役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜   作:トマホーク

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試合の果てに

『――大洗女子学園の勝利ッ!!』

 

……遂に決着がつきましたか。

 

いやはやこの世に生を受け40幾余年。私の全てを賭けて待ち望んだこの時、この瞬間。

 

終わってみると……案外あっさりしていますね。

 

もっとこう感動したり感慨深い気持ちになったり達成感を味わったりするのかと思っていましたけど、そんな事も無かったです。

 

……まぁ、結果こそ原作と同じになったものの、試合途中の展開が原作とかなり違っていたという事が影響しているんでしょう。

 

何せパーシング3輌を相手に大立ち回りをやってみせたミカ君達のBT-42の損傷が軽微でカール戦直後までは自走可能(最終的には本隊と合流する直前にエンジントラブルでリタイアしましたが)だったり。

 

遊園地跡の南門に居た囮のパーシング3輌をまほちゃんが瞬殺していたり。

 

カチューシャ君がパーシングを原作時より1輌多い4輌撃破(狙っていたのかは不明ですが、撃破したパーシング4輌の内2輌はノンナ君とニーナ君達を撃破したパーシングでした)していたり。

 

ミフネ作戦の場面で観覧車先輩が突っ込んで来た際、アズミ君達の混乱が軽度で突破口が不完全にしか開かなかったためにエリカ君が突撃して突破口を開いていたり。

 

ナオミ君の援護を受けてT28を撃破したダージリン君が橋の下からの脱出に成功してメグミ君と激闘を繰り広げたり。

 

アンチョビ君がジェットコースターのレール上でチャーフィーに挟まれた際、前方の車輌を体当たりでレール外に突き落として撃破したり。

 

ルクリリ君がアズミ君達の合流を阻止するべくカチューシャ君の言葉通りに体当たりを本当に敢行したり。

 

知波単勢――西君達やカバさんチーム、ウサギさんチームの活躍が原作よりも少なかったり。

 

ルミ君がカチューシャ君に撃破されずに最終決戦に参加していたり。

 

そして何と言っても一番最後の攻防。

 

まほちゃんとみほちゃんの空砲ブーストアタックの際、愛里寿君の反撃がⅣ号戦車の右側の転輪と履帯を破壊した所までは原作通りでしたが、その砲弾が直進してまほちゃんのティーガーⅠの履帯を破壊したり。

 

最も履帯が切れただけで戦線復帰が可能だったので残存車輌として認められましたが……1つ間違っていれば引き分けでの試合終了となっていました。

 

と、まぁ……他にももっと語りきれないぐらい色々ありましたけど……とりあえずはそんな感じで原作?何それ美味しいの?状態でしたからね。

 

試合を観ていた最中は良い意味でも悪い意味でも常にハラハラドキドキでしたよ。

 

お陰で試合が終わったのに椅子から動く事が出来ません。

 

安堵のあまり腰が抜けたみたいです。

 

「そん…な……」

 

「いやぁはっはっ!!」

 

「っし!!」

 

ちなみに私は腰が抜けましたが他の方々――高島君は床に膝を付いて愕然としていて、児玉理事長は跳び跳ねながら喜んでいて、蝶野一尉はマイクを片手に小さくガッツポーズを決めています。

 

立場故の違いですね。

 

おっと電話が。

 

「もしもし。……えぇ、はい。分かっています。今回の失態は全て私の責任です。はい。もちろん、はい。責任を取って局長の職を辞職させて頂きます」

 

うーん。リークした愛人の件が報道された事で荒れに荒れていますね、牟田大臣。

 

電話口の向こうで罵詈雑言をわめき散らしながら絶叫してます。

 

ま、大臣の置かれている状況を考えれば妥当な反応ですかね。

 

「きょ、局長!?」

 

「なっ!?」

 

「そんな……」

 

あらら、高島君達に話の内容がバレてしまったようです。

 

と言っても遅かれ早かれバレるので構いませんけど。

 

しかし……皆面白いぐらいに驚いていますね。

 

「え?はぁ……文科省内の不正が世間に漏洩した。証拠付きで。そうなんですか。え?……と言われてましても私には何の事かさっぱりなのですが」

 

大変な事になってますねー(棒)

 

さて、これで私が居なくなった後……少なくとも5年10年の間は大洗も安泰でしょう。

 

何しろ漏洩した不正の件がダメ押しとなって牟田大臣の罷免は確実で政治家としてもジ・エンド。そして文科省は世間の顔色を伺わないといけない状態に陥りましたから。

 

この状態で大洗、引いては他の学園艦の廃艦を強行出来る程の胆力は今の文科省には無いでしょうし。

 

いえ、それどころか世間の反感を逸らすために私に全ての責任を押し付けた後、廃艦反対の立場を表明する可能性もあります。

 

まぁ、そうなってくれれば文科省は今後大洗や他の学園艦の廃校云々を自分から言い出せなくなりますから、望むところなのですが。

 

……あれ?いつの間にか電話が切れてます。

 

「局長?い、今の電話は……」

 

おやおや。そんな捨てられた子犬のような目をしていてもらっては困りますよ、高島君。

 

これからは君に頑張ってもらわねばいけないんですから。

 

「えぇ。事前に取り決めた通り今回の責任を取って文科省を辞める事になりました」

 

「ッ、何故ですか……何故そんな風に平然としていられるんですか!!局長が今まで身を粉にして築き上げてきたモノが全て――」

 

「君が居るからです」

 

「――え?」

 

「私が居なくなったとしても安心して後の事を全て任せられる高島君が居るからこそ、私は平気なんです」

 

「……」

 

えっと……高島君?

 

これ以上ないぐらいに君の顔が真っ赤なんですけど大丈夫ですか?

 

私、何か変な事を言いましたかね?

 

「それに……私にもよく分かりませんが、今現在文科省内の不正が漏洩したとかで文科省は大騒ぎらしいです。なのでどのみち上の役職に就いていた大半の者は首切りですよ。まぁ、都合の良いことにこれで省内の風通しも良くなるでしょうし、次の局長である高島君には期待していますよ」

 

「ッ!?局長、貴方はまさか……初めからこれを……腐敗した上層部を一掃するために身を挺して……」

 

おや、今回の一件に乗じて文科省内の掃除をした事に高島君が気が付いてしまったようです。

 

しかし、私が自己犠牲の精神で害悪共の掃除を実行したと思っているのか、高島君のキラキラとした真っ直ぐな視線が痛いです。

 

「辻君……君は……」

 

「辻局長……」

 

って、高島君の勘違いの影響を受けて蝶野一尉や児玉理事長まで何か勘違いをしたのか尊敬の眼差しを向けてくるせいで……余計に居たたまれないんですが。

 

これはもう私情で動いてましたとか言えませんね、絶対。

 

「と、とにかく。これからは学園艦教育局長として学生達を助けて上げて下さい」

 

「はい!!今後は局長の志しを目標として誠心誠意努力し局長のご期待に応えてみせます!!」

 

「えぇ、その意気です」

 

ふぅ、上手い具合に高島君を焚き付ける事に成功した訳ですし、後はかほさんやしほさん、千代さんにご挨拶してから帰りますかね。




ふと思い付いたオマケです。

……元ネタは史実です。
(;´д`)

牟田side

「ワシが何故こんな目に合わねばならんのだ!!こんな所で、こんな形で!!議員としての身分を失うハメに!!」

元はと言えばあの無能な男が――

「大臣」

「何だ!!」

「秘書の身で差し出がましいかとは思いますが、こちらをどうぞ」
「なんだこれは」

「辞任用のスピーチ原稿になります」

「!?」

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