心理と信女は銀時について話していると、信女の携帯がなる。
『信女!!すぐに第7学区に向かうじゃん!!例の犯人が暴れてる!!私らは今到着したところじゃん!!!』
件の紅桜を持った少年が暴れてるとの情報に身を引き締める。
「……状況は?」
黄泉川の声の音量に顔を顰めながらも、冷静に情報を求めた。
『信じられないけど、木刀で白髪の子供が犯人と戦闘してるじゃん……あの子は一体何者なんだ?』
「木刀……?」
黄泉川の信じられない、と言った声に信女は木刀という言葉に反応した。今先程まで、それを使っている人物の話をしていたので、まさかと思った。
「わかった。すぐに向かうわ」
そう伝えると携帯を閉まって心理の方向を見る。
心理は聞こえてなかったのか首を傾げる。
「どうやら紅桜を持った犯人が第7学区に現れたみたい」
内容を知らせるとまさかの緊急事態に顔を引き締める。肝心なリーダーはまだ目を覚まさない。だとしたら、出向けるのは自分だけだ。
「状況は?」
仕事モードに入っている心理に信女はさらに神妙に答えた。
「木刀持った白髪の子が戦っているって」
「っ!?!?!?」
心臓が止まるかと思った。まさか……と思ったが白髪と木刀が当てはまる人物など、1人しかいない。
ましてや、第2位である垣根がこの様なのだ。いくら第1位だろうと危険な事には変わりはないのだから。
信女は静かに彼女の反応を見た後、納得したようにその名を口にした。
「その白髪が……銀なのね?」
心理はピクリとしか反応できない。
「行きましょう……もう、大切な人は失いたくない」
そう言われてハッとした。今井信女は自分の世界で大切な人、つまりは坂田銀時を失ったのだ。だからここにいる銀時まで失ってしまったら彼女は、そして自分はどうなってしまうか考えるとゾッとしてしまう。
2人は互いに頷き、現場へと走りだした。
「……やれやれ。どうやらこれから随分と、忙しくなりそうだね」
その様子を黙って見ていた冥土返しは溜息を吐きながら、これから来るだろう患者の為に準備をし始めた。
「おらぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ガキィイイイン!!!と木刀と紅桜のぶつかり合う音が町中に響いている。
「ははっ。ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
浜面は楽しそうにそれを振り払い、縦、横、左右にと、自由自在にそれを操る。銀時はそれを躱しながらスキを見つけようとするが、中々見つけられない。
(クソッタレがっ!!なんだありゃあ!?体の一部にでもなってんのかっ!?)
浜面が動く度にそれに合わせたように紅桜が働く。まるで浜面と紅桜が一心同体化したような、そんな感触にとらわれて冷や汗を流す。銀時はこのままではマズイと感じて、距離を置こうとする。
だが、それを追撃するかのように紅桜の刀身が銀時に向かって伸びてきた。
「なぁっ!?」
急いで防いだが、反動で吹き飛ばされる。
「大丈夫かお前っ!?」
吹き飛ばされた場所に警備員で武装した女と、その仲間達がいた。
「っ!テメェら死にたくなかったら、早く逃げろっ!!テメェらで如何にかなる相手じゃ、ねぇんだぞっ!!!」
鬼気迫る銀時の表情に恐怖すらいだいた黄泉川だが、自分にも引けない理由がある。
だが、銀時は彼女が何かを言う前に
「ここは俺が何とかするから。オマエらはオマエらの出来る事をしやがれ」
俺を護るだけの仕事じゃねぇだろ。と黄泉川にそう言い放つ。
その後に再度、浜面の元へ突っ込んでいく。
黄泉川は悔しそうに銀時を見て仲間達に指示を出していく。
(私はただ……子供に無茶させたくないだけなのに……なんで)
そんな心中を抱えながら彼女は為すべき事を優先させようとした。
銀時は浜面に対抗しているが、紅桜の圧倒的な戦闘力に押され始めている。
「ほらぁっ!!どうしたぁっ!?白夜叉!!存外、一方通行の能力を使えばもっと面白いんだがなぁ!!こっちは!!」
「ぐっ」
徐々に身体中が傷だらけになっていく。
浜面の言う通りこのままでは最悪、死ぬ事になる。それだけは避けたい。やる事は山程に残しているし、約束もある。
「へっ。テメェなんぞに能力使っちまったら、瞬殺だろうよ」
銀時はそれを一蹴し、能力を使えば浜面など一瞬だと。挑発した。
あくまで能力は使わないと断言したようなものだ。
浜面は更にニンマリとして嗤う。
「なら死ぬしか、ねぇよなぁぁああああっ!!!!」
突っ込んでくる浜面に木刀で防ぐが、今度は木刀が真っ二つに折れて壁まで吹き飛ばされてしまった。
「ごはぁっ!?」
ズルズルと壁にもたれて崩れ落ちる。
さらに時間差でブシッ!!と肩から腹にかけて斬られたのだろう。血が噴き出した。
「こりゃあ……やべっ……!!」
その同時に浜面が銀時の右腹部を突き刺した。
口からも血が噴き出してくる。
「奴らから訊いて楽しみにしてたんだけどよ。アンタの実力はそんなもんなのか?正直、ガッカリだわ」
無表情で、冷たく感情の篭っていない声が響く。銀時は口から血を流し、俯いている。
「もう剣の折れたアンタにゃ、用はない。死んでくれや」
そのまま、横にかっ捌こうとしたが、ガシッと右手で紅桜を掴まれた。
銀時が浜面を見つめてニヤリと笑っている。
(う、動かねぇ……!)
