-極東支部-
「あ、天草ユリと言いますっ!!これからお世話になりますっ!!」
「妹の天草トウカです!!よろしくお願いします!!」
助けた姉妹、姉の『天草ユリ』とその妹『天草トウカ』は目の前にいる第一部隊の面々に挨拶をする。ユリは緊張しているのか、少し顔を赤くして上体が90°になるまで勢いよくお辞儀をし、トウカは砕けた様子で元気よく挨拶する。
「おう、よろしくな。俺は雨宮リンドウ、こっちは嫁さんのサクヤだ」
「はじめまして。雨宮サクヤよ」
「ソーマだ」
「俺は藤木コウタ。よろしく!!」
外部居住区から入る際の簡易適性検査でユリに神機使いの適性が発覚、適合する神機を探す為に極東支部に連れてきた。血液検査等を終え、適合する神機を探す間、フリーとなった2人はユウキに連れられてエントランスで第一部隊と顔合わせをしていた。
2人の相手を第一部隊に任せて、ユウキは同じくエントランスに居たツバキの元に行った。
「色々大変だったみたいだね。姉妹2人で居住区外で生きるのは辛かったんじゃないかな?」
「…最初は2人じゃなかったんだ。色んな人と一緒にいたけど…みんなアラガミに食べられちゃった」
「あ、その…ごめん」
始めは多数居たキャラバン仲間もアラガミに喰い散らかされて最後には2人だけになったようだ。その時の凄惨な状況を思い出したのか、さっきまで元気だったトウカはしょんぼりした様子で話してくれたが、コウタは思わず謝った。
「気にしないでください。こんな時代では…仕方ない事ですから」
「…うん」
ユリが仕方ない事だとフォローを入れると、コウタも頷いてこれ以上この話題には触れない様にするため、別の話をしようと思考する。
「じ、じゃあさ!!2人の事教えてよ。あっ!!ちなみに俺はバガラリーってアニメが好きでさ…」
話題を変えようと、2人の趣味や得意な事を聞き出そうとする過程で、コウタはバガラリーの話をして盛り上がっていた。そんな中、ユウキとツバキはユリとトウカの処遇について話し合っていた。途中、ツバキの端末に通信が入り少し話し込んだ後、再びユウキとの話に戻った。
「たった今連絡があった。天草ユリに適合する神機が見つかった。神機使いの補填が進まない今、戦力が増えるのは助かるのだが…アナグラは今こんな状況だ。新人用の部屋を用意出来んぞ?」
「分かっています。当面は俺の部屋に仮住まいさせます」
ユリが使える神機が見つかり、戦力の増強が見込めるようになった。本来ならば戦力が増えるのは喜ばしい事だが、先日のガーランドによる襲撃で極東支部も大きなダメージを受けている。当然居住区画も例外ではなく、未だ大部屋で寝泊まりしている神機使いが居る様な状況だ。戦力の補填は有難いが、部屋すら与える事が出来ない状況だ。ましてや女の子である以上、プライバシーは男よりもデリケートな問題になる上、野郎ばかりの大部屋に放り込む訳にもいかない。
そこでユウキは自らの部屋に一時的に住まわせると言い出した。それを聞いたツバキは少し険しい顔になる。
「隊長用の部屋だぞ?どれだけの機密事項があると思っている。それに、お前はどうする気だ?まさか同じ部屋で生活する気じゃあるまいな?」
「彼女達にその手のデータへのアクセス権はないし、書類は全て博士のラボにでも移します…俺自身はエントランスで寝起きすれば問題はないはずです」
ツバキは隊長の部屋であるため機密事項の漏洩を心配していだが、その辺りの処理はユウキが全てやると言うので、ツバキは『…ふぅ』ため息をついてユウキの話を聞き入れた。
「分かった。部屋についてはアナグラの復旧が終了次第手配する。だが今のアナグラの状態では私もまともに相手が出来ん。新人教育の大半は任せるぞ」
「…わかりました」
ユリとトウカの処遇が決まった事で、ユウキは『話が纏まったぞ』2人の側まで歩みより話しかける。
「見ての通り、今アナグラは大きなダメージを受けている…その為、2人に用意できる部屋がない。そこでしばらくの間、俺の部屋で生活してもらう」
「お義兄ちゃんの部屋で?」
「…えぇ?!」
トウカが少し意外そうな顔でユウキの話を聞き直し、ユリは予想もしなかった状況に顔を真っ赤にしてとても驚いていた。
「もしかしてずっとお義兄ちゃんと一緒?」
「そんな訳ないだろう。俺はエントランスで寝起きする。何かあれば降りてこい」
しかし、部屋の主であるユウキは部屋を出ていく事を伝えると、『ぶぅ…つまんない…』とトウカは口を尖らせて拗ねて見せるそしてユリは『そ、そうだよね…』と呟きながらホッとした様なガッカリした様な複雑な気分になった。
「適合試験は明日の0900からだ。適合試験のあとは1日休みになる。その間に体調の変化があればすぐに誰かに言え。その翌日には訓練を始める。今日は重要区画以外を見て回るといい」
「は、はいっ!!」
「はーい」
翌日以降の予定を伝えると、ユリは緊張した面持ちで返事をし、トウカは気の抜ける様な返事をする。予定を伝え終わったユウキはそのまま踵を返し、自らの部屋に戻って書類を片付けに行く。それを見届けたユリとトウカはコウタに案内されて、半壊してはいるが極東支部の施設を見て回る事にした。
