GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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なんかガーランド様のキャラが違う希ガス


mission102 新支部長

 -極東支部-

 

 ペイラーからの通信を受けて第一部隊が帰投してきた。後少しでガーランドの支部長就任式が始まるため、アナグラの職員の大半が訓練室に集まっていた。

 

「帰っては来たけど…」

 

「ユウが見つかっていない以上、素直に歓迎できないな…」

 

 人混みの中、ユウキの捜索任務から戻ってきたコウタとソーマは、壁に寄りかかって複雑な表情をする。新しい支部長がやって来たのは喜ばしい事で、歓迎すべきところだ。しかし、その歓迎される人間が助けた仲間を見捨てる様な指示を出した事で、むしろ警戒する事となった。

 

(何で…ガーランド支部長はユウの捜索を打ち切ったんでしょうか…?まだ手がかりさえ見つかっていないのに…)

 

 そんな中、アリサは髪を弄りながら何故ユウキの捜索が中止されたのかを考えていた。しかし会ったこともないガーランドの思考など読めるはずもなく、その疑問には答えを出す事が出来ずにため息をつく。

 

「あれ?神裂のやつ居なくないか?」

 

「どうせまた任務だろ?俺達の分を横取りしてさ」

 

 新支部長就任にざわめめいている中、ユウキが居ない事に気付いた者達の声が聞こえてきた。

 

(ユウ…大丈夫でしょうか…?)

 

 仕方のない事ではあるが、現状ユウキの評判は非常に悪い。それを聞いたアリサはやるせない気持ちになりながらも、未だに帰らぬユウキの身を案じる。

 

「ねぇ、聞いた?今度の支部長、あのガーランド・シックザール様なんだって!!」

 

「マジ?!あの『隻眼のダーウィン』様がアナグラに?!これで毎日あの隻眼のダーウィン様に会えるのね!!」

 

 そんな中、何人かの神機使いは次の支部長の話題で盛り上がっていた。特に女性の神機使いや職員からの人気は凄まじく、これからは毎日眉目秀麗なガーランドをお目にかかるチャンスがあるのだとはしゃいでいる。

 

「シックザールって…ソーマの親戚なのか?」

 

「…親父の弟だ。昔から親父以上に食えない男だ。腹に何を抱えているかわからん。奴の言うことは素直に聞かずに警戒しておけ」

 

 女子の会話内で『シックザール』の名が聞こえてきた。もしやと思い、コウタは件の人物がソーマの血縁者ではないか思い聞いてみると案の定、叔父にあたる人物だった。

 しかしソーマからは信用に値しないと酷評されており、その事を話す際も久しぶりに眉間にシワを寄せて不機嫌な様子で話していた。

 そうこうしているうちに、気が付けば壇上のツバキから就任式が始まる事を伝えられた。そして壇上にはツバキ他、ペイラーと本日の主役であるガーランドも立っていた。

 

「お待たせしました。本日の主役のご登場だよ。新支部長のガーランド・シックザールさんからの挨拶です」

 

 壇上で就任式を進行するペイラーがガーランドを紹介する。名を呼ばれた事でガーランドは杖をつきながら前に出る。

 

「ごきげんよう、ゴッドイーターの皆さん。先程ご紹介頂いたガーランド・シックザールです」

 

 そして集まった神機使いや職員全員を見ながらガーランドの支部長就任の挨拶が始まる。

 

「皆さんも知っての通り、今の世界はアラガミの脅威に晒され、あらゆる国家が滅び去った。そしてそんなアラガミに対抗するため、神機使いを開発、保有する我らフェンリルが世界各地に都市を創り人類を存続させてきました。」

 

 ガーランドが世界の現状を話し始める。それは誰もが知っている世界の現状、アラガミによって滅ぼされ、対抗勢力としてゴッドイーターを造りだしたフェンリルがギリギリのところで人間が存続している事を話す。

 

「しかし、神機使い達の奮闘も虚しく人類の自由は防壁の内側のみ…そんな子供騙しの保護区に私は辟易している」

 

 しかしゴッドイーターの活躍も反撃の狼煙とはならず、かつて地球上を支配した人間のほぼ全員がアラガミ防壁の内側の僅かな空間に追いやられてしまった。ガーランドはそんな現状を愁い、肩を落としてみせる。

 

