GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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事が起きた時、事態の終息よりもその後の処理や復旧の方が遥かに大変だったりしますよね


after5 事後処理

 -極東支部、支部長室-

 

 ガーランドが引き起こした謀反を鎮め、神機使い達が極東支部に戻ってきた後、様々な施設や設備を破壊された状態の極東支部に戻ってきたペイラーとユウキが事件の経緯を報告するために本部と通話で連絡を取っていた。

 

「…以上がガーランドが企てた騒動の報告です」

 

『成る程…アーサソール隊を殲滅したことで世界統一計画は阻止したものの、首謀者は行方不明…ですか。何にしても迅速な対応に感謝します』

 

 事件の経緯を説明し、エイジスに居た者は勿論、外部居住区の外に居たアーサソールも全滅させた事を伝えると、情報を引き出せなかった事にため息をつきながらも、業務に復帰した本部長は騒動の鎮圧に動いたユウキ達を労った。

 ちなみにアーサソール殲滅の事をペイラーに報告した時、洗脳が解けて記憶を失ったアーサソールは殺す必要はなかったと咎めたが、ユウキはいつか行う反撃の為に記憶が無いと嘘を言っている可能性がある事と、仮に本当に記憶が無いならガーランドの情報を引き出せないので生かす理由もなかったと言ってバッサリと切り捨てていた。

 

『本部の人間による謀反…これにより、極東支部には通常業務に支障が出る程の大きな打撃を与えてしまいました。我々本部の人間が新たな支部長を選出したとしても、不信感から統制が取れなくなる可能性さえあります。そこで、正式にペイラー榊博士を支部長に任命したいと思うのですが…引き受けてくれますか?』

 

 これまではペイラーの扱いの難しさから、本部は彼の権限を強化する事に二の足を踏んでいたが、ここに来てペイラーを正式に支部長へと任命しようと言うのだ。極東支部側からすれば信頼できる人間が上に立つ事になる。しかもペイラー独自の判断で支部や部隊をを運営できる為、条件は決して悪くはないはずだったが、当のペイラーは予想に反してペイラーは小さくため息をついた。

 

「…組織に属する身としては、辞令が出れば否が応でもやらねばならないでしょう?どのみち、私に逃げ道なんてありませんよ」

 

 しかし、ペイラーからすればただただ面倒くさい仕事をさせられるだけだった。本人も自身は研究者だと言う自覚があり、その研究に割ける時間が大幅に削られるのはできれば避けたかった事だった。それを知ってか知らずか、本部長は小さく笑いながら話を続けた。

 

『分かりました。正規の書面と手配はまた後日…と言うことでお願いします』

 

『よろしいのですかアルベルト本部長?!この男は…』

 

 快諾…とはいかなかったものの、辞令が出たらやらねばならないと、半ば諦めに近い心情で支部長就任を了承する。しかし一緒にこの話しを聞いていた人事部長は難色を示していた。

 

『元々は我々本部の人間による失態です。なし崩しとは言え、尻拭いをさせた以上、相応の見返りは必要です。それに支部長の役職を与える事で枷をする事も可能となります』

 

 組織の役職を与える事でその支部に対しての責任を持たせる。それは下に就く者達の生活を盾にしていることと同じだ。マトモな人間であればその責任感から行動を制限し、上の意向に従わせる事ができる。そうやって腫れ物扱いのペイラーを懐柔することが本部長の狙いだった。

 

「そう言う真意は心の内に秘めていて貰いたいものだね」

 

『私はあなた方の様な腹芸は出来ない質なので…それではガーランド氏の謀反の事後処理を始めましょう』

 

「分かりました。ユウキ君、君からは何かあるかな?」

 

 本部長はペイラーを支部長に任命する狙いを臆面もなく語ると、ペイラーは聞きたくなかったとため息をついた。話が大方終わると、今度はユウキに伝える事があるかと聞いてきたので、ユウキは兼ねてから本部に要求しようと思っていた事を話す事にした。

 

「…俺からは2つ…話と言うよりは要求と言ったところでしょうか」

 

『ふむ、何でしょうか?』

 

