GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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アーサソールでググったところ、どうやらトールの別称らしいです。


mission103 陰謀

 -支部長室-

 

「やってくれましたね…」

 

 任務を終え、第一部隊が極東支部に帰ってくるとすぐにガーランドから呼び出しを受けた。それに応じて支部長室に来たなりに、ペイラーもいる前で落胆した様子を見せつけて先の物言いだった。第一部隊表情が険しくなる。

 

「コアバレットの大量消失、それに加えて1対多と言う状況でヴァジュラ相手に苦戦…シユウのコアが紛れていたのはこちらのミスですが、その事を差し引いても最高クラスの実力派と名高い極東支部第一部隊の実力がこの程度とは…」

 

 本当に落胆したのだろう、ガーランドはため息混じりに目を伏せ、右の肘を突いてこめかみを押さえて見せた。明らかな気落ち、呆れ、失望と言った感情が読み取れた。

 

「神裂君に雨宮リンドウ君、その伴侶のサクヤ君…主戦力の大半を欠いているとは言え、貴方達ならば何か起きても大丈夫と踏んで派遣したのですが…どうやら見込み違いだったようですね…」

 

 ガーランドが第一部隊を睨むと、背中を背もたれに預ける姿勢になり、第一部隊に次の命令を出した。

 

「貴方達第一部隊を最前線から外します」

 

「なっ?!ふざけんな!!防壁外の討伐に任務はどうすんだよ?!」

 

 突然の左遷にも似た辞令にコウタは反発する。今まで第一部隊が行っていた壁外のアラガミ掃討任務を遂行する者が居なくなると言うが、勿論ガーランドの指示はその事も折り込み済みの采配だった。

 

「第一部隊が請け負っていた任務は『彼ら』に任せます」

 

 ガーランドの声がかかると、部屋の奥の扉が開く。そこからは先の任務でヴァジュラを倒して、自らの部隊を『アーサソール』と名乗った青年、それから同じ任務で青年をサポートした3人の神機が現れ、ガーランドの後ろに並んで立つ。

 

「アーサソール…私が作り上げた新型部隊で、つい先程極東に到着したばかりです。あなた方も彼らの実力はご覧になったはず…今後は彼らが外部の討伐を担当します。第一部隊は第二、第三部隊同様居住区防衛、ならびにアーサソールのサポートをしてもらいます。ではレオン君、挨拶を…」

 

「アーサソール隊隊長、『レオン・マックスフィール』です。以後よろしくお願いいたします」

 

 ガーランドの指示でレオンと呼ばれた隊長の青年が簡単に自己紹介する。そしてアリサの前まで歩くと右手を差し出した。

 

「よろしく、アリサ・イリーニチナ・アミエーラ…」

 

「え…は、はい、よろしくお願いします」

 

 『何故自分にだけ…?』と疑問に思いながらも、アリサはレオンと呼ばれた青年が差し出した手を握って握手をする。

 

(っ?!?!な、何?!)

 

 握手の瞬間感応現象が起こり、アリサの意識は一瞬遠退いた。それと同時に深い虚無に誘われる様な、暗闇に意識を塗り潰される感覚を覚える。感応現象を起こしているのは間違いない。しかし、相手の意思や思考、過去が何も感じられず、ただただ暗い世界と同化する不気味さを感じる。

 

(ダメ、呑まれる!!)

 

 感応現象での意識共有の際、自身の思考が消えて暗闇に沈むような得体の知れない感覚に恐怖を感じた。初めて感じた恐怖と不快感に思わず反射的にアリサは握手した手をレオンから振りほどく様に離した。

 

「思ったより歓迎されてないようですね…」

 

 かなり強引に振り払ったため、レオンは自分達を快く思ってないのだろうと、至極当然の反応をする。しかし声には抑揚がなく、目元もバイザーで隠れているため、本当にショックを受けているのか疑問だった。

 

「あっ…ご、ごめんなさい…」

 

「いえ、構いません。我が部隊はいつでも『新型の貴女』を歓迎しますよ」

 

