役人転生〜文部科学省学園艦教育局長に転生した私はどうしたらいいのだろうか〜 作:トマホーク
「わたくしが辻局長に想いを寄せる事になった切っ掛け……それはズバリ!!あの方が戦車道をやっている時のお姿ですわ!!」
暴露大会の先陣を切ったダージリンが声高らかに堂々と言い放った。
「「「「おぉ〜」」」」
頬を赤らめながら興味津々で話に聞き入る乙女達の小さなどよめきが巻き起こる中、ダージリンは優雅な振る舞いで紅茶を口に運び喉を潤した後、再び口を開く。
「わたくしと辻局長の出会いは、わたくしの1つ上……当時2年生でありながら既に我が校の戦車道チームの隊長であらせられたアールグレイ様があの方を臨時講師として招いた時の事ですの。そして、その時に見せて頂いたアールグレイ様と辻局長の模擬戦――5対1という数的不利があるにも関わらず、またあのアールグレイ様を相手にしているというのに圧倒的なまでの強さで勝って見せた辻局長に憧れを抱き、そして親交を深める内にお優しい性格や誠実な人柄に引かれ恋が始まったのですわ」
まだまだ話し足りない、もっと語る事はある。
そんな空気をバンバンに漂わせながらも、ダージリンは皆の反応を伺うべく話を区切った。
「へぇ〜そうなんだ。でも、レンタの事を好きになる人って大体戦車道関連からの繋がりが多いわよね。そう言った意味ではダージリンの場合は王道的とも言えるんじゃない?」
「あら?その言い方だとケイは違うのかしら」
腕を組み、うんうんと頷いてから口を開いたケイにダージリンが質問を投げ掛ける。
「あ〜私の場合は……そうね。一目惚れみたいな感じかな?」
「「「「おぉ〜ッ!?」」」」
新たなる火種の投入に暴露大会のボルテージが一段と上がり、興味心を大いにくすぐられた乙女達の視線がケイへと集まる。
「そう言えば私もたかしに一目惚れだったなぁ……」
皆の視線を集めるケイの隣で、過去を懐かしむ様にボソリと声を漏らした少女が居たことに誰も気付かなかったのは幸か不幸か。
「一目惚れ……興味深いですわね。では、お次はケイに話してもらいましょうか」
「いいわよ〜。そうね……ちょっと長くなるけど最初から。中学の時の話になるんだけど、当時の私はスッゴい引っ込み思案でね。性格も暗くて今とは真逆のタイプだったの。で、そんな私の前に現れたのが……」
「辻局長という訳ですわね」
「イエス。みんなも知っているとは思うけどレンタは学園艦の視察とかを頻繁にしているじゃない?」
「確かに」
「アンツィオにもよく来てくれてるな」
「ウチもよ」
ケイの問い掛けに対し、まほやアンチョビ、カチューシャが相づちを打ち他の者達も静かに頷く。
「それでレンタがウチの学園艦を視察していた時に戦車道のイベントが偶然開かれていて、ちょうどいいからって特別ゲストみたいな形でレンタが参加させられていたの。ちなみに私も戦車道に興味があったからそのイベントに1人で参加していたんだけど……簡単なレクリエーションをやるから2人1組を作れって言われちゃってね。周りは友達と来てるからどんどんペアを作っちゃうし……1人で参加していた私は大慌て。引っ込み思案が災いして誰にも声を掛けられないし」
「ちなみにですけど、その時の辻局長のご様子は?」
「うーん。確か……色んな生徒に一緒に組もうって言い寄られていたわね。ま、以前からレンタは有名人だったから」
「学園艦は違えど、やはり辻局長の人気は同じですのね」
ダージリンの質問に小首を傾げながら答えたケイは自分の話を再開する。
「それでね、誰とも組めないし帰ろうかと思っていたら、他の人達を誘いを全部断ったレンタが何故か私に組もうって言ってくれたのよ。まぁたぶん1人ぼっちの私を見かねたんだと思うんだけど」
「局長らしいですわね」
「ホントね。で、一緒にレクリエーションをやる事になって色々と2人で頑張っている内に思ったの。あぁ、この人は私を見てくれるって」
「どういう事ですの?」
「当時の私はスッゴい地味で暗〜い性格だったから“私”を気にする人なんか居なかったのよ。そんな中でレンタだけが私の事を気に掛けてくれたから、こんな私でも気にしてくれる人がいるんだって分かったの。それにレクリエーションの途中でも何度か他の娘に一緒にやろうって声を掛けられたりしていたけど、それを断ってずっと私の側に居てくれたり。それが無性に嬉しくてね。レクリエーションが終わる頃にはすっかり好きになっちゃってたのよ」
