GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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パソコンには詳しくないです


mission106 剔抉

 -荒野-

 

 あらゆるビルや建造物が破壊され、荒れ果てた荒野となったかつてのオフィス街…深夜となり、まさしくゴーストタウンとなったその場所を1台のジープが走っていた。乗っているのは運転席に1人だけで、その助手席に神機を2つ立て掛けていた。運転していたのは白髪に赤銅の目をした美女に見える青年『神裂ユウキ』だった。ただ、何時も乗る車とは違いフェンリルのエンブレムが刻まれていない車両に乗っていた。

 行方を眩ませた後のユウキは『拠点』の近くに現れたアラガミを全て倒した後、荒れ果てた荒野を車でひたすら走り、また拠点に戻る…そんな生活を繰り返していた。今回もアラガミを倒して、廃墟が建ち並ぶビル街で車を走らせていた。そんな中、比較的にダメージの少ないビルの前まで来ると、ユウキはビルの横まで車で移動する。

 そしてテキトーな場所に車を停めると、廃ビルの地下へと続く階段を下りていく。降りた先には古びて錆び付いた鉄製の扉があった。

 

「…」

 

 ユウキは迷う事なく古びた開け、地下室へと入って行った。

 

「よう、帰ったか」

 

「お帰り」

 

 そこには特務で極東支部を離れているはずのリンドウとサクヤがそれぞれのパソコンと向かい合いって何かの作業をしていた。ユウキが帰ってきたと分かると作業の手を止めて挨拶するのだが、ユウキは特に気にする様子はなく、神機を立て掛けると空いているパソコンで作業を始めた。

 

 -隠れ家-

 

 ユウキ達が居る場所はかつてフェンリルを去ったペイラーが使っていた隠れ家だった場所だ。身を隠しながら研究をするため、それなりの機材は揃っているし、生活できるだけの環境は整ってる。

 そんな場所で特務を受けていたユウキ達はガーランドの目的を探るため、リンドウとサクヤは特務、ユウキは任務中で行方不明と言う形で極東支部を離れて彼の目の届かない所に潜伏していた。そこでユウキ達はかつてペイラーが使っていたパソコンを使ってフェンリルのメインサーバー…特にガーランドの個人データベースへとハッキングを仕掛けていた。そして各々がサーバーへのアクセスを試みている最中、リンドウがユウキに話しかける。

 

「現場はどうだった?」

 

「特に何も…いつもと変わらないですよ。それより、俺が哨戒に出ている間に状況は変わりましたか?」

 

 リンドウが戦場での様子を聞いてみたものの、ユウキはキーボードを叩き続けながらも特に何もなかったと素っ気なく返す。それよりもデータ解析の進行度合いの方が気になっていてその事を聞き返した。

 

「何とかガーランド支部長のデータベースに侵入してサルベージを始めところよ。今のところまだ大きな成果は無いけれど通信履歴は探り当てられたわ。どうやら元本部長代理とよく連絡を取っていたみたいなんだけど、内容まではまだわからないわ」

 

「ご丁寧に全データを消去してやがるみないでな。俺はバックアップデータが無いか探してるがまだ何も…論文のデータでも出てきてくれりゃあ何考えてるか分かりそうなんだがな」

 

 サクヤとリンドウが進捗を報告する。どうやらガーランドの個人データベースの中身は全て消去されていた。かろうじてサクヤがデータのサルベージで元本部代理との通信履歴を探り当てたのだが、ユウキは全てのデータを消したと言う事実に違和感を覚えた。

 

「…論文のデータもですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 ユウキが感じた違和感の正体は論文のデータさえ残っていなかった事だった。仮にもガーランド自身もアラガミ進化論等の論文を出す様な研究者のはず…そのガーランドが自身の研究データどころか、参考にしたであろう論文さえ残す事なく消していた。この事実がキナ臭さをより強めている。

 仮に自身の研究を悪用する意図がないのなら消す必要など無いし、そもそも消す理由が無い。それを消すと言うことは、公開されていない研究データを知られてはマズイ理由があるのだろうと考え、ユウキは消されたであろう論文データを探す事にした。

 

「…分かりました。俺は論文探しの方に回ります」

 

「ええ、お願い」

 