 話ではなく要求と言う点に本部長は何処と無く興味を持ち、その要求の内容を聞いてみる事にした。

 

「まず1つは、本部が所有権を主張しているエイジス…それを極東支部に返してしてもらいたい」

 

『ふざけるなっ!!あれは本来全人類を保護するエイジス計画の為に造られたものだ!!エイジス計画が本部主導の計画である以上、あれは我々本部が所有すべきものだっ!!』

 

『落ち着きなさい。すまない、続けて』

 

 極東支部へのエイジス返還…それが第一の要求だった。しかしそれを聞いた途端に、人事部長が烈火の如く怒り出した。アラガミが地上を支配して以降、ただでさえ資源が尽きかけている中、エイジスは旧世界時の物品やオラクル資源とあらゆる資源の宝庫となっていた。

 それを狙ったアラガミ達が多数押し寄せては来るものの、それを無視してでも手の内に納めておきたい宝の山であることには変わらない。

 

「今回の一件で本部への信用は地に堕ちた。そんな状況でアンタらにエイジスを預ける訳にはいかない。また何をするかわからないからな。それに、本部は所有権を主張しているが、実際にエイジスの維持と管理にあらゆる資源を使っているのは俺達だ。それに対して、見返りどころか更なる搾取の枠組みを作ろうとしている。そんな連中のやることに着いていこうとは思わんだろう」

 

『貴様は我々を信用できんと言うのかっ?!』

 

 極東支部側からすれば争いの火種になりかねない物を本部に預ける事は出来ないと言うのが本音だった。

 元から本部を信用してはいなかったが、今回の一件でそれを決定的にしただけだったが、それに対して人事部長が更なる逆上で返してきた。

 

「…自分のポストに誇りを持つのは結構だが、権力を盾に人の上で胡座をかくしか能の無い連中に信用なんてあると思うのか?第一、今回の件はガーランドが本部にいる時点で準備はほぼ終わっていた。アンタ達が予め奴の動きを洗い出していれば、極東に来るよりも先に計画を潰せたはずだ。これを職務怠慢と言わずに何と言うつもりだ?」

 

『貴様の様な一介の雑兵ごときが我々上役を愚弄するかっ!!!!』

 

『止めたまえ』

 

 逆上した人事部長に対して、ユウキは今回の一件は本部の怠慢によって引き起こされた、肩書きしか能のない連中には信用などありはしないと煽る。

 するとその本性を現したかのように、自分よりも立場が下であるユウキ達神機使いを、雑兵の一括りにして罵倒する。それを聞いた本部長が少し強い口調で人事部長を止める。

 

「このまま本部の管轄に置いておけばまた陰謀に利用されかねない…ここで腐らせるよりも、俺達の方がアンタ達よりもあれを有効に使える」

 

『ふむ…成る程』

 

 アーク計画の後、エイジスの所有権を手に入れる為に本部が極東支部に着けたいちゃもんと同じ理由を使い、今度は極東支部がエイジスの所有権を主張する。それを聞いた本部長は何か納得したような声をあげる。

 

「あとは…俺に佐官クラスの権限を与えてほしい。正確に言えば部隊の指揮、編成の権限さえあれば後は一兵卒と同じでも構わない」

 

『貴様は士官学校を出てはいないではないかっ!!』

 

 続いてユウキは自身に実動部隊の編成が可能となる佐官の権限を寄越せと要求する。しかしユウキは民間からの徴兵で叩き上げで昇格してきた。当然佐官に上がる条件である士官学校を出ていない為、それを聞いた人事部長は怒り狂った。それに対してユウキは不思議そうな表情と声で返した。

 

「…?だからこうして頼んでいるんだが?」

 

『だからそれが…』

 

『…いえ、良いでしょう』

 

『本部長っ?!』

 

 本来ならば得ることの出来ない権限が欲しいから頼んでいるのに、何故その事に突っ込んで来るのか、ユウキには理解出来なかった。しかし人事部長からしたら持てない筈の権限を寄越せと言ってきている時点でおかしな事だと、再度怒り狂いながら説教しようとしたが、予想に反して本部長が了承してしまった事で、その怒りをぶつける様な勢いで本部長に聞き直した。

