朝起きたら異世界にいた   作:マスターBT

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どうぞー


盟約

主人公SIDE

 

気がつくと戦場に立っていた。

は?えーと、俺はティルフィングを手にとって頭痛に襲われてそれから……

どう考えてもこんな所にいるわけ無いよな?

 

『貴様がこれから見る光景は記録だ 』

 

頭の中にハスキーな女性の声が響く。

記録?疑問に答えてくれた訳では無いようだなとりあえず。

 

「「「「ウォォォォォォ!!!! 」」」」

 

俺の立っている右側から大軍とも呼べる兵士が現れた。

呼応するように左側からも大軍の兵士が現れる。

一つ違ったのは左側の軍勢の大将が握っているのは黄金の装飾がある剣。

どう見てもティルフィングだった。

ティルフィングを持った男は一人で百、千いや万の屍を生み出す。

恐ろしいまでに強い。

しかし、その男の進軍を阻む者がいた。男は進軍を阻む者にティルフィングを奪われ殺された。

其処から見せられる物は過程は違えど、結末は全て同じだった。

ティルフィングを手にした者はティルフィングによって終わる。

 

「……これを俺に見せてどうしたいんだ?ティルフィング 」

 

『ほぅ、この光景を見せられても臆せずものを言えるとは素養はあるようだな 』

 

俺の正面に金髪の紅い目をした女性が現れる。

こいつがティルフィング。魔剣に宿る人格という奴か。

 

「俺はフェンリルを救いたい。その為にお前の力を借りたい 」

 

『ふっ、見たはずだ。私は何かを壊し奪う事は出来ても救う事など出来んぞ 』

 

「そんなものは使う側の責任だ。剣はどんなものであろうと命を絶つものだ。

それを守るものに変えられるかは使い手次第だ 」

 

扱いを間違えればどんな物でも危険は伴う。

その責任は全て使う側の問題だ。

 

『クッハハハハハ!呪いの魔剣に対して使い手を語るか!

なるほど、ヨルムンガンドが私を選ぶ訳だ 』

 

腹を抱えて笑いだすティルフィング。

あれ?結構カッコつけたつもりだったんだけど?

何処か可笑しかっただろうか?

 

『私の使い手達は全て、己の欲望を満たす為に使った。

貴様にそれは無いと言い切れるか? 』

 

欲望があるかどうか?

そんなのもちろんーー

 

「あるに決まってる。人間なんて、そんなものだ。

俺はあの世界で生きる為に力が欲しい。そして、神を殺してフェンリルを救いたい 」

 

『つくづく、面白い道化よ。神殺しを願うか!

その為に願いを叶えれば主人を殺す私を使うと?クッハハハハハ!! 』

 

……なんだろう。こいつから漂ってくる英○王感。

正直言うと俺の方が笑いたい。

 

『ならば、過去の担い手を超えて見せよ!

私を使った人間の中でも最強を用意してやる。精々、抗えよ道化?』

 

金髪の紅い目の女性の姿が消えて、ゴツい男が現れる。

ご丁寧にティルフィングを握って。

あれ?戦う事決定事項なの?

そして、俺に武器は無いんですかーー!!

 

『ふむ。忘れていた。私とマトモに打ち合える剣など存在しない。

此処は私の世界。特別だぞ?私を使うが良い 』

 

そんな声が聞こえて、俺の右手にティルフィングが現れる。

ティルフィングの世界だからティルフィングが二本あってもおかしく無いんだね。

もう考えるのをやめる。

 

「我が名は、ヘルドレイク 」

 

「えーと、俺の名は神月 蓮 」

 

互いに名乗ってティルフィングを構える。

独学の剣術で何処まで戦えるか試させて貰う。

どんっ!そんな効果音を立てて、急接近してくるヘルドレイク。

横薙ぎに押し寄せてくる脅威を側面からティルフィングを当てて、そらす事で対応する。

しかし、思っていたより怪力で力が足りず体が宙に浮いてしまう。

追撃と言わんばかりの速度で振るわれた一撃をティルフィングを盾にして防ぐ。

しかし、空中で踏ん張りがきく訳も無く吹き飛ばされる。

受け身を取って、すぐに立ち上がる。すると、俺の頭があった所にティルフィングが突き刺さる。

 

『言い忘れたが、この世界で死ねば現実の貴様はもう二度と目を覚ます事はない 』

 

愉しそうな声が頭に響く。

此処で死ぬと現実でも死ぬと言うことか。

 

『怖気ついたか?道化 』

 

「死んだらそこで終わり?そんなの現実でも同じだ!

ビビリはしたけど、怖気付く程じゃない 」

 

心臓は物凄く煩いけど!

まぁ、うん。やるだけやろう。死んだらそこ迄の運命だったってことで。

 

「よしっ、仕切り直しだ!来い!」

 

『…ふむ。中々見応えのある道化よ 』

 

とは言っても俺の力量じゃギリギリ捌くのが限界だ。

……そうだ。捌くのが限界なら避ければ良いんじゃね?

