GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ペルソナ5R買っちまった…早く大富豪したい(^p^)


mission104 蠕動

 -エイジス-

 

 夜も更けてきて月が昇りきった頃、エイジスの管制塔の大部屋ではアーサソールが巨大なカプセルを取り囲む様に配置された端末を操作している。そのカプセルの中には培養液に浸けられ、未発達の手足がついた1つ目の黒い球体が脈動していた。

 アーサソールが液のオラクル濃度や酸素濃度等、端末を操作しながら口に出してお互いに確認し合っている中、大部屋に杖と義足の音が聞こえて、しばらくするとガーランドが現れた。

 足音が聞こえてくると、端末を操作しているアーサソール以外はガーランドを迎えるべく整列し、ガーランドが部屋に着くと敬礼する。

 

「ガーランド様、お待ちしておりました」

 

「ええ、お疲れ様です」

 

 レオンが代表してガーランドを迎える。それに返事を返すとアーサソールは自らの持ち場に戻る。

 

「少し時間がかかっていた様ですが…何か?」

 

「周りを彷徨くネズミの相手をしていたものでね…なに、大した問題はありませんよ。それより、これを…」

 

「はい、すぐにバレットに加工します」

 

 アーサソールの隊員がガーランドからアタッシュケースを受け取り、何処かへと持っていった。

 

「しかし、長い船旅でよくアラガミに襲われませんでしたね。極東支部にも見つかってないようですし」

 

「ええ。『例の装置』はまだ実験段階ではまだ細かい指令は送れませんが、大まかな行動指針程度ならば出せるお陰でアラガミからの被害はありませんでした。それどころか極東支部への対策にコクーンメイデンのジャミング効果を利用する事も可能になりました」

 

 話を変えて、ガーランドは改めてアーサソール達が無事に極東に着いた事に驚いていた。『例の装置』と呼ばれた巨大な装置は研究室の下の階層に設置され、その装置を運ぶ必要があったためレオン達アーサソールは船で極東に来ていたのだ。そのため、何処かで1度はアラガミに襲われる、或いは極東支部に尻尾を掴まれるくらいは覚悟していた。

 いざとなればアラガミも極東支部からの調査部隊もアーサソール達が力ずくで排除する事も予定していたが、実際には何事もなく、極東支部に知られる事もなくここまで来た。これも『自身の研究の成果』であり、ガーランドとしては幸先の良いスタートと言えるだろう。 

 

「成る程…実験機として作ったものですが、ここまで無事にたどり着けたのなら、もう実践機として調整しても良いかも知れませんね。搬入の状況は?」

 

「既に搬入を終えています。現在、バッテリー稼働ですが電源を繋げば安定稼働に移れます」

 

「分かりました。私が来た時にヘリで多くの子機も積んできました。数日内に外部居住区に配置してください」

 

「了解しました」

 

 例の装置とは、何かの実験用に試作した機械のようだが、期待以上の効果がある事が分かった。本格的に実践で使えるように調整するようレオンに伝える。

 そしてガーランドが言うには例の装置には子機もあるようだ。それを外部居住区に配置するようにガーランドが指示を出すと、レオンは迷う事なく了承する。

 

「…しかし、エイジスにこんなに巨体なラボがあったとは…」

 

「驚きましたか?ここは仮初めの楽園を創ろうとした男の墓標でね…」

 

「墓標…ですか?」

 

 話が途切れると、レオンは部屋を見渡して改めてレオンはエイジスの研究室の規模に驚いていた。それを哀れな男の末路、その遺物だとガーランドは一蹴する。

 

「…レオン君、君はノヴァの終末捕食を知っていますか?」

 

「ええ。アラガミ同士が喰い合い巨大化し、最後の1体が地球ごと喰い尽くす現象…しかし、それが何か?」

 

 突如としてガーランドが終末捕食について聞いてくる。その意図が分からず、レオンは疑問符を浮かべる。

 

「今からおよそ1年半前、いつか訪れる終末を阻止すべく、とある男がある計画を実行に移しました。しかし、あれは悲観主義者(ペシミスト)ゆえの愚行…彼は選ばれた人間だけを方舟に乗せ、人工的に育成したノヴァを発動させる事で地球を強制的にリセットさせようとしていたのです」

 

「アーク計画ですか…まさか、ここでその実験が…?」

 

 彼が語ったのはかつて終末捕食を利用した兄の計画、アーク計画の事だった。

ガーランドがアラガミ化したアイーシャをノヴァとして育成する研究をここで行っていたと語る傍ら、この場でレオンはこの場で世界を創り変える壮大な研究がなされていた事に驚きを隠せない様子だった。