-ユウキの部屋-
支部内の案内を志願したコウタに連れられて、極東支部内を見て周る。その過程でペイラーやルミコ、ゲン、それから他の神機使いとも顔合わせをしていたらすっかり日も落ちて遅い時間になってしまった。
バガラリーの話をしながらコウタとユリ、トウカで食事をして、その後色々と身支度を済ませてから自室代わりのユウキの部屋に戻っていった。
「ふぃー…見て回ってたら遅くなっちゃったね」
「でも色々壊れてはいたけどこれから生活する拠点を知れたのは良いことだよ。案内してくれたコウタさんには感謝だね」
ガーランドの襲撃でダメージを受けてはいるものの、極東支部自体は稼働している。今後支部が修復されたら自分達が使うであろう施設を知れたのは良かったと、ユリは感想を言いながらトウカと一緒に備え付けのソファーに座る。
「だね。さ、お姉ちゃんにとっては明日は大事ななんだし、今日はもう寝ちゃいなよ」
「そうだね…」
明日は適合試験だ。人生が変わる日と言っても過言ではない。そんな大事な日に体調を崩して適合試験に失敗する訳にはいかない。トウカの言う通り、今日は早めに休む事にした。
(いよいよ明日か…神機使いになれば…お父さんとお母さんを殺した『黒い羽』アラガミとも…)
「お姉ちゃん?」
ユリは両親が死ぬ原因となったアラガミの事を思い出し、神機使いになれば仇を討てると思うと自然と顔も強張る。そんなユリの様子の変化に気付いたトウカは心配そうに顔を覗き込む。
「ううん、何でもない。それじゃぁ…おやすみ」
「おやすみなさーい」
トウカの声でユリは我に返る。昔の事を考えて耽っていたものの、特にやることはないのでユリはソファーから立ち上がり、ユウキの布団に入って目を瞑る。しばらくすると、ある事に気付いて『ぁっ…』と小さく呟いて、薄く目を開ける。
(…ユウキさんの匂い…)
部屋の主であるユウキが使っていた布団であるため、当然ユウキが使い込んだものになっている。布団で鼻を覆う様に被り、目一杯深呼吸してユウキの匂いを嗅ぐ。
恍惚とした表情で数回深呼吸して匂いを嗅いでいると、ふとユウキの匂いに混じって爽やかさと甘さを感じる匂いを感じ取った。
(…?他の女の人の匂い?)
明らかに男性の匂いではない匂いがする。もう一度しっかりと匂いを嗅いでみると、やっぱり気のせいではなく仄かに女の匂いがする。
(やっぱり…微かに他の女の人の匂いが混じってる…)
予想もしなかった状況にユリの目付きが微かに険しくなる。
(…何で…?)
男のベッドから女の匂いがすると言う事実とそうなる経緯をすぐに察する事ができたが、頭が理解する事を拒んで『何故?どうして?』と、ぐるぐると思考を巡らせる。しかし所詮は憶測の域を出ないし、真実は当の本人にしか分からない。考える事を止めたユリは次第に眠りに落ちていった。
-エイジス-
ユリとトウカがユウキの部屋に着いた頃、エイジスではシェリーとライラが資材回収のため、安全圏を確保すべくアラガミ達を一掃していた。
「なんか意気込んで来た割には楽だね。禁忌種の集団にちょっとだけ手を焼く程度だし」
「油断は禁物、辺りのアラガミを倒しきるまでは気を抜かない事ね」
アラガミに囲まれているが余裕を見せているライラは、シェリーとお喋りしながら目の前のアイテールへとジャンプしつつ飛びかかる。アイテールは迎撃すべく、額の目に光を集めるが、それよりも速くライラの神機が顔面に直撃した。アイテールはそのまま頭を潰されて地面に叩き落とされ、ライラはその反動を使ってさらに先に居るテスカトリポカの顔面へと横凪ぎに振ってテスカトリポカの体勢を力業で崩させる。
そしてライラと話をしているシェリーにもアラガミが群がってきていた。四方から同時にヴァジュラテイルが飛びかかるが、その場で回転してヴァジュラテイルを全て切り捨てる。続いて真正面にいるセクメトへと一気に接近して、腰の辺りを横一文字に切り捨てた。
「そんな気の抜けたニヤけ顔で言われてもなぁ…ユッキー君と普通の会話ができたからって浮かれすぎ…」
シェリーは戦いながらも浮わついた表情になっていたが、突然鬼のような形相でライラを睨んだ。
「こわっ!!」
「…何か…嫌な予感がするわ」
「…ぇ?」
自身の発現でシェリーを怒らせたかと思いビビったライラだったが、どうやら別の事で恐ろしい表情になったと分かると、少し気が抜けた様な声を出す。
「早く終わらせて1度戻りましょう」
「お、おっけー…」
突然豹変したシェリーの態度に若干引きつつも、ここは逆らわない方が身のためだと思ったライラは素直にシェリーの言うことを聞いて手短に任務を終える事を心に決めた。
-神機保管庫-
同じくユリ達が部屋に着いた頃、ユウキは神機保管庫で自身の神機を整備していた。端末を操作しながらマニピュレータを動かして神機の状態をチェックしていると、不意に扉が開くとリッカが保管庫に入ってきた。