「故に私は進言する。この閉鎖的な世界からの脱却には…人類の進化が必要であると。神を殺し、神機を扱う事を許された選ばれし者達…そう、ゴッドイーターである皆さんにこそ、人類進化の先駆けになって人々が新たなステージへとかけ上がる道標となるべき存在なのです」

 

 左手を開いたまま上げ、拳を造る。アラガミの支配を脱却し、人類が生き残るには進化が人類全体に必要だと力説し、ガーランドの仕草はそんな力強さをより強調していた。

 

「人々から自由、尊厳、命を無慈悲にも奪い去るアラガミ…誰もがそんな邪悪な神々に恐れる事のない世界を創るために全力を尽くします。その為にも皆さんには私に力を貸して頂きたい」

 

 上げていた拳を下ろし、後ろに手を回す。神機使い達に助力を頼むと、ガーランドは先程の熱を一度落ち着かせて、再び神機使いや職員全員を見回して挨拶の閉めに入る。

 

「短いですが、支部長としての私の決意を語る事で挨拶とさせていただきます」

 

 ガーランドの挨拶が終わると、辺りは拍手に包まれる。しかし、彼が理想を語る際、言葉や動作からは熱意を感じるのだが、目だけはその熱意に反比例するようにどこか冷たさを宿していた。このようなところは何処かヨハネスと似ていると感じると同時に違和感を感じる者も多く居た。

 そんな中、ソーマは対して興味がなかったのか拍手が響き渡る間にその場を後にし、コウタとアリサはその場に残った。

 あとはペイラーとツバキが各々挨拶と進行をして、ガーランドが退場すると、就任式は滞りなく終了した。そしてその直後、アリサはガーランドが居るであろう支部長室に走り、コウタがそれを追いかけていった。

 

 -支部長室-

 

「ガーランド支部長!!」

 

 就任式が終わり解散となると、アリサはすぐに新支部長となったガーランドが居るであろう支部長室へと向かう。相当慌てているのか、ノックや呼び鈴もなしに支部長室に入ってきた。

 

「早くユウ…神裂中尉の捜索命令を出してください!!」

 

「ア、アリサ待ってって!!いきなりそんな…」

 

 アリサは部屋に入るや否や、ユウキの捜索命令を出す様に進言する。しかしユウキの事で周りが見えていないのか、あまりにも不躾な態度に一緒に入ってきたコウタが止めに入る。

 

「ええ、私もそのつもりです。その為にも、まずは私達にも情報が必要です。現場の状況を報告してください」

 

 デスクで作業をしようとしていた所に突然の訪問、いきなりの事で驚いたガーランドだったが、すぐに状況を理解してユウキ捜索の為に情報を求めた。

 そしてアリサとコウタはヘリの墜落現場には残骸とヨルムンガンドの死体しか残っていなかった事を伝える。

 

「成る程…現状、行方の検討はついていないと言うことですか…これは広域捜索が必要になりそうですね」

 

 状況を聞いたガーランドは顎に手を当て、今後部隊をどう動かすかを思考する。

 

「第一部隊は先行して墜落現場周辺の再捜索、人員の補充は後程行います。」

 

「分かりました!!」

 

 現状を把握していてすぐに出撃できるのは第一部隊しかいない。ガーランドは増援を送るが、まずは第一部隊に先に出る様に命じるとアリサは即快諾した。

 

「それから…任務中、アラガミと遭遇したらこれを試してみてください」

 

 そう言ってガーランドは立ち上がり、デスクの横に立てておいたアタッシュケースをデスクの上に乗せる。

 

「なんすか?これ…?」

 

「中に入っているのはコアバレット…その名の通り、アラガミのコアを使ったバレットで、アラガミ強制進化論を応用したものです。レポートも添付してあります。使い方等は移動の最中にでも読んでおいてください」

 

 ガーランドがアラガミ強制進化論を研究した成果のひとつ、『コアバレット』が入ったアタッシュケースをコウタが受け取る。

 

「神裂中尉は支部の要です…お願いしますよ」

 

 ガーランドはユウキの捜索をアリサとコウタに任せると、2人は任務を了承して支部長室を出ていくと、ソーマを連れてユウキの捜索に乗り出した。

 

 -墜落現場-

 

 ソーマ、アリサ、コウタは再びヘリの墜落現場に着いた。しかし、そこには火の消えたヘリの残骸と、ヨルムンガンドが霧散して消えた後の見晴らしの良くなった景色が広がるだけだった。

