Log Horizon ―流浪の盗剣士―   作:青龍偃月

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この度は閲覧いただきありがとうございます!
日頃からこういったSSを書いてはいますが、投稿は初めてなのでいろいろと至らない部分があるとは思いますが、最後までご覧いただければと思います。




大災害編
プロローグ―事の発端―


―――気が付くと俺は「そこ」に立っていた―――

 

静かな波の音、検索サイトに載っていた通りのコバルトブルーの海や少し生臭いような潮の香り。

 

さっきまで暗い部屋でモニターを眺めていたはずなのに、少し目を閉じて一呼吸入れる内に世界が変わった。

 

「目の前のモニター」に広がっていた光景が、今自分の「目の前」に存在しているということが、もはや理解することを放棄した俺を襲った。

 

 

 

―2018年5月3日 木曜日 20:16―

たくさんのプレイヤーで賑わうアキバの街で、俺は独り黄昏れていた。

ガラガラのフレンドリストを眺めて、モニターの中に立っている自分の分身の歴史を思い出していた。

 

 

〈エルダー・テイル〉と呼ばれるこの世界(ゲーム)は、サービス開始から20年経った今も世界中で遊ばれているオンラインゲームだ。

「朱音朱雀」と名付けた我が分身が生まれたのは、拡張パック〈夢幻の心臓〉(三年前)が実装されてすぐのことだった。

 

集団行動が苦手だった俺は、オンラインゲームというモニター越しの仮想世界の中でさえ独りだった。

 

誰とも関わらずに独りでレベルを上げて、攻略サイトを見ながら自分だけのビルドを考えて。パーティ向けのダンジョンにも潜って装備探しもやったりしたっけか。

大人数で攻略するためのレイドゾーンにも、独りで挑戦してみたりもした。

 

……結果は聞かない方向で。

 

そうこうしてる内にレベルはカンストして、ソロでできることなんてすぐになくなった。

今更ギルドに入るのもどこか憚られるような気がしたし、カンストを迎えてもずっと独りでやることを探していた。

 

まぁ、今までレイドに参加していなかったせいで自分の持っている装備の内、一番高い等級が〈秘宝級〉の武器が一本に防具が一つだけだから

今活発に行われるレイドのパーティに参加しても、地雷扱いされて○chの晒しスレッドに名が上げられるのがいいオチだっていうのが分かっているからこそなおさら虚しさを加速させるんだけど……。

 

レベル上げも終わり、生産系のこともやる気が起きない今、俺の頭にあるのは一つの結論だった。

 

「引退」。

 

その結論に至ってから、ある一つの野望が頭によぎった。

 

長年冒険をし続けたこの世界(ゲーム)の中で、まだ見ていない部分を見てみたい。

<ハーフガイア・プロジェクト>の再現された広い世界の中にいたのに、俺はまだその一部分しか見ていないんだ。

 

なら、その広い世界の中でまだ誰も見たことのない景色を、俺は引退する前に見つけてこっそりと自分の胸の内に秘めよう。

そしていつか自慢気に高笑いしてやるんだ……。

 

「その景色を見たのはお前が初めてじゃないぜ!!」

 

って感じで、その頃には引退してるんだけども……。

 

 

 

― 22:35 ―

 

思い立ったが吉日というのはよく言ったもので、新たなる目標を設定してからの俺の行動は早かった。

 

手始めに検索サイトを使って手がつけられていなさそうな場所を探った。

ふとモニターの右下に画面を向けると、あと一時間と少しで新しい拡張パックが適用される時間だった。

 

―――なら、いい感じの景色を眺めながらその時を待つのもまた一興かもしれない。

 

そう考えた俺は、今自分の分身がいるアキバの街から近い場所で、どこか景色が良さそうなところを検索し始めた。

 

― 23:10 ―

 

ようやく場所を絞り込めた。現実世界で言うなら小笠原のあたりにある、南島という無人島だ。

泳ぎ慣れている人ならば、少し泳いで崖を登るだけで到達できるというお手軽さに惚れた。

 

…まぁ、海を泳ぎ崖を登るのは仮想世界にいる自分の分身がやるから実際の体力とか経験は関係ないんだけどもさ。

 

場所も決まったことだし、騎乗用モブの馬を笛で呼び出してさっそく移動を開始した。

 

 

 

 

― 23:48 ―

 

仮想世界での移動なんていうのは、わかってはいたが案外地味なものである。

マップを眺めながらマウスをポチポチ押して移動の繰り返し。

 

現実だったらば、体力を浪費して泳がなければならないところも、ただひたすらマウスをぽちぽちと押すだけ。

 

……。

この調子で野望を最後まで達成しきれるのか、正直今からでも心配だ。

 

 

そんなこんなで、ようやく「南島」にたどり着いた俺は、崖から青い海を見渡してみた。

 

新しい拡張パックが適用されるまで、あと十分を切ったところだった。

 

モニター越しの青い海を眺めながら、物思いに耽る。

生まれてから友達のいなかった人生、将来の夢もなく、生きる価値さえ見失いかけていた時に出会った「MMORPG」という世界(ゲーム)

 

その中でさえ、独りで戦い続けた自分の適応力の無さ。

今自分のキャラが立っているこの無人島だって、20年という長い歴史のあるこのゲームのプレイヤー達がすでに散々踏み固めた場所なのかもしれない。

そう考えると、やっぱり自分の考えの無さや甘さがどうしても嫌になる。

 

 

――っていけないいけない、せっかく引退までの野望を抱いたのにこんな事で折れそうになってどうするんだ…。

 

そう自分を鼓舞し、長い時間モニターを眺めて疲れた目を、少し休めるためにそっと目を閉じて深呼吸をする。

 

 

 

 

 

― 23:59 ―

 

明日のバイトは何時からだったか、拡張パックが適用されたらすぐにPCを落として確認しないと……。

早朝からだったら最悪今から寝たらアウトだけど……。

 

 

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