朝起きたら異世界にいた   作:マスターBT

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お久しぶりですね〜
今回は比較的、長めに書けました。
まぁ、何時もよりと言う言葉が付きますけどw


約束

主人公SIDE

 

夢を見ている。

広い草原を、銀色の毛並みの狼が駆け抜けている夢だ。

その狼に近づく一人の男がいた。彼は、どうやら狼に食べ物を与えている様だった。

狼は、彼に気を許している様に与えられた食べ物を食べていた。

男もそんな狼を優しい顔で見ていた。とても、平和な光景だと思った。

狼が人の姿になる。俺は、それを見て驚いた。

 

「…フェンリル 」

 

人になった狼はフェンリルの姿をしていた。二人は親友と呼べる間柄だったのだろう。

互いに信頼している様に見えた。

視界が歪んで、草原から荒野と変わり、二人の他にも色んな人が現れた。

 

「フェンリルよ。この鎖が切れなければ神々の脅威に成り得ない存在と判断し解放しよう 」

 

「……縛られれば私の自由は無いと?」

 

夢の中とは云え底冷えのするフェンリルの声に驚いた。

 

「いや、我々の力を用い拘束からは解放する 」

 

「………信用できませんね。私を此処に閉じ込めている貴方方の言う事を私が素直に信用すると思っているのですか?」

 

「信用できぬのと言うのなら……テュール!出てこい 」

 

偉そうな髭を蓄えたおっさんが、名前を呼ぶと先ほどの男が出てきた。

テュール。そういう事か。これは、フェンリルが体験した過去を俺は見ているんだ。

なら、この後に起きる事は……

 

「…はい。なんでしょうか?オーディン様 」

 

「フェンリルの口に右腕を入れろ。もし、我々が偽れば噛み切って貰って構わない 」

 

「貴方方は⁉︎ 」

 

「フェンリル、良いんだ。分かりました。右腕を入れます 」

 

テュールが右腕を狼の姿のフェンリルの口に入れる。

 

「テュール…… 」

 

「グレイプニルを着ける。破ってみせろ 」

 

フェンリルの体にグレイプニルが巻き付く。

暴れているがグレイプニルが千切れる気配は無い。

 

「…破れませんね 」

 

「俺の腕を千切ってくれ。君の脅威を神々に知らせる必要がある 」

 

そんなやりとりをしているのが聞こえた。

……でも、何かがおかしい。テュールの表情がおかしい。

フェンリルはテュールの言葉に従い右腕を噛みちぎった。

 

「ぐっ⁉︎ 」

 

しかし、その瞬間フェンリルを縛っているグレイプニルがより強く巻き付いた。

なんだ⁉︎俺が知ってる結末と違うぞ⁉︎

 

「片腕は犠牲にしたが、これでお前を封じられる 」

 

「テュール……私を騙したのですか?… 」

 

フェンリルの姿が見慣れた人の姿になる。

 

「騙した?違うな。元々、こうなるのは計画だった。

俺がお前と仲良くなり、油断させ封じる。これが全ての計画だよ 」

 

テュールが口角を上げて笑う。

俺は無意識に握り拳を作っていた。

そうか。初めて、フェンリルと出会った時の目はこれが理由だったのか。

 

「じゃあな、化け物。そこで大人しくしてるんだな 」

 

テュールと他の神々も姿を消した。

雨が降り出した。

嵐の様に激しく雷も鳴っている。

それでも、フェンリルはその場を動かなかった。

ずっと下を向いて、何かを堪えている。

 

「テュール……何故ですか?私は貴方を友だと信じていたのに………

私が神に牙を剥く狼である可能性があるからですか?…… 」

 

フェンリルに近づいた時にそんな言葉が聞こえた。

俺は手を伸ばしてフェンリルに触れようとしたが、通り抜けてしまった。

 

「……良いでしょう。そうあれと望むのであれば私は、神を喰らう狼となりましょう 」

 

漸く動いたフェンリルの顔は見れた物では無かった。

感情の全てが抜け落ち、虚ろな目をしていた。

 