「また…自分で整備?」
「…ああ」
「そう…」
もはやユウキ自身が神機を調整するのは見慣れた光景だった。短い言葉を交わしたが、すぐに話す事がなくなり沈黙が続いた。
しばらくすると、リッカが『ねぇ…』と小さな声でユウキに話しかけた。
「何であの子達を助けたの?人間だって敵なんじゃなかったの?」
「気まぐれ…それから減った戦力を補填するためだ」
「…適合しているかも分からなかったのに?」
「勘だ」
リッカは何時もよりも小さな声でユウキに2人を助けた理由を問う。対してユウキは作業の手を止めず、リッカの方を向く事もなく淡々と理由を話していく。それを聞いたリッカは『そう…』とため息をつきながら下を向いて小さく呟いた。
「アナグラのみんなのことは信用出来ないって拒絶して…かと思えば会ったばかりの人は助けたりして…今の君は…何がしたいのかわからない…信用していいのか分からないよ…」
「信じるも信じないも好きにしろ…俺は俺の思うままに動いているだけだ」
リッカの言葉に聞く耳を持たないユウキは作業を続けたまま冷たい返事をする。これ以上は何を言っても無駄だと察したリッカは何も言わずに保管庫を後にした。
-エントランス-
トウカの適合試験当日、ユリが戦う為の戦闘服を用意しなければいけなくなったが、実は前日のうちにコウタとトウカが本人には内緒で選んでいた。その戦闘服を渡されたユリは着替える為に1度ユウキの部屋に戻り、第一部隊とトウカは暫く主役の登場を待つこととなった。
「お姉ちゃんの戦闘服、初御披露目だね」
「俺とトウカちゃんで選んだやつだからね。絶対に似合ってるよ!!」
トウカとコウタは自分達が選んだ戦闘服に自信があるのか、ユリが現れるのを非常に楽しみしていたが、ソーマは少し渋い顔をしている。
「トウカのセンスは知らんが…お前が選ぶと大抵…」
ソーマは何か言いたい事があるのか、苦言を呈そうとするが、それよりも先にユリが乗ってきたエレベータの扉が開いた。
「あ、あの…」
エレベータの中にはユリが乗っていたのだが、エレベータの中から真っ赤になった顔だけを出していた。しかし第一部隊とトウカが待っているのでいつまでもそうしている訳にもいかず、ユリはモジモジしながら出てきた。
「これ…い、色々短くないですか…?おへそ出てるし…それに座ったりしたら…見えちゃいそうで…」
そこには肩口から袖がなく、腹の辺りまでしか裾がない上着に二の腕近くまである長いグローブ、ホットパンツにニーハイの、全身黒系統の色で固められた戦闘服を着たユリが、腹や足と言った、肌を露出している部分を隠す様な体勢で出てきた。
そしていつもは下ろしている長い髪は戦闘の邪魔にならない様にポニーテールにして纏められていた。
「…露骨ではないが、そう言う方面にいくよな…」
「だが良いんじゃなないか?よく似合ってる」
大きな露出はないが、要所要所で僅かに肌を露出させる事で野郎の妄想掻き立てる格好…所謂チラリズムの重視をコンセプトにして2人が選んだものだった。ソーマの察した通り、そんな事情を知らずに戦闘服を受け取ったユリは少し後悔していた。
しかし実際に着てみると、リンドウの言った通り肌を出すイメージが無いユリによくはまっていた。
「ですよね!!最初は白とか明るい色の方が良いと思ったけど、黒だと身体や手足のラインが出る上にスリムに見えるね」
「でしょ?お姉ちゃん手足が細くて曲線がしっかり出てるから、その辺を強調するためにニーハイとオペラグローブははずせないと思ったんだよね。そうなるとあとは…」
やれ黒がいい曲線がいいなど、コウタとトウカが語り合い、2人は目線を合わせた後にビシッとユリを…正確に言えばユリの太股から僅かに露出している肌を指差した。
「「絶対領域!!これははずせない!!」」
「ぅぅ…」
しかしユリは2人の目線が恥ずかしくなり、顔をさらに赤くして余計に縮こまる事になった。
「…だが当の本人は戦闘どころではなさそうだぞ?」
「でもでも、動きやすさも重視してるよ!!これなら任務に支障はないはず!!」
「動きやすいからこそじゃないのか?」
普段出さない肌を出す戦闘服を着る事で羞恥心を掻き立て、動きが鈍くなり戦闘どころではなくなってしまう。しかし、動きを阻害する様なデザインではないと言い張るトウカだったが、動き易い戦闘服だからこそ戦闘に向いてないと、ソーマとリンドウからは苦言を呈された。
「こう言う…切り詰めたりラインが出る様な服は可愛くてスタイルの良い人の方が…」
「そう?ユリも十分可愛いし細いじゃない。自信持ちなさいな」
自分の容姿に自信がないのか、どこか自虐的な事を言うが、サクヤがフォローを入れる。そんな中、ツバキが現れてユリに声をかける。
「天草ユリ、そろそろ時間だ。訓練室に来るように」
「は、はい!!」
遂に時が来た。ユリは緊張した面持ちで訓練室に向かうツバキに着いていこうとする。しかしそんなユリとは対照的にトウカは少しニヤニヤしながらユリを引き留めて耳を貸す様に伝える。
