GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

105 / 126
キチガイお兄さん登場


after4 不信

  -鎮魂の廃寺-

 

 ユウキが帰ってきた翌日、口座を見てみると前回不正に処理した任務の報酬が全額口座に振り込まれているのを確認した。フェンリル側としてはユウキが不正に任務をこなしたとは言え、端から見れば帰還中に別件のターゲットに『偶然』襲われて結果的に他の任務をこなした様にしか見えない。そのため報酬を払わなければ極東支部にあらぬ疑いがかけられる。

 事の詳細を知っているヒバリは納得がいかず抗議したのだが、上からの命令で振り込みを強要される。

 自身の倫理感と上からの命令で板挟みになり、何度言っても聞かないユウキに対して『もう知らない、勝手にしろ』と言う意思を示す意味と怒りをぶつける感覚で報酬を振り込んでいた。

 そんな事もあり、旧寺院でテスカトリポカの討伐任務を受けると言ったが、『私に言わずとも好きに行けば良いじゃないですか?どうせ不正に任務を受けるなと言っても勝手に行くんでしょう?』と黒い笑顔で言われたので、言葉通りに好きに任務に行こうとしていた。

 しかしユウキの様子を気にしたカノンとアネットがいつの間にか着いてきて、最近まともに射てなかったことで禁断症状が発症していたジーナも強引に着いてきた。

 そんなこんなで、現在旧寺院の本殿前で戦闘になり、テスカトリポカが山側の階段を登ってきたところで破壊力のあるカノンと火力の高いユウキがの正面に立ち足止めをし、少し離れてアネットとジーナが堕天種を含むザイゴートとオウガテイル、そしてヴジュラテイルを計30体いたものを15体まで減らしていた。

 そんな中、ユウキは前面装甲を破壊する為に、テスカトリポカが撃ったミサイルを掻い潜り一気に前に出る。

 

「邪魔ァッ!!」

 

「…」

 

 しかしカノンが魔王化してユウキの後ろから放射弾を撃つ。発射音を聞いた瞬間、ユウキはバク転で放射弾を避けて上に飛ぶ。放射弾はテスカトリポカに当たり、前面装甲は結合崩壊した。

 この隙をついて追撃に出ようとしていたのか、ユウキは右の神機を銃形態に変形する。しかし、銃口はテスカトリポカの方を向けず地面の方向を向いていた。

 

  『バンッ!!』

 

 すると小さな発砲音が響き、狙撃弾がカノンの左太股を撃ち抜いた。

 

「あ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

 左の太股を撃ち抜かれたカノンが悲鳴をあげ、その場にいたアラガミと神機使いの注意を集めた。

 

「痛いぃ…痛いよぉぉ…!!」

 

 痛覚が集中していると言われる太股を撃たれた事でカノンは神機を落としてその場に倒れ、泣きながら血が止めどなく流れる足を押さえて痛みを訴える。

 

「あぐっ?!」 

 

「…」

 

 しかしユウキはそんなカノンの様子を気にした様子もなく、カノンの後ろに着地しすると髪を掴んで、後ろの小型種の群れに投げ込んだ。

 

「きゃあっ!!」

 

 投げられたカノンが小さく短い悲鳴をあげて小型種の群れの近くに落ちる。当然小型種達はカノンを喰らおうと向かってくる。

 

「カノンッ!!」

 

「カノンさん!!」

 

 突然の事にジーナとアネットは思わず声をあげる。

 

「ユウキ!!貴方何をっ?!」

 

「…」

 

 ユウキがとんでもない事をして、ジーナがそれを問い詰める。しかしユウキはそれに答えずに、カノンをアラガミの群れに投げ込んだ際にテスカトリポカから発射されたトマホークを狙撃弾で撃ち落としていた。

