GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

102 / 126
また戦闘無しの説明回、今度はユウキの正体の話です。


mission98 正体

 -訓練室-

 

「皆も勘づいているだろうが…俺は人間じゃない。」

 

「違います!!」

 

 話を再開したユウキは自らを怪物だと言うと、アリサが大きな声で遮る。

 

「ユウは…ユウは人間です!!人の心が残っている限り、神裂ユウキは立派な人間です!!」

 

 ユウキがどんな姿になろうとも、心は神裂ユウキのままである限りは人間だと興奮した様に反論する。

 

「アラガミになったり人になったり、さらにはアラガミを喰えて、喰ったものを100%取り込める…要は出すものを出さない訳だが、そんな奴が人間だと思うのか?」

 

「ええそうです!!たとえユウ自身でもユウの事を化け物呼ばわりするのは許しません!!」

 

 喰ったものを全て取り込める、それ故にアラガミを喰うことが出来る。実際に喰ってる所を見ていても、アリサの神裂ユウキは人間だと言う考えは変わらず、強い口調で反論した。

 

「まあ、人間だと思わせておけば同族意識だとかで色々と操りやすいからな。俺の力を利用するためと思えば必死に人間側に置いておこうとするのも分からないでもない。」

 

「そんな事考えていません!!私はただ…どんな力を持っていても、ユウは私達と同じ人間だと思うから…「だから何だ?」…え?」

 

 人間側の存在だと油断させておいて寝首をかく…そんな事をされるのではと思い、ユウキは冷めた様子でアリサの話を遮った。

 

「確かに『この姿』をしている時は生物学上まだ人間と言える。だが俺はアラガミの姿にもなれる…心がどうとか関係ない。俺は人間にはない力を持っている。人の枠組みから逸脱した怪物だと言う事実はどうあっても変わらない。」

 

「そんな…」

 

 何度否定されてもユウキを人間だと言うアリサだったが、結局ユウキは人にはない力を持っている事を理由に、人から逸脱した存在なのだとアリサの話を聞こうともしなかった。その事にアリサはショックを受けた。

 

「そんな風に産まれた経緯だが…両親の事を先に話すと理解しやすいだろう。」

 

「両親って…そんな事どうやって…?」

 

 ユウキが自らの正体を語るに辺り、両親の事を先に話すと言う。しかし、何故そんな事を知っているのかと思いコウタが聞き返す。

 

「さっきも言っただろう…?俺はノヴァと感応現象を起こした。全てを記憶出来なかったが、俺の事は色々と覚える事ができた。もっとも、星の誕生から現在に至るまで…規格外に膨大な情報量をまともに受け止めたせいで頭がパンクして一時的に記憶を失ったがな。」

 

 ユウキは再度ノヴァとの感応現象で地球の歴史を知った事を伝える。当然その中にはユウキと、ユウキの両親が生きていた時間は確実にある。

 もっとも、無数にいる人間の中からその2人…ユウキを含めて3人の過去を探し出すのは容易ではなかったが。

 

「まずは父さんの事から話そう。父の名はクロウ・オルフェウス…」

 

「クロウ・オルフェウスだと?!」

 

 ユウキが父親の名前を口にすると、ゲンが驚いた様子で聞き返す。

 

「やはりゲンさんは知っていましたか…」

 

 対してノヴァとの感応現象で父親の素性を知ったユウキは、ゲンの反応にはあまり驚いた様子はなかった。

 

「あの、ゲンさん?ユウの父ちゃん…有名な人なんすか?」

 

「あ、ああ。クロウ・オルフェウスは…まだピストル型神機が使われていた頃、軍人の家系出身で、俺と同じ正規軍から神機使いになった男だ。」

 

 ゲンがここまで驚くのも珍しいと思ったコウタがユウキの父親について尋ねる。するとゲンは件のクロウ・オルフェウスについて知っている限りの事を話し始める。

 

「元から鬼の様に強かったが、偏食因子との適合率が高かったのか、神機を持ってからはまさしく鬼神と言える活躍だった。だが一部ではすぐにピストル型神機が通用しなくなってな。そんな中、当時圧倒的な強さを誇ったクロウ・オルフェウスに旧型神機の試作機を持たせ、運用試験と実用化に向けての調整をしながら戦った男だ。言ってみればお前達のプロトタイプって訳だ。」

 

「じゃあ…俺達が今の神機を使えるのはユウの父ちゃんのお陰ってこと?」

 

 今使われている神機、その試作機を使い数々の戦場を生き抜いて運用データを集め、神機の完成に貢献したのがユウキの父親だった。コウタがその事を聞き返すとゲンは腕を組んで、考え事をするような仕草で返事を返した。

 

「そうなるな。だが、ある日を境に突如消息不明になったと聞いた。結局今でも見つからず、その理由は分かってないらしいが…」

 

「それは簡単だ。」

 

 ゲンはクロウが突然行方不明なった事を話すと、ユウキがそれを遮る様に理由を話し始める。

 

「神機更新の際に偏食因子の調整にミスがあった。それでアラガミ化する前に自ら姿を消した。それだけの事だ。」

 

