まだ決まってないです……
「ハァッ……ハァッ」
「オーイ。気ィすんだか?」
肩を上下に揺らして息を整え、こちらを睨むまた子に対して、銀時は平然として声をかける。
辺りには銃弾で壁や地面に穴があちこちへと開いていた。
「おー。派手にやってくれたもんだなぁ?ってーか、お前さんは一体誰よ?その名前知ってるみてーだが」
ワザとらしく息を一息ついた後、また子に尋ねる。
「こんのクソガキが……なんでそんなに余裕なんスか。アタシは来島また子っス」
その名前を聞いた銀時は何か引っかかる。
「え?来島ま◯子?オタクらの親はなんで卑劣な名前考えた訳?ってかあれ?これ、前にもやった記憶が……」
「誰が好き好んでま◯子なんてつけるかぁぁぁっ!!!来島また子だっつってんだろうがっ…………え?」
そしてまた子もこのやりとりに覚えがある。
『ま◯子ちゃん?うわっ。オタクらの親って変態なの?娘まで変態にさせたいの?』
『んなわけあるかぁっ!!また子だっつってんの!!』
『こらこら。落ち着くでござる。ま◯子』
『テメェはタダ、それを言いたいだけだろうがぁああああ!!!』
「!!」
あの時の事をフラッシュバックしたまた子は思いっきり目を大きく開けた。
「……本当に、坂田銀時っスか?万斉先輩とアタシを救ってくれた……」
銀時は万斉と言う名前を聞いて思いだしたかのように目を少し細めていた。
「……あー、万斉って少しツンツン頭で抜刀斎みてぇな喋り方してる奴だろ?じゃあ……一緒にいたのはオマエだったのか」
気まずそうにしている彼に対して、また子は銃を2つ共、落としてしまった。
もう会えないと絶望していたのに。
姿も何もかも全然違うのに。この少年から『坂田銀時』の面影がしっかりとあった。
「あ……あぁっ……銀時様……」
目に涙を浮かべて嗚呼を零す彼女に優しく声をかける。
「あのさ、銀時様ってのやめてくんない?せめて銀時とかにしてくんない?小っ恥ずかしいんだけど」
恥ずかしいのか、少し顔を紅くしている銀時に思わず
「悪党面がそんな顔するなんて、何かシュールッスね」
クスっと笑ってしまった。
「ったく。高杉と言い、悪党面は関係ねぇだろうが」
ハァーッと盛大な溜息を吐くも、怒った様子はなかった。
しかし、高杉と聞いてまた子は表情を固くした。
「……晋助様もこちらに?」
また子が声を低くなったのを不思議に思ったのか、銀時は少し怪訝そうにしている。
「あぁ。けど、あんまり喋ってる暇はねぇんだ」
また子の表情も気になったが、今はそれどころではない。
「どういう事ッスか?」
尋ねるまた子に銀時は簡単に説明した。
今、この学園都市で銀時がいた世界の者達が現れ始めており、兵器である紅桜を持ち込んで混沌を招いている事を伝えた。
見回り組の今井信女もこっちに来ていて、高杉が率いる鬼兵隊の誰かが紅桜を奴らに渡したと言う情報も口にする。
すると、彼女は険しい表情でこう言った。
「その……鬼兵隊の誰かってのは……アタシと万斉先輩の事ッス。アタシ達は、ぎ、銀時のいない世界を壊す為にあの人の所に入ったっス。……なのにいつまでも迷ってるので」
「……痺れを切らして行動に移したって訳か」
彼女が言い切る前に銀時が遮った。彼女は頷くと更に続ける。
「アタシらは、あの《春雨》と繋がってるッス」
天人による銀河系最大の犯罪シンジケートと言われる宇宙海賊《春雨》。
薬物や人身売買などと裏の取り引きを行っている犯罪組織。
その春雨が高杉達と繋がっているとは。
銀時を目を見開いたまま驚いている。
それにアレイスターが見せたあの仮面の男を含めて最も疑問に思う事は
(何で俺がこの世界で生きてる事が分かってたんだ?)