 しかしそんな事に時間を割いていてはカノンが殺されてしまう。群れの外からジーナがザイゴートとその赤、青、黄色の堕天種を即座に4体撃ち抜いて倒し、アネットもオウガテイルと赤いヴジュラテイルを薙ぎ倒してカノンの元に向かう。

 

「私じゃ間に合わない!!アネット!!カノンを!!」

 

「はい!!」

 

 遠距離からアラガミを倒していたジーナではカノンの救助が間に合わない。足は少し遅いがアネットの方がカノンに近い。アネットはオウガテイル堕天種を途中で殴り付けて全速力でカノンの元に向かい、ジーナは追加で黄色のヴジュラテイルを撃ち抜く。しかし未だにオウガテイルと赤いヴジュラテイル、青いザイゴート堕天種が残っており、2人よりも先にカノンの元へとたどり着いた。

 

「ダメ!!間に合わない!!」

 

「ひぃいっ!!」

 

 我先にと残ったアラガミが上から飛びかかる。アネットが銃形態に変形させるが、それよりも先にアラガミ達がカノンを喰い散らかす方が早い。ジーナもこの状態からは全てのアラガミを倒せない。カノンは死が目前に来た事で泣きながら小さく悲鳴をあげて頭を抱える。

 

  『バァァアンッ!!』

 

「…ぇ?」

 

 耳を劈く爆音が聞こえてきたと思ったらアネットの前を青い極太のレーザーが通って小型種を巻き込んだ。一瞬何が起こっているのか分からなかったが、先のレーザーはいつかの防衛戦で見た攻撃だった。

 まさかと思いユウキの方を見ると、既にテスカトリポカを倒したユウキが銃形態に変形した神機の銃口をこちらの方向に向けていた。

 

「カノンッ!!」

 

「カノンさん!!」

 

「…」

 

 戦闘が終わり、ジーナとアネットは倒れているカノンに駆け寄る。しかしユウキは何も言わず、カノンに駆け寄る事もせずにその場を離れようとしていた。

 

「貴方!!仲間を撃つなんて何を考えてるの?!」

 

「…」

 

 ユウキは女性陣の後ろを無視して通りすぎる。しかしその様子に気づいたジーナがユウキの後ろから問い詰めるが、それを一切無視して下階に降りる。

 

「い、痛い…」

 

 ユウキを止めようと思ったが、カノンが痛みを訴えたので、ジーナは先にカノンの応急処置をするためにポーチから医療キットを取り出した。

 

「カノンさん、大丈夫ですか?!」

 

「カノン、しっかり!!」

 

 アネットが患部の圧迫を手伝い、ジーナが殺菌とガーゼ、包帯を巻いていく。

 

(あの子…一体何を考えてるのよ…)

 

 仲間を意図的に撃ち、足を奪った上でアラガミの群れへと投げ付ける。今まででは…否、人として考えられない行動をやった。ジーナはそんな事を顔色ひとつ変えずにやったユウキの考えがまったく理解出来ずに薄気味悪さを覚えながらカノンに応急処置が終了して帰還した。

 

  -エントランス-

 

 テスカトリポカと小型アラガミの群れを討伐した翌日、ユウキはまたもや『寄り道』してから極東支部に帰ってきた。それを見たエントランスに居る神機使いはこれまで同様、ユウキが帰ってくるなりその場から立ち去る者がほとんどだったが、荒い足取りで1人の神機使いが怒鳴り声でユウキを呼びつけた。

 

「ユウキィ!!」

 

 怒鳴っていたのはタツミだった。怒りを露にした様子でユウキの胸ぐらを掴み、今にも殴りかかろうかと言う勢いだった。

 

「てめぇ何でカノンを撃った?!自分が何したか分かってんのか!!」

 

 怒鳴られる間にユウキは目線だけ動かしてタツミの後ろをチラッと見る。そこには左足に包帯を巻いて車椅子に座り、完全に怯えた目をしたカノン、車椅子を押して何故こんな事をするのか分からず困惑した表情のアネット、そしてユウキを責める様な鋭い目付きでユウキを睨むブレンダンがいた。

