今年もどうか、宜しくお願いします!!
コツ、コツ、と誰かが此方に近づくような足音が聞こえてくる。
(あん?つーか真っ暗なんだけど)
それよりも問題なのは、この真っ暗な空間に何故、自分が立っているのかが疑問だった。
そんな事を考える暇もなく、近づく誰かがハッキリと見えてきた時、驚きを隠せなかった。
「よォ」
気軽に声を掛けてきた正体は
自分と同じ声で
身長は自分より低い以外、全く同じ姿をしていたから。
そして、右手には紅桜を持ってニタニタと嗤っていた。
「よーやく逢えたなァ?銀時。ハジメマシテ。お前さんのオリジナルをさせて貰ってる」
その少年は間を置いてから次の言葉は放った。
「一方通行(アクセラレータ)だ。よろしく」
狂気を示すかのような挨拶に銀時は口を開けない。
一方通行は、それを愉快そうに見つめて話を続ける。
「テメェの本体は寝てっからなァ。喋る事は出来ねェだろォよ」
彼は銀時がここでは話せないのを知っている。
銀時は一方通行が話すのをただ聞くしかない。
「あっちでもこっちでも災難だなオマエ。オマエが1人でいれば、拾わなかったりすればよ。傷付く事あるかもしれねェが、傷付ける事はなかっただろうに」
最初から1人なら、問題にはならなかった筈だ。と一方通行は言う。
「オマエみたいのが、何で俺の役目を背負っちまったンだか。まぁ安心しろ。これからは」
ザシュ
といつの間にか彼は銀時の腹部を突き刺していた。
口から血が大量に噴き出す。
「俺がこのイカレタ世界をぶっ壊してやっから。ゆっくり休みな」
さらに悪意に満ちた紅い瞳で見つめて紅桜を引き抜いていく。そして、背を向けて来た道へと引き返していく。
銀時は支えのない場所でその姿をマトモに見れずに、後ろへと倒れていった。
「………はっ!?」
ガバッと起きあがると、近くにはカエル顔の白衣を着た男がいた。
「おや?起きたようだね。随分と魘されていたみたいだけど、大丈夫かい」
「……糖分がこの世から全てなくなったくらいに気分が最悪だよ」
少しは心配されているようだが、ふざけた調子で返してやると、その調子ならそこまで心配はないだろうね。と更ににこやかに返された。
「それに、足元を見てごらん?」
そう言われて漸く気付いた。足元になんか重みがあるのを感じたのはこれか、と納得した。
「じゃあ。僕はこれで失礼するよ」
カエル顔の医者である冥土返しはそう言って、部屋を後にした。
彼は足元で寝息を立てている少女にフッと笑みをこぼした。
そして目元には涙の痕が残っている。いつも触っている髪を撫でるように触る。
「……やっぱり俺の側にはオマエが必ずいるんだよなぁ」
金髪の綺麗に整っている髪を触っている銀時の顔は優しかった。
「俺がオマエを心配するよりも、オマエに心配させちまってんだな」
「ん……」
触れて気持ちよさそうにして心理は眠っていた。
そこで、いきなりガラッと部屋の扉が開かれる音に反応して、心理の髪に手を乗せたままそちらを向くと、刀を腰に差した見知らぬ女性がいた。
ズカズカと部屋に上がり込んで近づく女性に銀時は困惑した。
「え?何??」
「……銀っ!」
目の前まで迫り、ギュっと弾力のある女性の胸を顔面で受け止めた。
「ちょっ!確かに嬉しいけどっ!!苦しっ……て力強っ!?ってか誰だテメェ!?!?」
「銀っ!良かった……生きてて。もう二度と逢えないのかたと思ったわ」
銀と呼ぶ人物なんて1人しか思い浮かばない。それに高杉から訊いた桂、坂本以外のあちら側の行方不明者。
「む、むくろちゃんかぁっ!?!?」
胸に圧迫されつつも、この女性の正体が分かった。
「骸は死んだ。今は今井信女よ」
「分かった。分かったから!いい加減、苦しいんだけど!!胸に圧迫されて死ぬとか笑えないか……ら?」
途中でガシッと頭を掴まれてグイッと強制的に解放された。
誰か掴んだなんて考えなくてもわかる。メキメキと頭が軋む音が聞こえてくる。
「ギャアアアアアアアっ!!!痛いっ!!痛いからぁっ!!銀さん、一応病人だから、もうちっと優しく……」
聞く耳持たず。心理は大声で叫んだ。
「何してんだぁっ!!馬鹿兄貴ィイイイイイイイ!!!!!」
そのまま投げ飛ばされた。その先には
「いや、ここ3階なんだけどぉおおおおおおおお!!!」
窓があり、パリィンと割れて
「あああああぁぁぁぁぁっ………………」
落ちていった。
銀時が病院に運ばれて大分経った頃に高杉達は、もう終わっているとも知らずに銀時の元へと急いでいた。
(ちっ。無事にいやがれっ!銀時!!)