 ユウキが論文探しを担当すると提案すると、サクヤはすぐに了承して任せる事にして、作業を再開した。

 その最中、『こうなると分かってハッキングを教えたんだろうな』と、ペイラーがハッキング技術をユウキに教えた理由を考えていた。

 

(…喰えない奴だ…)

 

 自身の潔白と無害を調査、証明する手段としてハッキングを教えつつ、その技術を使って後に極東支部の支部長として赴任するであろうガーランドの動向を探らせると言った、今後の展開を考えた上での采配だったのだろう。

 そんな事を考えながら作業をしていると、サクヤが口元を隠しながら『ファ…』とあくびをした。

 

「サクヤ、昨日から寝てないだろ?今日のところはもう休んでおけ」

 

 サクヤがあくびをした事で、彼女は昨日からまともに休む事なくパソコンと向き合っていた事を思い出したリンドウが1度休むように伝えると、サクヤは少し驚いた様子で返す。

 

「え?私はまだ大丈夫よ?それに、休んでないのは2人も同じでしょ?私1人甘えるのは…」

 

「寝てください。全員徹夜して思考が鈍るよりは誰か1人が冷静な判断を下せる状態にしておいた方がいい」

 

 しかし休んでいないのはユウキもリンドウも同じだった。周りが気を使ってくれたのだろうが、自分1人がその厚意に甘えるのは悪いと思っているのか、1度は断った。だが、思考ができる人が最低でも1人は欲しいと言って、ユウキはサクヤの言い分をバッサリと切り捨てる。

 

「けど…」

 

「命令だ」

 

 それでもなお食い下がるサクヤに対して命令と言う名目でユウキは無理矢理にでも休ませる。

 

「…分かった。じゃあ、そうするわね…」

 

 席を立って『おやすみ』と言ったサクヤは部屋を出ていき、寝室に入っていった。それを見届けた後、キーボードを叩くいたままリンドウは作業を続けるユウキに話しかける。

 

「お前も休めよ。戦闘もしてたんだし、疲れたろ?」

 

「大丈夫です」

 

 休めと言うリンドウに対してユウキは素っ気なく返す。

 

「お前ももう何日も寝てないだろ」

 

「どうせ近くで人の気配がする場所じゃあ寝れませんよ」

 

 先に休ませたサクヤもリンドウそうだが、ユウキも作業を始めてから数日は寝ていない。ユウキの体調も心配した上で休めと言ったのだが、寝首をかかれるかも知れないと警戒しているため、ユウキはどうあっても寝るに寝れない状態だった。

 

「そうか…でも、よくアナグラに戻ってきたな」

 

「…?」

 

「お前が受けた扱いを考えたら、戻ろうとは思わないだろうさ。少なくとも…俺があの立場なら帰ろうとは思わない…なあ、何で戻ろうと思ったんだ?」

 

 リンドウの声からは安堵したような雰囲気が込められていた。ユウキが帰ってきた事実を喜んで居る様だが、いきなりそんな話をする理由が分から

ず、ユウキは疑問符を浮かべなが作業を続ける。

 しかし、理由が分からないのはリンドウも同じだった。何故あんな仕打ちを受けて、他人の側に居るのが危険な状況で極東支部に戻ってきたのか…一見デメリットしかない状況にリンドウはその疑問をユウキにぶつけてみた。

 

「別にアイツらが俺を排除しようとしたのは何ら不思議な事ではありません。生物は本能的に死を恐れる。その原因である俺を殺してでも安寧を得ようとするのはある意味自然な行動です。それに、世界情勢の把握、神機の整備、それから俺の死体処理ができる環境が必要だからです」

 

「…本当にそれだけなのか?」

 

「くどいですよ」

 

 だが、ユウキはあくまでも前回全員集めた時に話した通りだと言う。リンドウが再び問い詰めるが、返す声には苛立ちが込められていた。

 

「…さっきも言ったが、俺がお前の立場なら戻ろうとは思わない。自分の受けた仕打ちもそうなんだが、自分の死で終末捕食が引き起こされるってんなら、その事を伝えて身を隠す方がお互い安全なはずだ。神機の整備だって必要になれば戻ってくれば良いだろ?」

 

「…」

 

「それによ、自身の身の上を考えたらお前に手を上げるやつは即殺っちまうのがベストだ。でもお前はそんな事をせずにお前は今までは手を上げてきた奴をボコボコにして心を折る程度に止めている。そんなリスクしかない事をしてでもアナグラに帰ってきたのには何か理由があると思う方が自然だ。違うか?」

