。

ティーダはその中を気持ちよさそうに泳ぐ。

久々のブリッツの感覚を肌で感じていた。

この満たされた水の中では、どこまでも上昇していけるし、潜ってもいける。

その場でくるりと回転することや、上下逆さまになることだって容易だ。

スタジアムからの脈動と熱気がここまで伝わってくるかのように、声援が聞こえる。

敵味方それぞれの選手が、それぞれの持ち場、定位置についた。

≪対するは・・〝ルカ=ゴワーズ″VS〝アルベド=サイクス"!》

スタジアムで実況する解説者の声が水中にいるティーダのもとまで届く。

周りの選手たちの緊張感がティーダにひしひしと伝わってきた。

試合前の妙な静けさと、高鳴る緊張感。

不思議と心地よい。

相手側の選手と互いに視線がかち合い、にらみ合う。

ティーダは一人、別の意味で意気揚々としていた。

ブリッツができることにたいして、全身が喜んでいるのがわかった。

ティーダは改めて相手チームを観察しながら

“相手って・・ゴワーズだったのか”

と、心の中で呟く。

ゴワーズたちは、前半戦の試合のこともあって、完全に舐めきった態度をこちらに向けている。

彼らは観客にたいして、過度のアピールをしていた。

アルベド=サイクスには興味がないと言わんばかりに。

ティーダにとってこのチームとは二度目の対戦であった。

前回は、ティーダはビサイド=オーラカの選手として出場していた。

ルカ=ゴワーズはあの時と同じメンバーが揃っている。

ティーダの経験上、相手の実力は申し分ない。

巨大な電光掲示板に決勝戦の開始時間のカウントダウンが始まった。

観客たち全員が残り時間のカウントを叫びだした。

【3】

互いの選手たちの眼圧が増す。いつでも動けるように、身体中が緊張で張り詰めている。

【2】

ライナーは、ティーダを見た。ティーダが嬉々としているのは手に取るようにわかる。ティーダは腰を低くして構えた。

【1】

ティーダの集中力が増していく。周りの雑音が徐々に消えていき、水の揺らめく音だけが、やけに耳につく。

【START!!】

笛の音色が高らかに鳴り響き、開幕決勝の後半戦を告げた。

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