セクシーコマンドー外伝 すごいよ‼︎雪乃さん 作:ジョニー03
ー 前回までのあらすじ ー
比企谷八幡は、友達のいないぼっちの子。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿!本当の彼は、天才セクシーコマンドー使いだったのだ!
そんな彼がある日連れてこられた奉仕部という部活。しかし、そこの部長が言うには、この部活は奉仕部兼セクシーコマンドー部らしく……。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「こ、こんな女が……セクシーコマンドーを!?」
「そうよ。何か悪い?」
なんということだろう。ぼっちたる俺がいくら周りのことに無頓着だとはいえ、まさか学年一の有名人である雪ノ下雪乃がセクシーメイト(セクシーコマンドー使い)だとは……。全く知らなかったぞ。
「この子は成績優秀で品行方正、全くもって本校きっての優等生なのだがな……。それと同時に、セクシーコマンドーに拘り続ける問題児でもあるのだ。……まったく、姉共々困らせてくれる……」
平塚先生が頭痛を抑えるように額に手を当てながら言う。
「さて、雪ノ下。実はな、こいつも学年きってのセクシーコマンドー狂なのだよ。作文にセクシーコマンドーの歴史を書いてくるほどにな」
「……それ、本当?」
雪ノ下がピクリと背筋を震わせ、俺に目線を向けてくる。
「……ああ、本当だ。特にセクシー斎様が「熊なんて殺れるかボケ」と涙ながらに告白するシーンは鼻を鳴らさずには書けなかったな。『うっふん白書』はコピー本しか読んだことはないが、いつか原本も読んでみたいもんだ」
「……そう」
雪ノ下は目を閉じて噛みしめるように相槌を打つと、キラキラした目を見開いて怒涛の勢いで話し始めた。
「……私としてはその後の滝を何度も殴ってセクシーコマンドーのヒントを作り出すシーンの方が好きね。絶望に包まれる中、まさにセクシー斎様の人望と願いが生んだ一つの奇跡……。あの農民達がいなければ今の私も無かったのかと思うと、ゾッとするものがあるわ。あぁ、あと、うっふん白書が読みたいなら今度持ってきてあげるわ。確か姉が原本を持っていた筈だから」
「マジで!?日本のどこかにあると言われてはいたが、お前の家族が持っていたのか!!」
「えぇ。昔、父が姉の誕生日プレゼントとしてね。それこそ、姉と私の2人で擦り切れるくらい一緒に読んだものだわ……」
遠くを見るように話す雪ノ下。しかし、どうやらこいつだけでなくこいつの家族もセクシーメイトのようだな……。まあ、日本全国には200万人を超えるセクシーコマンドー使いがいると言うし、意外と身近にいるのかもな、セクシーコマンドー使い。
「……さて、どうやら意気投合したようで何よりだ。ではもう一度聞こう、雪ノ下。彼を入部させてやってくれないか?」
「私としては何も問題ありません。今まで、同年代のセクシーメイトと関わりを持つなんてことはありませんでしたが……。彼のセクシーコマンドーへの愛は、本物な気がします」
「……俺としても問題はないですね……。ずっと一人で技を磨いてくるだけでしたから、ここで他人と切磋琢磨するのも悪くないかもしれない」
「……いや、君達は忘れてるかもしれないが、一応ここ奉仕部でもあるからな……?」
「「そんなのついでです、ついで」」
「いや雪ノ下が言うのは駄目だろう!?」
× × ×
「……さて。入部したからには、今のあなたがどれほどの実力を持っているか測る必要がありそうね。平塚先生の話だと、ほとんど実戦経験はないようだけれど……」
「いや、一応妹とはよくやっていたぞ。……まぁ、逆に言えば妹以外とはやってないんだけどな。もっぱら個人練習ばっかりだよ」
「そう。それはいけないわね。私も人のことはあまり言えないのだけれど、セクシーコマンドーは基本的に相手がいないと成り立たないものだもの」
そう、セクシーコマンドーとは『強制的に相手の隙を作る』格闘技。個人練習では、限界があるのも認めざるを得ない。
「おっと、これは入部早々バトルな流れか?なら、審判は私が勤めよう」
「えっ、平塚先生……?ルール知ってるんですか?」
「こうみえて、学生時代はセクシーコマンドーを嗜んでいてな。まあ、もうずっと昔に引退したから自分で戦うとなると厳しいだろうが……」
なんと。ルールを知っているだけではなく、元セクシーメイトだとは……。
しかしこの人の場合、セクシーコマンドーをしていなくても十分強い気がする。
「では二人とも、用意は良いか?」
平塚先生がどこからともなく紅白の羽根を取り出し、頭に刺す。
「問題ありません」
「こっちもです。セクシーコマンドー使いたるもの、どんな時でもセクシーコマンドーを使えるようにする……。常識ですよ」
俺と雪ノ下は教室内で一定の距離を開けて立ち、だらんと自然体の体制をとる。
「……」
「……」
意識を集中する。隙を突かれないように留意しなければ、セクシーコマンドーの技に簡単に理性を絡め取られてしまう。
「では……」
平塚先生が手を合わせた。
開始の儀式の始まりである。
× × ×
「セクーシーセクシーセーークシーセクシ〜〜〜」
平塚先生が目を閉じ、祈りの言葉を唱える。
「ハニップハニップ ローズガリ パラモセヘッニョ シニシニ ハッタン モ……」
呪文が終わる。平塚先生が両手を鋭く広げた。
「ゲットセッ!!ト」
サクサクサクサク……と、素早く両手をクロスさせ降る。
最後に握りこぶしを顔の横に構え、ググッ……と力を込め……。
「ん〜〜〜ヨォォォ〜イ……スタートゥ!!」
涙を流しながら天高く拳を突き上げ、試合が開始された。
× × ×
「「……!」」
試合が始まったというのに、二人は硬直する。
それは、まずセクシーコマンドーで重要な点に先手を取るか、後手を取るかというものがあるからだ。
基本的にセクシーコマンドーというのは後手の方が有利である。
しかし、そこは日本に広まる格闘技。試合が硬直しないように、先手を取った方にはボーナスポイントが入るようになっているのだ。
(たったの30000ポイントだがな……)
八幡は迷っていた。確かに後手を取った方が有利ではあるのだが、先手を取り相手が技を出す前に決着をつけるという戦法もまたある。
自分がいつも試合をしていた妹は基本的に速攻タイプだったので、こんなことで迷うことは初めての経験だった。
(早速、実戦経験の少なさの弊害が出たか……!)