「早くお義兄ちゃんにも見せて誘惑しちゃいなよ…」
「な、ななな何を言ってるの?!そんな事できるわけないじゃない!!」
トウカの言っている事の意味が分かったユリは一瞬で首まで真っ赤にする。早く既成事実を作ってしまえと耳打されたのだがそれを否定して歩きだしたのだが、同じ側の手と足が同時に出ている辺り緊張は極限状態になっているようだ。
(お義兄ちゃんでスケベな事考えてるくせに変な所で奥手なんだもんなぁ…お姉ちゃん…)
ユリがユウキに何やら特別な感情を持っている様に見えるのはトウカから見てもすぐに分かった。トウカはそれを恋愛感情だと思っていたが、ユリにとっては恋愛感情も無くはないが、信仰心の方が強かった。自分達が絶体絶命のピンチに突如現れ、あらゆる危機的状況から文字通り救ったのだ。
その時の感謝の念が強すぎて、ユリにとっては神の様に崇める存在となっていた。そんな心情を知らないトウカは第一部隊と一緒に適合試験を受けるユリの背中を見送った。
-訓練室-
訓練室に入ると、ユリの目の前には新型神機が台座の上に鎮座していた。ゆっくりと神機の前まで歩いていった。
『これより、適合試験を始める。それが命を預ける相棒、お前の神機だ。さぁ、その手に掴むんだ』
スピーカーからツバキの声が聞こえてきた。どうやら上の小窓からマイクを通じて話しているようだ。傍らには昨日合った支部長らしくない支部長、ペイラーもいた。
しかし、ユウキの姿が見えないのが分かると、ちょっとガッカリした様に肩を落とす。それが思わぬリラックス効果を生んだのか、落ち着いた動作で神機を掴んだ。
「う"ッ!!!!」
神機を掴んだ瞬間、腕輪のプレス機が降りてきて強烈な痛みが腕から全身に走り始める。
「ぐっ!!!!ぎぃ…!!」
形容しがたい痛みに耐えかねて、ユリは空いている左手でプレス機を開けようとするが、機械が相手ではか弱い少女の腕力ではビクともしない。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぉぁあ!!!!」
もう無理だと思い、ユリは腕が千切れる覚悟で思い切り右腕を引き抜こうとするが、やはりそんなことは出来ない。そうこうしているうちに急に痛みが引いてきた。
「はぁ…はぁ…」
適合試験が終わって、プレス機が開いた。その腕には神機使いが着けている赤い腕輪があった。あまりの激痛だったのでしばらく放心していると、神機のコアから触手が延びて腕輪と繋がった。
拒絶反応等はないようなので、そのまま適合試験は終了となった。その後の予定も全てその場で伝えると、ユリはペイラーのラボへと足を運んで、その日は眠りに落ちた。
-訓練室-
ユリが無事に神機使いとなり、トウカも実は料理ができると言うことで食堂で働く事が決まってから2日後の午後、遂に神機使いとしての訓練が本格的に始まる。そう思うと少し緊張してしまい、固い表情でユリは訓練室の扉を開けた。
その視線の先には神機を装備して既に訓練室に来ていたユウキが書類を片手に立っていた。
「あ、ユウキさん!!」
「来たか…」
声をかけられたユウキは書類から目線を外し、ユリの方を見た。
「あの、ユウキさん…」
「何だ?」
「…っいえ、何でもありません」
『ベッドから女の匂いがした』と、ずっと気になっていた事を聞こうと思ったが、あまりプライベートな事に踏み込んで聞くのは失礼だと考え直し、ユリは自らの疑問を投げ掛けることはなかった。
「そうか…それより、神機の構成は決まったのか?」
「はい。午前中にツバキさんから神機の使い方と構成について聞きました。その時に神機の構成も決めちゃいました」
ユリは午前のうちにツバキから神機の基本操作を教わり、その時に神機の構成も決めていたようだ。それを証明するかのように、ナイフ、ファルコン、汎用バックラーで構成された神機をユウキに見せた。
「分かった。それでは訓練を始める」
「は、はいっ!!よろしくお願いしますっ!!」
遂に実際に神機を使った訓練が始まった。ユリは緊張しているのか、少し震えた声のままビシッと姿勢を直して、90°になるまで勢いよくお辞儀をする。
「訓練の内容は簡単だ。俺と戦え」
しかし、訓練の内容を聞いたユリはその真意が分からずフリーズする。
「…えっと、それはどういう…」
「言った通りの意味だ。アラガミのホロを相手にするよりも、俺の動きを見切れる様になる方が早く力をつけられる…そうなれば大抵のアラガミの攻撃は動体視力と反射神経だけで避けられる様になる。まずは戦場で死なない能力を身に付ける事だ。そうだな…まずは俺に神機を抜かせてみろ。攻撃の為でも防御の為でも何でも良い。俺に神機を使わせたら次のステップに移る」
予想外な内容に少し緊張が解けたのか、気の抜けた声でユウキに聞き返す。対してユウキはアラガミを相手にするよりも早く実力を付けられるからだと理由を淡々と話していくと、最終的には神機を使わせたら訓練はクリアだと説明していく。
