階段を駆け下りる、実は俺は焦っていた。コロニー9の統率された部隊が苦戦するということは、相手が数で勝っているか、それとも技術力で勝っているか。どちらにせよ、時間がかかるとますます不利になるのが目に見えるようだったからだ
「待って下さいダンバンさん」
コロニーから出ようとすると、誰かに呼び止められた。この声は......リナーダさんか
「どうしたんだ?」
「これを、フィオルンへの治療技術を応用して、ヴァネアと話し合って作った薬です。まだ試作品だから安定はしないとは思いますが、きっと貴方の役に立つかと」
そう言うと、リナーダさんは錠剤の入ったケースを俺に手渡す
「そうか、ありがとう。少し借りていく」
俺はケースを受け取ると足早にポッド発着場へ向かう、効果は後で試してみたらいいだろう
コロニー6のすぐ近くにあるポッド発着場に着いた、俺一人では空を飛ぶポッドの運転は出来ないから、パイロットに話をしなくてはいけない
「緊急事態だ!コロニー9へ今すぐポッドを飛ばしてくれ!」
俺が声をかけると、そこには予想外の人物がいた
「お任せください、私にかかればほんの数分です」
「ああ!頼む――ってミュキシリアさんか?」
何でコロニー6に移住してきたハイエンターのお嬢さんがこんなところに......?
「俺もいるんだぜ」
それとその友達?ペット?のノポンのノポリック、お前もいるのか
「......ポッド運転出来るのか?あんた」
「ええ。ノポリックとの散歩ついでにここに通っていましたら、操作を覚えてしまいました。そして今では立派なポッド運転手の一員です」
本当に変わったお嬢様だな......
「いつもは補欠なんだ、だが今日はメインの人が採掘場の探索に行っちゃったから代わってやってるんだぜ」
「そこにオダマさんから連絡が来たから、こうやって待ち構えてたって訳よ」
ノポリックの説明で分かった。オダマさんは既に連絡を入れてくれていたのか、あの人も流石だな
「そうだったか、それなら話が早い。俺をコロニー9まで連れていってくれ」
「分かりました、少し揺れますがご了承を」
出発前にこっそりとノポリックが俺の耳元で囁く
「......ここだけの話、ミュキシリアが乗せた客からの反応は頗る悪いんだ。早いには早いんだが、とにかく運転が荒い」
「なに、今の状況じゃそれくらいが丁度いいさ。じゃ、行こうか!」
ポッドは宙を飛び、コロニー9へ一直線に向かう
__________
コロニー9 軍事区 正門、そこでは隊長であるヴァンダムが全部隊の指揮を執っていた
「自走砲1号機から3号までは正面口の、4号機から6号機までは居住区の橋に向かえ!避難誘導隊は住民をシェルターに連れていくことを最優先に、迎撃部隊は橋付近に防衛線を張れ!いいか!一歩たりとも街に入れるな!いざとなったら橋を落としても構わん!」
「......一体なんなんだ奴らは、どうして我々を襲ってくる?」
コロニー9 正面口、隊長の命によりコロニーに攻め込ませまいと隊員が奮闘している
「何だ?攻撃が当たっているのにどうして倒れない!?」
副隊長として前線で戦うエミ・リータは敵のしぶとさに目をつける、明らかに有効打が有るにも関わらずすぐ起き上がってくる敵は
「推測だが、奴らは体の表面にシールドの様なものを張ってる。しかもかなり高性能のだ、只の銃ではアレを削るのは時間がかかり過ぎる」
隊員であるルヒオルの推測通りなら、こちらにも対処法はある
「だったら......自走砲1、2、3号機用意はいいな!今だ、撃て!」
副隊長の指令で周囲に轟音が鳴り響く、砲弾は前方にいた敵部隊の中心で炸裂し、相手を吹き飛ばした。
「やったか!?」
「いや......そうでもないみたいですぜ......」