 

「着いた…はいいけど、何処を探せばいいのやら…」

 

「コウタ、あとどのくらい走れる?」

 

 最初に探した時には手がかりも何も見つからなかったため何処をどう探そうか思考するコウタに、ソーマは車はまだ走れるかを聞いてきた。

 

「え?燃料は入れてきたから…うん、全然余裕そう」

 

「なら、ここら一帯を探した後に旧寺院まで行ってみるか」

 

「了解」

 

 コウタは燃料メーターを確認すると、針はFを下回った程度の位置を指していた。それを聞いたソーマは近くの廃寺まで捜索の足を伸ばそうと提案するとコウタはジープを走らせた。

 

「そう言えば、コアバレットってどんなバレットなの?確か説明書が入ってたっしょ?」

 

 車を走らせながらコウタは先ほどガーランドから受け取ったコアバレットの事を聞いてきた。

 

「あっそうですね。えっと…」

 

「コアバレットはコアを封じ込めたバレットをアラガミのコアに直接撃ち込んで、対象のアラガミを強制進化させるものだ」

 

 それを聞いたアリサがコアバレット入りのアタッシュケースを開けて添付されていた資料を読み始めると、代わってソーマがコアバレットについて説明する。

 

「そ、その通りです…まだ資料も読んでないのに…」

 

「え?マジ?何でソーマ知ってんの?」

 

「名前で大方察しはつく。このバレットが当たればバレットに搭載されたコアが相手のコアに干渉して無理矢理形態変化させるって代物だろう。やたら速い敵や硬すぎる相手…敵の長所を奪う用途に使うと効果的だろうな」

 

「す、凄い…そんなところまで資料と同じです…」

 

 コアバレットも強制進化論も決して非公開な研究ではなかいが、つい最近まで父を嫌い、その父と同じシックザールの名を持つガーランドの研究にソーマが興味を示す事は考えにくい。父との確執が多少マシにはなった後も、ノヴァの残滓回収やユウキが行方不明になる等、落ち着いて論文を読む時間などなかったはずだ。

 そんなソーマがバレットの名前を聞いただけで今開けたばかりの資料と同じ説明をしたソーマにアリサとコウタは驚きを隠せなかった。

 

「要するにコアバレットってのはアリウス・ノーヴァの時に超弩級アラガミのコアを使って作ったあのバレットの事だ。過去に使った所を見た以上、感覚は掴みやすいはずだ」

 

 そしてソーマがコアバレットの特性は過去に戦ったアリウス・ノーヴァ戦で使ったバレットと同じだと結論付けると、運転しているコウタは不思議そうな顔でソーマを見る。

 

「えっ?あれって博士の発明じゃなかったの?」

 

「博士は開発したとは一言も言ってなかったぞ」

 

「そ、そうだっけ?」

 

 アリウス・ノーヴァとの戦いで用意したバレットは、てっきりペイラーが超速で一から作り出したものだとばかり思っていたコウタだったが、実際はコアバレットと強制進化論の論文を参考にして作られたものだった。

 ソーマもペイラーは『自らが発明した』とは言ってないと伝えるが、そんな細かい会話までは覚えておらず、難しい顔で前を向き直して運転に集中する。

 

「あ、見えてきましたよ」

 

 会話が終わるとほぼ同時に、アリサが目的地である廃寺が見えてきた事を伝える。それを聞いたコウタはアクセルを踏んでスピードを上げて目的地まで急いだ。

 

 -鎮魂の廃寺-

 

「近場って事で来てみたけど…」

 

「ここまでで痕跡はありませんね…」

 

 ユウキを探して廃寺に来た後、作戦区域を一周りして本殿前に集合したが結局手がかりらしきものは何一つ見つからなかった。ここからどうしたものかと考えていると、コウタはある事に気が付いた。

 

「てか、ここまで来るならアラガミ化して空でも飛ばないと来れなくない?空を飛ばれちゃぁ痕跡も何もないんじゃないの?」

 

「…と、とにかく!!ここまで来た以上、捜索範囲を絞る為にもくまなく捜索しましょう!!」

 

 『あ、誤魔化したな』と思いながらも、アリサとコウタでこの後の動きを話し合う。

 

「…」

 