銀時が転生してこの世界にいる事を最初に来た奴らが知っていると言う事だ。
(やっぱまだあの変態野郎、何か隠してやがるな)
アレイスターがらみが一番怪しい。銀時は苦虫を潰したような表情で舌打ちをした。
それよりもだ。今は浜面を止めなければならないのが最優先だ。
それに銀時は気付いていた。
(その内に心理達も来るだろうしな。ハッ。どんだけ心配性なんだよ)
刀に発信器らしき物が付いていた事は、敢えて触れなかったのだ。
そんな事するのはやっぱり、心理か信女くらいしか思い当たらないから。
そう考えると自然に口元が緩くなってしまう。
「また子ちゃん」
「はい?」
銀時はまた子が充分な実力者なのは、この数分で理解した。
「また子ちゃんには悪りぃけど、俺ぁ紅桜をぶっ潰しに行くんだわ。俺には此処でも大切なもんが出来た。それに……なんだかんだ言っても、この場所は好きなんだ」
「…………」
銀時は紅桜を破壊すると、
この場所が好きだ、と言う。
また子は黙ってまま銀時を見る。
「もし、また子ちゃんが敵対するってんなら……」
容赦はしない。
槍にでも貫かれるような、いてつく瞳に体の震えが止まらない。
この少年は本気だ。
「……アタシは」
銀時がいない世界は地獄だと。どれほど願っても彼はもう帰ってこない。
けど、別世界で彼を見つけた。姿は違っても中身はほとんど変わらない《坂田銀時》である証拠だ。
「どんな姿だろうと。アタシ……来島また子は坂田銀時について行くッス!!出会った時からそう決めてましたから」
また子の揺るがない決意は疑わなかった。真っ直ぐな目をこちらに向けているだけでも分かった。
「それに万斉先輩も同じ事を言うッスよ」
「そうかい。そりゃあ心強いな」
銀時がまた子の目の前に右手を差し出す。意図を察した彼女もまた、左手を出してがっしりと握手を交わした。
(やっぱり、銀時の手は優しくて温かいっス)
どこもかしも、昔の彼と同じでホッとして柔かになる。
「そういやぁ、万斉君はどこにいるかわかる?」
万斉の居場所を聞かれて首を横に振って答える。
だよなぁ。来たばりだもんなぁ〜など気の抜けた声にまた子はクスっと笑った。
「万斉君よりも……まず先に進まなきゃ話になんねぇし、心理ちゃんや信女ちゃんらも来るだろうし……行くか」
どうせアイツらもいるから何かあっても大丈夫だろうし。
高杉、桂はわかる。信女も強い。
それに坂田心理。
彼女はもう能力いらなくね?というくらい銀時から見ても強い。もうそれはありえないくらい。垣根の話によれば、暴走すれば手に負えないとの事。
それを言うならお前は何なんだ。とツッコミをくらいそうだが。
しかし、高杉達には絶対的な信頼を置いてるからこそ任せられるから安心できる。
銀時はだからこそ、守り抜かなければならない。
そう感じながら前へ進む。
「銀時」
唐突に、後ろからまた子に声を掛けられて振り向く。
だが、また子だけではなかった。
首筋に刀をつけられて冷や汗をかいている彼女と
「て、テメェ……」
「いやぁ、さっきぶりじゃん。白夜叉!!」
ニヤニヤとこちらを見て楽しそうにしている
浜面仕上がいた。
御坂美琴のクローンに連れて来られた場所は、ここでは有名らしい研究所だった。
クローンは桂に担がれていたが落ち着いたのか、もう大丈夫です。と降ろすよう促し、中へと入っていく。
「ここでお前たちは生み出されたのか?」
桂の疑問にこくりと頷く。
「…………」
高杉は何も喋らずに歩き続けている。
ガラスごしに何かがチラッと見えて立ち止まった。
「オイ……あれもテメェらと同じか?」
桂もクローンも、高杉の視線を辿ると唖然とした。
「し、知りません。とミサカは目の前の光景に覚えがないのを報告します」
そこに映っている2人の存在が培養器に入っているのを、このクローンは知らない。
1人は未完全なのか、小さくて幼い姿をして
もう1人は一緒に来たクローンより全体的に大きな姿をしていた。
彼女の反応に嘘はない。
高杉はガラスごしに動いている研究者達はこちらに気づいてないの確認して刀に手をかけた。
「高杉!まさかっ……」
桂がそれに気づいたが
ガシャァアアアアン!!