部下であるミラーが爆風の中に見たものは、再び立ち上がってきた敵だった。ただ爆発の衝撃で吹き飛んだだけだったらしい
「これでも倒れないか...しかしシールドはもう使えまい。皆、吹き飛んだ奴を重点的に狙うんだ!」
副隊長の指揮の下、兵士達は火力を集中させる。やはりルヒオルの推論は当たっていたようで、先ほどと比べ形勢はこちらに傾きつつあった。
だが
自走砲砲手「1号機、再発射準備完了です。合図を......あ、アレは!皆、退避――」
そう言ったすぐ後だった。自走砲目掛けて大型のエネルギー弾が飛来、装填作業中であった2号機にも炸裂し一気に二機が爆発した。
爆風でバリケードに叩きつけられ意識が朦朧としながらも、エミは状況を確認する。
「今のは......グレネード・ランチャーの類......?あの右手が変型してる奴......アイツの仕業か......」
そして気づいた
「ミラー!」
「副......隊長......」
ミラーは爆風でバリケードの向こう側に吹き飛ばされていた
「急げ!こちらに戻ってこい!」
「はは......さっきので足をやられて......動けないんです」
「待ってろ!いまそっちに――」
「駄目だ!そんなことをしたら奴らのいい的ですよ!」
ミラーの言う通り、明らかに敵はこちらの様子を伺っている。きっと私が出ていったら蜂の巣にされるに違いない。だが目の前には傷ついたミラーがいる。何とかして助け出そうと手を伸ばす――しかしそれもの伸ばした手も敵に撃ち抜かれてしまう
「がっ!......ぐあああ!」
そして敵は銃口をミラーに向けたままこちらに向かってくる、まさか、ここを突破しようというのか。そんなこと
「副隊長......もうこうなったら橋を落とすしかない......」
「な、なにを!」
「奴らはじきに、ここを突破しようとしてくるでしょう......そうなったら、もう俺達に勝ち目は無くなります」
確かに、橋付近に展開していた部隊は半壊し、自走砲も二機破壊されたこの状況で攻め込まれては、物量に圧されてしまい街への侵入を許してしまうことは明らかだった
「だから......その前に、ここを落とします」
そう言うと、ミラーは手持ちの爆薬を取り出した
「待て!そんなことをしたらお前は!」
「大丈夫です、俺は......まだ生きますよ」
「何を言ってる!そんな身体では、おまえは!」
ミラーが自分もろとも橋を落とそうとしたその時
「疾風刃!」
ぱたり
「雷刃砲脚!」
またぱたり
最前線にいた敵部隊が一人、また一人と倒れてゆく
「い、一体何が......」
「あれは......まさか!」
そう、目の前にいたのは
「まかせろ、すぐに終わらせる」
一人の、男だった
___________
「エミ副隊長殿!今のうちにミラーを頼む!」
この隙にミラーを助け出せるはずだ、エミ副隊長に進言する
「あ......ああ!分かった!」
副隊長はミラーをバリケードの中に引きずっていった
今まで攻勢に回っていたらしい敵部隊――スペースパイレーツ達は一瞬で俺に前線を崩されたことに動揺を隠せないでいたらしい、攻撃の手が完全に止んだ。今なら彼らに聞けるだろうか
「お前ら、どうして俺達の街を襲う!何か理由があるのか!」
俺は、敵全体に向かい叫び問うた、しかし返ってきたのは銃弾......俺は手に持った刀――雲竜風虎刀でそれを切り払いつつ
「問答無用ということか!ならば......戦眼!」
撃たれた方向を鋭い眼光でひたすらに見つめる。相手は挑発と受け取ったのだろうか、左手に装備していたブレードを振り回し数人が一斉に襲いかかってきた
「我が名はダンバン!恐れぬ者は前に出よ!さあ行くぞ!」
俺はそれを迎え撃つように敵陣へ切り込んでいく
「神威息吹ッ!」