「で、でも…」
「構わん。お前では俺に攻撃を当てる事などできはしない…」
当然ユリは混乱した。人に神機を向けるなどまともな神経の持ち主なら躊躇するだろう。だがユウキは問題ないと言ってユウキは訓練室の隅へと歩いていき書類を置く。
「殺すつもり…なんて甘い事は言わん…」
そして振り返り、ユリと視線を合わせた一瞬だけ軽く殺気を飛ばす。
「…殺しに来い…!!」
『ゾワッ』
ほんの一瞬の殺気にユリの全身に鳥肌が立つ。ユウキとしては大したことのない殺気であっても、彼女にとってそれは異様なまでに濃く、肌にまとわりつく様なおぞましさを感じ、まるで強力な毒の様に恐怖が一気に全身に回ったかのように動けなくなった。
いつまで経っても動かないユリを見て、ユウキはため息を着いた後に彼女の元に歩いていく。
「…ッ?!」
ある程度近くなると、ようやく我に返って神機を構える。しかし、ユリにとって強すぎる殺気を受けたせいで萎縮し、腰が引けた状態となっていた。ユウキは敢えてユリの真正面に立つが、殺気を受けた感覚が消えず、威圧感に負けてユリは無意識に後ろへ下がる。
それを見たユウキは目を伏せて再びため息を着いた。しばらくしても攻撃が飛んでこなかったので、ならばとユウキから仕掛ける。ユウキは左手で神機の刀身の側面を払いのけると、そのまま前に出でユリの腹に底掌を打ち込む。
「カハッ!!」
吹っ飛んだユリは背中を壁に強打して、肺の空気を一気に吐き出しながら倒れる。
(せ、背中ッ?!痛ったッ?!?!)
少し遅れて背中からくる感じた事がない程の熱と痛みで倒れながらその場で痛みに悶える。するといつの間にかユウキはすぐ近くまで来ていて、何の感情も感じない目でユリを見下ろしていた。そして徐に片膝を突いてしゃがみこむと、ユウキはゆっくりとユリへと手を伸ばす。
「アラガミの攻撃で最も隙がない攻撃は何だと思う?」
「あっ??かっ!!」
ユリへ問いかけながら、ユウキは彼女のか細い首を掴み、そのまま持ち上げる。軽くはあるものの全体重が首にかかり、そこに更にユウキの並外れた握力で締め上げる。微かに唸り声をあげるのが精一杯なユリは両手でユウキの手を掴むがビクともせず、次第に息苦しさで足をバタつかせるしか出来なかった。
「全身をオラクル細胞で構成されたアラガミ達はあらゆる攻撃をしてくる。ある者は火を吹き、ある者は雷を落とし、またある者は冷気を操る…さらには光を操り、その熱線で辺りを焼き尽くす者もいる。だが…」
ユリがまともに話を聞ける状態でないにも関わらず、ユウキがアラガミの攻撃について講義の代わりに話していく。ある程度話すと、ユウキはユリを前へと軽く投げ捨てた。
「ケホッ!!ケホッ!!ハァハァ…」
ようやく息が出来るようになってユリは咳き込んだ後に大きく深呼吸する。その間もユウキはゆっくりとユリの元へと歩いていく。
「それらの攻撃には予備動作がある。勿論例外はあるが、この予備動作を知っていれば、これから相手が何をしてくるか…ある程度は予想がつく。よって隙のない攻撃とは言えない…」
「ぅ…ぅぅう…」
ユリは何とか立ち上がったが、先のやり取りのせいで完全に腰の引けたへっぴり腰で構える。
「対して物理的な攻撃はアラガミの巨体も相まって一撃が重く、種によってはスピードも速い…速さと質量、この2つが揃えば大きなダメージを受ける。そしてそう言った攻撃は…」
対してユウキは相変わらずゆっくりと近付いてくる。アラガミが行う隙の少ない攻撃を語っていく。すると突然ユリの神機は右側に弾き飛ばされ、思わず手を離してしまった。
「あっ?!」
「こんな風に突然飛んでくる…」
何事かと思ったがすぐにその正体が分かった。普通に歩いていたはずだったが、不自然な動作を見せずにユウキの右足が高速で神機の側面を横から蹴り飛ばしたせいだった。
神機を弾かれ、どう動けばいいかを考えて動きが止まった隙に、ユウキはユリの左の横腹に素早く底掌を当てる。
「ガァッ?!?!」
「…立て。俺の攻撃を避けて反撃する…それも俺が受けるか避けるかをしなければいけない程の反応の速さでだ。それができなければ戦場に出てもすぐに死ぬぞ…」
底掌を当てられた後、ユリは右側に吹っ飛んで左肩から床に倒れて、神機のすぐ横に飛ばされた。そしてユウキは無慈悲にも感情の無い目でユリを見ながら訓練を続ける旨を伝える。
それを聞いたユリは再び神機を掴んで立ち上がる。だが人に神機を向ける事に抵抗を感じて、またへっぴり腰な状態で構えたため、ユウキはため息を着いて一気にユリとの距離を縮めにいった。
-エントランス-
「お、お姉ちゃん…大丈夫?」
「…」
エントランスのテーブルセットに突っ伏しているユリ…その表情はおよそ年頃の少女がしてはいけない様な顔だった。その様子にトウカは引きながらも声をかけるが、口から魂が抜け出ている様に見える状態では返事など返ってくるはずもなかった。
「ユリ、生きてる?」
「まあ、辛うじて息はしているな…」