 アリサが謝ると、レオンは特に気にした様子もなく受け入れる。しかしこれも本心なのか全く分からず、アリサは異様なまでの話しにくさを覚えていた。

 そんな中、レオンが新型であるアリサだけをアーサソールに勧誘する。それを聞いたソーマとコウタは眉間の間にシワを寄せる。

 

「彼はこう言いましたが、私の部隊では貴女の実力ではまともに『使えない』でしょうね。いえ、あるいは…」

 

 しかし部隊へ勧誘したレオンに対して、ガーランドはアリサでは戦力にならないと言いながら立ち上がると、アリサの前まで歩いてくる。

 

「アラガミを誘き寄せる『エサ』程度には使い道があるかも知れませんね…」

 

 ガーランドがアリサの顎に手を伸ばすと『クイッ』と上げさせ、自身の目線と合わさせる。先の感応現象の事もあり、アリサの目には同様が見てとれた。

 

「テメェッ!!」

 

 仲間をアラガミのエサにすると聞いたコウタが怒りを露にしてガーランドに掴みかかるべく動き出す。

 

  『バシッ!!!!』

 

 しかし、コウタが動くよりも先にソーマがガーランドの手を叩き落とした。

 

「蛮族の血が騒いだかい?」

 

「…なら親父と同じ血を引いているお前も同類じゃないのか?」

 

「ッ!?」

 

 ガーランドはソーマを挑発したが、思わぬ反撃にガーランドの表情が一瞬歪む。

 

「…まあ良いでしょう。とにかく、第一部隊は前線から外します。昨今、アラガミの進化が進んでいる中、神機使いも新型神機使いを中心の部隊を増やす等、強化していかなければなりません。そんな中、事故による進化とは言え、突発的に現れた『羽が生えただけ』のヴァジュラに苦戦する貴方達に彼ら以上の活躍が出来るとでも?」

 

「は、羽が生えただけって…お前、現場で突然アラガミが変化したらどんだけ危険か分かってんのか?!」

 

 弱体化させる為にコアバレットを撃ち込んだ時と違い、事故により明らかに強化させてしまった場合は、そこにどんな危険が潜んでいるか分からない。

 長く現場で戦ってきた経験、それに基づくリスクとセーフティを天秤にかけた結果、暫し様子見する選択を取ったが、ガーランドはそれが気に入らなかったようだ。現場で戦わない、理解できない者が上から目線であれこれ言ってくる事にコウタの我慢も遂に限界を迎え、ガーランドの胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

 しかし、コウタの手はガーランドに届くよりも先にレオンによって掴まれた。そしてそのままコウタを引っ張りながら足をかけて倒すと、背中を押して勢いよく地面に叩きつける。するとコウタはうつ伏せで右手を伸ばした状態で後ろに回されて床に押さえつけられた。

 

「グッ?!?!」

 

「ガーランド様に手を出そうとは…愚かな…」

 

 レオンはそのままコウタの腕をへし折るべく、力を入れてコウタの腕を逆に曲げていく。

 

「止めないか!!」

 

 しかしその騒動もペイラーが声をあげた事で中断する。意外な人物が制止した事で全員の動きが止まり、その後コウタも解放された。

 

「今回のコアバレットの実験そのものは成功したんだ。技術部としては満足だよ。皆お疲れ様、ゆっくり休んでね」

 

 ペイラーが半ば強引に話を終わらせて、第一部隊に休むと様に伝える。第一部隊は各々踵を返してしぶしぶ支部長室を後にする。

 

「その目、父親によく似てますね…」

 

「だったら何だ?懐かしくなったか?」

 

「…ッ」

 

 帰り際にガーランドは再度ソーマを挑発するが、またもや反撃されてガーランドは苦虫を潰した様な表情で第一部隊の後ろ姿を眺めていた。

 

 -食堂-

 

「クッソォオォオ!!何なんだよあのお喋りクソイケメンは?!『隻眼のダーリン』だか何だか知らねぇけどクッソ頭にくる!!!!」

 