 父であるクロウが姿を消した原因を大したことではなかった様に簡単に語るユウキを見て、タツミが横槍を入れる。

 

「そ、それだけってお前…!!自分の親父だろう?!」

 

「なら、俺に何が出来る?過去を変える事など出来ん。それとも悲しんで今この場で泣いてみせれば良いのか?」

 

「それは…」

 

 確かにユウキの言うことは分かるがあまりに薄情だ。以前のユウキでは絶対に言わない様な事ばかり言うので、タツミは本当に同一人物なのか分からなくなって困惑する。

 そんな中、タツミを無視してユウキはため息をついて再び話し始める。

 

「…話を戻そう。父さんはアラガミ化していたが防壁型の抗体持ちだった。その為、アラガミ化して遺伝子構造が書き変わっても、体には変化がなかった。そのせいで、本人もアラガミ化に気が付かず発見が遅れ、気が付いた頃にはもう手遅れだった。殺し、殺されるよりも先に逃げ出すしかなかったって訳だ。」

 

(…何から何まで…ユウと同じじゃねえか…)

 

 クロウの最後を聞いたソーマは、ユウキが行方を眩ませた流れとまったく同じだと感じた。まるでアラガミになる呪いにでもかかっているのではないかと思う程に酷似した状況に、世界から嫌われているんじゃないかと錯覚した。

 

「次だ。母の名は神童サクラ…フェンリルのルーツとなる生化学企業時代からのスポンサーだった神童商事の跡取り娘だ。だが、アラガミが現れてから会社は消滅、その後はフェンリルに身を寄せていた。博士はこの辺りの事を知ってるんじゃないですか?」

 

 母親の話が始まると、今度はユウキからペイラーに話を振る。

 

「あ、ああ…直接の面識は無いが、名前くらいは知っているよ。しかし、まさか君が…?」

 

「どうしたんですか博士?」

 

 急に話を振られた事もあり、ペイラーは多少動揺した様子で返事をする。それを見ていたルミコが不思議そうに聞き返す。

 

「…彼の母、正確には神童商事とはフェンリルの前進となる企業からの付き合いなんだ。」

 

 話を振られたペイラーはユウキの母親について知っている限りの事を話し始める。

 

「元々、フェンリルは遺伝子工学を主とする穀物メジャー企業だったんだけど、アラガミが現れる以前の極東では、遺伝子組み換え食品は非常に毛嫌いされていてね。世界に流通ルートを持つフェンリルの遺伝子組み換え作物も、極東ではさっぱり売れなかった。」

 

 かつて食料を過剰生産しては捨てていた時代、極東の人々は食の安全には強い拘りがあった。『遺伝子組み換え食品は健康にどんな影響があるか分からない。食べられたものじゃない。』と、今では考えられない感性のため、極東ではフェンリルの製品はまったく売れなかったと、ペイラーは当時の事を思い出しながら話していく。

 

「極東からの撤退を考えた矢先だ。当時の神童商事の社長が、我々の製品を極東でも売れるように色々と手を尽くしてくれてね。以降、薬品や医療品の分野に手を出した時も販売ルートを確立させてくれた。そんな事もあって仲良くさせてもらっていたんだ。そんな経緯もあって、身寄りのなくなったサクラさんをフェンリルで引き取ったんだけど、最後は旦那さんと同様、行方不明になってしまった。」

 

「それは行方不明になった父さんを探しに行ったからだ。」

 

 ペイラーが言うには、ユウキの母親である神童サクラはフェンリルに厄介になっていたようだが、父親同様行方を眩ませた様だ。しかしその答えはユウキがノヴァと感応現象を起こしていた事であっさりと分かったのだが、ユウキの答えだと少しおかしな所がある。

 

「えっ?ま、待って!!それだと順番が…ま、まさか!!」

 

 サクヤがユウキの話のおかしな所に気が付いた。ユウキがこうして存在している以上、2人が一緒に居た期間は絶対に存在する。しかし、ゲンとペイラー、そしてユウキの話を聞く限り、2人は最後まで見つからず、死に別れた様に思えた。

 仮に見つけたとしても、アラガミが闊歩する世界では外で生活など出来ようもない。必ず集落等の人の住んでいる所に厄介にならねばならない。そうなれば腕輪が着いているクロウの目撃情報がフェンリルにも届きそうなものだが、それもないようだ。

 そう、サクヤが感じた違和感とは、今の話の流れでは神裂ユウキは存在出来ない事だった。父と母が共に居た時間がないのだから当然だ。そう思ったが、2人が行方不明になる前に、その時間があった事を思い出すと、サクヤは驚愕して両目を見開いた。

 

「そうだ。身重にも関わらず、あちこち父さんを探しに行った。そしてこの極東で俺を産んで、しばらくは俺を抱えて父さんを探し回ったが、結局見つけられずに荒野の真ん中で死んだ。腹ん中でアラガミを飼っていて弱っていた事もある。当然の結果とも言えるな。」

 

「そんな…」

 

 愛する男と愛する我が子、ただ家族3人揃って生活したかった。そんな些細な願いのために身重にも関わらず、身を削りながら夫を探し続けたのだろうと思うと、サクヤや女性陣はユウキの母があまりにも不憫に思えた。そして同時に、それに何の関心も抱かないユウキに、何処か腹立たしさも覚えたが、ユウキはそんな事を気にせずに話を進める。