「…この後座学もやるんですよね?」
心配するコウタにユリの様子を見て生存確認するソーマ、小休止の後、座学がぶっ続けで行われる予定を組まれている事に戦慄を覚えるフェデリコと、ユリの様子から三者三様の反応を見せていたが、共通してユリへの同情の念は感じていた。
「お姉ちゃん、ご飯食べれそう?」
「…む、むり…」
トウカが夕飯をどうするかを聞いてきたが、当の本人はあまりの痛みや疲労感に食欲も完全に失せてしまっていた。
「じゃあ、せめてゼリーだけでも…疲労回復にも効くタイプの物です」
食欲が無いならと、アネットは摂取しやすいゼリー飲料を取り出してユリに差し出す。ユリはゆっくりとした動作で上体を起こし、これまたゆっくりとした動作でゼリーを受け取って少しずつ飲んでいった。
「…フェデリコとアネットの時のユウの指導ってキツかったの?」
「いえ、突然禁忌種が乱入しても戦闘続行とかはありましたけど…計画段階での訓練はわりと普通でしたね」
「はい…ホロを相手にチーム戦をやった後、それぞれアドバイスを貰う…と言った感じで、ホントに普通の訓練でした」
あまりに異常と思われる訓練について疑問を感じたコウタが、かつてユウキから指導を受けたフェデリコとアネットにかつて受けた訓練の内容を聞いてみた。禁忌種の隣で実地訓練すると言った多少の無茶はあったが、それでもまだ普通の訓練だったと、フェデリコとアネットは自分達の過去の訓練を思い出しながら話していく。
「座学…行ってきます…」
コウタとフェデリコ、アネットが話している中、ユリがフラフラと立ち上がり、座学が行われるユウキの部屋に向かって歩いていく。
そしてそれを少し心配しつつ、トウカとコウタとソーマ、フェデリコとアネットはその疲れきって猫背となった背中を見送るしか出来なかった。
-数日後-
ユリが訓練を開始してから数日が経った。しかしたった数日間でユリは疲弊に疲弊を重ねて、年頃の少女とは思えない程に活発さを失っていた。
そんな中、ユリが訓練を終えてエントランスのソファーに座って休憩していると、第一部隊が声をかけてきた。
「その…大丈夫か?」
「は、はい…なんとか…」
リンドウが疲れきった顔のユリの隣に座るって声をかけると、何とか作り笑いをしたユリが返事を返す。しかし、僅かに見える肩や太股といった僅かに素肌からは青黒い跡が着いていた。顔の様な目立つ所にはアザが無かったが、目立たない所には身体中に多くのアザを作っていて、どう見ても大丈夫には見えなかった。
「身体中アザだらけじゃんか。本当に大丈夫なの?」
「はい。まだ全然動けないせいでケガばっかりですけど…」
ユリがアザだらけになっているので心配になったコウタが声をかけるが、ユリは相変わらず疲れた笑顔で大丈夫と答える。その様子を見たコウタは指導しているユウキのやり方に疑問を感じ、怒りさえも覚えていた。
そんな中、書類を片手に持って読みながら、ユウキがエントランスにやって来た。
「なぁ…ユウ」
「なんだ?」
ユウキが現れた事に気付いたコウタがユウキに声をかける。
「ユリの訓練、何やったらあんなにアザだらけになるんだよ?」
「俺を相手に戦闘訓練をしているだけだ。当然こっちからも攻撃するが、それを捌けない様なら実戦に出たところで犬死するだけだ」
「だからってあんなボロボロになるまでやる必要があんのかよ?このままじゃ実戦に出るどころじゃなくなるじゃないか!!」
生き残る為に敵の攻撃を避ける術を身に付けさせていると言うが、たった数日でボロボロになる程に痛め付けるユウキの訓練にコウタは疑問に感じて噛みついた。
「通常の任務だってあるんだ。いつまでも新人教育に集中している訳にはいかないだろう?だから可能な限り早く実地演習に出られる様に生き残る為の能力を伸ばしているだけだ」
ツバキがユリの訓練に関わる時間がなかなか取れない以上、ユウキが面倒を見るしかない。しかし通常の任務もあるので、ユリにはすぐに実地演習ができるようになって貰わなければ困る…と言うのがユウキの言い分だったが、コウタは納得いってないのか、怪訝そうな顔をしていた。
「本当に…それだけなのか?」
「…何?」
コウタの言葉に、今度はユウキが怪訝そうな顔を返した。
「生き残る方法を教えるだけなら、あんなボロボロにしなくても良いだろ…お前、本当は何がしたいんだよ?」
「言っている意味がわからん…」
「…今のユウを見てると…何をしたいのか分からなくなるんだよ…」
ユリにボロボロになる様な訓練をさせる本当の目的は何だとコウタが問い詰める。しかし、ユウキには他に目的などはないため、コウタが何の事を言っているのか理解出来なかった。
その事を聞き返すと、コウタは俯き小さな声でユウキが何をしたいのか分からないと呟いた。
「もし、間違った事しようとしてるんなら…止める。それをするのが友達だって…親友だって思ってる…けど…」
友が悪いことをするなら止めるのが親友の役目だと、自身の考えを話すコウタだが、その語り口はどこか歯切れが悪かった。