「アアアアアアアアアアァ!!!!!!! 」

 

フェンリルがあげた遠吠えはとても悲しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はお腹に暖かさを感じて目を覚ました。

夢の内容は鮮明に覚えている。

 

「フェンリル 」

 

お腹が暖かいと思ったら、フェンリルが俺のお腹の上で手を組んで寝ていた。

その寝顔が可愛くて少し見惚れていた。

 

「お主が寝ている間、ずっとそこを動かなかったんじゃ。

起きたらしっかりお礼を言うのじゃぞ?」

 

「うぉ!ヨルムンガンド、居たのか 」

 

「フェンリルの寝顔を眺めるのは勝手じゃが、いない扱いは堪えるのぅ 」

 

うわ〜、全部見られたのか。

と云うか居るなら居るって言えよ。

 

「あまりに主が、いい顔をしておったのでな?邪魔をしては駄目かと思っての 」

 

扇子を開き口元を隠すヨルムンガンド。

考えなくてもわかる。絶対に笑っていやがる。

まぁ、女の子の寝顔を眺めてしまった俺も悪い気がするけど……

 

「……んっ……蓮さん!起きたんですね!」

 

フェンリルが飛び起きて俺を抱き締める。

か、顔にフェンリルの柔らかい感触が……………

 

「そこまでにせい、フェンリル。

蓮を窒息死させるつもりか?」

 

「へ?……はっ!蓮さんごめんなさい!」

 

ヨルムンガンドに注意され凄い勢いで離れるフェンリル。

顔は物凄い真っ赤になっている。

そういう表情をされると俺も恥ずかしいんだけど……

 

「あれ?俺ってどれ位、寝ていたんだ?」

 

「三日程寝ておったぞ 」

 

三日かぁ〜、あれ?そうなると…フェンリルに出された試験期間って1日だけ?

やばくないかそれって?結局、何にもしてないし。

 

「えーと、俺って試験的にどうなったんだ?」

 

「合格ですよ?」

 

フェンリルが何を言ってるんですか?と云う表情で言う。

あれ?俺が可笑しいの?

 

「お主、中々に鈍い奴よな 」

 

ヨルムンガンドに溜息を吐かれる。

その言葉を聞いて、フェンリルがワタワタとしているけど…

 

「あんな、試験を出したフェンリルが合格と認めていなければ、三日間も付きっきりで世話をする訳無いだろうに 」

 

「ヨルムンガンド!」

 

「ん?なんじゃ、お主では言えないであろうから言っておると言うのに 」

 

「余計なお世話ですよ!こういう事に関しては貴女に手伝って貰う必要はありません 」

 

「ほぉ、こういう事の中身を教えて貰いたいのぉ 」

 

「そ、それは…… 」

 

えー、なんだろうこの光景は?

急に口論を始めたと思ったら、フェンリルが顔を赤くしながら俺をチラチラ見てるぞ?

まるで、漫画で見た好きな相手にやる行動みたいじゃないかーー。

 

「…………え? 」

 

いやいや、違うだろう。

フェンリルで過ごした三日間、俺は特に行動を起こした訳では無い。

確かにキスはされたけど、それはあの場を切り抜ける為に必要な力だったからされたんじゃなかったのか?

 

「ふふふ、盛大に勘違いをしておるから、言うてやるぞ蓮。

主の能力である『契約』と『行使』は対象となる魔族に好意を持たれなければ、発動はしない。

まぁ、フェンリルの場合は「ヨルムンガンド?」おっと、これ以上は無理のようじゃな 」

 

楽しそうに笑うヨルムンガンドを捕まえて引きずっていくフェンリル。

部屋には俺一人が取り残される。

 

「んー、俺はフェンリルに好意を持たれているのだろうか?

ヨルムンガンドの言っていた事を纏めればそういう事になるんだろうな 」

 

でも、言いかけたことはなんなんだろう?

フェンリルの場合何かがあるって事だろうか?

