役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜   作:トマホーク

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この話から、原作と少し異なる流れでストーリーが進んでいくので(大筋は変わりませんが)ちょっと粗が目立つかもしれません。
(;´д`)


ブレイカー高島

はぁ……学園艦の廃校についての住人説明会はやはり慣れる物ではありません。

 

まぁ、後の事が保証されているとは言え仕事も家も失う事になる住人の方々の立場からしたらあの反応は普通なんですけどね。

 

しかし……今回の説明会はこれ以上ないぐらいにヤバかったです。

 

何しろ廃校撤回を匂わせ条件を満たしたと思ったら……廃校決定&廃校時期繰り上げ&突然の通知&明日退艦しろ……これでキレないはずがない。

 

特に廃校撤回を目指して戦っていた生徒――戦車道を選択していた子達の父兄(学園艦在住)のキレ具合と言ったらそれはもう……。

 

ちなみにその中でも優花里ちゃんのお父さんが一番怖かったです。

 

いや、他の方達のように怒鳴ってきた訳では無いのですが……。

 

あの風貌が……ヤザを連想させて……無言でずっと睨まれているのがキツかったです。

 

というか、本来の私はこれをどうやって乗り越えたのでしょうかね?

 

権力でごり押し?うーん。私には無理ですね。

 

「……申し訳ありませんでした。局長」

 

「いきなりどうしたんです?高島君」

 

「その……本当だったら私が説明会で矢面に立たなければいけなかったのに結局……局長に大変な所だけを押し付けてしまって……」

 

あぁ、その事でしたか。高島君にはまだあの罵詈雑言の嵐は厳しいでしょうからね。

 

どのみち私がやるつもりでしたし気にしなくていいのに。

 

「気にしなくていいんですよ。さ、次に行きましょう」

 

「……はい」

 

さぁて、ここからが私にとっての本番です。心は持つかな?

 

「今……何と?」

 

「ですから、8月31日付けで大洗の廃校が決定しました。また廃校に基づき学園艦は解体となります」

 

エキシビションマッチの後、温泉に入っていた杏ちゃんを呼び出し高島君と共に大洗の廃校が決定した事を伝えていますが……住人説明会で受けた罵詈雑言の嵐よりも彼女の愕然としている表情の方が心が痛みます。

 

「それは……どういうことですか?我々は貴方の言葉通りに戦車道大会で優勝したはずです。大会で優勝すれば廃校は撤回――」

 

「あれは確約ではありませんし、ましてや正式に取り決めた訳でもありません。加えて言えば、あれは存続を検討しても良いという意味です」

 

我ながらこのよく回る口を叩き潰したくなりますね。

 

しかし、廃校撤回を現実のモノにするため己に課せられた役目は果たさねば。

 

それが例え悪役であろうと。

 

「そん…な……」

 

「何か質問は?」

 

「……ありません」

 

何故杏ちゃんにこんな失意に満ちた表情をさせねばいけないんでしょうか。

 

はぁ……心が痛い。しかし、これでまだ始まったばかりとか……胃に穴が空きそうです。

 

「そうですか。では廃校が完了するまではこちらの指示に従って行動を」

 

「分かり……ました」

 

あぁ、チクショウ!!こんな憔悴しきった杏ちゃんなんか見ていられません。

 

しかし、諸悪の根源(手先?)である私が彼女にしてあげられる事は何もないという。

 

歯痒いにも程がありますよ。

 

「……」

 

……さて、所変わって大洗女子学園の正門前にやって来ました。

 

あぁ、原作通りにみほちゃん達が居ます。

 

帰りたい……でも帰れない……。

 

はぁ、心底嫌ですが……“役人”をやりますか。

 

「そういう事を言ってる場合じゃないよー!!」

 

「君達、勝手に入っては困るよ」

 

背後にいる私の声で一斉に振り向いた子達が私と高島君を見て怪訝な表情を浮かべて(みほちゃん、麻子ちゃん、優花里ちゃんの3人を除く)います。

 

「え?おじさ――」

 

「あ、あの!!私達はここの生徒です」

 

みほちゃんが私に声を掛けようとしましたが桃ちゃんの言葉に遮られてしまいました。

 

これが修正力……!!

 

「もう君達は生徒ではない」

 

「廉――」

 

「それは――」

 

「どういうことですか!?」

 

今度は麻子ちゃんと優花里ちゃんが私の言葉の意味を問い質そうとしたのでしょうが、そど子ちゃんの言葉に遮られてしまっています。

 

「君から説明しておきたまえ」

 

修正力って凄い……。

 

さて、役目を終えた私は原作通りにさっさと退場しましょうか。

 

みほちゃん達に捕まる前に。

 

しかし……この後のやり取りで私はみほちゃん達の信用を完全に失い嫌われる事になるのでしょうね……あぁ、鬱です。

 

「……」

 

「畏まりました」

 

……え?ちょっと待って下さい。

 

杏ちゃんが無言なのはいいんですけど、何で高島君が返事するんですか?

 

え?何で私の後に着いて来ないんですか?

 

いやいやいや、この場に来る時に高島君が自然に同行していたから若干あれ?って思っていましたけど……。

 

まさかのイレギュラー発生?いや、この程度のイレギュラーならリカバリーは可能なはず!!

 

私が高島君に声を掛けて連れ帰ればいいだけの話――……あ、ダメです。

 

チラッと振り返ったら高島君がやる気に満ち満ちています。

 

これはあれです。先の説明会での失態を挽回しようと意気込んでいる感じです。

 

仮に私が帰りますよ。とか声を掛けたとしても私にお任せ下さい。とか言われて連れ帰れないヤツです。

 

ま、まぁ、廃校になったと説明するだけですから大丈夫でしょう。

 

いざとなれば修正力が働くでしょうし。大丈夫、大丈夫。

 

「おじさん!!ちょっと待って下さい!!」

 

「廉太さん!!」

 

「待って欲しいであります、廉太さん!!」

 

「貴女達!!どこへ行くつもりですか!?今から話す事は貴女達にとって重要な話なんですよ。――あっ、こら!!どうして局長を追いかけようとするんですか!!私の話を聞きなさい!!」

 

「会長!!一体どういう事なんですか、会長!!」

 

「会長!!」

 

大丈夫と言ったそばから何やら背後がカオスな事になってるぅ!!

 

しかし、ここで私が足を止めると余計にカオスになってしまう!!

 

それに今みほちゃん達に捕まってしまえば全てを話してしまう気がしてなりません。

 

そんな事になったら廃校撤回にどんな悪影響が出てくるか……。

 

ここは黙って撤退した方がマシですね。という訳で撤退です。


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