 

『先程も言いましたが今回の件は我々の失態です。その後の後始末を押し付けている以上、相応の見返りは必要となります。むしろこの程度で済むのならば、まだダメージは小さい方です』

 

 本部長曰く、ユウキの権限の強化とエイジスの返還程度で済むのならばダメージは大きくはないとの事だった。勿論エイジスを手放す事は痛手だが、極東支部から反撃されるよりはマシだと考えた結果だった。

 

『…わかり…ましたっ…』

 

『確か現在は中尉でしたね。こちらの都合でありますが、権限と階級が変わってくると面倒です。少佐への昇格の為、多少手続きの為に書類を書いてもらいますが、よろしいですか?』

 

「ええ、ありがとうございます」

 

『ただし、今後はこれ以上の昇進は出来ないと思ってください』

 

「分かりました」

 

『エイジスの返還も直に進めます。では、今回の会議はここまでとします』

 

 とにかく、ユウキの昇進とエイジスの返還が決まった。今回の決定に不服だったのか、人事部長は悔しさを滲ませた声でこの決定を承認した。この後はガーランドの件で極東支部の設備や外部居住区の復旧もあるため、会議はここでお開きとなった。

 

 -エントランス-

 

「…」

 

「「…」」

 

「「「…」」」

 

 ユウキが本部への方向をしている頃、エントランスには神機使いや極東支部のスタッフが集められていた。そんな彼らに対して、呼び出した張本人であるツバキとその理由であるシェリーとライラの3人が向かい合う様に立っていた。

 しかしツバキは何処から話していいものかを考えていて、シェリーとライラも状況がよく分からずに待ちに徹し、呼び出された神機使い達は目の前に見知らぬ女が2人も居てどう対応していいか分からずにしばらく無言となっていた。

 

「今日は諸君らに報告しておきたいことがある。まずは…全員『彼女』達が見えているか?」

 

「え…は、はい…」

 

「お、同じく…」

 

 ツバキの発言を聞いた大多数は過労で遂におかしくなったのかと思いながらも、死にたくないのでそれを口に出さずに見えていると答える。

 

「ならいい。博士とも話し合った結果、今後彼女らもアナグラの戦力として前線に出る事となったので紹介しておく」

 

「シェリーよ…よろしく」

 

「ライラだよ~…」

 

 挨拶を促された2人は自らの名を名乗るが、シェリーは目付きを悪くして、不機嫌そうな声色で話す。対してライラは何時もと変わらぬ様子で軽い調子でフランクに挨拶をする。

 しかしある人物を見つけると、ライラはその相手の方向に向かって放物線を描く軌道で急にジャンプする。

 向かった先は防衛戦の時、暴言で2人を迎えた神機使いだった。目的の人物の肩へ器用に着地して、所謂ヤンキー座りの様な状態になる。すると相手の髪を掴んで上を向かせると、ライラは頭突きでもするかのような勢いで顔を近づける。

 

「ヨ・ロ・シ・ク」

 

 どう見ても怒りと狂気に満ちた歪んだ表情で挨拶をする。突然の事と、ライラが発する異質な雰囲気に呑まれ、標的となった神機使いは動く事も言葉を返す事も出来ずにただ立っている事しか出来なかった。

 その後、相手をビビらせて満足したのか、ライラはさっきと同じ軌道で飛び上がり、元居た場所に戻っていった。

 

「彼女達は何と言えばいいか…ユウキの神機の精神が実体を持った存在らしい。色々と疑問に思う所はあるだろうが、その特性上、現時点では驚異ではない」

 

「い、良いんですかツバキさん?アナグラを狙ったスパイって可能性は…?」

 

 戦力が増える事は歓迎すべきことだ。しかし、その正体が神機の精神体などと、与太話も良いところだ。実在するかはともかく、極東支部の転覆を狙った組織の一員ではないかと疑ってかかるのも当然だ。

 