 

「アラガミ化し、遺伝子構造が書き換わってもそれが表に出なかった男、そしてただの人間の女…そんな2人が子どもを作った結果、産まれてきたのが俺の様なキメラだ…この両親の元で育っていたら『レイヴン・オルフェウス』と名付けられて、お前たちと合うこともなかっただろう。」

 

 ユウキが本来の名前は『レイヴン・オルフェウス』だと告げる。しかしこれまでの話しが衝撃的な部分が多かった事もあって、あまりしっかりと聞いてはいなかった。

 

「アラガミの父と人間の母の間に産まれた子…人であり、アラガミであり、どちらでもあってどちらでもない。人とアラガミの境界線、それが俺だ。」

 

(今の、何処かで聞いた気が…そうだ、シオがユウキくんに言った言葉だ。)

 

 ユウキが自らを境界線と例えた時の台詞を聞いたペイラーは、かつてシオが同じような事をユウキに言っていた事を思い出した。どうやらシオは初めて会った時からユウキの正体に気付いていた様だ。どうやらその時の状況からユウキが女顔である事を不思議がっていると自分達が勘違いしただけだったらしい。

 ペイラーがかつてのやり取りを思い出している間に、ユウキはまた別の話を始める。

 

「まあ、そのお陰もあってP16偏食因子と言う特殊な偏食因子を持って産まれ、神機を2つ使うなんて離れ業も出来た訳だ。」

 

「P16…偏食因子?」

 

 リッカが初めて聞く偏食因子の名称に首を傾げながら聞き返す。

 

「平たく言えば捕食能力のある偏食因子だ。神機を使う時、腕輪を介して神機と物理的に繋がる。その時P16偏食因子が腕輪を通して神機のコアへと行き着き、コアの偏食因子を喰い尽くして書き換える。これでどんな神機でも、時間をかければ扱える様になるし、適合率も最低でも100%になるって訳だ。」

 

 『もっとも、その神機は他の人間には扱えない代物になるがな。』とユウキは最後に付け足す。これでペイラーしか知らなかった、ユウキが2つの神機を使える理由が全員に明かされた。

 しかし、人とアラガミのハーフだと言うぶっ飛んだ事実を先に聞いた事もあり、P16偏食因子はハーフである事の副産物と言った程度の認識にしかならなかった。

 

「捕食能力を持つ因子…そんなものを持ってて大丈夫なのか?」

 

「本来ならアウトだ。常に自分自身に喰われている様なものだ。体の内側から喰われて消滅する。だがアラガミとのハーフである事で異常な再生力を手にしている。喰われてすぐに再生しているから実質ノーダメージだ。もっとも、髪や肌、目の色素は喰われたがな。」

 

「…」

 

 自分自身に喰われるなどと、想像以上に恐ろしい体質の事を聞いて周りは絶句する。

 話が途切れ、少しの沈黙の後、コウタが小さな声でユウキに話しかける。

 

「なあ、ユウの父ちゃんは…どうなったんだ?」

 

 コウタは少し気になっていた事をユウキに聞く。母であるサクラははっきりと死んだと言っていたが、父であるクロウの最後は語られなかった事が少し引っ掛かっていた。

 

「母ちゃんは死んじまったみたいだけど、父ちゃんは…アラガミ化してても何処かで生きて…」

 

「ああ…殺した。」

 

 ユウキはコウタの話を遮って、さらっと父を殺したと恐ろしい事を言う。しかもそれを悲しむ訳でもなく、悔いる訳でもなく、ましてやイカれた人間の様に誇る訳でもない。殺したと言う事実を何の感情も感じない口調で語っていく。

 

「1年前、エイジスで戦った黒い羽のアラガミ、クロウ…『あれ』が俺の父親、クロウ・オルフェウスだ。」

 

 ユウキがエイジスと異界で戦い倒したクロウが父親だと言う。先の淡々とした口調もあり、アラガミとなったとは言え父親を『あれ』呼ばわりするユウキは誰の目にも異常に映り、何処か恐ろしく思えた。

 

「ついでに言えば、さっき殺した新種…確か『ヴィーナス』と名付けられたんだったか…あれは死んだ後、サリエルの変種として蘇り、捕食を繰り返して変異した俺の母親、神童サクラだ。」

 

 そしてついさっき、第一部隊と別れる前に倒したアラガミが母親だったと言う事実を聞いた第一部隊や指令を出したツバキ、任務に送り出したヒバリは、ユウキに親殺しをさせた事に後ろめたさを覚えた。

 

「自分の親を殺したってのか?!」

 

『この親殺し!!』『悪魔め!!』と一部の者はユウキを糾弾する材料にしかしなかった。

 

「何で…」

 

 周りの喧騒の中、コウタがぽつりと呟いた。

 

「何でそんな平然としてられるんだよ!?アラガミになっちまってもユウの父ちゃんと母ちゃんだろ!?自分の親を殺して何とも思わないのかよ?!?!」

 