 余程頭に来たのか、目の前のどんぶりを派手にかきこみ、その合間に頭を掻きむしりながら怒り散らす。

 先の支部長室のやり取りはどう考えても一方的で理不尽な決定だった。自身のミスを棚にあげ、アーサソールを持ち上げる為に明らかに第一部隊を貶めた内容だった。そのやり取りを思い出したコウタは怒りを発散するためにやけ食いしていた。

 

「落ち着け。騒いだところで上の決定をどうこうしようもないだろう」

 

「つってもよぉお!!」

 

 対してソーマは落ち着いてコーヒーを飲みながら、怒り狂うコウタを宥め、ガーランドとのやり取りを思い出す。

 外回りを担当する討伐部隊を丸々変更する。この理由は第一部隊がガーランドにとっても邪魔な存在だったからではないかとソーマは考えた。その為になんやかんやと難癖をつけて第一部隊を左遷して元のポジションには自身の息のかかったアーサソールを置いた。しかし外の物品かアラガミのコアか、第一部隊を左遷した目的は分からない。

 今後はアーサソールのサポートと言うことで外に出る事になるだろう。その時に色々と調べればいいと考えていたが、外に出る機会が減る以上チャンスは決して多くない。慎重、かつ大胆な捜索が必要になるが、コウタの焦りも分からないでもない。コウタには養う家族がいる。これ以上仕事が減れば自身だけでなくカエデやノゾミの生活も危うくなる。それはコウタにとって何よりも大きな問題になる。

 

「…ごめんなさい、ちょっと席を外します」

 

「あ、アリサ?!」

 

 先に食事を終えていたアリサは先に席を立ち、ずっと気になっていた事を確認すべく、ペイラーを探しに行った。

 

 -医務室-

 

 アリサはペイラーを探してラボラトリ、エントランスと支部内を何ヵ所か周ったあと医務室に向かった。扉を開けると、そこにはルミコと話しているペイラーがいて、2人は扉が開くとその方向を見た。

 

「や、アリサ。どうしたのかな?」

 

「おや、さっきぶりだね」

 

 研究者は部屋に籠りがちなイメージがあるが、ペイラーは思いの外アクティブな人だ。ラボに探しに行ったら居らず、あちこち探し回って予想もしない所に居たと言うことも珍しくなく、時折探すのに苦労する事もある。アリサはようやく探している人を見つけて小さくため息を着いた。

 

「やっと見つけましたよ、博士…実は、ちょっと聞きたい事があるんです」

 

「何かな?」

 

「実は、さっきアーサソールの隊長と感応現象を起こしたんですよ。そしたら…その、感応現象を起こしても何も感じなかったんてす…相手が今まで『普通に生きてきた人間』なら、過去や感情を共有できるはずなんですが…それすらも感じなかったんです。彼らは本当にただの神機使いなのでしょうか?」

 

 アリサは先の感応現象で感じた不気味な体験の事を話していく。そして相手の意思を一切感じる事なく暗闇の底に自分の意志が落ちていく様な不気味な感覚を覚えた事を話していく。それを聞いた後、ペイラーもルミコも怪訝そうな顔になった。

 

「感情のない人間なんて居ない…感応現象を起こしても何も感じないなんてあり得ないよ。何かおかしいわね…」

 

「私も同じ見解だよ。アーサソール、何か秘密がありそうだね…実に興味深い。私の方でも少し調べてみるよ」

 

 感応現象で過去も意思も感じられないなど、生きている人間が相手ならばまずあり得ない事だ。一切の感情も思考もないのならば動く事さえ不可能だ。そこはペイラーもルミコも同意見だった。しかしアーサソールはそれをやってのけている。何かキナ臭さを感じて、ペイラーはガーランドに探りを入れる事を約束する。

 

「お願いします」

 

「報告ありがとう。先の任務で疲れたろう?もう部屋でゆっくり休むといいよ」

 

「はい、失礼します」

 

 ペイラーはアリサにもう休む様に伝えると、この話はここで終わった。

 

 -深夜、極東支部-

 

 夜も更け、既に時計は1時を回った頃、ガーランドはアタッシュケースを持って誰も出歩いていない支部の中、エイジスに向かっていた。杖と義足の音を小さく響かせながら月明かりの差し込む廊下を歩いていた。

 