「問題ない。腕輪のIDを照合したが、どの神機使いとも一致しなかった。それに…目の前で突然消えるなんて人間には出来ない芸当を見せられたからな…我々の理解が及ばない存在なのは間違いない。あとは彼女らの言い分と現状に食い違いは無いと言うのも信用した理由だ。ユウキの指示でアナグラの防衛にも参加してくれた事を見ても、現時点では敵ではないと判断した。ただ、ユウキが我々を敵と認識した場合、その時は牙を向けるだろうな…」

 

「それ…信用できるんですか?」

 

 ツバキの説明を聞いた神機使いの一人が疑問を投げ掛ける。ツバキの話では説得するにしては根拠が乏しく強引だった。シェリーとライラについて軽く説明を受けても到底理解できる事ではないし、信用できる人の方が少ないのも無理はなかった。

 

「彼女らがその気になれば人知れずアナグラを壊滅させる事も可能だ。だがそれをしないのは、ユウキと彼女らに敵対の意思が無いからだ。それに、ガーランドとアーサソールによるアナグラへの襲撃により各フロアが攻撃を受ける中、博士のラボや役員区画の損傷が少なく、重要な施設を守れたのは彼女達のお陰だ。実力も申し分ない事と現状を鑑みて博士と協議した結果、以降は彼女達も戦力に加わる事が決定した。異論は認めん」

 

「そう…ですか」

 

「報告は以上だ。アナグラや居住区の復旧作業もある。各自速やかに持ち場へ戻るように。それでは解散」

 

 2人が極東支部を襲撃するつもりならば、ガーランドの襲撃に便乗した方が効率的だ。しかも自身の存在も秘匿でき、攻撃するなら絶好のタイミングだった。しかし彼女らはそれをせずに極東支部を護った。

 もしかしたら機密データを盗み出す為に支部を防衛したのかも知れないが、ユウキと自然に会話していた事もあり、少なくともユウキと近い関係である事は間違いないため、2人がスパイの可能性は低いと判断した。

 納得はしきれないものの、ツバキやペイラーが戦力に加えると判断した以上拒否権はない。渋々戦力の追加を了承すると、そこでツバキからの報告が終わりって各々持ち場に戻っていった。

 

 -神機保管庫-

 

 ガーランドの襲撃からの数日後、相変わらず独りで防壁の外にアラガミを討伐しに行っていたユウキが帰ってきた。そのまま神機保管庫に籠り、自分の神機を調整していると前触れもなく保管庫の扉が開いた。

 

「ここに居たんですね…」

 

 扉が開いて数秒後、後ろからアリサの声が聞こえてきた。

 

「…何だ?」

 

 だがユウキは振り返らずに作業を続けたまま返事をする。

 

「実は…少し前から、ロシア支部で新しい部隊の発足するって話が持ち上がっていて…しばらくロシア支部に戻ろうかと思うんです」

 

「そうか」

 

 アリサは言いにくそうにロシア支部へ一時転属する話をしたが、ユウキは興味がなさそうに作業を続けながら返す。

 

「何でも対禁忌種部隊が設立されるらしいのですが、ロシアでは禁忌種との戦闘実績はあっても討伐の実績は殆ど無いんです。そこで私が部隊の指揮や指導をしてくれないかと打診があったのですが…」

 

 どうやら禁忌種対策の一環としてロシア支部から呼ばれたようだ。今後も増えていくであろう強敵への対策が支部の隔たりを越えて行われるのはフェンリル…強いては人類にとっても大きな意味がある。

 しかし現在極東支部はあらゆる施設や設備が被害を受け、復旧作業をしながら通常の任務をこなしている最中と言うこともあり、アリサは相変わらず言いづらそうな口調で帰郷の件を説明する。

 

「いいんじゃないか。アリサが行きたいのならば行けばいい」

 

「分かりました。それじゃあ、少しの間アナグラを離れますね」

 

「あぁ」

 

 状況が状況なので、怒られるかと思って内心ビクついていたが、想像よりもあっさりと許可が出た。むしろ行きたいならば行けば良いと言っていたが、ユウキは大して感心をみせなかった。それを聞いたアリサも特に何かを言うわけでもなく、あっさりと保管庫から出ていった。