精神を集中させることで流れるような剣技を可能にする。集団戦において振りの早さというものは運命を左右させるもの、それが多対一ならなおさらだ。それの極意がこの神威息吹である
敵弾を切り払い、斬りかかる剣をかわし、いなし、神速で太刀を振るい次々と敵を倒していく。苦戦しているのに気づいたのか、居住区側で戦っていたパイレーツ達も俺に向かって来ていた
_________
「誰かが橋の向こうで戦っています!たった一人で!」
兵士の一人の報告を聞いて、隊員であるカンタンは驚いた
「ありゃダンバンじゃないか!」
「え、彼は前にモナドの影響で片腕が不自由なはずですよね、でも今あそこにいる人は両腕を自由に動かしてますよ?」
「いや......間違いない!アイツはダンバンだ、二年前にモナドを振るって機神兵を退けた英雄、ダンバンだよ」
_________
パイレーツ達は全ての戦力をに集中させてきた、一気にカタをつけるつもりのようだ。だったらこっちもやってやろうじゃないか
「少し借りるぜ!」
足下で倒れていたパイレーツからブレードをふんだくり、右手で持ち直す。左手の刀と合わせて二刀流の構えをとる
「天下無双!」
気合いを入れ、身体中のあらゆる筋肉を活性化させる。その気迫は遠くから眺めていた軍隊員達が圧倒されるほど強く、そして勇猛
残されたパイレーツ達が一斉に飛びかかってくる
「今だ!千刃ッ!天翔ォオ!」
両手に持った武器を広げ、周囲を巻き込みながら高速で回転し、天へと昇ることで通常では生み出し得ない波動を発生させることで周囲の敵を一網打尽にする
いつもは一刀だが今回は二刀。効果範囲も二倍に膨れ上がり、敵全体を巻き込む波動の嵐が起こった
嵐が全て止む頃には、辺りは静かになった。これで全部片づいたか――
「後ろだ!ダンバン!」
カンタン殿の言葉で気づいた、俺の数歩後ろでは、僅かに意識を保ったグレネード兵が、自分もろとも目の前の男を爆破しようと俺に銃口を向けていた
「ならば!ヌァッハッ!天雷!」
自らの纏った闘気を波動に変換し、背面の相手にぶつける。一瞬にして押し寄せた波動を自分だけで処理することができず、グレネード兵はそのまま昏倒してしまった。
「ありがとうございます、カンタン殿。後ろの敵に気づかぬとは、私も老いましたかな」
サムスのいっていた通り奴らは手段を選ばないらしい、しかしカンタン殿がいてくれて助かった
「はは、そんなことを言っては我々の立つ瀬がなくなってしまうよ。それに、礼を言うのはこちらの方だ。危うく一人の大事な命を失うところだった」
正面口の方を見てみると、周囲の安全を確認した救護班が隊員の治療に当たっていた。銃撃を受けたミラーも、幸い命に別状は無さそうだった。
「今回は本当に感謝している。色々聞きたいことが有るが......とりあえず後は我々に任せて休んでくれ」
「いえ、そういう訳にもいきません。コロニー6の採掘場も同じような奴らに襲われていて、ライン達が危険な状態なのです」
「それについては大丈夫だ、隊長は戦闘が終わったらすぐに隊員を手配すると言っていたから、今まさに選抜隊を編成している所だろう。俺達もここの処理が終わったらそちらに向かうよ」
「お願いします。私はポッドを待たせてありますので、先にそれで向かいます」
「ああ、なるべく早く行けるよう努力する。そちらも気をつけてくれ」
俺は急いでミュキシリアさんが乗ったポッドを待機させているテフラ坂へと向かった
蘇る英雄 終了。
両腕が戻ったダンバンさんは一度書きたかった。
ゲーム上では、双腕状態になると全ての技が強化される代わりに防御力が低下します、またタレントゲージ(必殺技ゲージ)を消費してこの状態になるのでダンバンの持つ最大の必殺技、桜花乱舞の使用が不可になります。
という妄想設定です。