 それを見て状況を察したユウキは特に表情を変える事もなく事の経緯を簡潔にタツミへと説明する。

 

「…先に撃ったのは向こうだ。だから撃った。それだけだ」

 

「何だと?!」

 

 ユウキは何の罪悪感もなく先に銃口を向けたのはカノンだ。自分はそれに対して応戦しただけで撃たれたのはカノンの責任だと言い放つ。それを聞くと、部隊員であり仲間を撃たれたタツミが怒りが冷めやらない様子で今にも手を出しそうな心境で答えるのも当然と言える。

 

「い、良いんですタツミさん…誤射した私が悪いんですから…」

 

 しかし撃たれた当の本人にはユウキと目線を合わせない様に泳がしながら申し訳なさそうに謝る。

 

「だからって本当に撃つ必要はないだろうが!!」

 

「…言ったはずだ。俺の命を狙う奴は敵だ。敵は誰であろうと殺すと…」

 

「ッ?!」

 

 殺しこそはしなかったが、仲間を撃ったユウキを問い詰める。しかしユウキは胸ぐらを掴むタツミの腕を掴むと、人間離れした握力でギリギリと締め上げる。締め上げられた痛みでタツミは思わず胸ぐらを掴んでいた手を放してしまった。そして手を放されるとユウキもまたタツミの腕から手を放す。

 

「だがカノンには殺すよりも先にアラガミの餌に利用できた。だから殺さずに足を奪う程度に止めたに過ぎない。」

 

 ユウキの一言を聞いて、タツミだけでなくその場にいた者に衝撃が走った。やは人を人とも思わない、手段、道具にしかしていない。自分の部下、仲間が非道な扱いを受け、それを悪びれもしない。そんなユウキの態度とカノンへの言葉を目の当たりにして、タツミの堪忍袋の緒が切れた。

 

「お前ぇぇぇえ!!!!」

 

 ついにタツミが怒りに任せて拳を振り上げ殴りかかる。

 

「ッ?!」

 

 しかしタツミの怒りに任せた拳を、ユウキは表情を変える事なく涼しい顔で手で難なく受け止める。そしてタツミの腕を肘が下を向く様に捻ると、無表情のまま間接目掛けて膝蹴りを入れる。

 

  『ボキッ!!』

 

「ぐぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

「「「タツミ(さん)?!!?」」」

 

 腕を折られたタツミが激痛で叫び声をあげる。当然その場にいた者はタツミを心配して駆け寄ろうとするが、それより先に腕を折られて痛がっているタツミにユウキは腕を折る為に膝蹴りをした足で腹を蹴り飛ばす。

 

「ガッ!!あ"あ"あ"!!グッ!!」

 

「タツミ!!」

 

「タツミさん!!しっかり!!」

 

 鳩尾に強烈な蹴りを入れられ、痛みに悶えているタツミにその場にいた人達が駆け寄る。腕を折られている事もあり、何とか医務室に連れていこうとしてブレンダンがタツミを抱えようと四苦八苦する中、ユウキは興味が失せた様にその場から立ち去り、表情も変える事なくエレベーターに乗り込んだ

 

  -支部長室-

 

 ユウキはエレベーターを降り、先のタツミ達との衝突の事を気にした様子もなく、任務中に呼び出した張本人であるペイラーの元へとやって来た。しかしペイラーはユウキを見るなり少し呆れた様子でため息を着いた。

 

「また騒ぎを起こしてくれたみたいだね」

 

「…奴らが先に仕掛けてきた。だから殺られる前にやった…それだけですよ」

 

 どうやら今しがた起こった喧騒は既にペイラーの耳にも入っていたようだ。おおよそヒバリから報告があったのだろう。そんな事を考えながらユウキは先に手を出した相手が悪いと悪びれる様子もなく、むしろ『何故そんな事を言われなければならないのだ』と言いたげな雰囲気の声色で返す。

