「おやおや。此処にいらっしゃいましたか」
廃虚とした倉庫に仮面を付けた男と金髪の少年がいた。
「……あんたか」
フゥ、とひと息ついて寝そべっていた体を起こす。
「随分と可愛がってるみたいですね。ですが、これ以上騒ぎを起こされては、学園都市全体が動きだしますよ?そうなってしまうと、こちらとしては非常に厄介です」
そう思っているのかどうか分からない声量に、少年は怪訝そうにしている。
「そりゃあ悪いな。けど、なんつーか……血が騒ぐって感じで動いちまうんだよ」
その少年の言葉に、男は笑った。素顔は見えないが、少年からしてみればだ。やはり、この刀について知っていて渡した、とそう確信した。
「アンタ、何故俺にコイツを渡したんだ?」
「貴方に渡した……ですか。それは違いますよ」
男の答えに、表情が険しくなる。
「偶々、貴方がこの世界を嘆き、力を欲していた。だからこの刀は貴方の前に姿を現した。たったそれだけの事ですよ」
まるで自分じゃなくてもいい。そんな言い方なのだが、少年はこの刀を手放す事はない。もう、一心同体と言っても良いほどに体に染み込んでいた。この男はそれを把握しているだろう。
「なぁ、コイツは名前あんのか?」
「えぇ。ありますよ」
その血のように紅く、美しく光る刀身。その名は
「紅桜」
それに相応しい名前に少年は笑みをこぼした。
「それと、君にやってもらいたい事があるのですが……よろしいですか?浜面仕上君?」
男が話した内容に少年、浜面はニヤリと唇を歪ませた。
「面白そうじゃん。やってやろうじゃねぇか」
「は?」
「ん?」
「……え」
「おかしいなぁオイ。俺ぁ、家に帰って寝てたはずなんだけど」
辺りは何にもなく、真っ暗な空間。そこに男女四人はいた。
坂田銀時、御坂美琴、垣根帝督、そしてもう一人は
「ムカつく第2位、それに……天下の第1位まで居るとは。殺し合いでもするのかしら」
栗色の髪に大人びた顔つきを持つ少女。
「俺も顔合わせたくないんだけどな。相変わらずムカつくクソアマだなテメェは。なぁ、第4位?」
原子崩し(メルトダウナー)の能力をもつ、麦野沈利がいた。
「それにレベル5が四人か。まぁこの際、手間が省けた。俺が用があるのは……坂田銀時。お前だ」
レベル5が四人、と言う言葉に麦野はちらっとある少女に目を向ける。
「アンタ……!」
「だぁからさー、人に電撃を放つんじゃありません。仮にも第3位なんだろうが、力の使う場所を間違えんなよ。それくれぇわかんだろう?」
「うっ……」
「見てくれはいいと思うよ。そんなツンツンされてちゃ、男どころか……友達できねぇよ?」
「うぅっ……てか、えっ!あ、アタシの事!か、可愛いとかっ思ってるわけ!?」
「まぁ、大人しくしてりゃぁな。銀さんとしては凸凹あったほうが喜んでたけど。なんとかなんないの?」
「結局胸かぁああああっ!!!」
「うおっ!!テメェ!!デレたのは一瞬だけかっ!!ツンツンはもういらねんだよっ!?」
垣根と麦野の会話を聞かずに何かを始めていた。麦野はため息を吐いて「何あれ?」と呟いた。垣根は乾いた笑いで見ていただけだった。
だが、余り長くなるのも癪なので、2人の間に割って入る。
「ちょっと」
「そこまでにしてもらおうか」
そこで、漸く自分達だけではないと状況を飲み込む。
「おぉ。誰かと思えば大串君じゃねぇか。そこのお姉さんは知らねーけど。結構、俺好みじゃん」
「誰が大串だっ!!忘れたと言わせねーぞ……第2位の垣根帝督の顔を」
「私を口説こうって言うの?てか、私はアンタを知ってるわよ天下の第1位様。あぁ。第4位の麦野沈利よ」
名前を間違えられた垣根は顔を引きつらせ、麦野は満更でも無さそうな表情で自己紹介をする。
「アタシは第3位の御坂美琴よ。今思えば、凄いメンツよね」
美琴も名乗り、改めてそう思った。レベル5でその中で上位にいる四人が此処に集まっているのだから恐ろしい。
垣根はコホン、と咳を零して銀時を見る。
「で、だ。俺達をどういう原理で此処に集めたのか知らないが、俺の目的はお前だ。第1位」
鋭い目付きで見つめる彼に、銀時以外は顔を強張らせる。