 その昔、家に泊まりに来た時は家族を羨み、大切なものだと感じていたはずの親友が、今では親を殺して何も感じていないかの様に、表情1つ変えないのだ。コウタは何かの間違いだと思ってユウキを問い詰める。

 

「だったら何だ?元々は親だったアラガミとは言え、俺の事を殺そうとしたんだ。『敵』を殺すのに…何故何かを想う必要がある?」

 

「な、なに…いって…」

 

 かつて『家族を守りたい気持ちが分かった』と言ったはずなのに、アラガミ化して自身を襲った両親を『ただの敵』としか認識してないユウキを見て、本当にこの男には心があるのかと思ってしまった。変わり果てた姿にコウタは恐怖心さえ覚えた。

 

「ならついでだ。俺の内に宿る『特異点』についても話しておくか。」

 

 するとユウキは唐突に話題を変える。そしてその会話の中でとんでもない事を暴露した。

 

「い、今…なんて…?」

 

「俺は特異点へと覚醒した。そう言ったんだ。」

 

 『正確にはアラガミ化した俺のコアが特異点だがな。』と加えたが、アラガミ化したユウキが特異点に覚醒したと聞いて、サクヤは驚きのあまり、小さく声を漏らすだけで精一杯だった。他の者も同様、驚愕してあまりにきちんと話を聞けないでいた。

 

「知っての通り、特異点は終末捕食の『カギ』であり、あらゆる種の情報が詰まっている。だが特異点そのものは終末捕食を起こす事はないし、俺の気紛れで終末捕食を発動させる事も不可能だ。完璧な形で終末捕食を行えるのはノヴァしか居ない。」

 

 特異点はあくまでもカギであり、終末捕食を生命の再分配まで完璧な形で直接発動させるのはノヴァなのだとユウキは語る。しかしそれだとシオの特異点が多量のオラクル細胞の塊である、ヨハネスが用意したノヴァが発動させた終末捕食は何だったのか?

 疑問は尽きないがユウキはそれを気にした様子もなく話を進める。

 

「そして人の姿だろうとアラガミの姿だろうと、特異点の情報は俺の中にある。俺がノヴァに喰われると言うことは、終末捕食で確実に人が滅ぶと言う事になる。」

 

「か、確実に人が滅ぶ…って何で言い切れるんですか?」

 

 ユウキがノヴァに喰われる事で起こる終末捕食、これによって人は滅ぶと断言すると、カノンは何故そこまで言い切れるのかと不思議に思いながら聞き返す。

 

「ノヴァは過去の出来事全てを記憶している。その中にはかつて終末捕食を発動させた際、存在していた種の情報も勿論含まれている。そんな奴と感応現象を起こし、情報を取り込むとどうなるか分かるか?」

 

「…絶滅した種の情報を全て手に入れる。」

 

 地球そのものであるノヴァとの感応現象を起こすとどうかるかをユウキが聞いてくる。誰も答えない中、ツバキが考えられる結果を口にするが、そしてそれは最悪の未来をもたらす事となる事にも気が付いていたので、答えた時の口調は何処か言いにくそうだった。

 

「そうだ。しかもかつて終末捕食が発動した時の種の情報だ。俺が喰われる事で再構築される世界は、どんなに進んでも恐竜の時代だ。その頃に人なんて居ないからな。情報がない以上、復活させる事など出来るはずもない。」

 

 『もっとも、人の情報があってもノヴァは俺達を生かす気など無いだろうがな。』とユウキが付け足す。これで何故ツバキが言いにくそうに答えたのか大半の者にも合点がいった。ユウキがノヴァに取り込まれる=人間が再生しない事が確定しているからだ。

 その場に居た者達はユウキが喰われる事で起こる終末捕食によって、想像以上に絶望的な状況になる事を理解した。

 

「それかららこの特異点には厄介なところがいくつかある。その1つは特異点の情報を俺から引き出せる事だ。」

 

「え?特異点の情報って引き出せるんですか?」

 

 ユウキ曰く、特異点の情報は引き出せると言うのだ。さっきも言ったように、特異点はあくまでもアラガミのコアであるため、アラガミの姿をしたユウキから情報を取り出せると言うのは分かる。しかし、人の姿でも特異点の情報を得られる様には思えず、ヒバリ少し意外そうな反応を示した。

 

「人の姿をしていようが、俺の内にはオラクル細胞の情報があることには変わりない。俺の一部でもを手にして細胞を解析すれば、オラクル細胞の部分から特異点の情報を引き出せる。そうなれば別の特異点を精製する事が出来る。」

 

 ユウキは特異な体質上、ヒトのDNAとオラクル細胞の塩基配列が共存しているが、アラガミ形態のコアである特異点の情報は、オラクル細胞の塩基配列に記録されている。その結果、人間形態でのユウキの細胞からでも特異点の情報を手に入れる事が可能になっている。

 

「それに、情報を手に入れるだけなら俺の一部だけがあればいい。俺の生死は関係ない。殺してしまえば確実に、そして好き放題に情報を引き抜ける。そんな輩が特異点を手に入れるとどうなるか…分かるだろう?」

 

「間違いなく、特異点を武器に世界を支配しようとするでしょうね。」

 