 

 ユウキが帰ってきてからの言動には矛盾する所がいくつもあった。リンドウがそこを突いていくと、最後にはキーボードを叩くユウキの手が一瞬止まる。その後すぐに作業を再開し、再びキーボードを叩く音が聞こえてきた。

 

「…他の理由なんてありませんよ」

 

「…そうか。まあ、別にお前がどんな理由でアナグラに居ても良いさ。ただな…すぐには無理かもしれないが…俺達の事を信用してくれてよ?」

 

「…実力は信用してます。ただ信頼は出来ない」

 

「…」

 

 しかし、その矛盾した行動については話す事はせずに、信用しているのはあくまでも実力であり、リンドウ達の事は信頼してはいないと突っぱねる。これ以上は何を聞いても無駄かと思い、リンドウはそのまま黙って作業を進める。

 そんな中、ユウキは復元が完了した通信履歴からオランダ支部のサーバーへアクセスした形跡を見つける。そしてそこからまた別のサーバーに繋いでいた様だ。ドイツ支部、イタリア支部、中央アジア支部、ロシア支部、そして最後には極東支部に繋がっていた。

 そしてそこには目当ての論文のデータが入っていると思われるフォルダを見つけた。

 

(成る程…自身の端末上には通信の記録しか残っていなかったのはそう言うことか…いくつものサーバー経由して、別のサーバー上に論文を残していたのか)

 

 ガーランドの端末でサルベージをしても通信履歴しかめぼしいものが出てこなかったのは全てのデータは極東支部のサーバーに記録していたからだった。万が一記録を探られても極東支部に罪を擦り付けるつもりだったのだのだろう。

 そんな事を考えながらフォルダを開くと文書ファイルが現れた。

 

「…これは…」

 

「何か見つけたか?」

 

 ユウキがファイルの中身を見て声を漏らす。それを聞いたリンドウもユウキが何かを見つけたと察しがついて声をかけた。

 

「いくつか論文データが出てきました。それから、それらを要約した文書ファイルも…」

 

「論文は面倒だ。文書ファイルを読んでくれ」

 

「なら…『新型P53偏食因子が人体に与える影響』から…」

 

 ユウキがざっとタイトルに目を通す。そこには論文と思われる堅苦しいタイトルの文書ファイルとそれらと同じタイトルに【要約】と書かれたテキストデータが現れ、リンドウの指示で真っ先に目についたテキストデータを開いて読み始めるた。

 

「アラガミを構成するオラクル細胞内の偏食因子からは【偏食場】と呼ばれる特殊なパルスを発生させているようだ。これはその名の通り、アラガミ…強いてはオラクル細胞の捕食傾向を決めるものであり、アラガミは常にこの偏食場を発している。これらを感知する事によってアラガミ達は互いの偏食傾向を知り捕食対象の選別をしているようだ。

 これは偏食因子を投与した人間にも同じことが言える。因子を取り込み、脆くもありながらも遺伝子を一部書き加え、細胞に偏食因子の効果を取り込ませている。当然神機使いからも偏食場は発生している。

 さらには近年実用化した新型用の偏食因子についても分かった事がある。新型も旧型と同様に投与された際、血流に乗って脳に運ばれる。この時、新型偏食因子は微量ながら脳内へと取り込まれ、一部の神経細胞と結合する事が分かった。その結果、脳波は偏食場に乗って飛んでいき、別の偏食場と干渉した際、脳波が繋がる可能性がある。これにより新型同士は意識の共有、交感する感応現象を引き起こす可能性があると思われる。

 これを利用すれば人とアラガミとの感応、さらには他者の意識領域へのアクセスも可能かも知れない。しかし、人と人でさせ何が起こるか分からない。ましてやアラガミとなど、その際のリスクは計り知れない。今後、詳しく研究していかねばならない」

 

 ユウキが淡々とテキストファイルを読み上げた。その内容は新型神機使い同士で感応現象を引き起こす理由とメカニズムについてだった。テキストデータには明言されていないが、わざわざ新型の特性として書かれている事から、この偏食因子が脳神経と融合するして感応波と脳波を発するが新型神機使いの特徴なのだろう。

 新型神機が変形機構を使えるのもここから来ているのだろうと考えていると、ユウキの目に論文の作者の名前が映る。

 

