GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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最近頭が痛い日が続いてます。


mission114 疑惑

 -極東支部、訓練室-

 

 ハンニバル神速種と名付けられたアラガミを倒してから数日が経ち、ユウキとユリは今まで通り対人での戦闘訓練をしていた。そんなある日、神機を振る際に刃を向けるのではなく、ビンタの要領で振ればユウキに大きなダメージを与える事なく訓練できると考えて実際にやってみていた。

 

「そこだぁッ!!」

 

 攻撃が当たったとしても死ぬ程のケガやダメージを負うわけでは無いと分かっているからか、以前程攻撃に躊躇はなくなっていた。ユリが上から神機を振り下ろすと、ユウキは迫ってくる神機をまっすぐ右足を蹴り上げて弾き飛ばした。

 

(足で弾いたッ!!なら次は…)

 

 しかしユリもただ何度もカウンターを受け続けてきた訳では無い。数え切れない程の攻撃を受け続けてきた事で、ユリ自身の動体視力が向上して、ユウキの反撃パターンが読めてくる様になっていた。

 ユリは次の行動を予測して、跳び上がれるように準備する。

 

(右のストレート!!)

 

 予想通り、ユウキからは右ストレートが飛んでくる。ユリは右手を掴みながら大きくジャンプして躱すと、そのまま体を捻り、ユウキの後ろに降りながら、ユウキに神機を振り下ろす。

 

(入っ…?!)

 

 後ろからの一撃、決まったとユリは確信していた。しかし、その確信に反して、ユリ神機は再び上に弾かれた。

 そしてユリの目の前には左足をギリギリまで体に引き寄せた後に真上に蹴りを入れた体勢のユウキが映る。

 

「う、うそ…?あの体勢で蹴り…?」

 

 元々バカみたいな身体能力をしているのは分かっていたが、接近した状態、しかも既に振り下ろしているにも関わらずそれよりも早く蹴りが飛んでくるとは思っておらず、ユリは驚いて一瞬動きを止める。

 その隙にユウキがその場で左に回転し、右手で底掌を撃ち込む。

 

「ガッ?!」

 

 左の横腹に反撃を受けたユリは底掌で吹っ飛ばされ、床の上を転がった。

 

「ケホッケホッ!!」

 

 腹に強い衝撃を受けた事でユリは咳き込む。それでも立ち上がってか追撃に備えようとしかが、当のユウキはいつの間にか端末を取り出して誰かと話していた。

 

「…任務だ。一旦終わるぞ」

 

 通話を切るとユウキは任務が入った事を伝えて訓練を強制終了すると、ユウキはユリを連れて任務に向かった。

 

 -エントランス-

 

 エイジス開放の任務に区切りをつけて一時帰投したシェリーとライラ…集めたコアや素材、それから資材を極東支部に引き渡し、ようやくひと息つけると安堵しながら2人は出撃ゲートを潜り、エントランスに入ってきた。すると2人の目にユウキの真っ白な頭が目に映った。

 

「ユウキ、ただいま戻り…」

 

 数日ぶりにユウキに会えたことで、少し弾んだ声色になっていたシェリーだったが、ユウキの体で隠れていたユリを見た途端に鋭い目付きに変わった。

 

「あの、ユウキ…彼女は…?」

 

「そうか、まだ会った事が無かったな…ユリ…」

 

 威圧的な声色でユウキにユリの事を尋ねる。対してユウキは落ち着いた態度を崩さず、顎でシェリー達を指すと自己紹介するように促す。

 

「えっと…天草ユリ…です」

 

 ユリは話してすらいない筈の相手から突然ガンを飛ばされ、萎縮しながらも自己紹介する。

 

「ライラだよ。よろしくぅ~」

 

「…シェリー」

 

 対してライラはフランクに、シェリーは冷たい態度を崩さないと、相変わらずな様子で名を名乗る。ユウキはそれだけで十分だと言いたげに出撃ゲートに向かって歩きだす。

 

「…行くぞ」

 

「は、はい!!」

 

 顔合わせを終えて、ユウキはユリを連れて出撃ゲートを潜って任務へと向かう2人の背中をライラと怨めしそうな目をしたシェリーは静かに見送っていた。

 

「…イヤな予感的中だね…」

 

「…ふん」

 

 少し前までは久しぶりにユウキに会えると機嫌が良くなっていたのに、ユリが近くに居た事で一気に機嫌が悪くなった。ユリがユウキにどんな感情を抱いているかを何となく察したライラが話しかけると、それに気が付いていたシェリーも、その急降下した気分を示しているかのようにズカズカと歩いて行き、ライラもそれに続いて何処かへ行った。