 

 -極東支部、ヘリポート-

 

 アリサが一時的にロシアへ帰る事が支部内に伝わってから数日が経った。一時転属の手続きも終え、あとは荷物と一緒にヘリに乗り込むだけだ。一時お別れと言うこともあり、ヘリポートには第一部隊が見送りに来ていた。

 

「アリサはロシア支部に一時転属か…しばらくは会えないのか」

 

「なんです?寂しいんですか?」

 

「そりゃあ仲間と離ればなれになるのは寂しいに決まってるじゃん」

 

 コウタが気の抜けた声でロシアに旅立つ日が来たんだなと言ってきたので、寂しいのかとアリサは茶化す。だがコウタは『何かおかしな事でも言ったか?』と言いたげな顔で、離ればなれは寂しいと答えたのでアリサは少し驚いたような顔をした。

 

「ユウは…やっぱり来なかったな」

 

 そしてコウタが辺りを見回しても、部隊長のユウキは部下であるアリサの見送りに来ている様子はなかった。色々と豹変してからと言うもの、見送りの為に集まる事はしないだろうとは思っていたが、心の何処かでは来てくれると思ってたので、コウタの言葉からは落胆の意思が滲み出ていた。

 

「良いんですよ。任務に出た以上、仕方ない事…ですから…」

 

 アリサ本人も仕事だからと割り切ったような事を言ったが、本心は別れ際に何か言葉を交わしたかったのが本音だった。それを証明するかのように、アリサの声は落ち込んだ声色をしていた。

 

「けど、何だってこの時期にロシアに帰る事にしたの?」

 

「…ここ最近、何も出来なかったから…」

 

 ここでサクヤが誰もが思っていた事をアリサに尋ねる。今、極東支部や外部居住区の至るところがアラガミによって破壊されている。神機使い達の中にも自らの部屋を失っている者が多数いる程の被害だ。

 第一部隊や付き合いの長い連中は特別、悪感情を持ってはいないが、入隊して日の浅い隊員達は『何故こんな大変な時に?』と思うのも無理は無い。そんな疑問を投げ掛けられたアリサはその背景を察したのか、少し下を向いて言いにくそうに返した。

 

「私…立ち直れたと思ってたんです。でも、ユウが居なくなって戦えなくなったり、記憶を失くした時も取り乱して…結局、今までのように戦えなかった。今のままだと、足を引っ張るだけになってしまう…だから、ここで1度自分を鍛え直そうと思ったんです。それに…」

 

 ユウキが居なくなってから戻ってきた後まで、ユウキの事を気にしすぎて本職であるアラガミ達との戦闘がおざなりになっていた。その結果、何の役にも立てなかった事を後悔していた。

 この様な心持ちでは自分は勿論、周りの人間にも危険が及ぶ。ここできっちり戦える様にならないと迷惑ばかりかけるとアリサ自身も感じていたが故の転属だった。だがそれとは別の目的もあるのか、アリサは言葉を続ける。

 

「もうこれ以上…ユウにおかしな事をさせない為にも、彼と対等な存在だと認めさせないといけないと思うんです。そして…いざとなったら、力ずくでもユウを止める。でないと…ユウの帰る場所が…何処にもなくなってしまう気がして」

 

 自分を鍛える目的もあるが、自身も力を付けないとユウキが暴れた時に止める事が出来ずにさらに孤立してしまう。この通りに孤立したのならばそれは自業自得だが、そんなことをさせない為にもユウキを止められるだけの強さを持っていると認めさせないといけない。

 自らをもう1度鍛え直すきっかけを思い出す様に、その決意を言葉にして改めて第一部隊へと伝えた。

 

「武者修行…ってわけか」

 

「はい。そんなところです」

 

 リンドウの例えは的確だった。ユウキ一人の状態からモロに影響を受け、ろくに戦えなくなった自分への戒めと鍛え直し…今の例えがピッタリだと感じたアリサは肯定をリンドウに返す。

 

「アリサはまだ…ユウの事を信じてるんだ…」

 

「はい。私には、どうしてもユウが本心でやったとは思えなくて…」

 