それしか頭にない高杉は冷や汗を流しながら走る。
「待ってください」
「君達にその先に行かれては困るよ」
後ろから女性と男性の声がした。
刀を背に持ち、奇抜な格好をした女性に長身で顔面にバーコードみたいのを付けてタバコを咥えた神父の格好した男性。
「ひっ……!!」
その姿に一番に反応したのはインデックスだった。2人を見た途端に、小さな悲鳴を上げて高杉の右足にしがみつく。
それを見た2人は表情を曇らせる。
しがみつかれた高杉は一瞬、驚くが2人が狙っているのは、間違いなくインデックスだと確信した。
右足にしがみつく彼女を優しく離し、不敵に笑う。
「クックッ。こんな小さいガキ追っ掛けまわして何が楽しいんだぁ?こちとら、遊んでる暇はねぇんだよ」
高杉が放つ殺気は2人だけに向けられただけなのだが。
上条は疎か、美琴も怯んでいた。
「な、なぁ高杉さんて……」
「アンタは何も知らないほうがいいわよ。むしろ知りたくはないと思わないとダメよ」
(これが、銀ちゃんと共に戦った人……)
風斬だけは真っ直ぐに高杉を見つめていた。
「何も話す必要はねぇ。簡単な事だ。この地点で、お互い邪魔な存在には違いねぇんだからな」
刀を抜き、2人に矛先を向ける。話し合いでなどで説得させる余裕などはない。かと言って2人の実力も未知数だ。特にあの女は。と高杉は思っている。
「……彼女を渡すだけで正義になるかもしれないのに?私達にそれでも剣を向けるのですか?」
とてつもない殺気を浴びても女性は口を開く。
フン、何を世迷言を言ってんだと高杉は跳ね返す。
「それがテメェらの正義だとしても、俺はそうは思わねぇ。こいつを見ればわかる」
「だからと言って、ヒーローなんざなるつもりはねぇ。どっちかって言うと悪党だからな俺ぁ」
世界が変わっても過激派攘夷志士で、世界に喧嘩を売ったテロリストには変わりはない。
「悪党が悪党を討つ。実に面白い話だと思わねぇか?」
足に力を込めて狙いを定める。それを見た上条達も戦闘体制に入る。
「ステイル……。どうやら、やるしかないようです」
「そのようだね……神裂」
2人、ステイルと神裂を戦闘体制に入る。その際に高杉は突っ込んできていた。
「「っ!!」」
余りにも速い攻撃に反応が遅れた。
間に合わない!とそう思った時に
ガキィイイイン
刀と刀がぶつかり合う音が響いた。
「高杉っ!!神裂殿とステイル殿も武器を下ろしてくれっ!!」
その間に割って入る者がいた。高杉はよく、その人物を知っている。
「テメェがそいつら側だとはなぁ。俺達の来た理由を忘れた訳じゃねぇよなぁ!?ヅラぁっ!!!」
銀時と自分と共にあの松下村塾で過ごしたもう一人の幼馴染み、桂小太郎だった。
「落ち着けっ……この2人にもそうしなければならなかった理由がある筈だ。それに俺が忘れるわけがなかろう!!!」
刀をなぎ払い、距離を取る。桂は高杉に伝えなければならない事がある。
「銀時がやられた」
そんな衝撃発言に、鈍器で頭を殴られたかのような感覚に陥った。
高杉の後ろにいた連中も、驚愕に満ちた表情だ。
「ぎんときは……?ぎんときが居なくなったら、わたしっ……」