 そんな中、廃寺に着いてからソーマは一言も発する事なく、眉間にシワを寄せて険しい表情をしていた事にアリサは気が付く。気のせいか今のソーマからは血の気が感じられない顔色になっている様にも見えた。

 

「どうかしましたか?ソーマ?」

 

「…いや、何でもない」

 

 アリサが声をかけるが、ソーマは特に何も話そうとはしなかった。

 

「顔色良くないし、何でもない様には…見えないぜ?」

 

「…大丈夫だ。とにかく作戦領域周辺にも捜索範囲を広げる…早くアイツを探すぞ」

 

 コウタもソーマの顔色が良くない事に気が付いたが、それでもソーマはユウキ捜索を優先する。すると…

 

  『グォォォオッ!!』

 

「オウガテイル?!」

 

 突然威嚇するかの様に吠えるオウガテイルが山の方から4体現れ、アリサの声と同時に第一部隊は戦闘体勢に入る。

 

「…紛れ込んだか?」

 

「へへっ!!数だけ揃えても所詮はオウガテイル!!パパッと倒してやんよ!!」

 

 小型種でも油断すると危険な相手には変わりないが、所詮はオウガテイル…第一部隊の敵ではない。誰もが油断はしてないが楽に勝てるとたかをくくっていた。しかし次の瞬間には、先頭のオウガテイルの足元の雪が突然爆発したかのように舞い上がった。

 

「…へ?」

 

 そして一瞬のうちにオウガテイルは口を開けてコウタの目の前まで距離を詰めてきていた。

 

「どわぁあ?!」

 

「「コウタ!!」」

 

 咄嗟に横へと飛び込んで辛うじて避ける。標的を失ったオウガテイルはそのまま空虚を突っ切り、反対側の壁まで移動した。一瞬遅れて反応したソーマとアリサはコウタの方を向いて声をあげる。

 

「平気…っ?!危ない!!」

 

 ソーマとアリサの呼び掛けに応えようとするが、残ったオウガテイルが腰を落とし、前に飛びかかる体勢をしているのが目につき、思わずコウタは大声で2人に危険が迫っている事を伝える。

 

「キャッ?!」

 

「チィッ!!」

 

 残りの3体ががアリサとソーマに向かって、弾丸の様な勢いで突進する。アリサは右に飛び込んで避け、ソーマは左に跳んで避けた。しかし避けた先に最後のオウガテイルがソーマに向かって突っ込んで来た。

 

  『ガンッ!!』

 

 最後の攻撃は装甲を展開して防いだが、想像以上の衝撃を受けてよろけると、オウガテイルは軌道が変わってそのまま反対側の壁に激突した。

 

「2人共大丈夫?!」

 

「はい!!」

 

「ああ。しかし…なんだコイツら?普通とは比べものにならねぇ速さだ」

 

 攻撃を避けた第一部隊は勿論、オウガテイル達も攻撃の後、体勢を崩していたのを整えて仕切り直しとなった。

 

「あの足、ハンニバル…?何にしてもかなり発達してます…普通のオウガテイルじゃないですね」

 

「足に対して体が軽すぎるのか…まだ慣れてないだけか…スピードを制御出来ていないみたいだな…」

 

 向き合った事で第一部隊はこのオウガテイル達の異変に気が付いた。体に対してやや大きくなったハンニバルの足がついていた。

 おそらくハンニバルの脚力そのままにスケールダウンしているとソーマは考えた。

 

「へへッ!!それなら…」

 

 未だ体勢を建て直し切れていないオウガテイルに向かってコウタは銃口を向ける。

 

「今のうちに倒してやる!!」

 

 そう言うとコウタの神機からオラクル弾が連射される。いつもオウガテイルを倒す時の感覚で弾丸を撃ち、体勢を崩していたオウガテイルに直撃するのだが、あまり効いている様子はなかった。

 

「ヤッベ?!普通のオウガテイルより硬い?!体勢を立て直しちまう!!」

 

「なら、コアバレットで!!」

 

 予想外に硬いオウガテイルを倒しきれずに焦りを見せたコウタのフォローにアリサが動く。手元にあったコアバレットを2つ神機に装填して体勢を立て直したオウガテイルのうち2体にコアバレットを撃ち込む。するとオウガテイルの足はみるみるうちにコクーンメイデンの胴体に変化していった。

 

「凄い…これがコアバレット?」

 