 ユウキが懸念しているのは、彼を殺してでも特異点を手に入れようとする輩が現れる事だった。特異点を力ずくで手に入れようとする連中の事だ。自分たちの欲のままに使う事は目に見えているとジーナは答える。

 

「そして厄介なところの2つ目…アラガミに喰われると、そのアラガミに特異点が継承される事だ。」

 

「まあ、そうなるだろうな。」

 

 ユウキは特異点の問題点、その2つ目をあげる。それを聞いたソーマはアラガミが特異点を喰うことで学習し、新たな特異点になる事を即座に理解して言葉を返した。

 

「俺がアラガミに喰われる事があれば、喰ったアラガミが特異点の情報を取り込み、新たな特異点として覚醒する。そこからは俺達に特異点を制御する術はない。特異点を喰って喰われて生き残り、いつかノヴァにも喰われて俺達はお終い…要するに、この特異点を巡る争いは必ず特異点が生き残る出来レースって訳だ。」

 

「特異点が必ず生き残るって…それでも、途中で特異点が破壊されたら…あっ!!」

 

「また別の特異点が発生する。」

 

 アネットは途中で特異点を破壊すれば良いと言うが、特異点が現れた頃には、別の場所でも同様に特異点となるだけの情報が蓄積されている可能性が高い。そもそも特異点は1つしか存在出来ないなんて事はなく、複数現れた場合は恐らくは対処のしようがなくなるだろう。アネットはその可能性に気がくが、その頃にはブレンダンが変わって答えを言う。

 

「そうだ。それに、アラガミは事実上減ることはない。土地も資源もなくなり、いつかは人間側が疲弊して負ける。」

 

 アラガミは減ることはないが、『戦える人』は簡単には増えないし、資源も枯渇する。人間がどれだけ抵抗しようと結局はジリ貧になり、最終的には戦う事が出来なくなる。長期的に見れば勝ち目の無い状況に多くの者が絶望する。

 

「3つ目は…どちらかと言えば俺の体質の問題だ。俺が人の姿で死ぬとアラガミ化して甦る可能性がある。」

 

「ユウの…母ちゃんみたいにか?」

 

 3つ目の問題点、それはユウキが死ぬとアラガミの姿で甦る可能性が高い事だった。今となって確認のしようがないが、過去に神童サクラが死後アラガミとして蘇生した事例がある。ユウキも同様に死後にアラガミとして甦る可能性は十分ある事にコウタはすくに気が付いた。

 

「人としての俺は死んでいる。それ故に、死んだ後にコアが暴走し、アラガミ化しても俺の意思は残らない可能性は高い。そうなればあとはアラガミとなった俺を殺して特異点を破壊するしかなくなる。失敗すれば俺の特異点がノヴァに喰われて終末捕食が発動する。」

 

 アラガミ化して暴走した場合、ユウキを確実に殺して特異点を破壊しなければ取り敢えず生き残ることも難しくなる。そうならない様にユウキの管理からはずれた特異点は必ず破壊しなけば、ほぼ確実に人は滅ぶ事になる。

 

「特異点が喰われても新たな特異点が生まれ、特異点を破壊しようが新たな特異点が生まれる…終わらねぇいたちごっこだな…」

 

「今の内容を例えるなら『蠱毒』と言えるだろうな。」

 

「孤独…?」

 

 今の状況をタツミがいたちごっこに例えるが、ユウキは蠱毒の方か正しいと言う。それをフェデリコが聞き返すが、イントネーションから一人ぼっちの方と判断し、ユウキは『蠱毒』だと言い直して説明を始める。

 

「蠱毒とは、複数の毒を持った虫を小瓶の様なものに閉じ込め、互いに喰い合わせて最後に生き残った毒虫を使って呪いたい相手を呪殺する呪術だ。今俺達の置かれている状況も、これに良く似ている。地球と言う名の箱庭の中で、毒蟲の様に互いに喰い合うアラガミと人、世界を滅ぼす『呪い』とも言える特異点への覚醒、今起こっている事はまさしく全地球上を舞台にした『蠱毒』と言えるだろう。」

 

 世界と言う閉鎖空間でアラガミと人を毒虫に見立てて互いを喰い合わせる。そして生き残った者か世界を滅ぼす呪いを宿した特異点で全ての人間を滅ぼす。毒虫を人とアラガミに置き換える事で、今起きている戦いで特異点が存在する事がいかに危険か、その場に居たものは良く理解できた。

 

「この呪いの終着点である特異点が存在している限り終末捕食が発動する可能性は潰えない。ましてやこの力を悪用する人間が現れるのは確実…そうならない為にも、俺がアラガミの姿で死んだらすぐにコアを破壊しろ。そして人として死んだらすぐに跡形もなく燃やせ。死にたくなければ特異点を残すな。」

 

 ユウキが自身の特異点が争いの原因になると警告する。自身が死んで特異点の管理が出来なくなった時、確実に特異点を処理するよう伝える。

 しかし、誰よりも生きる事に執着していたはずなのに、今では自分の処理の仕方を教えた事に、その場に居た者は何処か違和感を感じていた。

 