「この論文の作者は…大車ダイゴ?」

 

「そいつは…アリサを洗脳してたってやつだよな?」

 

「ええ…同姓同名の別人じゃなければ…まあ…どうでもいい事ですが…」

 

 予想外どころか全く関係の無さそうな名前が出てきた事にリンドウどころかユウキは内心驚いた。だがその後、特にユウキはリンドウを罠に嵌めるためにアリサを洗脳した相手の名を聞いて、怒りが再び沸き上がるどころか何の興味も示さずにまた新しい論文を読み始める。

 

「他には感応現象を応用した新世代神機使い…となっていますね。著者はラケル・クラディウス」

 

 ユウキは論文のタイトルと著者の名前を読み上げる。そして要約されたテキストファイルを開く。

 

「偏食因子発見初期から存在が確認されていたP66偏食因子だが、これは人体への投与が出来るような代物ではなかった。投与すると、短時間で細胞変異を起こし、体細胞をオラクル細胞へと変化させる。その理由として、変異したオラクル細胞が発する多種多様な偏食場パルスの影響が考えられる。

 本来ならば個々の細胞によって偏食の傾向は違うのだが、コアの統率により個々の細胞の偏食傾向が近いものを集める、或いは一部偏食傾向の修正を加えている。これにより、アラガミ一個体に使用されるオラクル細胞の偏食場パルスは一定のものに固定される。

 同様にP66偏食因子によって変異したオラクル細胞はそれぞれが個別の偏食傾向を持っている。これらを統制し、すべての細胞の偏食傾向を一致させれば大きな偏食場パルスを形成し、神機、人体の双方に大きな影響を与えると考えられる。

 その為、人体投与を想定した調整、改良を加え、【偏食因子ブラッド】として新たな偏食因子を開発した。この偏食因子ブラッドは理論上、元となったP66偏食因子と同様、多様な偏食場パルスを形成する。それらの傾向を人為的に統制する事で、神機との間に偏食場パルスを介した繋がりを持たせ、適合者の闘争本能、潜在意識、意思の力によって戦闘能力を大幅に増幅させる事が可能になる。

 ただし、現状の正規適合モデルが『ジュリウス・ヴィスコンティ』のみであり、適合者発見の難度は非常に高いものになっている。適合者そのものの希少だが、偏食因子の改良も今後の課題となっていくだろう」

 

 一通りのテキストファイルを読み上げたユウキは顎に手を当てて考え込む。

 

(新世代神機使い、ブラッド…論文を読んだ限りでは感応現象を戦闘に応用した神機使いのようだが…)

 

 感応現象で神機と繋がりを持たせる…その方法としている感応波の統制するというのは、恐らく複数の炎が合わさり、より強く、大きな燃え上がる炎となる様に、全身の細胞1つ1つから発せられる偏食場パルスを重ね合わせて強力な1つの偏食場パルスを作り出そうというものだろう。

 適合率で自身と神機の限界を超えるブレイカーとの違いは何かを、自身にも生かせる部分は無いだろうかと考えていたが、論文を詳しく読まない事には今は分かりようもない。

 ユウキは一旦思考を後回しにして、他の論文のタイトルを読んでいく。

 

「他にもいくつかありますが…偏食場パルス…いや、感応現象についての論文ばかりですね。特に感応現象が人やアラガミに与える影響に関するものを重点的に調べていたようです」

 

 他の論文も感応現象のメカニズムや応用技術、そしてそれらが与える人とアラガミへの影響を思わせるタイトルばかりだった。

 しかし、ユウキは論文の内容よりもこの論文の存在そのものに疑問を持っていた。記憶の限り、ノルンではこれらの論文見たこともない。恐らく未完か研究中、或いはフェンリルの都合で公開されていない論文ばかりだ。

 一部隊員のユウキとフェンリル重役のガーランド…閲覧できる文献に差があるのは当然だろうが、何かキナ臭さを感じているとリンドウに声をかけられる。

 

「こっちはこっちで面白いものファイルを見つけたぜ…見てみろよ」

 

 リンドウが見てみろと言うので、ユウキは席を立ちリンドウが操作するディスプレイを見る。そこに映っていたのは誰かに送った報告書ファイルのようだ。

 

