GMという職業が負けるはずがない   作:高橋くるる

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ちょっと次のお話の数話目くらいからは、
掛け合い部分を意識した書き方になると思います。
現在では掛け合い部分よりも、自分視点の体言止めばかりになっており
少し自分でもどうかな~という部分がありますので

書く際に全ての部分で視点を動かして書いてみる予定です。


8 トライアル編 終話

サリスを倒した事によってシェーラ達への不安要素であった、冥界への扉は消えた。

またそれに伴いサリスの魔力によって存在していたモンスター達も術者の消滅により纏めて消え去った。

 

残されたのは辺りには肩で呼吸している人々とサキュバスだけが残っている。

人々の金属装備類の軋む音などが伝わり、それ以外言葉を発する人間は居ない。

街の人々はこれからどうするのかという感じで、こちらを様子見しているような眼差しを向けてきていた。

 

周囲の確認を行い、ゆっくりとリリアに向き直った。

自身にとっては脅威となる対象は居ない。

それに何かあったとしても、サキュバスだけなら先程の戦闘で実力自体はたいした事はないだろうという判断の元、いくらでも対処できるからだ。

 

魔法をかけられていたリリアも例外なく魔力から解放され、複雑な表情でこちらを見ていた。

恐らく先程まで自身の意志とは別と理解して、どうすればいいのか迷っているのだろう。

ただ、まだサキュバスが居る為シェーラ達は警戒を解いていない。

サリスは消えたが緊張した空気はまだ残っているのだ。

それでもいくらかの緊迫感は取れているように感じた。

サキュバスを無視してリリアへと足を向ける。

歩みを進めるが誰も動かず、変わらずに言葉もない。

やがてリリアの前で立ち止まった。

 

「あの……その……」

 

リリアは精一杯言葉を選ぼうとして、どうしたらいいのかわからないような素振りで目を逸らす。

それを見て黙って背中に手を回し右手で頭を胸の中に寄せ子供を包み込むように優しく抱きしめる。

 

「恐かったな。よく耐えた。もう大丈夫だ。」

 

元が小柄なのに、さらに小さくなったように感じた。

リリアは腕の中で震えだし、やがて大きく泣きじゃくった。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「気にするな。みんなわかってる。だから今は好きなだけ泣くといいさ。」

 

リリアを抱きしめる姿を見てシェーラ達はいくらか安心したような視線をこちらに向けていた。

しかしまだ終わりではない。

 

「おい、サキュバス。」

「な!なんですの?」

 

リリアが腕の中で少し震えたのが感じ取れた。

それは恐怖か不安か。当人ではない為に自身ではわからない。

 

「大丈夫だリリア。安心しろ。お前に手は出させないさ。」

 

優しい声で落ち着かせる。

リリアを解放した事で自身もいくらか気持ちが落ち着いた為、背を向けたままサキュバスに声をかけた。

背を向けたままなのでわからなかったが、次は自分の番と思ったのか声には恐怖の感情を抱いているのが色濃く反映されていた。

 

「お前はなんでこんなクソみたいな事をしている?」

「……」

「ここまで実力差を見せ付けられて言わないとはバカなのかお前は。」

「そ、それは……」

「理由があるんだな。」

「……」

 

問いかけに対して返事はなかった。

少し考えれば誰でもわかる。ならば答えは二つだ。その問い掛けに対して言いたくない、又は言えない事となる。

そして命が掛かっている明確な実力差を前に口ごもるという事は消去法的に言いたくないではなく、聞いてほしいが聞かれたらまずい内容と推測できる。

社会人になれば自ずと手に入る腹の探り合いの一つだ。

それならばと質問の内容を変更する。

 

「それはお前にはどうにもできない事か?」

「っ……できませんわ。プレイヤーならばあなたも知っていますでしょ。」

 

何かを言いかけたような息遣いから、言葉を選び直したような答え方をしてきた。

『プレイヤーならばあなたも知っている』という部分が腑に落ちなかったが、今は余計な詮索はしない。

今のような状況でこちらが知らない事がバレた場合、嘘を言われる可能性がある。

もし嘘を言われたとしたら、何が真実で何が嘘かの判断ができなくなるのだ。

相手のいいように誘導され、それを真実と吹き込まれては少しの判断ミスで致命的な結果を招く恐れもあった。だからこそ質問はしない。

 

 

「名前は。」

「シャルル……」

「どこかに住んでいるのか?」

「シルクに……。」

 

怒りで忘れていたがコンソールを使えば名前の確認はできる。

しかしあえて口で質問したのは今はリリアが泣いてくっついている以上、余計な動きで不安を与えたくはなかった。その為に口頭で確認した。

 

