「周囲に敵影は」
「いや、全滅だ。やはり只のはぐれ者だったらしい」
私は胸を撫で下ろす。まだこの船には慣れていない、敵が格下だったとはいえ三機を相手に損傷を軽微まで抑えられたのは彼のサポートのお陰だろう
「では予定通り通信を開始する。以前の惑星周囲からの調査で発見された通信基地にアクセスを――」
彼がそう言いつつ船体の通信装備を起動した時に異変は起きた
船の下部から爆発音が鳴り響く、それと同時に前面モニターはその惨状を伝える表示で埋め尽くされた
「ドライブユニットが暴走するだと!」
突然の出来事に脳の理解が追い付くのが数秒遅れたが、非常にまずい状況だと判断する
この船の推進装置であるドライブユニットが使えなくなってしまうと私達は身動きが取れなくなり、宇宙をさまようデブリへ仲間入りせざるを得ない。また完全に暴走してしまうと大爆発を引き起こす危険性もある
「データ入力もキャンセルされるか、この状態だと私が船外に出て作業をするわけにもいかなそうだ」
「こちらからもアイスモジュールで冷却をしているが......時間の問題だな」
実にまずい、このままでは任務遂行はおろか生命維持にさえ陰りが出てきた。しかし他の対策法というと
「......ドライブユニットの破棄」
ドライブユニットの修復が絶望的な今、大爆発を避けるにはこれしかない。だが
「通信機能はダウンしてしまった。ただ捨ててしまえば助けも呼べず、我々はひたすら浮遊するだけになってしまうだろうな」
ということは、切り離した所で助けを呼ぶことは出来ないということだ。連絡が途絶えたことを不審に思い銀河連邦軍が捜索に来るかもしれないが、来たところでここはかなり遠い場所、この無防備な状態で長期間過ごすのは危険過ぎる
そう考えている間にもモニターは悲鳴をあげている、もう私達に余裕は無さそうだ
「とりあえずドライブユニットを切り離す。後の事はそれから考えるしかない」
この発言に彼は反論する
「いや、方法はある。君は上部ハッチから船外に出よ」
......?どういうことだろうか、船外作業をするにはもう時間は無いというのに
「システム側でドライブユニットを切り離した後合図でそれを撃ち抜け、爆風で惑星に突入する。撃ち抜いた後は即座に船内に戻り船のコントロールをせよ。こちらで角度・速度の計算をする」
はたからみると荒唐無稽に思うかもしれない作戦だ、だが彼は状況を冷静に判断しその時々で最善の策を考えついてきた。あの時もそうだったように――だから今もそれが正解なのだと、私は確信した
「異論はないな、レディー?」
「......」
無言のサムズアップ、それだけでいい。彼の作戦を了解しすぐさま行動に移る
「Galactic Federation
宇宙空間に赤熱したユニットが放たれる、そして
「今だ、撃て」
バイザーの目標データに沿って右腕のアームキャノンの狙いをつけ、プラズマビームを放つ。命中を確認する暇は無い、急いで船内に戻り操縦桿を握りしめる
「操舵・攻撃系統システムが失われた今君の腕しか頼れるものはないのだ、ガイドに従って惑星に突入しろ」
慎重に船体を動かし、突入角度を整える
そして船は、その星の中へと侵入した
プロローグ終了
次の章からはシュルク視点に、本格的な物語の始まりとなります。
誰と戦っていたのか、なぜ爆発が起きたのかなどは後々解明されますのでしばらくお待ち下さい。