 

「そう。しかし、それは失敗に終わった…もっとも、私としては好都合でしたが…」

 

 ガーランドは杖を突きながらカプセルの前まで歩いていく。そして1つ目の球体が眼を開くと、それと眼を合わせて不敵な笑みを浮かべる。

 

「人もアラガミもいない世界などまったくもって笑えない冗談です。そんな世界を再生し、降り立ったところで何の意味もない」

 

 ヨハネスの行動を悲観主義者(ペシミスト)の愚行と称し、嘲笑うかのようにアーク計画を無意味な行動だった酷評する。そんな中、ガーランドの元にカートを押したアーサソールの隊員がやって来た。

 

「ガーランド様、コアバレットの用意ができました」

 

 呼ばれたガーランドがカートを見る。そこにはコアバレットが鎮座していた。しかし分かってはいたが、『とあるアラガミのコア』を使ったバレットがない事を確認してしまうと、自身が描く理想への道のりはまだ時間がかかるのだと感じて目を閉じて方をすくめてみせる。

 

「メインディッシュはお預けですね…」

 

「所在は掴んでいるのですが…なにぶんペイラー・榊の管轄なので…」

 

 レオンが現在の状況を説明する。求めているコアはペイラーが保管している事は分かったが、当然セキュリティも厳重なものになっている。仮に襲撃して奪い損ねでもしたら自分達の立場が危うくなる。ガーランドもその事は十分に理解している。

 

「下手に動くとこちらが喰われる…か…良いでしょう。まだ装置の最終調整が済んでいない以上、多少の遅れは仕方ありません。が、あまり長くは待てませんよ?この子は美食家(グルメ)なのでね…」

 

 ガーランドは振り返りレオンを見る。その後すぐにカプセル内の1つ目の球体に視線を移すと、1つ目と目が合った。

 

「それから…神裂君の件、なるべく急いでください。彼がこちら側に着けば計画はより完璧なものになる」

 

「はい、ガーランド様」

 

 ガーランドはユウキを引き込むべくレオンに捜索を急がせる。その最中、カプセルの上蓋が開いて、その上から1人、また1人と次々にコアバレットを撃ち込んでいく。すると1つ目の球体は変体し始め、少しずつ形を変えていった。

 

 -外部居住区-

 

 第一部隊が左遷されて数日が経った。その影響は図らずとも、以前ユウキが第二部隊、第三部隊の隊員を負傷させた事への穴埋めにもなっていた。

 結果、負傷させられた者の仕事を第一部隊が請け負い、怪我の回復に集中出来ていたため、すぐに怪我が治っていた。

 

「さあ、復帰第一戦だ!!気合い入れて行くぞ!!」

 

「しかし、本調子を取り戻すまでは無理をするなよ?」

 

「だぁいじょうぶ立って!!ブレンダン先生は心配しすぎだ!!」

 

 神機使い故の高い再生能力のおかげか、ユウキに腕を折られた腕はたった数日で治っていた。それを証明すべく、タツミはブレンダンの前で手を握ったり開いたりして、それから腕をぐるぐる回してもう大丈夫だとアピールする。

 

「カノンさんも足…また痛む様なら無理はしないでくださいね」

 

「大丈夫ですよ。もうすっかり良くなりました…あっあの人達は…」

 

 怪我繋がりで以前ユウキに足を撃ち抜かれた事もあり、アネットはカノンの怪我を気にかけるが、カノンは何とも無さそうに歩いていく。

 しかし、本来カノンの適合率は非常に高く、その事もあって怪我の回復も早いはずだった。膝を撃ち抜いたといっても、間接は外してあったので、骨と筋肉の再生だけですぐに治るはずなのに、今回の回復は時間がかかった事でカノンに何か異常が起きているのでは無いかとアネットは心配している。

 そんな中、カノンは黒いバイサーを着けた神機使い達が外部居住区の民家の屋根に乗ってアンテナのようなものを設置していた。

 

「アーサソール…確かガーランド支部長の私設部隊だったな」

 

「何を設置してるんでしょうか?」

 

 特徴的な風貌からブレンダンは件の人物達がアーサソールの隊員だとすぐに分かった。何をしているのかと聞いてくるアネットだが、誰も何をしているのか、何が目的なのか分からず、全員が首を傾げる事となった。

 

「ガーランド様が開発したレーダーですよ」

 

 いつの間にかアーサソール隊長のレオンがすぐ近くまで来ていた。突然の事にその場に居た第二部隊は驚いた。

 

「はじめまして。私はガーランド様の私設部隊アーサソール隊長、レオン・マックスフィールです」

 

