役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
大丈夫。まだ慌てるような状況ではありません。
紙袋のお陰で私の正体がバレたということは無いはず。
何故か断定口調でしたけど大丈夫なはず。
このまま口八丁で誤魔化――
「廉太さんがそんな格好をしているのを他の人に見られたら私まで恥ずかしい思いをするんだ。早く脱げ」
あ、止めて!!無理やり取らないで!?
……取られました。
揉み合いで小柄な女子高生に負ける私って……。
「ひ、久しぶりですね。麻子ちゃん」
こうなったら何でもない風を装いましょう。
そうでもしないと羞恥心で死ねます。
……でも何で私って事がバレたんでしょうかね?
「全く、こっちに来る時には連絡しろと言っておいたのに。私にだって準備というものがあるんだぞ」
うん。ちょっと待とうか、麻子ちゃん。
おもむろに私の手首を掴んでどこへ行くつもりだい?
「ちょ、ちょっと待ってくませんか、麻子ちゃん。私をどこに連れて行くつもりなんですか?」
え?もしかして警察?
え?もしかして変質者として突き出されてしまうんですか?私?
「愚問だな。私の家に決まっている。廉太さんが来てくれればお母さんも喜ぶ」
「そ、そのお気持ちは嬉しいのですが……」
良かった……警察では無いようです。
しかし、私は今傷心中。
何もかもを忘れるために部屋で大人しく眠りたいのですが……。
「来てくれないのか?」
そんな捨てられた子犬みたいな目で私を見ないで!!
はぁ……断れないじゃないですか。
「……では、少しだけお邪魔します」
「あぁ、そうしてくれ」
全く、ずいぶんとなつかれましたね。麻子ちゃんにも。
彼女との付き合いは偶然と奇跡が重なって、原作では彼女が小学生の時に交通事故で亡くなっていた両親を助けてからでしたね。
両親と言ってもお母さんだけですが。
よくいるようなヒーローみたいにお父さんも助けられればよかったのですが……私にはそこまでの力はありませんでした。
それにダンプカーに引かれそうになっていたご両親を突き飛ばしたため、私も交通事故に巻き込まれ死の縁をさ迷いましたし。
まぁ……原作介入が過ぎる気もしますが――そんなモノ麻子ちゃんが悲しむ事に比べたら屁でもないです!!
私は女の子の涙なんぞ見たくもないんです!!
見たいのは花が咲いたような笑顔なんですから!!
「……?どうしたんだ、廉太さん?」
「あぁ、いえ。何でもありませんよ。さぁ、行きましょう」
「ッ!?い、いきなり頭を撫でるな!!」
ハッハッハッ、頭を撫でてあげたら顔を赤くして照れていますよ。
うぶですねぇ〜可愛いですねぇ〜。
「私だってもう大人――ッ……」
あれ?手首を引かれているのが少し歩きにくいので手を繋いだら俯いてしまいました。
何ででしょう?
それにしても……私には兄妹が居ないのですが、もしも妹がいたらこんな感じなんですかね。
あっ…………犬のフン踏んだ。
何故でしょう。やっぱり原作キャラと一緒にいると不幸な目に合います。
神様の嫌がらせなんでしょうか?