もう、高杉がガラスをぶった斬った後だった。
そこにいた者達は慌てふためいている。
「なんだねっ!?君達はぁっ!!」
騒ぐ男に高杉は無言で斬り捨てる。
男から大量の血が吹き出して返り血を浴びる高杉に桂以外の全員が悲鳴をあげた。
「ククッ。こいつらじゃあ足りずにまた新しく生み出したか」
表情は少し下を向いている為に、此方からは見えない。
「どうせ、碌でもねぇ事に使って最後は捨てて終わりか?……テメェらはこいつら“人間”を何だと思っていやがる」
“人間”という言葉にクローンは反応した。
「高杉晋助……。ミサカ達は単価18万で創り出された人形「黙れ」……」
「これ以上、くだらねー戯言抜かしてみろ。お前もこいつらと一緒に斬るぞ」
クローンにその見えなかった表情を露わにして睨みつけた。
これから獲物を狩る、まるで修羅の目。
「どれだけ姿が同じのが生まれてこようが、お前と言う人格は1人しかいねぇんだよ。俺たちに助けを求めたのはお前だけしかいないんだよ。だから、もう18万の人形なんて口にすんな」
彼女は震え始め、桂は黙ってそれを見ている。
彼女は考える。この感情はなんなのか。
高杉晋助は人形じゃなく人間と言ってくれた。
もしかしたら、坂田銀時も同じような事を思ってくれていたのだろうか。
「“ミサカ”、お前はまだ死にてぇと思うのか。それとも俺達と共に生きたいのか。答えろ」
クローンではなく、ミサカと言ってくれた高杉に嬉しく思った。
そして、何で助けを求めたのか漸く理解した事を今、感じた自分は馬鹿だと思った。
「ミサカは……まだ、死にたくありません。だから……本当の意味を理解したので、もう一度言わせてください」
ミサカ達を助けてください!!
精一杯の叫びに答えるように彼は
「この場に置いて、処刑人は俺ただ1人。テメェらの墓場はここだよ。良かったなぁ?1人寂しく逝かなくて済むじゃねぇか」
クローンであるミサカにではなく、研究者達に死刑宣告を下した。
「なにを言っている高杉。今から俺も処刑人だ」
高杉の横に刀を構えた桂がいる。
「くっ!刀だからなんだってんだ!!こっちは銃があるんだよっ!!」
男が銃を向けているというのに2人は笑っている。
「愚かな者だ」
「そんなもので」
「「俺達を殺せると思うな」」
そう言って、銃弾が鳴り響く中、高杉と桂は突っ込んだ。
「行くぜぇっ!!!ヅラぁああああっ!!!!!」
「ヅラじゃない、桂だぁあああああああ!!!!!!!」
2人は雄叫びを上げ、銃弾を斬り裂く。そして研究者達をも斬り裂いていく。
「ひっ!?く、くんなぁああああ!!」
銃を放とうとも、それは叶わずに斬られて絶命していく。
ミサカは目の前の惨状に背く事はなかった。研究者の死体ではなく、2人しか見えてなかったのだ、彼女の目には。
2人というか、ほぼ高杉にしか目を当てていなかった。
言葉にして言ってくれた人間と言う二文字。
答えを見つけた時に見せた一瞬の優しい目が忘れられなかった。
さっきのとは違う気持ちにまだ理解は出来ないが、高杉から目が離せなかった。
すると、もう2人以外に誰もいなかった。
そう思っていた。
「この状況は何なのかしら?」
1人の女性が入ってくるまでは。
坂田心理からの爆弾発言に2人は数分も硬直した。
彼女は自分達の素性を看破したから。
「インデックス……と言うより、銀兄から軽く聞いたんだけど……ってあれ?固まってる?」
オーイ?なんて手を目の前で振っていたのも気づいてなかった。
「まぁいーや。貴方達よりも、銀兄だし。私は早く行かないといけないの」
「ブラコ「あぁ?死にてぇのか?垣根ぇ」……ゴメンなさい」
茶化そうとした垣根にどす黒い殺気を纏う心理は首元に刀を当てる。
信女ですら、若干引いているくらいだから余程なのだろう。
「はぁ。リーダーも懲りないわね」
刀を納めると歩いていく。
「ち、ちょっと!!あの2人どうすんのよ!?」
美琴が慌てて叫ぶと
「いいんじゃない?もし敵になるなら斬ればいいし」
「あっ。ここり、待ってー!」
あっけらかんと言い放って歩きだす。それにインデックスがくっ付いて行く。
「まぁ、そうなるだろうな」
「今、ここで斬る?」
肯定する垣根と今にも抜刀しようとする信女。
美琴以外の上条と風斬は完全に空気である。
「ま、待って待って!!あぁ、もう!!何でこんな物騒な奴らしかいないのっ!?それにアンタらは何、傍観してんのじゃああああ!?!?」
「な、何って……なぁ?」
「こ、怖すぎますよぉ。心理さぁん……」
美琴のツッコミに2人は坂田心理に怖れ入る事しか出来なかった。
ようやくここまで来ました笑