距離を詰めて右から振るわれるティルフィングをしゃがんで避けて足払いをする。

体勢を崩したところで、ティルフィングの肢の部分で鳩尾を殴る。

 

「ぐぅ!……… 」

 

呻き声が聞こえる。

うずくまろうと頭が下がってきているので、顎をかちあげる。

今度は回し蹴りの要領で、足を回転させこめかみを蹴りつける。

 

「ぬぅ!」

 

苦し紛れに下から振るわれたティルフィングを避けて、斬りかかろうとしてーー

上から戻ってきたティルフィングをギリギリで防ぐ。

あぶねぇ、完全に相手はやられてるだけだと思い込んでた。

どうするか。俺の力じゃ其の内押し切られるぞ。

さっきみたいに足払いとか出来たら良いんだけど、この圧力をマトモに受けてその行動を取れる自信は無いな。

どう考えても敗色濃厚だ。この世界じゃ、契約したフェンリルの力を借りる事も出来ない。

 

『契約した物の力を使えなければ、この程度か。

興ざめだ。此処で死ぬがよい道化 』

 

更に圧力が上がる。

その重さに片膝をつく。

 

「認めるさ。俺は、お前の言うように道化だろうさ。

だけどな、俺はフェンリルと約束した。

それを果たすまでは死ぬ訳にはいかないんだよ!」

 

急に体から力が溢れ出す。

その力を使い、ヘルドレイクを吹き飛ばす。

 

『ほぉ、意思だけでこの世界に力を引き出したか 』

 

ヘルドレイクに限界の速度で近づき、ティルフィングを叩き落とし首元にこちらのティルフィングを当てる。

 

「俺の勝ちだ 」

 

『なぜ、殺さぬ?ヘルドレイクは貴様を殺そうとした相手だぞ 』

 

「最初に言ったはずだティルフィング。

剣は命を絶つものだ。だけど、何かを守ることに使えるかは使い手次第だと 」

 

だから、ヘルドレイクを殺さない。

試練を越えるべき壁ではあったけど、敵というわけではない。

命を狙われてこの考え方はどうだと思うけど。

 

「……ハハハッ、お前の負けだなティルフィング 」

 

『貴様に口を挟む許可は与えておらんぞ?』

 

「素直に認めろよ。神月 蓮を担い手として認めると 」

 

ヘルドレイクの姿が薄くなっていく。

あれ?どゆこと?

 

「役目が終わったってことだ。ティルフィングは、お前を担い手として認めたという事さ 」

 

『ええい!黙らんか!ヘルドレイク!』

 

「お怒りのようだ。あとはお前らで話をつけてくれ 」

 

肩をすくめて笑いながら消えたヘルドレイク。

何だろう。最初は怖かったけど良い人のようだ。

 

『全く、口の軽い奴だ 』

 

呆れた様子で、ティルフィングの思念体?が現れる。

 

「試練は終わり?」

 

『…鈍いのか、鋭いのかよく分からん奴だな道化 』

 

俺を見ながら、はぁと溜息を吐くティルフィング。

俺の呼び方は道化固定ですか。いや、まぁ認めましたけど。

 

『手を出せ。道化 』

 

「え、なんで?」

 

『良いから、出せ 』

 

逆らってはいけないと本能が判断し、右手を差し出す。

 

『私の名はティルフィング。これよりは、汝の剣となり汝の敵を討ち滅ぼそう。

しかし、忘れるな。汝が邪悪な願いを持った時、私は汝の命を奪う 』

 

そう言って、しゃがみ俺の右手にキスをするティルフィング。

…これって騎士が姫にやる事じゃなかったっけ?逆だよね普通。

俺の意識が遠ざかるのを感じた。

 

『元の世界へ帰るが良い。試練は終了だ 』

 

瞼が重くなっていく。

俺はそれに抗うことをせずに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ、俺は…… 」

 

目を覚ました俺が見たのは、扉を全力で抑えているヨルムンガンドの姿と、ついさっきまで夢の様な世界で話していたティルフィングだった。

………え?

 

「なんで、居るんだ!ティルフィング 」

 

「ふむ。どうやら、貴様はかなり特殊な様だな。

こちら側の世界にこの姿に成れるとは。いやはや、嬉しい誤算だ道化!」

 

周りを見ながら、自分の体を触っているティルフィング。

もう一度よく見る。金髪で紅い目、先程まで話していた奴と同じだろう。

ただ、問題点をあげるのならーー

 

「どうして何も着てないんだ! 」

 

顔を全力で背けて、毛布を投げつける。

 

「ん?そんなに、裸が珍しいか? 」

 

「良いから取り敢えず、それで隠して下さい!お願いします!」

 

刺激が強すぎるので。

彼女が今まで、出来なかった男にはその出るとこ出てて引っ込んでるところは引っ込んでるパーフェクトボディは刺激がありすぎます。

バコンッ!と音を立てて、ヨルムンガンドと扉が飛んでいく。

ん?ヨルムンガンドも?

 

「はぁはぁ、蓮さん!大丈夫……です………か?…… 」

 

吹き飛んだ扉から部屋に入って来たフェンリルが此方を見て固まる。

えーと、俺の方にあるのは、扉の下敷きになってるヨルムンガンドと漸く毛布を拾って体を隠そうとしてるティルフィング。

……あっ

 

「其方の方は、どなたでしょうか?蓮さん 」

 

「あ、えっと 」

 

あまりの迫力に言葉が詰まる。

 

「ニコッ」

 

あ、ダメなやつだこれ。

フェンリルの真っ赤な顔から放たれた素首落としに俺は再び、意識を手放した。

 




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