そう考えて、頭に浮かんできたのはグレイプニルの存在。

あれは、フェンリルの力を強制的に抑え込んでいる。もし、それが俺との契約にまで影響を及ぼしていたとしたら?

契約した時も、今の契約ではって言い方をしていた。

それは、これ以上の力を引き出す為の契約にはグレイプニルが邪魔をするって意味じゃないんだろうか?

そんな事を考えていたら、扉が開きフェンリルが入ってくる。

 

「全く、ヨルムンガンドの口の軽さには困ります 」

 

「…フェンリル。一つ、聞いても良いか?」

 

「ええ。私に答えられる事なら何でもどうぞ 」

 

フェンリルが近づいてきて、椅子に座る。

 

「グレイプニルを破壊する事は出来ないのか?」

 

「………知っていても教えません。教えたら、蓮さんは無茶をするでしょ?」

 

こういう反応をする時は大概知っている。

アニメでも大体そうだったし。

 

「テュール 」

 

俺の言葉にフェンリルがピクリと反応する。明らかに殺気立っているのを感じる。

フェンリルに嫌われるかもしれない。だけど、彼女を完全に開放するにはこれしかない。

 

「テュールと他の神々、それらを殺せば壊せるのか?」

 

「何故と聞くのはやめておきます。

ですが、力が弱まっているとは言え北欧の神々に勝てるとは思えません 」

 

夢を見た時に違和感を感じた事がフェンリルの言葉で解決した。

なぜ、魔族と人間が暮らしている世界に魔族を封じようとする神々がいるのだろう?そう思っていた。

魔族と人間が対立するきっかけは、俺の様な格好をしていた人間。

それより前に、神は存在していた。そして、恐らくその人間により神の力は弱体化している。

そうじゃ無ければ、縛られ身動きの取れない筈のフェンリルが動けるわけがない。

 

「勝つ。弱くなった北欧の神々に勝てなければ、俺がこの世界に呼ばれた意味がない。

大言壮語なのは自覚している。それでも、俺は勝つと約束する 」

 

「……何が貴方を其処まで駆り立てるのですか?」

 

夢を見たと伝えるのは無理があるな。

 

「そうだな………フェンリルに助けられた恩を返す。その為だ 」

 

「私は、貴方を助けたつもりはありません 」

 

「フェンリルがそう思っていても構わない。俺は、フェンリルに助けられたと感じている。

だから、その恩を返すための行動を起こす 」

 

フェンリルは助けたと思っていなくても構わない。

俺は助けられた。だから、行動を起こす。

この世界でも俺が動く理由は変わらない。

 

「……はぁ。言っても聞きませんね 」

 

「其奴は、頑固じゃからのぉ。心配はするな。妾もついて行こう 」

 

何処からともなくヨルムンガンドが現れる。

 

「良いのか?ヨルムンガンド 」

 

「主が言っておった通り、古の神に勝てぬ様では救世主たりえんからのぅ 」

 

扇子を開き、相変わらず口を隠しながら言うヨルムンガンド。

口隠すの好きだよなぁ。

 

「貴女が誰かの為に動くなんて、嵐でも起きるのですか?」

 

「失礼な奴よのぉ。素直にならん主の代わりに行こうと言っておるのに 」

 

「むぅ。分かりました。ですが、二人に任せっきりと云うのは私が納得が出来ませんので、私も付いて行きます 」

 

「え!でも、危ないんじゃ 」

 

「大丈夫です。もし、私が危なかったら蓮さんが守ってください 」

 

笑顔で言われる。

その顔はずるいなぁ。これで断ったら俺が言った事を否定するじゃないか。

それに、これだけ信頼されてるのを無下には出来ないな。

 

「分かった。フェンリルは俺が守る。約束する 」

 

「妾も守って欲しいのぅ 」

 

「「え?その必要あるの?」」

 

「主ら、存外酷いのぅ〜 」

 

こうして、俺は北欧神話の神々に喧嘩を売ることになった。

 

 

 




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