「この戦いは、人と地球(ほし)とが共生する道を選ばなければ終わる事はない。生き残る為にも、俺のやる事は今までと変わらない。人とアラガミが共生する世界を創る。そうしなければ人は世界に淘汰されるからな。」

 

 結局人が生き残るには地球と共生していくしかない。ノヴァにそれが出来ると認めさせれば終末捕食を取り止めるかもしれない。言うのは簡単だが、実際にそれが出来るかと言えば不可能だろう。

 ユウキの話を全て鵜呑みにするならば、アラガミへの反抗=地球への反逆となる事はその場に居る全員がすぐに分かる事だった。

 

「だが、それを無視して特異点を巡る抗争を起こせば待ち受けているものは破滅だ。アラガミが人類を滅ぼすよりも先に人間自身の手で滅ぼす事になる。そうならない為にも、俺の命を狙う奴…俺の特異点を狙う奴…そいつらは全て俺の敵だ。敵であるなら殺す。たとえここに居る貴様らが相手でもな。」

 

 特異点の危険性を理解しているからこそ、奪われないよう、利用されないように、敵となり得る者が近づくならば全て排除する。言っている事は分かるが、周りの人間の大半は他者を殺める事に何も感じないであろうユウキを異常者としか見れなくなっていた。

 

「今回この事を話したのは謂わば免罪符の為だ。俺は確かに忠告はした。それでも俺を狙うと言うなら…その時は誰であろうと殺す…」

 

「「「…」」」

 

 今までのユウキからは考えられない過激な発言…野蛮で物騒で、それでいて本気だと思わせる態度にその場に居る全員が言葉を失った。

 

「色々と1度に話しすぎたな。最後に今回の話で伝えたかった事をまとめるとしよう。」

 

 沈黙が続く中、ユウキは小さくため息をつくと、今回の話の概要をまとて話し始める。

 

「1つ、ノヴァは地球そのもの。故にノヴァが現れてもコアは破壊するな。」

 

 ユウキは右手を軽くあげ、人差し指を立てて『1』を作る。

 

「2つ、ノヴァは地球を破壊しつつ発展する人間を害悪と判断した。」

 

 次は中指を立てて『2』を作った。

 

「3つ、オラクル細胞は地球の防衛機能。人間と言う害悪を一時排除し、後世に残すかをノヴァに判断させる為に捕食を繰り返して地球上の生物のあらゆる統計を取っている。」

 

 その次は薬指を立てる。

 

「4つ、俺はアラガミ化した父と人間の母の間に産まれた…いわば半()だ。死ねばアラガミの姿になり、本能の赴くままに暴走する可能性が高い。故に俺が死んだ時はすぐに跡形もなく燃やせ。」

 

 自身の処理方法を伝えつつ小指を立てる。

 

「5つ、俺はノヴァに触れて特異点として覚醒した。特異点の情報は俺の『アラガミの部分』に刻まれている。体の一部からでも、俺を殺してでも手に入れられる。そんな事をさせない為にも…」

 

 最後は親指を開いて『5』を作ったが、最後の話を始めると、すぐに手をおろした。

 

「俺の命を狙う者、俺に近づき利用する者、コイツらは俺の『敵』だ。敵は何処の誰だろうと抹殺する。お前達も例外ではない。」

 

 最後の最後に威嚇と自分は本気だと伝えるためか、細く縦に割れた瞳孔を覗かせる鋭い目でその場に居た者を睨み、凄んで見せる。

 

「…」

 

「話しは終わりだ。博士とルミコ先生以外はここから去れ。」

 

 話を終えたユウキは解散を命じるが、色々と衝撃的な話が多かったせいか、その場から動く者は居なかった。

 

「聞こえなかったのか?早くここから去れ。」

 

 また冷たい物言いでユウキは全員に訓練室を出ていくように言うと、今度はペイラーとルミコ、そしてアリサ以外は訓練室から出ていった。アリサは悲しそうな目でユウキを見ていたが『早く帰れ』とユウキが言うと、そのまま素直に部屋を出ていった。

 

「ユウキくん。聞きたい事がある。」

 

 残ったペイラーは、話の中で気になっていた事をユウキに問いかける。それを聞いたユウキは特に返事をする事なく、ペイラー達から少しずれた方向に歩き始める。

 

「君が語った終末捕食のプロセス…あの話が本当ならば、生命の再分配は地球そのものであるノヴァにしか出来ないはず。ならばシオが月で発動させた終末捕食と緑化現象は一体…」

 

「確かにノヴァでなければ生命の再分配は行えない。高濃度、或いは大量のオラクル細胞でも終末捕食を発動はできるが、生命の再分配は行えない。それが出来たのは人と接し、学び共に生きたシオの特異性による…まさに奇跡と呼べる様な所業だ。」

 

 ペイラーは自身を横切るユウキを見ながらシオが起こした終末捕食について聞いてみる。対してユウキはペイラーの方を向く事なく返す。

 

「なるほどね。ならシオが起こした奇跡…それをアーク計画の通り、地球上で完遂していたとしたら、ノヴァはどうしたんだい?」

 