「こんな時間にお出かけかい?」

 

「…ッ?!」

 

 しかし突然後ろから声をかけられ、ガーランドは表面には出さなかったが目を大きく開いて驚いた。だが声の主がペイラーだと分かると、振り返る事もせずにいつもと変わらぬ表面になる。

 

「新型部隊アーサソール…あれだけの適合者、どうやって集めたんだい?」

 

 新型神機使いは数こそは増えているが、未だに適合者が見つかりにくく希少価値の高い存在だ。そんな新型神機使いが1ヶ所で小隊を1つ作れる程の規模を揃えるなど不可能に近い。

 ペイラーはいつもと変わらない調子の声でそれだけの新型を集めた方法を聞いてみた。

 

「どうやって…?適合者を集めていたらあの規模になったに過ぎません」

 

「剣と銃…新型神機は双方に変形する高性能の生体兵器、それを扱える神機使いは未だ多くない。新型神機はその変形機構で様々な状況に瞬時に対応できる希少で有益な武装だ。それは新型を扱える神機使いもまた同じ…しかし、それを扱える者だけが優秀な神機使いではないはず…旧型にはソーマやコウタ君のように戦術に長けた者も多い。優れた技術は性能の壁を超えるものだ…いや、遠回しにではなく単刀直入に聞こう。アナグラが誇る優秀な第一部隊を前線から外し、アーサソールをそのポジションに就かせた目的は?」

 

 ペイラーの質問に対してガーランドは惚けた様に答え、ペイラーは新型の希少性は必ずしも戦闘力に直結するとは限らないと言う観点からガーランドの真意を探るように聞いてきたが、途中から回りくどい言い方が面倒になったのか、気になっていた事をストレートに聞く。しかしそれを聞いたガーランドは鼻で小さく笑った。

 

「何をおっしゃっているのかよく分かりませんね…彼らよりも我がアーサソール隊の方が遥かに優秀だったと言うだけです。アラガミが加速度的に進化する中、我々もより強力な部隊を前面に押し出していくべきです。そうしなければ、滅ぶのは私達ですからね」

 

「…なら、質問を変えようか。ソーマ達が戦ったと言うオウガテイル…強制進化させたあれを第一部隊にけしかけたのは彼らを前線から外す為に送り込んだんじゃないのかい?その後のヴァジュラを差し向けたのも君だろう?」

 

「何の事でしょうか?」

 

 ペイラーの目が少し開き、威圧するかの様にガーランドを後ろから見る。そして第一部隊に難癖をつけて、前線から外す為の布石だったのだろうと確信を持ってガーランドを問い詰める。不思議にも、実際にその目を見たわけでもないのに、その威圧感は背中越しでも感じられた。だがガーランドはあくまでもしらを切った返事をした。

 

「…いい月だ…玉兎とはよく言ったものですね」

 

 突然ガーランドが窓から見える満月を見ながら話の流れを強引に変える。ただし、そこには慌てて話を逸らした様な様子はないどころか、余裕さえ感じられた。

 

「北欧では月があまりに美しい夜には月を喰らう狂暴な狼が現れると言う伝承があるのですよ。今日の様な美しい月を…喰らいにやって来るかも知れませんね…?」

 

 ガーランドは月明かりに照らされながら顔だけ振り向き、少しだけ目が開いているペイラーと目線が合う。そして唐突に月を喰らう狼の話をして、何やら意味深な事を言う。

 

「どうぞお気をつけください…」

 

 何に対してか分からない忠告をすると、ガーランドは目線を外してそのまま歩きだした。そしてその背中をペイラーは見ていたが、やがて踵を返して自身のラボに戻っていった。

 

To be continued




あとがき
 ガーランド様の結構無理のある采配で第一部隊が左遷されちゃいました。現場を知らない上司が現場の人間にむちゃくちゃ言うのって結構ありがちな話だと思いますが、それでも今回のは強引すぎましたね。ほぼイチャモンですし…まあ、ガーランド様だからいいか。
 最近ふと思ったのは、実は一番威圧感出せるのは目を開けた時の博士なんじゃないかと思った今日この頃。
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