「そうでしたの」
「ちなみにレンタに振り向いてもらおうと色々と頑張っていたら、今の性格になってたわ」
どこぞの唐変木との馴れ初めを語り終えたケイは最後にニンマリと笑ってから口を閉ざした。
「ケイの貴重なお話が色々と聞けて良かったですわ。……さて“お次“に行く前にちょっと話が逸れるのですけれど、皆さんは辻局長にまつわるあの噂をご存知?」
話を終えたケイに賛辞の言葉を送ったダージリンは、思い出したようにとある話題を口にした。
「「「「噂?」」」」
ダージリンの問い掛けに幾人かが首を傾げる中、この場に居合わせた大多数の者には思い当たる節があった。
「あぁ、あれでしょ?レンタの愛車であるStrv.103の車長席に座られてもらった人がレンタの奥さんになれるっていう。車長席に座らせてもらった人が1人も居ないからそんな噂が流れているらしいけど……巷ではそれなりに有名な噂よね?」
「本来ならあの戦車は3名の乗員が必要だけど、先輩は1人で操縦から戦闘までこなしているからな。まぁ、元々1人でも運用は出来る仕様にはなっているけどさ」
「廉太さんが1人であの戦車を運用しているからこそ生まれた噂だな。言うなれば車の助手席やバイクの後部座席に彼女や妻しか乗せたくないというような話の類いから派生した噂だ」
ダージリンが口にした噂の存在を知らず首を傾げる者達にケイやアンチョビ、まほが説明するように言った。
「……ッ!?」
直後、噂の事を知らなかったとある少女は驚きに目を見開いた後、体をプルプルと震わせながら茹で蛸のように真っ赤になった顔を伏せる。
「どうした?み――」
「えぇ、そうですわ。」
その事を不信に思った彼女の姉が声を掛けようとするが、ダージリンの話が始まったため言葉を遮られてしまう。
「わたくしも以前試しにお願いしてみたのですけれど、有耶無耶にされてしまいましたわ」
「あれ?でも、その噂って何かもう1つ無かったか?」
残念そうに首を横に降るダージリンを横目にアンチョビが思案顔で言った。
「あぁ、将来有望な選手だったらStrv.103の後部にある通信手の席に座らせてもらえるってヤツでしょ?もちろんカチューシャは座らせてもらった事があるわよ!!」
「あら、そちらでしたらわたくしもありますわ」
「私も〜」
「私もあるな」
「私もだな」
「あの……私も」
「ぐぬぬ……」
ドヤ顔で自身の優位性を強調しようとしたカチューシャだったが、この場に居たほぼ全員が経験済みという返答に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ黙り込む。
「それで話を元に戻しますけれど、この中で車長席に座らせて頂いた方はいらっしゃるのかしら?」
「私は無いわ」
「私もだ」
「フン。カチューシャだって無いわよ」
ダージリンの視線を受けた者が順番に答えていく。
「では、まほさんやみほさんは?」
「いや、よくよく考えてみたら私も無いな(廉太さんの膝の上ならあるが)」
「そうですか。生まれた時からのお付き合いがあるとお聞きしたまほさんやみほさんなら座った事があるかと思ったのだけれど……となるとあの噂は本当なのかしら?」
「みほ、お前はどうだ?」
「……」
「……みほ?」
「ひゃい!?」
「どうかしました?みほさん」
」
「な、何でもないです!!ワタシモ、スワッタコトハ、ナイデス。ホントウデス」
「「「「……」」」」
明らかに様子がおかしいみほに、鋭い視線が幾つも突き刺さる。
「……この話は後でじっくりと伺う事に致しましょうか。じっくりと」
「はぅ!?」
みほの小さな悲鳴を聞きながら確実に荒れるであろう話題を後回しにすることを決めたダージリンは、アンチョビに意味ありげな視線を送る。
「……え?ちょっと待て、何でこっちを見てるんだ、ダージリン」
「いえ、私から始まりケイとくればお次は……ねぇ?」
「そうね、座っている順番的に……ねぇ?」
「き、汚いぞ!!お前ら!!さっきは強制しないとか言ってただろ!!」
悪どい笑みを浮かべたダージリンとケイの言葉にアンチョビが抗議する。
「えぇ、強制はしませんわよ。ただ場の空気とか流れという物が……ねぇ?」
「クッ……くっそ〜!!嵌められた!!」
暴露大会という鉄火場からは誰も逃れられない定めだという事が確定した瞬間であった。