「そうか……ならとりあえず今日は帰れ。」

「ダメです!マモルさん!今なら倒せるはずです!生かして帰すのは危険です!」

「そうだよ。もし帰ってまた軍勢を連れて攻めてきたら街に被害が出るんだよ。

次は上手くいくとは限らないんだ。」

 

しかしシャルルというサキュバスからの返事は無く、代わりに茶々丸とシェーラが意気込み、一歩前に出て声をあげた。

いつでも仕掛けれる準備をしているその姿に、他の騎士団や冒険者達も構える。

 

「大丈夫だ。今まで俺の考えが甘かった。今後攻めてきた場合は常に皆殺しをかける。

手加減はしない。一匹たりとも生かして帰さない。

なんなら魔王直々全ての仲間を連れてくるといい。その方がかえって手間がかからず纏めて殺せる。」

 

「いくらマモルさんが強いと言ってもそんな事は不可能です!」

 

茶々丸達を宥めようとするが、やはりというか反感を買う。

一体どうすればいいのか。

 

「茶々丸。信じてもらえないかもしれないが、それができるから言っているんだ。

街にも俺が防御を張る。

それにそこまでこのサキュバスはバカじゃないはずだ。そうだろ?シャルル。」

 

何とか信用してもらうためにGMという事は口にしないが、できる事として事実を口にする。

 

「そうですわね。例え全力で挑んでもサリスを倒される以上ワタクシでは敵いません。

しかし、ワタクシが来なくてもあなたのその力を知らない別の者が来ると思いますの。」

 

「だそうだ。ここは俺に免じて従ってほしい。悪いようにはしない。」

 

「僕はモンスターの事は信用できません。」

 

「ならモンスターの事は信用しなくてもいい。一度でいいから今の俺を信用してほしい。」

 

「しかし……」

 

シャルルは下種と言ってもプレイヤーだ。

ならいくらか話は下手な街の人間よりは通じるだろう。

しかし尚も茶々丸は食い下がる。

 

「申し訳ありませんが、あなたは一体何者ですの?

職業変更ならばまだわかりますわ。

それがサリスの魔法が効かず、先日は騎士と忍者と魔法、今は武闘家と魔法。

こんなデタラメで複合的なものを使う職業なんて聞いた事がありませんの。」

 

シャルルは攻撃されないと安堵したのか、茶々丸との間に割って入って来た。

声に少し余裕ができているようだ。

そしてプレイヤーならば誰もが思っているであろう当たり前の疑問を投げかけてきた。

確かにこんなふざけた能力など一般プレイヤーからするとありえないだろう。

GMだからできる能力だ。

自分が同じプレイヤーのアカウントでプレイしていたならば、もっと別の戦い方をする。しかし、かと言って正直にGMだと言うのもリスクだ。

 

「そうだな。チートというデータ改造で遊んでいたら巻き込まれて今に至る。

それに人間のプレイヤーはもう居ないんだろ。

データを弄ったせいで俺には寿命という概念が当てはまらないんだろう。

だからこそこうして今の姿のままここに居る。」

 

リリスから聞いていた話や、プレイヤーとしてありえる話を複合的に考えて答える。

 

「それならば納得ですわ。

でも、それなら何故あの時に一緒に戦ってくれなかったんですの?」

「あの時はデータを正常に戻せなくて自身でまともに動くことが出来なかったんだ。そこから何とかコンソールを操作してこの力を持ったままデータを修復して動けるようにしたと思えばいい。」

 

あの時という言葉が引っかかるがわからない物に答えようもない。

何があったんだと本心は聞きたかったが、プレイヤーは人間同様に外見はモンスターでも中身は人間だ。

茶々丸達はモンスターとして扱っているようだが、自分からするとどちらも守る対象には変わりない。

下手に刺激してシャルルを殺されても困るのだ。

それならば無駄に今は話をするべきではない。

 

「それならばサリスを倒した事も納得できましたわ。

でも……あなたがあの時居てくれたら状況が変わってたと思うとやりきれませんわ。」

「そうか。とりあえず今日は帰ってくれ。

それと、お前らを許したつもりは無い。帰って仲間に伝えろ。

『今度はこちらの番だ。近い内にシルクへ必ず挨拶しに行く。』

リリア達の受けた借りは俺が返すとな。」

「もし――」

「いいから行け。」

 

何かを言いかけたシャルルの言葉を、重く威圧を効かせた言葉で遮った。

背後から翼が羽ばたく音が聞こえ、徐々に遠くなっていく事だけが感じ取れた。

 

「とりあえず終わったな。」

「でも本当に帰してよかったのかい?それに何かを言いかけてたようじゃないか。」

「ああ。茶々丸には悪いことした。

ただ、正直言って問題はないな。言っただろ?

