役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜   作:トマホーク

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劇場版に向けて

とうとう始まりました。

 

大洗女子学園対黒森峰女学園という運命の一戦、歴史に刻まれる第63回戦車道全国高校生大会の決勝戦が。

 

……本当なら生で試合を見るつもりだったのですが、残念ながら予想外の事態が発生したために私は直接見る事が出来なくなってしまいました。

 

予想外の事態――準決勝の結果を見て危機感を抱いた高島君が上を丸め込み、万が一に備えて劇場版であったように大洗の廃校時期を早めてしまったので。

 

あぁ……頭が痛い。

 

私が自発的に廃校時期を早める事をしない代わりに修正力を受けた上が廃校時期を早めろと言ってくるのだろうと勝手に考えて、その対策をしていたら高島君が廃校時期を早めてしまうという。

 

予想外にも程があります。

 

というかこれでみほちゃん達が負ける事があれば我々は彼女達に対して凄まじく酷い仕打ちをしなければいけないというね。

 

全く、とんだキラーパスですよ。

 

まぁ、そんな訳で……今現在、私は大洗の廃校時期を早める書類を製作している傍ら、テレビで試合の様子を見ています。

 

ちなみに。

 

『勝手な事をして本当に申し訳ありません。しかし全ては局長の事を思えばこそなのです。それに……ここで局長を失う事があれば他の学園艦の生徒達はどうなるのです?上の連中が私利私欲のために無理のある統合や廃校を推進する中で否を唱え、当事者の生徒達が納得出来る形で事を収められるのは貴方だけなんです。貴方が居なくなってしまったら本当に歯止めが効かなくなってしまいます。ですから……今回の件、大洗は残念ですが犠牲になってもらいます』

 

と高島君から謝罪と説得を受けましたが、ここでも私に対する過大評価が……。

 

はぁ……何にせよこれで劇場版に進むのは確定となりました。

 

……どんな顔をしてみほちゃん達に廃校になる+時期が早くなったと告げに行けばいいのやら。

 

『――黒森峰女学園のフラッグ車、行動不能!!よって大洗女子学園の勝利!!』

 

歴史的快挙を遂げた大洗の偉業にテレビ画面の向こうが大いに沸き立っています。

 

しかし、試合の途中途中に気になったのですが黒森峰の砲撃が原作よりも激しかったような気が。

 

やはりまほちゃんの気合いの入れ具合の違いによるものなので――え?

 

そんなのってアリですか?

 

……え〜最後の最後でまほちゃんの執念を見せ付けられたような形になりました。

 

大洗の勝利が決定した直後、Ⅳ号戦車の白旗が上がるというハプニング?が発生。

 

あぁ、本当に危なかったです。

 

あと少し勝利宣言が遅れていたら引き分けという結末もあり得たかもしれません。恐るべし、まほちゃんの執念。

 

しかし……なんですね。画面の向こう側と違ってこちら側ではお通夜のような空気が漂っています。

 

「そ、そんな……バカな……黒森峰が負け……た?あの戦力差で……?」

 

まぁ、その空気を出しているのは主に高島君なんですが。

 

うん?電話が……って、まさか!?みほちゃんからですか!?

 

ほっ……良かった。違う番号です。しかし、これはまた厄介な相手から電話が来ましたね……。

 

「はい、もしもし」

 

『あぁ、辻君かね。ワシだ、牟田だ。君にちょっと確認したい事があってな』

 

確証が無いために断言は出来ませんが、今回の件を裏で主導したであろう人物――文部科学大臣の牟田正志議員から直々の電話……嫌な予感がビンビンにします。

 

「はい、何でしょうか?」

 

『“君が”主導してやっている大洗の廃校についてなのだが……進捗はどうだね。順調に進んでいるのかね?』

 

よくもまぁ、抜け抜けと……。

 

分かりきっていた事ですが牟田大臣の言葉からして、大洗の廃校で何か問題があれば私に全責任を擦り付ける気マンマンですね。

 

で、成功した時は私に昇進という餌を与えておいて自分は苦労せずにありつけた美味しい利権を貪るつもり……と。

 

「ご安心下さい。その件でしたら順調に進んでおります」

 

忌々しい事に今はまだ社会人として例えやりたくない仕事だろうとやらないといけませんからね。

 

文句の付けようがない程度にはこなしています。

 

『そうか、それは良かった。実は何やら良からぬ噂を聞いたんでな。何でも君がこの計画を頓挫させようとしているとか。所詮は取るに足らん噂だったか。ガハハハッ』

 

「アハハハッ……」

 

なるほど釘刺しの電話ですか。

 

『ワシとしては有能な君達を失いたくはないのでな。噂とはいえ少し心配だったのだよ』

 

うん?君達?あれ?

 

「あの、大臣?君達というのは……」

 

『うん?あぁ、君と君の所の副局長の女性だよ。君は責任者だから当然だが、副局長の彼女の進言で計画を繰り上げたのだから、それが失敗した場合にはもちろん彼女にも責任を取ってもらわねばなるまい。おっと、そろそろ次の予定があるのでな失礼するよ。では』

 

「……」

 

これはやられましたね……。

 

私が現状で意図的に廃校を阻止すれば責任問題が高島君にまで及んで彼女を巻き添えにしてしまいます。

 

はぁ……結局は原作通りの役回りを行わないといけないんですね。

 

となれば書類に少し手を加えて発案者を高島君に、そして実行責任者を私にするしかありません。

 

後は根回しをして高島君の責任の部分を私に被せてしまえば何とか……。

 

ふぅ。仕事がまた増えてしまいましたね。残念ながらしばらくは激務が続きそうです。


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