役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
あぁ……遂にやって来てしまいました。
大洗女子学園に、引いては角谷杏ちゃん達に廃校を伝える時が。
戦車道の世界大会開催のため(本音は世界大会を開催する事で発生する利益のため)に経営が厳しくなりつつある大洗女子学園を潰して必要な資金や資材を確保しようとする上の考えも分からなくはないですが……。
何故、上の人達は廃校の手続きを裏で勝手に進めてしまっているんですかね?
学園艦教育局長という役職の私にも話を通さずに。
いきなり廃校の決定を伝える書類が回ってきた時には思わず椅子からひっくり返りましたよ。
えぇ、そうなんです。
この時点で文部科学省は大洗女子学園を廃校にする事を既に決定しております。
つまりですね、原作で私が大洗女子学園を執拗に廃校にしようとしていたのにはそういう裏があったんですよ。
もう廃校手続きやら学園艦解体を専門とする業者(癒着でベッタベタ)への依頼やらの関係で大洗女子学園を廃校にしないと実質的な責任者――私が廃校を決めた訳でもないのに知らぬ間に私が発起人という事にされていますし、功罪……主に罪の部分だけ私が背負わねばなりません――である私の首がブッツリ飛ぶんですよね。
逆に大洗女子学園を上手く廃校にすれば、一気にかなりの昇進が出来るという状態。
そりゃあ原作の私が色々と無茶をやる訳です。
……はぁぁ、気が重い。
まぁ、しょうがないですね。
これも原作のため(運命)だと思って私の役割を果たしますか。
「失礼します、局長。彼女達をお連れしました」
「通して下さい」
あぁ、ちなみに今部屋の外から声を掛けてくれたのは高島レミ君。
ポニーテールの髪型にリボンを付けている若い女性です。
原作では戦車道大会の副審を務めている女性なのですが……何がどうなったのか私の部下になっています。
非常に有能で部下としては最高なのですが……なんというか……頭が固くて、いらんことしいなんですよね。
とまぁ、余談はさておき。
ここへ何故呼ばれたのかを理解していない杏ちゃんや小山柚子ちゃん、河嶋桃ちゃんに大洗女子学園が廃校になる旨を通達しますか。
「廃校!?」
「学園艦は維持費も運営費もかかりますので、全体数を見直し統廃合する事に決定しました。特に成果の無い学校から廃止します」
うごぉ……クールフェイスを保つので必死です。
そして胃が痛い。
「つまり私達の学校が無くなるということですか!?」
「納得出来ない!!」
「今納得出来なかったとしても今年度中に納得して頂ければこちらとしては結構です」
我ながら酷い奴ですね。
「じゃあ、来年度には……」
「はい」
まぁ、なんやかんやあって廃校にはならないんですけどね。
というか、させません。
「急すぎるッ!!」
「大洗女子学園は近年生徒数も減少していますし、目立った活動もありません。昔は戦車道が盛んだったようですが……」
さぁ、杏ちゃんよ。
このセリフに食い付くのです。
「ほぁ……じゃあ、戦車道やろっか」
「「えぇっ!?」」
「戦車道をですか!?」
「まさか、優勝校を廃校にはしないよねぇ〜」
かかった!!
「万が一そのような事があれば、廃校の件は一考の余地があります。まぁ、無理な話でしょうが」
「それはやってみないと分からないんじゃないかなぁ?とりあえずウチは戦車道やるから。そう言う事で、じゃ。行くよ、2人――」
「少しお待ちを。――戦車道をやるというのであればこちらの書類をどうぞ」
「……なにこれ?」
「戦車道を行う事で発生する助成金等の事が記された書類とそれらを申請する書類です。これは貴女方の役に立つでしょう」
おーい、何でそんな親切を?見たいな怪訝な顔で私を見ないでくれませんかね。
「ん、そういう事ならありがたく頂いとくよ。じゃあ、そういう事で〜」
「えぇ、影ながら応援していますよ」
だから、そんな顔で見ないで。
……あぁ、さっきまでとギャップが有りすぎて困惑しているんですね。
いいじゃないですか、頑張ろうとする高校生を応援したって。