Log Horizon ―流浪の盗剣士―   作:青龍偃月

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第二話 ―大地人とチョウシ―

「ど、どうかなさいましたか?」

 

自分を見て焦る俺の様子を訝しみながら、一応の気遣いを見せる大地人。

 

元々AIで動きを決められていたNPCたちが、AIではなく自分の意志で生きていることがここまで俺を焦らせるとは俺も正直思っていなかった。

とりあえず、このまま無言のまま終わるのも失礼なので取り繕わなくては……。

 

「いや……その……。」

ダメでした。

 

長年の友達ゼロ生活のおかげで、コミュニケーション能力は全く成長していないのだ。

なんならサブ職業を「コミュ障」に変えていいまである……もはや誰得のサブ職だな。

 

「体の調子でも悪いのですか?私はチョウシの行商人なのですが、薬なら今少しだけ在庫がありますよ!」

 

商人魂というのは、どこまでいっても猛々しいものなのだと痛感する。

……繁盛の秘訣ってこういうのを言うんだろうなあ。

 

「あ、いえ。大丈夫です。あまり人に慣れてないものでして……。」

 

苦笑と冷や汗を浮かべながら取り繕うのが今の俺の精一杯だ。許してくれおっさん……。

ん?つーかさっきこのおっさんチョウシの行商って言わなかったか?

 

俺に好意的に話しかけてきてくれたってことは、もしかしたらワンチャンあるのでは!?

 

 

「あの、チョウシの行商人ということはこれからチョウシに戻るのですか?」

 

「ええ、アキバに商売に行ったのですが、なにやら事件でも起こったらしくて商売どころではありませんでしたので……。」

 

確かに、あの状況で商売なんかしてたら混乱した冒険者になにされるかわからないからな……。

一応街の中は戦闘行為禁止区域だから、大丈夫だとは思うけど……。

 

そういえば、戦闘行為禁止ってどこまでが引っかかるんだろう。

武器を抜いて相手に斬りかかると衛兵が出てくるから、武器を抜く行為がアウトなのかな?

 

 

よくわからんけど。

 

 

そんなことより、今はこの荷馬車に乗せてもらってチョウシに連れてって貰うためにどうにか話をつけよう。

記憶を頼りに行くのもできなくはないけど、チョウシに行ったのなんてだいぶ前だからその記憶も信用できるレベルかと聞かれたら正直自信がないのだ。

 

「私もアキバの騒動が嫌でアキバを出てチョウシに向かっていたのですが、もしよければ荷馬車に乗せて連れていってもらっても平気でしょうか?チョウシに行ったことはあるのですが、なにぶんだいぶ昔の事でして……。」

 

「えぇ、全然構いませんよ。荷物が詰まっているので少し狭いですが構いませんか?」

 

「はい!むしろ狭いほうが好きです!」

 

なんとかこれでチョウシに行くことはできそうだ……。

これからの事は、チョウシで宿でも取って考えることにしよう。

 

なお、狭いほうが好きと咄嗟に言い放った時、行商人の顔が少し引きつっていたように見えたのはきっと気のせいだ。

 

……気のせいだ。

 

 

 

―荷馬車に揺られること数日。

行商人の男とはそれなりに打ち解けることができた気がする。慣れれば案外大丈夫なものらしい。

 

行商人の話によると、チョウシの街には宿屋がないようだ…。残念だがテントを建ててしばらくの間野宿で過ごす必要がありそうだ。

それと、チョウシの街はそれほどではないらしいが、一部の街の一部の大地人は俺たち冒険者に対する風当たりが少し強いらしい。

 

この世界がゲームの世界でないとわかった以上、変に行動をして大地人との関係がこじれるのは冒険者側にとってもよろしくないだろう……。

アキバにいる奴らがどうするかはわからないが、俺個人としてはなるべくそこら辺は気を遣っていく方向性でいこう……。

 

それともう一つ。

 

この世界にいても、現実にいた頃と同じように空腹や疲労、眠気は通常通り感じるようだ。

それによる問題が一つ生じてしまっているのが正直悩みどころなのだ。

 

疲労感や眠気は、睡眠を取ることで通常通り癒やすことができる。しかし問題は空腹感にあった……。

 

手持ちの食材でいろいろと試してみたところ、ハンバーガーなどの加工品は味がないモッシャリした何かである事がわかった。

加工する前の材料の段階であれば、普通に味があるのでここらへんがよくわからないところだ。

 

インターフェイスが残っていたり、加工品だけ味がなかったり、変な所だけゲームっぽいのは一体なんなのだろうか……。

 

というか、大地人たちの食生活事情に関してはツッコミ禁止なのだろうか……。

あんなモシャモシャした何かでお腹を満たす生活なんて俺だったら一日もたず気が狂う自信がある。

 

そんなことを考えながら一人憂鬱になっていると、どうやら荷馬車が止まったようだ。

外の景色を見るに、どうやらもう夜が更けている。早めにテントを建てて今日の所は休んでしまおうか。

 

「おーい、朱雀さん。到着したよ。」

 

「お、本当だ。ありがとうジュノさん!」

 

未だにリアルネームとは違う名前で呼ばれるのには少し慣れない感じがするが、これもまぁ慣れるしかないのだろう。

荷馬車から降りて、コミュ障気味の俺をここまで運んでくれた行商人にお礼を言う。

 

運良く人の良い行商人と出会えたおかげで、もしかしたら迷って到達できなかったかもしれないチョウシの街に無事に到着することが出来た。

この街にいる大地人が、全員こんな感じの人達だったらいいな。

 

行商人との数日の旅路で、自分が少し変わったように感じた。

 

誰も知らない「未知」をこの世界で探してみるのもイイかもしれない。

戻れる確証もないんだ、アキバの街にいた奴らみたいに項垂れ続けるよりも前を見て歩いたほうがずっと俺らしい。

 

そんなことを考えながら、邪魔にならなそうな場所にテントを設営し終えた俺は、久々に柔らかい寝袋に包まれて眠った。




コミュ障とはなんだったのか…。
き、きっとこの主人公は人と接してこなかったからコミュ障気味なだけで本来はもっと外交的なんだ、とお思いください(

場面転換が無理矢理な気がしてならない……。
しばらくは朱雀の一人語りが続くと思います。

朱雀がチョウシについたのと同じ時刻ぐらいに、シロエ達がPKに襲われているぐらいの時間設定です。

アニメ見てる時は気にしてませんでしたが、Wikiを見るに戦闘訓練してる時点でもう大災害から何日か経ってたんですね……。
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