 

 -嘆きの平原-

 

 シェリー達と分かれてから時間が経ち、ユウキとユリは旧ビル街の待機ポイントで任務内容の確認をしていた。

 

「さっき連絡が入った。今回の任務はザイゴートの討伐…だったが、それに加えて可能であれば周辺に現れた未確認アラガミを調査する」

 

「未確認…ですか?」

 

 ユウキの言った通り、周囲には何体ものザイゴートが浮かんでいる。比較的簡単な任務かと思いきや、それとは別に新種かも知れない相手の調査もある。先日戦ったハンニバル神速種と名付けられたアラガミの様な奴を相手にするのかと思い、ユリは思わず息を呑んだ。

 

「そうだ。強力なコア反応が確認されたと聞いている。恐らくは禁忌種レベルの様な危険な相手だ」

 

 ユウキは事前に得ていた情報から禁忌種と推定し、ユリにそのことを伝えながら待機ポイントから飛び降りるギリギリのところまで歩いていく。

 

「遭遇した場合はすぐに逃げろ。お前にはまだ荷が重い」

 

「わ、わかりました」

 

「よし、まずはザイゴートを片付ける…ミッション…開始!!」

 

 未だ姿を見せない敵の情報と対処は伝えた。ユリもしっかりと返事をした事を聞き届けると、ユウキはミッション開始の命令を出して待機ポイントから飛び降り、ユリもそれに続いて飛び降りた。

 

「左から回れ。ザイゴート程度なら問題なく戦えるだろう?」

 

「はい!!ちゃんと訓練してきたので大丈夫です!!」

 

 飛び降りるとユウキは二手に分かれて小型種を処理する様に伝えると、ユリも問題無いと返事をする。

 

「後で落ち合うぞ」

 

 それを聞いたユウキはユリが作戦領域を左側へと走っていくのを確認して、ユウキも右から回り込むべく走り始めた。

 

 -ユウキside-

 

 ユウキは走り始めた後、神機を銃形態に変形して、目の前のザイゴートを片っ端から狙撃弾で撃ち抜いていく。

 

(…ザイゴートが群れた所で所詮はザコ…任務遂行には支障は無いが…)

 

 今度は両サイドから迫ってくる赤いザイゴートに対して両手の神機を外に向けて狙撃弾を撃ってコアを撃ち抜きつつ、現在の戦力と敵の状況を考える。

 

(軽く見積もってもこっちだけで20体以上…近くに未確認アラガミの気配も感じるが…コイツらはそのアラガミから逃げて来たのか?)

 

 続いて左側から突っ込んでくる黄色のザイゴート2体を狙って両手の神機を向けながら狙撃弾で撃ち、走りながらユウキは小型種が群れでやってきたのか理由を考える。

 

(…まあ、目標と接敵すれば分るか…)

 

 何にしてもザイゴート自体は邪魔なだけで何の用も無い。さっさと全滅させるべく、今度は左右の斜め前から現れた青いザイゴートに対して両腕をクロスさせて狙いをつけ、狙撃弾を撃ちながらユウキは作戦領域内を走り回った。

 

 -ユリside-

 

 一方、二手に分かれた後のユリは、目の前から迫ってきたザイゴート3体に向かって突っ走る。

 

「はあっ!!」

 

 眼前まで接近して、目の前のザイゴートの眼球にショートブレードを突き刺す。

 

「ていっ!!たぁっ!!」

 

 そのまま神機を左右に振ってザイゴートの目玉をX字状に斬りつけると、左側の赤いザイゴートが毒霧の塊を吐き出してきた。ユリは右に跳んで避けるが、その時黄色のザイゴートが右から口を開けて近づいてきた。咄嗟に後ろへ再度跳びつつも、右手に持った神機を内側に引き寄せる。

 

「やぁっ!!」

 

 黄色のザイゴートが口を閉じきる前にユリは神機を外へと振って、ザイゴートを顎で真っ二つに切り裂く。続いて毒霧を放ってきた赤いザイゴートが体当たりしてきた。

 

「当たれ!!」

 

ユリは銃形態に変形して狙撃弾を発射する。狙撃弾が目玉を撃ち抜くと赤いザイゴートは大きく口を開けて怯み、その隙に口腔内に狙撃弾を撃ち込む。するとコアを直撃して、そのまま赤いザイゴートを貫通する。

 赤いザイゴートを倒したのを確認すると、ユリは神機を剣形態に変形させて再び作戦領域を左回りに走り出す。

 

「まだ居る?!けど…」

 

 目の前の黄色いザイゴートが毒霧を吐き出してくる。それをジャンプで躱すと、そのまま黄色いザイゴートを飛び越えてその後ろに居た青いザイゴートを上から奇襲する。

 