「今のユウは何したいのか全然分かんねぇよ!!人とアラガミとの共存を目指すなんて言いながら…どっちにも手をあげてるじゃんか!!」
しかしユウキの目的が分からないせいで、今やってる悪行の数々も目的の為にどうしても必要な事なのか、それともただ自身の欲求の為なのかも判断できず、どう対応していいか分からなかった。そのフラストレーションをぶつける様に、コウタの声が大きくなっていく。そしてそれを聞いたリンドウの表情は少し険しくなる。
「何をしようとしてんのか分かんねぇから…止めて良いのかも分かんねぇんだよ…」
「何度も言わせるな…着いてこなくてもいいし理解しなくてもいい…信じる信じないもお前たちの好きにしろ」
ユウキが何をしたいのか分からないと言うコウタに、ユウキはため息を着いてリッカや他の人にも何度か言った様に好きに捉えろと言う。そしてユウキは今日は休めとユリに伝えると、再び訓練室に戻っていった。
「あの…昔のユウキさんって、そんなに今と違うんですか?」
コウタとユウキの会話から、ユリが以前のユウキとはだいぶ違うと分かり、その事について聞いてみたが、それを聞いた瞬間場の空気が重くなったのを感じた。自分の知らないユウキについて興味本意で聞いたが、この空気を感じ取った瞬間、聞いた事を後悔する事となった。
「…180度違う…と言っても良いくらいだな」
「元々はアラガミとの戦いにさえ迷う様な優しい子で…戦いに向いている性格じゃなかったんだけど…今は…」
ソーマとサクヤが変わり果てる以前のユウキを思い出しながら話していく。アーク計画では世界の安寧と犠牲になる人の命を天秤にかけて迷い、リンドウを救出する時は最後の最後まで介錯に踏み切れず、アラガミに知性がある可能性を知って以降は戦う事さえ躊躇する。
かつては優しさや甘さ迷いを見せたが、今はそんな気配さえも見せない。そう思うと今と昔とで真逆とも言える程にユウキは変わったのだと、改めて認識する事となった。
「ユリ、悪いが席を外してくれないか?これから話すことは、まだお前には色々と重い。それに、おまえを守る為にもな…」
「…分かりました」
リンドウの言っている事の意味は分からなかったが、いつも軽い印象を受けるリンドウから重々しい雰囲気を感じとり、ユリは大人しく従い自室代わりのユウキの部屋に戻っていった。
「なあコウタ…いや、皆もちょっと想像してみてくれ…」
ユリがエントランスから出ていくのを見届けた後、リンドウはテーブルに肘を着いて深刻な表情で第一部隊の面々に話しかける。
「ある日、自分が死んだら世界中の人間が死ぬ…そんなやべぇ威力の爆弾を腹ん中に抱えちまったとしたら…お前らはどうする?」
「それは…」
リンドウの例えを聞いたサクヤは、ユウキが抱える特異点がどれ程に危険なものか認識し直し、その事を理解していればどんな行動に出るかも察して思わず口を噤んだ。
「しかもその爆弾は持ち主を調べれば複製できて、作りさえ出来れば誰でも扱える…そんなもんを腹に抱えて生きるってのが何を意味するのか…考えてみた事はあるか?」
「「「…」」」
調べて複製出来れば、あとはそれをチラつかせて脅して回れば世界征服の完了だ。実際にはそこまで簡単ではないだろうが、特異点をコピー出来れば可能なのだ。そんなものを抱えて生きる事がどれ程危険な状態か再認して思わず黙り込んでしまった。
「俺なりに、なんだが…今の状況をユウがどう思ってるのか…考えてみたんだ」
リンドウは肘を着いて真剣な表情のまま話続ける。
「自分が死んでもアウト、他人に自分の事を調べられるのもダメ…死なない為に、利用されない為にも、アイツは冷徹で、無情で、他者を信用しない容赦の無い人間でないといけない…そう自分に言い聞かせて必死にそれを演じて、そうやって俺達の事を、自分なりのやり方で守ろうとしているんじゃないかと俺は思ってる…」
自分が死なずとも、特異点の情報を奪われるとそれを盾にして世界支配に動く野心家もいるだろう。元から野心的な者は当然、そんな支配欲を持っていないはずの者でも、大きな力が身近にあると分かれば力に魅入られて行動を起こす可能性がある。
それらの脅威から皆を守る為に、ユウキは冷酷な人間を演じざるをえなかったと言うのがリンドウが考えだった。
「生きている間、世界中全ての人間の命をその手に握る事を強要されているんだ。そんなもん背負う以上、一瞬の油断、それこそ寝ている間さえも気を抜く事が許されない…それが一生続くんだ。アイツがあそこまで変わっちまうのも無理はないのかも知れない」
特異点の所在とその意味、そんな情報が漏れるとユウキを狙う者もこぞって現れるだろう。そしてその情報を持っているユウキは全ての人間の行く末のカギとなっている。狙ってくる者は大抵野心家だ。そんな連中は世界中にごまんといる。それを1分1秒も気を抜かずに警戒し続けなければいけないが為に、ユウキ本人の肉体的、精神的負担も相当なもののはず。結果、狂った様な言動を取らざるをえなくなったのだ。