「剣が折れたって?俺の剣は一本だけじゃない……あっちこっちに散らばってるぜ?」
そう言ってやると上から誰かの叫び声が聞こえた。
「銀時ィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
ズバッと斬った音と同時に浜面の右腕が吹き飛んだ。紅桜が地面に落ち、その誰かが着地する。
「うわぁ。右手取れたじゃん。どうしてくれんの?」
血が噴き出しているのを気にせずに左手で紅桜を拾う。
「貴様っ。誰の仲間に手を出したのかわかっておろうな?」
黒髪の長髪を靡かせ、浜面に刀を向けて銀時の前に立つ男は。
「……ヅ、ラ……」
「ヅラじゃない、桂だ」
かつて銀時、高杉と共に過ごし、戦争を駆け抜けた幼馴染みであり戦友でもある、桂小太郎だった。
「くっクククっ。話に聞いていたが、アンタが桂小太郎……か」
紅桜を構えるかと思ったが、鞘に戻した。
「殺り合いたい所……だけど。タイムリミットがきちまったなぁ」
と、シュンと浜面の近くに金髪の白衣を着た男が現れた。
「やーっぱこのリモコン便利だよなぁ!ボタン一つで目的地に行けるなんてよ!」
その声に意識が遠のいていた銀時が目を見開いた。
「な、何で……っ。テメェが……」
「おーっ。久しぶりだねぇ。たらい回しにされてたお前でも覚えてんのか?」
ギャハハっと不気味に嗤う男に銀時は歯を食いしばり、無理やり立ち上がる。
「すげぇっ!!すげぇよっ!!あんだけ血を流しといてまだ立ち上がんのかぁっ!!昔と変わらねータフなクソガキだなぁ……アクセラレータぁっ!いや、ぎーんーとーきくぅん!?」
馬鹿にしたような間延びした言い方に銀時はその男の名を呼ぶ。
「テメェは忘れたくても忘れられねぇよっ!!木原ぁああああっ!!!」
桂の刀を奪い、男、木原に襲いかかるが
「トラップカード発動ってかぁ!!」
浜面が紅桜を抜いてそれを防いだ。
「木原さーん。俺ぁボディガードじゃないんだけど」
フーッ、フーッと息を荒くしている銀時を目の前にしても、余裕の表情でそれを弾き返した。
ボロボロだった銀時は踏み止める事が出来ずにゴロゴロと転がってしまう。
「銀時っ!!」
桂は銀時の元へと走る。
「無様だなぁ……銀時ちゃんよ!!んじゃあ俺達は、そろそろ御暇しますかぁ?虚ちゃんも待ってるしよ」
木原はリモコンのスイッチに手をかけようとした時だった。
「「待ちなさい」」
チャキっと背後から刀を向けられた。
振り向くと2人の女性がいた。
「銀兄に何をしてるの?木原さん?」
「小太郎もいる……」
心理と信女だった。
さらにその背後には、黄泉川達、アンチスキルが控えている。
心理は怒りを全面的に出しており、信女は桂がいる事に少し驚いている。
「おーおー。銀時妹も久しぶりだな。ギャハハハっ!!!お前も暗部なんだろ?ウケる、ウケるわぁっ!!あんなにこのクソガキにべったりだったお前が俺達サイドにいるなんてな!!」
「全部っ!!あんたらのせいでしょうがぁっ!!!!」
木原の言葉に彼女は体を震わせ、持っている刀もカタカタと鳴らしている。
あの時がフラッシュバックしたかのように泣きそうになりながらも木原を睨みつける。
「いいなぁ!!その顔、ゾクゾクするぜぇ!!このクソガキを今すぐにでもぶっ殺して、テメェがどんな顔をするか見てみたいぜ」
まっ、今はそんな時間がねーがなとリモコンをボタンを素早く押した。
「あばよ」
シュン、と木原と浜面と紅桜はリモコンの力により、消えていった。
「銀兄ぃ!!」
心理は涙目を拭い、銀時へと走る。信女は行こうか行かまいか迷っていた。
「ここちゃん……。それにヅラぁ……お前は出来る子だって信じてたよ……」
銀時は弱々しい声を出して意識を失った。
「銀時ィイイイイイイイイイイ!!!!!」
「銀兄ィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
心理と桂の声が学園都市に響き渡った。
次は高杉達の話もあります