「アンタ達なんかに負けるもんか!!」

 

 両手で神機を握り締めて振り下ろすと、青いザイゴートは頭頂部には裂傷ができ、地面に叩き落された。続いてユリも着地と同時に右外から内側へと神機を振って青いザイゴートを両断する。

 すると後ろからさっき飛び越えた黄色いザイゴートが大きな口を開けてユリに迫ってきた。ユリは右に回りながら神機を振ると、顎から黄色いザイゴートを真っ二つに切り裂いた。

 そして再び左回りに走り始めると、赤と青のザイゴートが1体ずつ、まっすぐに突っ込んできた。

 ユリは先に突っ込んできたザイゴートを右に避けると、3回連続で斬りつけてザイゴートを倒す。続いて横から体当たりしてくる2体目のザイゴートには装甲を展開して攻撃を防ぐ。その後装甲をしまうと、勢いよく神機を左右に振り、ザイゴートを両断する。

 そして次のターゲットを探すべく、また左回りに走り始めた所で、逆サイドから回り込んできたユウキが目に映った。

 

「ユウキさん?!あれ?私まだまだ1/3程しか…」

 

 ユウキと合流したのは全体の1/3程進んだ程度の所だった。何故こんなにも差が出たのかと思いユウキの後ろを見てみると、大量のザイゴートが転がっていた。

 

「…すいません…全然倒せませんでした」

 

 自身が倒した数よりも遥かに多くのアラガミの死体を見て、何だか申し訳なく思えてきたユリは縮こまりながら謝った。それを聞いたユウキが何か言おうと口を開いた瞬間…

 

  『『『ガァァァァッ!!』』』

 

 雄叫びと共にビルをなぎ倒して作られた獣道から20体近いオウガテイルやヴァジュラテイル、ハガンコンゴウが作戦領域内になだれ込んで来た。

 

「増援?!」

 

「…ザコがワラワラと…」

 

 突然の出来事にユリは動揺するが、ユウキは慌てる様子もなく神機を剣形態に変形させて臨戦態勢に入る。しかしその直後、未だに建っているビルの上から火を吹いた『何か』が打ち上げられた。そしてそれは放物線を描いてユウキ達の方へと落下していく。

 

「チッ!!」

 

「キャアッ!?」

 

 飛来した『何か』の正体をすぐに察したユウキはユリを小脇に抱えて、その場から一気に離れる。しかし、ユリは突然の事で小さく悲鳴を挙げてなすがままにユウキに連れて行かれる事しか出来なかった。

 そして飛来した物体…ミサイルが地面に落下すると、爆発を起こして逃げるアラガミ達を無慈悲にも攻撃していく。爆発の衝撃で全身が結合崩壊を起こし、追撃の爆風で体をバラバラに吹き飛ばされる。更には辺り一面にオラクル細胞由来の炎が上がり、辛うじて体が残ったアラガミ、コアだけになったアラガミさえも焼き尽くしていく。

 この一撃で半数程のアラガミが死滅したが、トドメと言わんばかりの巨大なトマホークが着弾すると、残ったアラガミも先と同様に爆風と爆炎で粉々にして焼き尽くしていった。残ったのは1体のオウガテイル堕天種と2体の赤いヴァジュラテイル、そして赤いザイゴートが2体だけだった。

 

  『ウォォォォォオン!!』

 

 するとユウキにとっては聞き覚えのある雄叫びが辺りに響き渡る。その直後、ビルの隙間から見慣れた機械的な身体に、装甲の隙間から妖しい光を放つクアドリガ神属のアラガミが現れた。

 

「クアドリガ神属禁忌種…もしかして、コイツがテスカトリポカ!?」

 

「いや、コイツは…」

 

 一旦離れてから降ろされたユリは、見た目がクアドリガ神属の禁忌種と言うことで、資料で見たテスカトリポカかと思ったが、ユウキはすぐに別物だと気がついた。

 

「第二種接触禁忌種…『ポセイドン』…確かアメリカ支部で討伐実績があったはずだ」

 

 クアドリガ神属でテスカトリポカ以外の禁忌種を記憶の中から引っ張り出す。すると、以前見た資料に該当するアラガミが居た事を思い出す。その時に極東ではまだ遭遇例が無い事、その他特徴も一緒に思い出す。

 

「記憶が正しければ内蔵されている火器を全て開放すれば辺りは焦土と化すらしい…雑魚も数体残っている。お前は気をつけて撤退しろ」

 

「そんな事言われても…」

 