インデックスは錯乱していた。桂はそれを辛そうに見た。
神裂もステイルもインデックスにとってあの白い少年がどれだけ大切な存在になっているか痛感して唖然とする。
「ここの警察のような組織に骸殿もいてな。病院に搬送させた。アイツは滅多な事では死なん。銀時を信じるんだ」
インデックスを落ち着かせると高杉に顔を向ける。
骸。そんな状態の銀時と再会する事になるなんて夢にも思わなかっただろう。
そんな事よりも高杉は桂に睨みつける。
「紅桜の失態は俺の責任だ。俺が片を付ける」
自分が蒔いてしまった種を自分で拾いに行くのが当たり前。
「確かに、アレを産ませたのはお前だ。だからと言ってお前だけの責任にさせる訳にはいかん。銀時を巻き込んだ。それだけで俺は動かなければならない」
「ククっ。そうかい」
高杉はヅラらしいと笑い、ヅラじゃない桂だ。いつものように返す桂。
「お前ら」
「済まぬな。神裂殿、ステイル殿。先に済まさなければならない事がある」
「そのガキと一緒に銀時んとこへ先に行け」
「俺達は」
「「紅桜を殲滅する」」
高杉はインデックス達に。
桂は神裂達に。
そう伝えた後、走って行った。
銀時は病室で寝そべっていた。心理は垣根の様子を見に行ったらしい。
まさか、垣根までもが被害を受けていたとは。
学園都市トップ2がこんな無様とは笑えない。
「んで、むく……信女ちゃんはいつまでいんの?」
銀時が1人だけではない。信女がまだ近くで椅子に腰掛けていた。
「紅桜。あれは対戦艦用機械(からくり)機動兵器として晋助達は改造したもの」
ふぅ、と一息入れて続きを話す。
「晋助はあの人と貴方が居なくなってしまってから、一番世界を憎み、戸惑っていた。 だから気づかなかった。仲間に裏切り者がいたと」
「そして、その裏切り者は貴方は覚えてないのかもしれないけど、あちらは覚えている」
銀時は眉を顰めた。
「もとから高杉に付いていた奴か?」
いいえ。と横に首を振る。
「銀……。貴方に救われた人間が、戦後に晋助の元に行ったのよ」
銀時はこればかりは思い出す事が出来ない。
「はぁ……」
よっこいしょっと体を動かして立ち上がる。
「行くの?」
銀時はガリガリと頭を掻いて
「便所だ。便所」
部屋を出ようとする。
「待って。これ持って行って」
信女は自分の刀を渡した。
「オイオイ。便所だって言ったろうが」
「木刀、今は無いんでしょう?なら、それを使って。終わったら返してくれればいいから」
無理矢理渡された。この女はよくわかっているようだ。銀時は諦めて受け取って部屋を後にした。そして扉を閉めたその先にあるものは。
自分がいつも着ている私服がキチンと畳まれていた。
その上には手紙があった。
『ちゃんと帰ってくるように馬鹿兄貴』
やれやれ、と本格的に参った顔をして歩いていく。
「ホントに、かわいくねぇ女共だ」
「信女さん」
「何?坂田心理」
2人は街を歩く銀時を病院の外から見送っている。
「心理でいいわよ」
「なら信女で」
フフッと笑顔で2人は見えなくなるまで見つめる。
「「本当に、馬鹿な人」」
同時に同じ言葉を吐いた。
また遅くなるかもしれないです