 それを聞いたペイラーはまたため息を着いた。彼の言葉通り、ユウキが記憶を取り戻して以降、任務の横取り等で他の神機使いからの不満が高まり、ユウキに直接手を出す者もたが、それらを『見せしめ』と称して、先のタツミにしたように任務に出られない程度に痛め付けていた。ちなみにその中にはシュンやカレルもいた。

 

「… 私としては、もう少し穏便に事を進めたいんだけどね」

 

「知りませんよ。それより、俺を呼んだ要件は?まさか本当にただの説教の為に呼んだ訳じゃないですよね?」

 

 極東支部内の雰囲気が悪くなるのを避けたいペイラーに対して、あくまでも悪いのは先に手を出した相手側にあるとユウキは返す。実際、ユウキは自分に手を出す者にしか手を出してはいないが、今は人間同士、ましてや同じ支部の人間同士で争っている場合ではない。すぐにでも止めさせたいが、自分が言っても聞かないだろうと思い、どうしたものかと考えているとユウキに呼びつけた要件を言えと急かされる。

 

「実は…新しい支部長がようやく決まってね。これを機に、私もただの研究員に戻る事になったよ」

 

「…それで?」

 

「君には新しい支部長の護衛任務を頼みたい。本部からアナグラまで、安全で快適な空の旅をお届けして欲しい」

 

「…分かりました」

 

 どうやら正式な支部長が決まったようだ。元の研究業務に戻れるからか、無意識に少し弾んだ声になっていたが何やら表情は固い。そんなペイラーをの様子からユウキは違和感を感じたが、すぐに『どうでもいいか』と思い、新支部長の護衛任務を受けた。

 それを聞いたペイラーは内心ではもう目的は達成できたと思っていた。今のユウキは少なくとも敵対しなければ何もしないし、不正に受けてはいるものの、任務そのものはきっちりとこなしている。長期任務を与える事でユウキを大人しくさせる事もできると思っていた。

 

「それから今の話に関連して、リンドウ君とサクヤ君、2人には『特務』を任せている。2人は部隊の任務にしばらくは出られないよ」

 

「…」

 

 ペイラーがリンドウとサクヤに特務を与えたと伝えると、ユウキは『何故このタイミングなのか?』とその采配に疑問を感じたが、すぐにリンドウの身体の事を思い出して納得した。アラガミ化から復活し、人とオラクル細胞が共存してた特殊な身体である事を知ったら本部に何をされるか分からない。リンドウを本部の目から遠ざける為の処置だろうと考え、ユウキは何やらキナ臭い空気を感じていた。

 

「さて、それじゃあ詳しいスケジュールを詰めていこうか」

 

 ユウキが思考に耽っていると、ペイラーが仕事のプランを詰めていくため話を進めていった。

 

Next Part 101




あとがき
 涼しくなったと思ったらまた暑くなって何やら調子が悪くなった私です。皆さんも体調を崩さぬ様に気を付けてください。それとも自分の住んでる辺りだけですかね?
 ではお話の方ですが…イカれたキチガイ主人公が書きたかったとはいえ仲間を撃ったのはやり過ぎかなぁと思いつつも、キチガイなら仲間に手を上げるくらい涼しい顔でやってのけるのでは?と思い、自分なりに誰にも理解されない様な感じの人物像に仕上げてみました。端から見たらただの嫌な奴でしょうね。心理描写も入れてないので気色悪さとかもあるかと思います。(心理描写は小出しに出していく予定です)
 それではこれにて4章、記憶喪失編はおしまいです。次は新支部長こと『あの一族』の関係者が出てくるストーリーを元にした話で進めていきます。いつもの事ながら構成を考えたりで投稿には時間がかかるかと思います。
 記憶を取り戻してからのユウキの設定は次の章の終わりに入れます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。