 『そう思いたいだけかも知れませんが…』とアリサが付け足すと、コウタは『そっか…』と返す。しかしこれ以降会話が続かず、しばらく沈黙が続いて気まずい雰囲気になってしまった。

 

「…あーっ!!ごめんっ!!せっかくの見送りが湿っぽくなっちゃった!!」

 

「そうですよ。コウタは元気しか取り柄が無いのに、悩んだり落ち込んだりするなんてらしくないですよ」

 

 せっかくアリサが新しい決意をして旅立つのに悲しんでちゃ勿体ない。沈んだ空気を払拭するためにも、冗談目かしてコウタが『あんだとぉ?!』と怒るとその場から笑い声が響いた。

 

「それじゃぁ…そろそろ行きますね」

 

 一頻り笑った後、遂にアリサは出発する事を伝える。

 

「元気でな!!」

 

「向こうに着いたら連絡ちょうだいね」

 

「達者でな。やること終わったらちゃんと帰ってくるんだぞ」

 

「せいぜい頑張ってこい」

 

 それぞれが別れ際にアリサを激励する。それを聞いたアリサは『いってきます』と言ってから踵を返す。一時的とは言え仲間との別れと一番話したかった人と会えなかった寂しさ、それから新しい部隊への期待と不安を胸にヘリへと乗り込みロシアへ旅立った。

 

 -荒野-

 

 辺り一面荒れ果てた荒野に、数え切れない程のアラガミの死体が散らばっていた。そしてその中心に居たのはユウキだった。目に映った敵は全て倒し終えたのを確認すると、ユウキは神機をしまって歩き出そうとする。するとちょうど極東支部からヘリが飛んでいくのが見えた。

 

(…行ったか…)

 

 今しがた飛んでいったヘリがアリサをロシアに連れていくものだと察したユウキは、しばらくそのヘリを眺めていた。

 

(…まあ、アリサなら大丈夫だろう…)

 

 アリサは強い。それはユウキだって良くわかっている。禁忌種程度に遅れをとることはないだろうと考えると視線をヘリから逸らし、ユウキは宛もなく独り荒野を歩き始めた。

 

Next Part 111




あとがき
 事後処理って面倒ですよね。やってもやっても終わらない…
 てな訳でスパイラル・フェイト編が終わりました。この後、ガーランド様の襲撃で内部からダメージを受けたアナグラの修復、外部居住区の再建等々、やることがいっぱいです。
 そんな中、アリサがロシア支部に武者修行に行ったり、ガーランド様が誰かと密かに組んだりと動きが出てきました。そろそろ本小説も後半戦に突入し、アラガミの驚異がある中、未だ人と人が権力争いをしている等、問題が山積みとなっています。その辺の問題をどうやって解決させよう…かなぁ…
 下に人物紹介乗っけときます。今回は多いです。

Norn -登場人物-

  シェリー
  性別:女(?)
  年齢:???
  誕生日:???

使用神機             
 刀身: アイーダ(ショート)
 銃身:エルフ・ヴィッリ(スナイパー)
 装甲:ヘンリー(シールド)

 ユウキの神機の精神体を名乗る長い金髪、金目の長身の女性。本来は実体もないし視認できる存在ではないが、ユウキが感応現象を応用して周りの人間に認識させている。戦場には似つかわしくない背中がざっくりと開いた黒いドレスを着ている。
 目付きは鋭く、いつも怒っている様な雰囲気の通り、口調もきつい。他人には突き放すような態度で接するが、ユウキの指示には必ず従う。
 戦闘では軽い神機構成と、自身の身軽さを生かして踊るように戦い、戦場を駆け回る。さらにショートブレードでボルグ・カムランを一撃で真っ二つに切り捨てる等、ひと並外れた強さの持ち主でもある。
 他者には気を許さないが、同じ神機の精神体であるライラとは仲が良く、ユウキには軟化した態度で接する。しかしユウキからは信用されていない事を気にしている。
 そしてアリサに対しては顔を見るだけで憎悪が隠せなく程嫌いっていて、初めて会ったなりに全力のビンタを浴びせた。

  ライラ
  性別:女(?)
  年齢:???
  誕生日:???