今度はこちらの番だと。シルクを叩き潰す。その時にでも聞けばいい。」

「本当に出来るんでしょうか?」

「心配するな。こう見えて腕には自信がある。」

 

シェーラの言う通り、聞きたい事はまだまだ多かった。

それに茶々丸の心配もわかる。

しかし、能力的な不利は街の人間やプレイヤーと比べて、個人にとっては一切ない。

口では皆殺しと言ったが、次から攻めてくるなら喋れるスピーカー要因以外は全力で潰す予定だった。

皆殺しにしてしまうとサキュバスのように原因を探る為に何度か来るリスクがあるからだ。

圧倒的な力でねじ伏せ、勝てないと認識させれば命を捨てに来るバカは減るだろう。

それに必要な情報は足を運んで、現地で聞き出してしまえば良かった。

完全な力任せな方法であったが、今できる事はこれだけだと思っている。

もし良案が出て来れば採用して変更していけばいいだけの話だろう。

 

「まぁあれだけの魔法を使うモンスターを、一方的に倒したマー君が言うんだ。マー君がそう言うなら信じるしかないね。」

「マ、マー君?」

「マモルだからマー君、愛称としてはいいんじゃないかい?」

「いや、まぁ、構わないけど、なんか子供みたいな呼び方だな。」

「あはは。おかしな事を言うんだね。マー君も子供だろ。まぁその内慣れるだろうさ。」

「はぁ、、、17歳というのは疲れるな。」

「ほら。子供じゃないか。お姉さんの呼び名に決定だね!」

「はいはい。お任せしますよ。」

 

人が真剣に考えている時にシェーラは左手を腰に当て、自らの顔の横で右手の人様指をピンと立てながら満足したような笑顔を見せていた。

まるでリリアに行った事を同じようにやられるとは何だろうか、このデジャヴ感は……

それに、なんでこう緊張感を直ぐに途切れさすかねー。

この人はあれだ、間違いなく学生の頃にクラスで一人は居た、可愛いけど手がつけられないタイプの自由な女の子だと直感的に感じた。

まともに相手にすると疲れる為、完全に合わせる事を決める。

 

「あの、マモルさん。」

「どうした?茶々丸。」

 

自分の中の完全に電源がオフになった時に茶々丸が真剣な表情で話しかけてきた。

オフになっているのにまた真剣な話題になると精神的に疲れるんですがそれは。

少しは空気を読んでください茶々丸さん。

 

「今の僕の強さ。弱いままじゃ誰も守れません。

だからお願いします。僕を強くしてください。」

 

君はあれだね。それ今必要かな?

ねぇ見て。今リリアちゃん泣いてるんですが。

 

おもいっきり口に出したかったが、純粋な気持ちに水を差す事も躊躇われたので言葉を飲み込み、少し考えてみる。

 

「そうだな。シルクを叩く時に街を空ける。

その時に万が一の可能性があるかもしれないな。

どれくらい出来るかわからないけど、やれるだけやってみよう。

それに確認したい事もある。」

「ありがとうございます!」

「まぁ、持ちつ持たれつでいいんじゃないか?気にするな。」

 

感謝の言葉と共に深く頭を下げる茶々丸にいくらか自分の中で好感度が上がった。

確かに空気は読めないが、礼儀正しさを持ち合わせている少年だ。

だからこそ気にするなという言葉が出た。

 

「それじゃあ私達は帰るとするかね。」

「え、でも――」

「君は真面目か!いいから帰るよ。

みんなも撤収!はいはい!帰ってさっさと残りの仕事をする!

それじゃ、リリアちゃんは任せたよ。二人でゆっくり帰りな。」

「なっ!?――」

両手をパンパン叩き騎士団や冒険者達に促して、茶々丸の肩を掴み引っ張っていく変な気を利かせたシェーラ。

別にそういうつもりじゃなかったが、今更どうこう言う気も起きなかった。

それにシェーラも茶々丸に同じような感覚なようで、それが大学時代を思い出して少し楽しくて真面目に返すのもつまらないと思った。

 

まぁ、いっか。

 

今は大事が無かった事に素直に喜んでおこう。

 

しばらくは撤収の為ガチャガチャしていたが、やがて全員が居なくなりリリアと二人となった。

 

「どうだ?落ち着いたか?」

「うん。」

 

腕の中のリリアへと声をかけると、まだ鼻声であったが落ち着いたようだった。

もう大丈夫かとリリアから手を放してみたが、それでもまだ顔を上げなかった。

黒のシャツが涙で水分を含んでいたのを身体で感じたが、別に時間はある。

特段急がせる事も無かった。

 