「…アーク計画が成功しても、人が居る限りノヴァは終末捕食を止めない。いつかはまたアラガミを繰り出して人を滅ぼしに来る。しかも1度アラガミが居なくなった事で対アラガミ技術は廃れていくだろう。そんな状態で再びアラガミが現れたら、今よりも凄惨な状況になるのは目に見えている。」

 

 ペイラーが仮にアーク計画が成功した時の事を聞く。するとユウキは1度はアラガミを淘汰出来るが、地球上に人がいる限りは何時かはまたアラガミが人を滅ぼしに現れる。その事を話しながらユウキはハルオミに投げて床に突き刺さったナイフの前まで来た。

 

「さて、聞きたい事はこれで全部か…?遺言にしては質問ばかりであまりそれらしくはなかったな。」

 

「…え?い、今…遺言?」

 

「えっ?!何?!どういう事?!」

 

 突然『遺言』などと言う言葉が出てきて混乱するペイラーとルミコを余所に、ユウキはナイフを引き抜いて回収する。

 

「博士と先生は俺の特異点を手に入れた可能性がある。ここで殺さなければ情報を悪用されるかも知れない…俺の情報が記録されている可能性のあるものは全て消す。当然、博士と先生もな…」

 

 現状ではユウキの遺伝子を調べて、特異点の情報を手に入れる機会があったのは科学者であるペイラーと医務官であるルミコだけだ。特異点の情報を利用して世界の覇権を握られれば多くの人が弾圧される。

 そうならない様にユウキは特異点を手に入れている可能性がある者、記録されている可能性があるものは全て排除しようとしているのだ。

 

「ま、待ってくれ!!君の身体の事は調べたが特異点の情報は持ってないし端末にデータは入れてない!!この後端末のデータを全て開示する!!何ならフォーマットしてもいい!!」

 

「データを消してもアンタ達の頭に情報が入っていたら意味がない。情報を持っているなら、その全てを消さなければならない。それに、消してもバックアップを取っていたら復元できるだろう?」

 

 データ上の情報と言うのは1度は記録されると何処まで拡散しているのかを追うのは難しくなる。しかも本体とは別の媒体にもコピーしていたり、バックアップがあると、その場では消してもまた復元できる。ユウキはそれを警戒しているのだ。

 

「だから端末のデータを消す必要もない。博士と先生を殺して全ての端末を破壊してカルテを燃やす。現状で特異点の情報が残っている可能性は全て排除する。」

 

「私達は特異点の情報を持ってないわ!!絶対!!信じて!!」

 

 ルミコは特異点の情報は知らないと言うが、ユウキはお構い無しにナイフを持ったままペイラーとルミコに向かって歩いていく。

 

「それを素直に…」

 

 ユウキはナイフ逆手に構え直した。

 

「信じるとでも思うか…?」

 

 そう言うとユウキはまずはペイラーの元へと一瞬で接近して、ナイフを突き立てる。

 

  『ギィンッ!!』

 

「何の真似ですか…?」

 

 しかし、ナイフから発せられたのは肉を裂く音ではなく、甲高い音が辺りに響いて、ユウキのナイフはペイラーに届く事なく止まった。

 

「…リンドウさん。」

 

 ユウキのナイフをアラガミ化している右手で掴んで止めたのはリンドウだった。ここに来てユウキは初めて苛ついた様な表情になったユウキは、瞳孔を細く、鋭く縦に割った目でリンドウを睨み付ける。

 

「止めろユウ。何をしてるのか分かっているのか?」

 

「…邪魔だ。」

 

 リンドウは姿勢を落としながら踏ん張りながらもいつもと変わらぬ様子で、攻撃を止めるようにユウキに言うが、ユウキはリンドウに蹴りを入れて文字通り一蹴する。

 

「ぐぉあ?!」

 

 リンドウは呻き声を上げて蹴り飛ばされる。ユウキはリンドウを蹴り飛ばす時にズレたナイフを握り直して再度ペイラーにナイフを振り下ろす。

 

「ヒィッ!!」

 

「キャァァァア!!」

 

 ユウキが殺意を持って再び迫ってきた。ペイラーとルミコは悲鳴をあげる事しかできず、このまま殺されるのかと思いきや、突然ユウキの手が止まる。

 

「貴女もですか…」

 

 しかし、またしてもユウキとペイラー達の間に白い影が割り込んでユウキの襲撃を阻止した者が居た。

 

「ツバキさん。」

 

 姿勢を落としたツバキが右手でユウキの右手を掴み、更に左手を添えてユウキが腕を振り下ろすのを阻止している。ユウキは再び怨めしそうにツバキを睨む。

 

「神裂ユウキ、今すぐナイフを仕舞え。命令だ。」

 

 ツバキは強い口調でユウキに攻撃を止めるように『命令』するが、ユウキからは返事も来ないし、攻撃を止める様子もない。

 

「ッ?!」

 

 それどころかユウキは更に力を込め、ツバキにナイフを近づける。

 

「…邪魔するな…」

 

「クッ?!」

 

 少しずつ首にナイフが迫ってくる中、表面上は表面上をあまり崩さずに余裕を見せていたが、内心ではかなり焦っていた。普段なら蹴りの1つでも入れて体勢を崩させるのだが、今はほんの一瞬でも力を抜けば一気に切られる。そのため身動きが取れなくなっていた。