「あんなに速かったオウガテイルの足を簡単に奪っちゃったよ」

 

 素早く動いていたオウガテイルが足を失い、動くことさえ出来なくなった。コアバレットの効力に驚きつつもコウタとアリサは高威力のバレットを装填し直してオウガテイルを撃ちまくる。

 そして何やら奇怪な攻撃をされたと察した2体のオウガテイルが、今度は未だに動きを見せないソーマにターゲットを絞って突進する。

 しかしソーマも手をこまねいてただ見ていた訳ではない。既にチャージクラッシュの準備を終え、迎撃体勢を整えていた。そうとも知らずにオウガテイルは動かない格好のカモとしてソーマに襲い掛かる。だが、ソーマはその瞬間にチャージクラッシュの状態を維持したまま縦振りの構えから横振りの構えに変えて左へと跳ぶ。

 

「くたばれっ!!」

 

 ソーマの声と共に神機が横凪ぎに振られる。すると進行軸上から標的を失ったオウガテイルの攻撃は決して届く事はないが、巨体なオラクルの刃はオウガテイルにしっかりと届く。そのままオラクル刃は2体のオウガテイルを上下に切り裂き、切り裂かれた下半身は地面を転がり、上半身は岩場に激突した。

 

「ファウルだな」

 

「…はなっからヒットすらねらってねぇよ…」

 

 コアバレットを撃ち込んだ残りのオウガテイルも倒し終わり、ソーマの野球の様なスイングを見ていたコウタが打ち返せなかった事を茶化す。それに対して相変わらず顔色が良くないソーマは最初から打ち返せるものじゃないと愚痴る。

 

  『ガァァァアッ!!』

 

 捜索対象のユウキも居なさそうなので1度戻ろうかと考えていると突然獣の咆哮が辺りに響いた。何事かと思い辺りを見回すと、崖の上からヴァジュラが乱入してきた。

 

「ヴァジュラ?!」

 

 アリサは声をあげると同時に降りてきたヴァジュラは第一部隊を睨んで戦闘体勢に入る。

 

「グッ?!」

 

「ソーマ?!」

 

 しかしその瞬間にまたソーマが頭を抱えて踞り、コウタがソーマを抱えて立ち上がらせる。

 

「だ、大丈夫だ…それより、目の前の敵に集中しろ…!!」

 

 言うやいなや、ヴァジュラが吠えて飛びかかかる。コウタはソーマを抱えたまま横に跳び、アリサはその反対側へと避ける。

 

「コアバレットが!!」

 

 しかしその際、アリサが持っていたアタッシュケースごとコアバレットをヴァジュラに喰われてしまった。するとヴァジュラはメキメキと音を発てて背中から羽が生えてきた。

 

「ヴァジュラに…羽?」

 

「まさか…シユウのコアか?」

 

 予想外の事態に第一部隊の動きが一瞬止まる。その間に完全に羽が定着し、ヴァジュラは上に大きくジャンプする。すると空中を浮遊してその場に留まり、バチバチと火花を撒き散らし始めた。

 

「ッ!?下がれ!!」

 

 この状況で何が起こるか察したソーマは、アリサとコウタにこの場を離れるよう叫んだ。その瞬間、ヴァジュラは上空から地面に向かって電撃を放ち始めた。

 

「キャァ?!」

 

「どわぁ?!」

 

 まるで空から無数に雷が落ちている様に、いくつもの電撃が降り注ぐ。ソーマは装甲を展開してコウタごとヴァジュラの電撃を防ぎ、アリサは何度か避けたが避けきれなくなり、最終的に件形態に変形して装甲を展開して電撃を防御した。

 

「チッ!!空から、電撃だと…?雷を落とす神でも…気取ってんのかっ?!」

 

 空中から電撃を落とすヴァジュラは、自らを裁きの雷を落とす雷神だと言っている様にも見え、未だに調子が戻らないソーマが装甲を傘にしつつ悪態をつく。

 

「また来るよ!!」

 

 一度電撃が途切れると、再びヴァジュラが紫電を纏いバチバチと放電する。コウタが警戒を促し、不調のソーマは安全策をとってそのまま装甲を展開し続ける。その安全圏からコウタはヴァジュラに向かって銃口を向け、アリサも銃形態に変形してヴァジュラを狙う。

 

「ッ?!」

 