「ありがとう……そしてごめん。」

「俺に感謝する必要も謝ってもらうような事もないさ。」

 

リリアの言葉に対して返すと、拒絶したと思ったのだろうか、シャツを更に引っ張り、グッと顔を深く隠したようだ。

元は自分がリリアを傷付け、一人にさせた事が間違いだった。

だからこそリリアはそんなに自分を責める事はないと思っていた。

 

「言ったろ?今回の事はリリアが悪いわけじゃない。」

「……」

 

リリアの三角帽子が顔を隠しすぎて落ちそうになっていた状態だったので、それを取って左手で持ちながら右手で頭を撫で謝った。

 

「顔をあげれるか?」

 

リリアは子供のように顔を埋めながら左右に振る。

 

「泣いているのを見られるのは嫌か?」

 

リリアは黙って顔を上下に振る。

 

「はは。大丈夫だ。リリアはリリアだろ?

それ以上でもそれ以下でもない。少し見せてみろ。」

 

そう言ってリリアの肩を右手で添え、ゆっくりと胸元から放す。

リリアはシャツを掴みながら顔を放すも、こちらを見ずにスンと鼻をすするような仕草を見せた。

そのまま腰を少し曲げ、リリアの顔を覗き込む。

 

「少しだけいいか?」

 

リリアの返事は無かったが、ぐしゃぐしゃになっていた顔を、布とインフィニット・ウォーターを使って優しく拭く。

一緒に朝市に出かけた時とはまるで別人かと思えるくらい、リリアは元気がなかった。

らしくないリリアを見て何か元気づけるものはないかと考えていると思いだした。

 

「あ、そうだ。リリア、ほら。」

 

軽快に指を動かしてコンソールを操作する。

アイテムボックスが空中に現れ、ポンっと目的の品を吐き出した。

吐き出したのは、シェーラの店で買ったプレゼント。

ウンディーネの欠片が入っている小さなピンクのリボンで締められた白いギフトボックスだ。

多少なりとも元気が出ればいいという気持ちだ。

 

「……これは?」

 

シャツから手を放し、受け取ったギフトボックスを不思議そうに見つめている。

 

「ん~、とりあえず開けてみるといいさ。」

 

そう言ってリリアを促す。

リリアはおもむろに右手でリボンを引っ張る。

リボンがほどかれた小さな箱はリリアの手を離れふわりと手を離れ空中に浮かぶ。

こういうところはゲームのままだ。

中からは白い光が四方八方に漏れ出し、それと同時に四方向に箱が開きながら数秒して光の筋が消える。

光の後から現れたそれを見てリリアは驚いた表情をしていた。

 

「あの時はリリアを傷つけて悪かったな。」

 

頭を右手でぽりぽりと掻く。

今自分がどんな顔をしているのかよくわからなかった。

こういうのは基本的に苦手だからだ。

 

「これを私に?」

「ああ。もし気にいらないなら捨てたらいいさ。」

「ううん。ありがとう。」

 

そう言ってリリアはここにきて初めて嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

その笑顔を見て恥ずかしながら多少なりとも異性を意識してしまい赤面してしまう。

 

「それじゃ、リリスのとこに帰るか。」

 

流石に慣れない事はするもんじゃないと思いながら、踵を返し一人さっさと歩き出した。

今のこの顔を見られては恥ずかしい。

しかし、後ろに気配がしなかったので少し歩いてから振り返って確認すると、リリアは腰に着けていた巾着袋に大事そうに仕舞っていた。

それを見て何となく自分も嬉しくなる。

 

「お~い。いくぞ~。」

「うん!」

 

そんな悪くない気持ちを感じながら、リリアは声に反応して元気一杯の声を出し小走りで追いかけてきた。

 

 

 

 

 

 

マモルは気付いていない。一人で前を歩いている。

今自分が握っているのは指輪と一緒に入っていたギフトカードだった。

そこに書かれていたのは何の事もない普通の一言

 

『ごめんな。』

 

恐らく自筆であろう只これだけであった。

ただ、これだけの事でで自身にとっては指輪より嬉しいプレゼントとなった。

指輪とその紙を腰に下げていた巾着袋に大事にしまいこみ、高鳴る胸を抑えながらマモルの横に並んで一緒に歩き出す。

 




これにてトライアル編は終わりです。
次回からシルク編に入りますが、仕事の関係上で相当期間が空きます。
というより、ここからはシルクは手入れしないと残念すぎる内容となっていたので
公開できないレベルなのです。
改めて公開しますので、今しばらくお待ちください。

あと、他にも色々書きたいのがあるんじゃあ!!
でも一つずつ確実にしていくしかないですよね。
頑張ります。
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