「お、おう、よろしくな。大森タツミだ」

 

「ブレンダン・バーデルだ」

 

「台場カノンです。よろしくお願いします」

 

「アネット・ケーニッヒと言います。よろしくお願いたします」

 

 動揺しつつも、第二部隊は自己紹介していく。タツミとブレンダンはフランクな挨拶、カノンは一礼しながらの挨拶、そしてアネットは敬礼しつつ自己紹介する。

 

「それで…さっき言ってたレーダーって何を監視するものなんでしょうか?」

 

「簡単に言えばアラガミの反応を察知するものです。これは従来の物よりも高性能でアラガミが侵入、発生した地点をより早く、より正確に把握する事ができるのです」

 

 敬礼を解いたアネットがもっとも疑問に思っている事をレオンに尋ねる。レオン曰く、設置しているのは最新のレーダーのようだ。

 検知範囲を従来のものよりも敢えて狭くし、感度の高い物を多数設置する。これにより検知範囲を細分化し、1つのレーダーで確実にアラガミの反応を捉える。それにより、これまで以上に正確な発生位置、侵入経路を把握するとためだとレオンは説明する。

 しかし、その間レオンはアネットしか見ていなかった。バイサー越しであってもタツミ達とは目を合わせようともしない事に、第二部隊は違和感を覚える。

 

「貴女も新型でしたね。どうですか?同じ新型で構成されたアーサソール隊でその能力を有効に活用してみませんか?」

 

 レオンはアネットに手を差しのべ、所謂握手を求める。それは同じ新型のアネットをアーサソールに勧誘している事と同義でもあった。『同じ新型』と言う理由での勧誘に、その場に居る者…特にタツミとブレンダンの目付きが険しくなった。

 

「え、えっと…わ、私は第二部隊の所属なので、お誘いには乗れません。ごめんなさい」

 

「残念です。ただ、気が変わったらいつでも言ってください。我々は貴女を歓迎しますよ」

 

 アネットは突然のスカウトに慌てる。しかし彼の誘いに乗るのはこれまで世話になった第二部隊を裏切る事になる。タツミ達はその事で何かを言うことは無いだろうが、アネットは第二部隊を裏切る事を心苦しく思い、頭を下げてレオンの誘いを断る。するとレオンはアリサの時と同様、抑揚の無い声とバイサーのせいで表情が読めない事もあり、本当に残念に思っているのか分からなかった。そしてレオンにはその場を去っていく。

 

「…俺達は眼中に無いって事か」

 

「何かあれだな…新型至上主義っつーか…入隊当初のアリサみたいだな」

 

「…それはもう忘れてあげてください」

 

「…?」

 

 バイサーで目線は分からなかったが、先程話していた時のレオンは顔をアネットの方にしか向けず、タツミ達とは顔を合わせようともしなかった。この事からも、レオンはタツミ達『旧型』の事は眼中になく、この場に居た新型のアネットにしか興味がなかったと伺える。

 その時の様子が転属してきたばかりのアリサと何となく重なり、ブレンダンとタツミは思わず呟く。しかし、それはアリサにとっては消し去りたい黒歴史でもあり、カノンは蒸し返すのは止めてやれと言う。アネットは入隊当初のアリサを知らないため、何の話をしているのか分からず、疑問符を浮かべて首を傾げていた。

 

 -鎮魂の廃寺-

 

 第一部隊はガーランドの命令で旧寺院に来ていた。言い渡された任務はアーサソールがユウキの捜索が出来る様に予めアラガミを倒しておくと言うものだった。

 ターゲットを探している中、中庭でセクメト、極地対応型グボロ・グボロが奇襲をかけてきた。散開して躱すとそのまま反撃に出る。しかし、再びソーマが不調となって思い通りに動けないでいた。

 

「チィッ!!」

 

 戦闘が続いていくうち、動きの悪いソーマの隙をついてセクメトが一気に接近してきた。そして炎を纏った手刀を繰り出し、ソーマに襲い掛かる。それを後ろに躱すと、背中を石垣にぶつける。

 

「ソーマ!!」

 

 動きを止めてしまったソーマのフォローにコウタがオラクル弾を撃つ。セクメトは追撃を諦めて後ろに下がる。その隙にソーマは神機を握り直してセクメトとの距離を詰める。

 

  『グォォオッ!!』

 

 しかしその間に極地対応型のグボロ・グボロの砲塔が横からソーマを狙う。だが、その後ろからアリサが急接近してくる。

 

「させません!!」

 

 アリサが後ろからグボロ・グボロを切り裂く。弱点の炎属性の攻撃を受け、あっさりとコアごと両断された。

 