 

「止めるんだユウキくん!!」

 

 どうやってこの状況から脱するかを考えていると、ペイラーが珍しく声を張り上げてユウキを止める。

 

「…いいだろう。私を殺すといい。」

 

「「博士ッ!!」」

 

「何を言ってるんですか!!」

 

 ペイラーが自らを殺しても良いと言う。当然リンドウとルミコ、ツバキは止める。いきなりの発言といつもと違う雰囲気のペイラーに戸惑う中、ユウキは目線をツバキからペイラーへと移した。

 

「ただし、私を殺せば君の目指す世界の実現が大きく遅れる事になる事はよく理解しておく事だね。」

 

 今までとは違い、やたらと強気なペイラーにユウキは自身を無力化する策でも思い付いたのかと警戒する。

 

「君も私も、目指す先は同じはずだ。アラガミとの共生、人の存続…どちらも力だけでは達成出来ない。私の持つ知識と技術、それらを駆使すれば何かしらのアプローチは出来るだろう。しかし私を殺せばそのアプローチの方法を失う事になる。仮に私以上の研究者と接触できても、君の思想に同調するとは限らないよ。」

 

「…」

 

 ペイラーの言うことは分かる。人とアラガミの共生を目指すなど、普通ならば誰も言い出さないだろう。それは優秀な科学者でも同じ…むしろ己の技術力を持って全力でアラガミを排除しようとするのが普通だ。この先、ペイラーの様にアラガミとの共生に協力的な科学者が現れる可能性は限りなく0と言える。

 ましてやユウキに出来る事と言えば暴力で相手をねじ伏せる事しか出来ない。いつかは力では解決出来ない段階が必ず来る。ここでペイラーの助力を失うのは確かに痛い。

 

「何ならハッキング技術も教えよう。これで私の端末に好きな様にアクセスして好きに監視するといい。」

 

「肝心なデータにハッキング出ない様にプロテクトをかける可能性がある。」

 

「なに、君なら触りだけ教えれば後は勝手に覚えていくだろう?」

 

 ペイラーは不正アクセスのやり方を教えるので、好きにアクセスして調べろと言うのが、特異点の情報にアクセスできない様な技術を教えるのではないかと、ユウキは警戒する。しかし、その内にペイラーから教わってない技術を独自に習得し、ペイラーの端末から全てのデータを盗み見て必要なら削除するつもりだった。

 

「その後で君の秘密を知るものが現れた場合、特異点の存在を知る私の元から情報が漏れた可能性は高い。その時は遠慮なく私を殺すといい。」

 

 ペイラーは自身の技術を盾にして、ユウキに自身の殺害を思い止まらせるようとする。実際、アラガミとの共生に協力的な科学者など、ペイラー意外には思い付かない。ここで失うのは惜しいかもしれないとユウキは考え始めていた。

 

「…良いでしょう。俺の内に宿る特異点…その存在を知るものが現れたら…その時は貴方も含めてここの連中を皆殺しにしよう。」

 

 結局ペイラー達の殺害を保留にして、物騒な事を言うとユウキはナイフを収め、踵を返して部屋から出ていこうとする。

 

「待てッ!!」

 

 しかしツバキがユウキを呼び止める。ユウキは立ち止まるが、特にツバキの方に向き直る事はしなかった。

 

「…神裂大尉、貴官は1年前の無断出撃の件で罰則を受ける事となっている。」

 

 ユウキは1年前の2度の無断出撃についてツバキから罰を言い渡される。ユウキは振り返らずに黙ったままだった。

 

「それから今回の件も含めて罰則を受けてもらう。1週間の懲罰房入り、そして中尉への降格とそれに伴う減給…それがお前への懲罰だ。」

 

「…分かりました。」

 

 『それから、ナイフをこっちに渡せ。』とツバキが最後に言うと、ユウキはその場でナイフを手放し、床に落とすのを見届けるとそのまま訓練室を出ていった。

 

「ふへぇぇ…怖かったぁ…」

 

「…どうしちまったんだよ…」

 

 さっきまでの気迫は何処へやら、情けない声なを出してペイラーは座り込む。そしてユウキの暴挙を止められなったリンドウはユウキの考えている事が分からなくなり 去っていくユウキの背中を見眺める事しか出来なかった。

 

To be continued




あとがき
 今回はユウキの正体は人とアラガミのハーフでした。シオのどっちでもあってどっちでもない等、それらしい描写は入れていたつもりですので、案外予想通りと言う人は多いかも知れませんね。
 2回に渡ってこの二次創作の設定を話しましたが、ごちゃごちゃと書いたのでざっくりとまとめると、

1、ノヴァは地球そのもの。コアは破壊してはいけない

2、ノヴァは地球を破壊しつつ発展する人間を害悪と判断した

3、オラクル細胞は地球の防衛機能。特異点を作るためにあらゆるものを喰い尽くす

4、ユウキは人とアラガミのハーフ。死ぬとアラガミの姿で暴走する可能性がある

5、ユウキはノヴァに触れて特異点として覚醒した。悪用されない為にも敵を滅ぼす

 この5つさえ覚えてもらえればこの先の話しも分かると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。