使用神機             
 刀身:クツナギ(バスター)
 銃身:ムスペル(ブラスト)
 装甲:ボルソルン(タワーシールド)

 ユウキの神機の精神体を名乗る、金髪を赤いリボンで短いツインテール(所謂ビッグテール)に纏めた金目の10歳前半の少女。
本来は実体もないし視認できる存在ではないが、ユウキが感応現象を応用して周りの人間に認識させている。元々はユーリの神機の精神体だった。
 口調は見た目相応に幼く、フランクな態度で周囲と接する。どうでもいい人間と話す時は、時折その幼さ故に残酷な言葉を投げ掛けたりしているが、好きな人、嫌いな人と話す場合はその人の心理を読んで言葉を選んで話す等思慮深い一面もある。特に嫌いな人には自制心が効かず、すぐにキレて攻撃(口撃)する。
 黒い戦闘服を着て、身の丈よりも遥かに大きいバスターブレードを振り回す。小柄なため、重装備にも関わらず小回りが効く。一回の攻撃で多数の敵を巻き込む等、豪快、かつシンプルな戦い方を好む。
 戦闘でも幼さ故に加減を知らず、必要以上に痛め付ける等、残忍な一面もある。
 ユウキの命令には従いはするものの、シェリーとは違い、意見がある時はしっかりと伝える。シェリーとは、ユウキに相手にされずに落ち込むのを目撃する度にフォローをする仲。

  神裂ユウキ
  年齢:18
  誕生日:12月24日(修正済)

 2つの神機を使った事で止まっていたアラガミ化が再度進行、その際ユウキが元々持っていたP16偏食因子が多量に生成されてさらに進行が加速する結果になる。遂にアラガミ『レイヴン』へと姿を変える。その際、自身の偏食因子に色素を喰われて白髪、瞳孔も縦に伸びて赤銅の瞳へと変わった。クロウ撃破後、地球のコアであるノヴァとの接触し、恐竜の時代以前の生命と星の歴史全てをコアに記録して終末捕食の起動させる特異点として覚醒した。
 自身が全ての人間を死に追いやり、世界を終わらせる存在となった事で、自身の命を狙う者を敵とし、敵を滅ぼし生き抜く事を第一に考える様になった。それは身内でも変わらず、手を上げてきた神機使い達を半殺しにして返り討ちにしてきた。その結果、周囲の人間や神機使いとも大きな確執が生まれ、孤立している。
 更にはガーランド率いるアーサソールを全員殺害し、直後に覚醒したフェンリルを撃破。死体は全て喰らった。ガーランドの暴走を阻止し、交渉の結果、少佐へと昇進する。

  神裂ユウキ(アラガミ)
  名称:レイヴン
  
 ユウキのアラガミ化が再度進行し、それを浄化しようと元から持っていたP16偏食因子の暴走によって変化した姿。背中と頭に黒い翼が生え、空中戦にも対応できるようになった。
 全身の色素が失くなったかのように真っ白な肌、四肢には黒色の鋭い爪、ボリュームのある長い白髪、縦に割れた瞳孔と金色の瞳と、いくつかシオと似通った特徴がある。元々は鮮やかな紅色の瞳だったが、特異点に覚醒した際に瞳の色が金色に変わる。欧州では数回目撃されているが、発見、調査に向かった部隊は全て全滅、写真もシルエットが分かる程度の不鮮明なものだったので、外見の特徴から本部がレイヴンと名付ける。
 空中戦では他のアラガミよりも小さい身体を生かして小回りを効かせ、地上戦では獣脚による瞬発力で初動から一気に距離を積めて懐に飛び込み、両手足の爪で敵を切り刻む。
 両手の全ての爪の先には小さなオラクルの発射口があり、狙撃弾を撃つことも可能。或いは発射口からオラクルを掌に集めて爆破弾、破砕レーザー、更には爪にオラクルを纏わせて斬撃を飛ばすこともできる。
 フェンリルを相手にした時は圧倒的な強さを見せ付
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