「今、学園都市で起きている事件を知っているか?」
「んだそりゃあ?それと俺が関連してるってーのか?何も分からねーぞ。俺」
銀時はさも気にせずに、怠そうに見つめる。
垣根は今起きている事を話す。
「無能力者が大量に斬殺される事件だ。容姿からしてお前が関与している可能性は0だ。関与していたら、テメェの妹である心理定規が黙っちゃあいねぇ。つーかなんでアイツに剣術なんか教えた?お前のせいでブチ切れた時のアイツ、半端じゃねーよ。スクールのリーダー俺じゃなくてアイツでいいだろうが……」
後半、妹に対する愚痴に銀時は苦笑するが、今はまず無能力者が無差別に殺されている事は初めて聞かされた。
これには麦野は暗部に所属している為、知っている。美琴もジャッジメントにいる後輩が忙しそうにしているのを問い詰めたので知っている。
「アンタ……何でしらないのよ……」
美琴は銀時の世間知らずか、はたまた興味がなさすぎる態度に呆れていた。
「いやぁ、だってさ。ここちゃん、帰り遅いし。うちには居候がいるしよぉ。気にしてる暇がねーんだよ」
もしかして公園にいた彼女達なのか。美琴は昨日見た2人を思い浮かべる。
「犯人も無能力者で金髪でチンピラ、冴えない風貌らしいが……今だに捕まらねーし。何より不気味なのは、奴が持っている刀だ」
刀。と聞いて銀時は大きく反応した。嘗て、嫌と言うほど共にしてきた武器で馴染みがあるものだから気になってしまった。
「酔狂な話じゃねーか。今じゃ科学に頼ってるっつーのに。侍みてーに刀振舞ってこの世界に反乱起こそうってのか?アナログも侮れねーな」
「科学で出来た物語より、逆にソイツに俺は興味があるね」
「科学の人間で頂点に立つお前が言うセリフじゃないだろ」
垣根の返答はもっともだろう。彼女達2人もそう思ってなりゆきを見ている。だが、銀時はフン、と鼻で笑った。
「俺は科学があろうが魔術があろうが関係ねーのよ。俺は俺のやりてぇようにやる。能力があろうがなかろうが、同じ人間だよ。差別して人の気持ちも気付かねークソみてーなこの世界があるってんなら、この俺が叩き潰してやる」
垣根は順位が一つ違うだけでこんなに差ができるもんなのか、と驚愕して更に坂田銀時と言う人間に興味をまた持ち始める。
「……後、テメーに言わなきゃいけない事がある。これが俺の本題だ」
今はまず聞かないといけないものがある。
「俺と心理定規は、ある男と会った。そしてアイツは、ある言葉にブチ切れして斬りかかったんだ」
「!?」
これには銀時も目を見開いて驚いた。あの心理がそこまでして動かすなんて、その男は何者だと。
「ソイツは犯人を動かした張本人だと見ている。それに俺ですら、震え上がったってーのに……アイツは立ち向かったんだ。銀兄さんをお前なんかに渡さないってな…………なぁ、白夜叉ってなんだ?お前、本当に第1位ってだけの存在なのか?俺には分からないんだよ。明らかにお前が関わってくんだろーが」
「あの男は言ってたぜ?『伝説の白夜叉を復活させる。もしくは殺してこの世界の行く先を見る』ってな」
第2位を震えあがらせて、銀時の妹を激昂させ、ましてや目の前のいる少年の名が挙がっている。
そして聞いていた彼女達は何の話になってきているか把握できていなくて口を開けっぱなしになっている。
坂田銀時と伝説の白夜叉。これが何なのか、銀時以外はこの中では知る余地もない。
「……あー。全くもって面倒な事が起きやがるな」
「心理は喋らねーんだろ?だから俺に聞いてきたか。だが、俺もおいそれと、言うわけにはいかねーんだよ」
「っ!テメー今それどころじゃっ「やぁ。四人とも」」
銀時と垣根が揉め事を起こし始めようとした時にブーンと目の前に現れた何かに硬直した。
大きな培養機に、逆さまになっている者が姿を見せた。
「ここは、君達の脳内だ。そこに私が創り出した空間なのだよ。現実では君達は眠っているはずだ」
「そして、私はアレイスター=クロウリー。学園都市統括理事長だ」
唐突に学園都市のトップが姿を見せた。
まさかのアレイスター!
さてさてどうなるものか