「くた…ばれぇ!!」

 

 追撃するものが居なくなり、ソーマの一撃がセクメトへと襲い掛かる。

 

  『ズシャッ!!』

 

 ソーマの常人離れした力でとどめの一撃を浴びせる。セクメトの上半身ははね飛ばされ、中のコアはバラバラに砕けていった。これで任務は終了だ。後はアーサソールが到着まで安全を確保するだけだ。

 

  『『グォォオッ!!』』

 

「まだいやがるのか…」

 

「関係無いね。サクッとやっちゃおうよ!!」

 

 任務終了かと思いきやオウガテイル2体の追加となった。2体のオウガテイルがソーマに向かっていく。

 

「グッ?!」

 

 迎撃に向かおうとしたが、突然頭痛に襲われたソーマはその場にしゃがみこむ。動けないソーマの代わりにコウタがオウガテイルにオラクル弾を撃つ。しかしオウガテイルは左右に避けて、2体とも尻尾を振り回して刺を飛ばす。

 ソーマは装甲を展開して防ぎ、コウタは横に跳んで避けた。そしてその後ろに居たアリサが追撃しようと、銃形態に変形してオウガテイルに銃口を向ける。

 

「ッ!?」

 

 しかしアリサが撃つよりも早く、上階から刺が飛んできた。それを後ろに跳んで避ける。飛んできた方を見ると、上階の壁の上にオウガテイルがもう1体立っていた。上のオウガテイルが飛び出してアリサに飛びかかる。アリサはそれを横に跳んで躱す間、中庭に居た2体のオウガテイルの内、1体が再度刺を飛ばし、コウタがそれを避ける。その間に最後のオウガテイルがコウタに向かって走ってくる。

 しかし、ソーマが間に割って入り、コウタに近づいてくるオウガテイルを切り倒す。

 

(…ッ?!身体が動く?今なら!!)

 

 今まで不調だったが、突然好調に変わった事に気付いたソーマは刺を飛ばした敵と距離を詰める。オウガテイルは本能のままにソーマを喰らおうと走ってくる。

 

「当たれぇっ!!」

 

 ソーマに反撃しようとした敵をコウタが撃つ。足を撃って敵の動きを止めるとその隙にソーマがオウガテイルを切り裂いて倒した。

 周りを見る余裕ができたのでアリサを見ると、既に剣形態に変形して最後のオウガテイルを倒していた。

 

「アリサは大丈夫みたいだね」

 

「ああ。だが、さっきのアラガミ共…何と言うか…妙な動きだったな」

 

「はい。単騎での不意打ちではなく、チームを使って奇襲や隙を作るだなんて…何だか今までに無い動きかたでしたね…」

 

 3人が合流して、先のアラガミ達の戦い方に違和感を覚えた事を話し合う。複数のアラガミが神機使いを分断し、後から奇襲を仕掛けて各個撃破を狙うなど、今までに無い戦い方をしてきた事に違和感を覚えていた。

 

(アラガミの動きの件もそうだが、やたらと調子か悪い。しかも突然調子が戻ったと思えば今度はアラガミがいつものように本能に任せた動きになっていた…どうなってやがる…?)

 

 しかし、いくら考えても結論は出ることはなかったため、第一部隊はその場を後にする。その様子を本殿よりも更に上の崖から黒いバイサーを着けた神機使い…アーサソール隊が数人、第一部隊の戦いを見ていた。

 そしてその傍らにはアンテナが設置されていた。

 

「こんなものか…実験そのものは成功だな。引き上げるぞ」

 

 アンテナを回収した後、アーサソール隊も引き上げていった。

 

To be continued




あとがき
サイコパス3盛り上がってきた…楽しみだぁ(^p^)

今さらながらガーランド様とレオンの設定です

ガーランド・シックザール
漫画版GODEATER-スパイラルフェイト-に登場した新支部長。ヨハネス・フォン・シックザールの実弟でソーマの叔父。浮世離れした雰囲気の美形の男性、その為フェンリルの女性社員に非常に人気がある。アラガミが現れる以前は教鞭を振るっていた様だが、アラガミに教え子を殺された際に、自身も右足と左目を失った。


レオン・マックスフィール(21)
アーサソール隊の隊長で常に黒いバイサーを着けている短い金髪の青年。ガーランドに心酔しているのか、命令には絶対服従し、ガーランドに危険を与える者は痛め付けてから排除しようとする。新型至上主義なのか、旧型神機使いとは基本話すどころか見ようともしない。反面、新型を見ると何故かアーサソールへ勧誘しようとする。

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