 しかし突然白い影がアリサの後ろから飛び出し、ヴァジュラの攻撃よりも先に組み付く。そして神機を横凪ぎに振るとヴァジュラに生えた羽を切り落とす。そして飛び乗った青年はジャンプすると、今度は神機を唐竹割りの要領でヴァジュラの頭を全力で叩き切る。その結果、青年は上へと跳び上がり、ヴァジュ ラは地面へと叩き落とされた。

 

「な、何が…ッ?!」

 

 コウタは何が起きているのか訳がわからず困惑した。しかしそれはコウタだけではなく、アリサとソーマも同様だった。ただでさえ機動力が高いヴァジュラが翼を手に入れ、三次元的な挙動で攻めてきた事には驚いたが、対処出来ない事はない。攻勢に転じようとしたところで横槍が入った事で第一部隊は完全に虚を突かれた。

 

  『バンッ!!』

 

 第一部隊が放心していると、今度は後ろから1発の弾丸が発射される。それはヴァジュラに当たると爆発する。それを合図にする様に、新たに現れた3人の神機使い第一部隊の前に出て、銃形態の神機で一斉に砲撃する。着弾すると爆発する爆破弾を何度も受けたヴァジュラは遂に怒りで活性化する。

 

  『ガルァァァアッ!!』

 

 咆哮と共に四方八方に電撃を撒き散らす。アリサは横に避け、ソーマはコウタの前に出て装甲を展開して防御する。対して謎の部隊は真ん中に居た隊員の元に集まり、その人が装甲を展開して電撃を防ぐ。

 そのあとも右へ左へとデタラメに放電するヴァジュラだったが、何度も放電したせいか、攻撃の頻度が下がってきた。すると1ヶ所に集まっていた謎の部隊のうち、装甲を展開していない2人は各々左右から飛び出した。そのまま攻撃の手が緩んだ電撃の間を潜り抜け、ヴァジュラの目の前まで走り抜けた。

 

  『『ズシャァッ!!』』

 

 2人が神機を振るい、ヴァジュラの左右の前足を共に切り落とす。身体を支える事が出来なくなったヴァジュラがその場で倒れ込む。すると足を切り落とした2人はすぐにその場から離れる。するとさっき上へと跳ね上がった青年が丁度ヴァジュラに向かって落下してきた。青年は神機を構えると、唐竹割りの軌道で神機を振り下ろし、落下の勢いを加えた一撃を着地と同時に放った。

 

  『バスンッッ!!』

 

 勢いの乗った一撃は小気味いい音と共にヴァジュラの頭をパックリと二つに割り、そのままヴァジュラは息絶える事となった。

 

「あ、貴方達は…一体…?」

 

 全員が神機を持ち、白いジャケットに目元を隠す大型の黒いバイザー付きのヘッドギアを装着した異様な集団が突然現れ、乱入してきたヴァジュラをあっという間に倒してしまった。彼らは一体何者なのか、その疑問をようやく口にできたアリサに対して、ヴァジュラを倒した青年はアリサの方を向いた。

 

「我々は『アーサソール』…貴女と同じ、新型神機使い『のみ』で構成されたガーランド様直属の私設部隊です」

 

「アーサ…ソール…?」

 

 聞いた事のない部隊名に第一部隊は混乱する。そしてヴァジュラを倒した青年が部隊名を名乗ると、何処からともなく隊員と思わしき人達が10人程現れた。

制服はまだしも、全員が揃いのバイザーを着けて目元を隠した者達ばかりで、どこか異様な空気を作り出していた。

 

「隊長、コアバレットの影響下にあるコアは全て回収しました」

 

「了解。速やかに撤退する」

 

 コア回収の報告を受け、隊長と呼ばれた青年はアーサソールの隊員に撤退命令を出す。第一部隊は突如現れた謎の部隊の出現に唖然とし、それを見届けたあとから撤収した。

 

To be continued




あとがき
 スパイラル・フェイト編が始まってもやっぱりうちの子は出ません。今回の言ったのソーマはわりと戦闘では不調続きです。これは元の漫画でもそんな感じでしたがここではより顕著に不調になる予定です。
 しかし漫画ではガーランドの事を聞かれるとソーマは『関係ねえ』と一蹴したのですが…父親との確執や忌み嫌っていた自らの血族に心の内で決着を着けたとは言えソーマが色々素直になりすぎですかね?
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