どうする。先に動くべきか、待つべきか。
そして腹を決め、技の予備動作を行おうとした瞬間……。
「はぁ!!」
雪乃が、動いた。
「……っ!これは!?」
八幡の顔面に投げつけられたのは、雪乃自身が来ていたブレザー。
流石に不意を突かれる事もなく八幡はブレザーを腕で防ぎ、取り去ろうとする。
……瞬間、平塚静は察していた。
(……これは、ブレザーを予備動作代わりに!?)
セクシーコマンドーとは、自らの技を相手に見せるため、目立つような予備動作をするのが基本である。
が、ここで雪乃がやった行動。それは、ブレザーを投げつけることで一瞬だけ相手の視界を封じること。
当然、セクシーコマンドー使いの視界を一瞬だけ封じたところで、攻撃を当てられるわけがない。……しかし、刹那目を奪われた相手は、ブレザーを取り払った後、不意を打たれないため確実に敵の様子を確認せざるを得ないだろう。
……そう、『敵を見ざるを得ない』だろう。
「はぁぁ……!」
平塚だけには見えていた。雪乃がゆっくりと両手を上げ、頭の後ろに回す。
(放キャンか!?)
そして八幡がブレザーを取り払った時……。
「うっふ〜ん♡」
雪乃がパッと顔を上げる。
開かれた両腕の下には、横腹にまで水滴が浮かんでいるほどの濃いシミが……。
「……めっちゃ脇汗かいてるーー!!」ガビーン
「貰ったぁーー!!」
雪乃が八幡へと肉薄し、拳を振り被る。
「『アル・ティ・シミアーーー!!!』」
そして強烈な拳が八幡の顔面に突き刺さった。
「……ふっ。勝負あり、かしら?」
「……っ!いや、浅い!ポイント1億!!」
「なんですって!?」
雪乃が八幡の表情を見る。
彼は、拳を頬に受けながら、余裕綽々の顔をしていた。
先ほどの驚いた声は、平塚静のものである。
「くっ……!」
咄嗟に雪乃が離れるが、既に八幡は予備動作に入っていた。
「はぁぁぁぁ……!」
横に大きく開いた両手をゆっくりと下げ、ズボンのチャックへと添える。
エリーゼの憂鬱。セクシーコマンドーにおける最もポピュラーな基本技である。
(何が出てくる!?鳩か、花か?それとももっと別の……!?)
八幡のチャックが開き、そこから何が飛び足してくる。
……それは、青と白のストライプの布だった。
「こ、これは……布?ハンカチ?……っ!い、いや、これは……!?」
そう、それは人ならば当然常に身につけている布。
パンツである。
そしてそれがチャックから勢いよく飛び出してくるということは、つまり……。
「……めっちゃ勃○してるーーー!!!」ガビーン
雪乃が顔を赤らめながらそれに目を奪われる。
そしてその瞬間、八幡が視界から消え……。
「……はっ!しまっ……!?」
「貰ったぁぁぁぁーーーー!!!」
八幡の拳が空気を唸らせ繰り出される。
「『オル・ゴ・デミーラーー!!!』」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!」
雪乃が吹き飛ばされ、教室の床に仰向けで倒れ伏す。
「……16センチマグナムっ!」ドサァッ
そして静が、高らかに赤の羽根を掲げた。
「一本!赤!!(13億1468万2685ポイント)」
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」
八幡の勝利の雄叫びが、教室内に響く。
× × ×
「まさか、『美少女の脇汗』という一種の下ネタのセクシーコマンドーを逆に利用したセクシーコマンドーを繰り出すとは……。比企谷、見事なカウンターセクシーだ!!」
「ありがとうございます!」
平塚先生がグッと親指を立ててくる。
俺も爽やかにそれに答えた。
「……やられたわ。まさか、私の技を利用されるなんてね……。完敗よ、比企谷。これからもよろしく」
雪ノ下が立ち上がり、右手を差し出してくる。
俺も迷わずそれを強く握った。
…….自然と、笑いが溢れる。
「……ふっ」
「ふふ……」
俺たちは手を離し、お互いに自分の手の平を見た。
……俺の手には、噛んだ後のガムがついていた。
「なるほど、流石はセクシーコマンドー部長ってとこだな」
俺が言うと雪ノ下も可憐に笑う。
「ふふっ……。私も初めてよ。こんなにも……」
「……ウニなのは!」
つづく
── 次回予告 ──
「セクシーコマンドー部ってなに!?」
「セクシーコマンドー部はセクシーコマンドー部だろ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ねぇ、このクッキーってセクシーコマンドーに使えると思わない?」
「なんかかっこいい……」
「君達は奉仕部の方の仕事に対して適当すぎるだろう……」
「俺が本当のクッキーの作り方を教えてやる」
次回、「新しい訪問者」
セクシースタンバイ!