「全人類の命をその身1つで背負う重圧、そんなの俺には想像できないが…アイツは嫌でもそれを背負っちまった以上、常に最悪を想定して動いているんだろう。だから、あの時俺達の能力は信用していても、俺達自身は信頼してないって言ったんだろうさ…」
「…やっぱりわかんねぇ…」
しかし、ユウキと話をしたリンドウは何となくユウキの狂った言動は本心ではないと感じていた。
戻ってきた理由を聞いた時、ユウキは返答に一瞬困ったり、冷淡な言葉を敢えて選んでいるかの様に思え、リンドウには本心からの言葉には思えなかった。
それを姿勢を崩しながら話していると、それに反論するかの様にコウタは小さな声で呟いた。
「仲間だからこそ…こう言う時に助け合うんじゃないのかよ?!」
仲間だから、親友だからこそ、独りじゃ背負えないものを一緒に背負うものだとコウタは言う。それができる程の信頼関係はあるものだと思っていたが、そう一方的に思い込んでいただけだとショックを受け、コウタは思わず極東支部から飛び出していった。
「コウタ?!行っちまった…」
「…あれから時間が経ったとは言え、まだ気持ちの整理がつかないんだろう。しばらくは一人にして考える時間を取った方が良いかも知れん」
「そうね…私達もまだ、あの子があんな風に変わってしまったなんて…受け入れられていないもの…」
「…そうだな」
リンドウは出ていったコウタを追いかけようか立ち上がったが、今は1人で考える時間も必要だと言うソーマの考えに同調して、今は追うのを止めて再びソファーに座り直す。
そしてサクヤと同様、この場に残った者達も、未だユウキの変化に着いて行けていなかった。
-訓練室-
少し遡り、ユウキが第一部隊と別れた後、ユウキは訓練室に来ていた。
(…何を考えているか分からない…か…)
コウタに言われた事を思い出しながら、訓練室の明かりを着けて訓練室真ん中にまで歩いてくる。
(分かってたまるか…分からせる気もない…)
部屋にホログラムが展開され、セクメト、ディアウス・ピター、アイテール等、多数のアラガミが現れる。対してユウキは両神機を引き抜いた。
(全ての人間の命を背負う…そんなもの、重すぎて俺には背負えない…だから俺は…選んだんだ)
一斉に向かってくるアラガミ相手に、ユウキは真っ正面に突っ込み、右の神機を振り下ろしてセクメトを一撃で斬り裂いた。
(これから俺を殺そうとする者…俺を利用する者を殺す)
続いて左から迫ってくるディアウス・ピターを左の神機でこれまた一撃で倒して、右にいるアイテールに向かって飛びかかる。
(その方が、まだ『少ない』…まだ、背負える…)
アイテールが正面からレーザーを撃ってくる。それを左手の神機を下に向けてインパルス・エッジを撃った衝撃で上に跳ねて避ける。そのままアイテールの頭目掛けて真上から右の神機を振り下ろし、地面まで叩きつけながら倒した。
そして自身の思考が結局人を数字としか見ていないと言うことに気付き、ガーランドにも同じ事を言われた事を思い出す。その事に腹立たしさを覚えたのか、ユウキは倒したアイテールを倒した後、ひたすらアラガミを狩り続けた。
To be continued
あとがき
仕事忙しすぎてキレそうな私です。それはさておき、前回登場した新キャラ姉の『天草ユリ』と妹の『天草トウカ』のうち姉がゴッドイーターになりました。でもうちの子が訓練と称してボコられたりと色々不憫な子です。
しかしユリとトウカを助けた経緯からユリ→ユウキの感情は刹那→ガンダムに近いものがあります。
そんな中リッカに愛想を尽かされたり、コウタがユウキに対する疑念?をぶつけましたが、まともに答えないうちの子の態度にさらに溝が深まりました。
リンドウさんはうちの子の変化を全人類の命を背負ったが為に、それを守る手段として冷酷無比な自分を演じていると解釈しましたが、うちの子としては背負いきれないから自分を殺しに来る、利用しに来る連中に対して絶対殺すマンと化したと、ここでも認識の差が出てきたりしてます。
こんな感じでうちの子は自分の本心を話さないのでこの先も色々と誤解されます。
下にでユリとトウカの簡単な設定乗せときます。
天草ユリ(15)
外部居住区の外で生活していた姉妹の姉。背中を声で膝裏まである長い茶髪が特徴の少女。胸が小さいのが悩み。肌を出すのが好きではない為、ヘソ出しやホットパンツの戦闘服は恥ずかしく思っている。
ユウキに命を救われた経緯から、恋情が籠った信仰心を向けている。神機使いになってからは嗅覚がより鋭くなった。むっつりスケベ。
天草トウカ(13)
外部居住区の外で生活していた姉妹の妹。姉に対して髪は茶髪でセミロングの少女。家事の中で特に料理が得意で食堂で仕事をする事になる。
ユウキに命を救われた経緯から、ユリがユウキに好意を向けている事に気付いているが、信仰心ではなく純粋な恋情だと思っている。下ネタやエロトークに難なくついていくオープンスケベ。コウタと一緒に性癖全開の戦闘服を用意した。