『アラガミのコアに直接別種のコアを取り込ませる事で、対象のアラガミを強制的に進化させる事が可能であると判明しました。この強制進化には規則性があり、これを利用する事で思い通りの能力のアラガミを作り出す事が可能です。全てを滅ぼす攻撃能力、他者を寄せ付けぬ防御能力、特別な力を持った特殊能力の発現、それらを駆使する事であらゆるアラガミの能力を併せ持つ全能であり究極のアラガミを創造する手順を逆算し、我らの力として利用できるでしょう。残りの問題もそう遠くないうちに解決する見通しとなっております。』

 

 文章を読み終えたユウキはガーランドの最終的な目的を大方察しがついた。その答えがいかにも子どもが考えそうな稚拙な内容だった…或いはその考えに行き着く自分が稚拙なのか…ユウキは二重の意味でため息をついた。

 

「文面を見る限り、奴さんは自分の研究で究極のアラガミとやらを作り出そうとしていたようだが…ユウ、どう見る?」

 

「究極のアラガミ…ね」

 

 『まあ、答えは出ている様なものだがな』とリンドウはユウキを見ながら心の内で考えていた。その後、間を置かずにユウキが自身の見解を話していく。

 

「…至極単純に究極アラガミと感応現象の2つを結び付けるとしたら、感応現象で究極アラガミを操り、世界の覇権を握る…ってところですか?」

 

 最強の力を手にした=もう誰も逆らえない=世界のトップで好き勝手する…と、自分が一番強いと錯覚した時の幼子がやりそうな内容に、ユウキは心の内で『小物臭い野望だな』と嘲笑する。

 

「やっぱり真っ先にそれが思い浮かぶか…博士から連絡のあったアーサソールはこの計画にどう絡んでると思う?」

 

「恐らく計画そのものには絡んでいないかと…単にアラガミを統制する前の実験段階か、或いは手駒の確保か…いざとなれば肉壁にでもしようとしてるじゃないですかね」

 

「…もうちょい人を壁とか盾以外の扱いを考えてやれよ」

 

 『流石にそんな扱いは不憫だっての』と、ユウキの変な方向に偏ったアーサソールが存在する理由をため息混じりにリンドウは否定する。

 

「ならリンドウさんはどう思うんですか?」

 

「ガーランド自身にはアラガミを統制する力はない。そこで新型部隊アーサソールの感応能力を使って間接的に究極アラガミを操ろうしてるんじゃないか?

そんで、奴さんが集めた論文の内容は感応現象の正体やら人とアラガミの意識に与える影響と言ったものばかりだ。それを使ってアーサソールを操り、反乱の芽を摘みつつ、アラガミを使役する…ってところだろう」

 

 リンドウの推測を聞くと、『その可能性の方が高そうだ』と考える。しかしアーサソールの運用目的が何であれ、自身の野心に従って動いている事には変わりない。どちらに転がってもロクな事にはならないだろう。

 

「どちらにせよロクでもない事には間違いない…敵ならば全て叩き潰すだけだ」

 

 ガーランドが悲願を成就させる過程で敵になるならば戦うだけだ。そう言ってユウキは席を立つとそのまま出口に向かって歩き始めた。

 

「おいユウ」

 

「俺は博士に報告しにアナグラに戻ります。リンドウさんはサクヤさんが起きたらアナグラへ…」

 

 リンドウに呼び止められ、ユウキは扉に手をかけたところで止まる。しかしその後顎に手を当てて考え込む様な仕草を取る。

 

「いや、外部居住区で待機を。リンドウさん達はアーサソールに勘づかれない為にも別行動で現地へ向かってください。どちらにせよ、サクヤさんをこのまま放って行く訳にも行かないでしょう?」

 

「それはそうだが…」

 

 突然の命令変更…ユウキの意図は何となくは読めるが、完全には分からず、リンドウは混乱しながら出ていくユウキを後ろから見送った。

 

To be continued




あとがき
 4話?5話ぶりにうちの子が登場です。博士から仕込まれたスキルを使ってガーランド様の端末にハッキング仕掛けたりしました。が、私自身はパソコンには全然詳しくないので結構テキトーに書いてます。電子戦を書ける(必要あるか分かりませんが)ように勉強とかしてみようかしら?
 リンドウさんがうちの子の思惑を探りつつもガーランド様の思惑の一端を暴き、報告のためにアナグラに向かったユウキですが、無事にアナグラまでたどり着けるかなぁ?

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