 辺りを焦土に変えると言われても、そんなものポセイドンの気分次第である以上どうしようもない。思わず文句の1つも言いたくなったユリだったが、そんな事をするよりもさっさと逃げた方が良いと言うのは新人の彼女にも分かっていた。

 ユリは指示どおりにその場を後にしようと走り出す。しかしアラガミ達は突然背を向けるユリを狙って追いかける。

 

  『『バンッ!!』』

 

 しかし、突然ポセイドンの眼前を2つのレーザーが通り過ぎたので、ポセイドンはユリの追撃を止めて立ち止まった。ポセイドンはレーザーが飛んできた方向を見る。

 

「…」

 

 そこにはポセイドンに向かって両手の神機を銃形態に変形させて、銃口を向けて睨むユウキが居た。

 

  『ウォォォォォオン!!』

 

 先に倒すべきはコイツだと感じたポセイドンが背中のミサイルポッドをユウキに向けると、6発のミサイルを放射状に発射する。それは途中で向きを変えると、ユウキに向かって飛んでいく。

 それを見たユウキは一気に前に出てミサイルの下を駆け抜けて避けると、標的を見失ったミサイルは地面に着弾して爆発する。そして次の瞬間にはユウキはポセイドンとの距離を詰めて神機を振り抜いた。

 

  『キンッ!!』

 

「…」

 

 ユウキの一撃ばポセイドンの装甲に軽く弾かれる。しかし、ユウキにとってそれは意外な事でも何でもなく、至極当然の事だった。ユウキは敢えて神機の能力を下げて攻撃していたからだ。その目的はポセイドンのデータを取るためで、ユウキ自身もかなり手を加えての攻撃だった。

 しかしポセイドンはその間に反撃の準備を整える。ユウキからの攻撃を受けるとポセイドンは大きくジャンプする。ユウキは後ろに下がって距離を取るが、空中でミサイルを発射する。

 

「…」

 

 ユウキは特に驚く様子もなく、更に後ろに下がってミサイルを避ける。その間に着地したポセイドンが間髪入れずに突進してくる。それを左側にすれ違う様に跳んで躱すが、続いてミサイルをポセイドンの周囲にばら撒く。

 それをまた後ろに下がって距離を取ると同時に両手の神機を銃形態に変形して、神属性のレーザーを2発発射する。その時の射撃でミサイルポッドは結合崩壊こそ起こさなかったが、小さなヒビがいくつか入った。

 

(なるほど…火力は少々上がった様だが、後はさして変わらないようだな。もうそろそろいいか…)

 

 今まで撃ってきた火器によって、地面は大きく抉られる等、破壊力は強化されてるが、立ち回りは今まで戦ってきたテスカトリポカとさして変わらないと分かると、そろそろ決着をつける事にした。

 ユウキは剣形態に変形しながらジャンプして、後ろから再度ポセイドンに近づいて背中に乗り込む。その瞬間、ユウキは両肩のミサイルポッドを斬り裂いて結合崩壊させる。

 

  『ウォォォォォオン!!』

 

 その後、結合崩壊を起こしたポセイドンは馬が嘶く様に前足を持ち上げると、怒りで活性化する。それに合わせてユウキはジャンプしてポセイドンの正面に着地すると、その間にポセイドンの前面装甲が開いてトマホークを発射する状態になっていた。直後ポセイドンがユウキの後ろからトマホークを発射する。ユウキは左の神機の柄を咥えると、後ろに下がりながらバク転し、トマホークを飛び越える。そして左手でトマホークに触れると、そこを軸に身体を捻りながらポセイドンの方を向きながら一気に距離を詰める。

 そして左手に神機を掴み直すと、未だ開いている前面装甲を根本からから切り落とす。

 

 

  『ウォォォォォオン!!』

 

 装甲を失ったポセイドンが更には怒りのボルテージを上げる。ポセイドンが吠えると辺りに紫の炎が立ち上って辺りを焼き尽くしていく。ユウキは一気に後ろに下がって距離を取ってポセイドンの炎を避ける。

 未だ炎を吹き出して隙だらけになっているポセイドンの頭上よりも高くジャンプすると、両手の神機を結合させて両刃剣にする。

 

「…」

 

 炎が消えたタイミングでユウキが両刃剣でポセイドンの兜を叩き割る。強烈な一撃を入れられ、ポセイドンが怯んでいる間にユウキは着地する。

そのまま追撃しようとしたが、それよりも先にポセイドンが再度トマホークを発射する。しかしトマホークはすぐに霧散した。ユウキはワープさせて自身の頭上から落としてくると察して、後ろに跳んで避けるが、何時まで経ってもトマホークが落ちて来ない。

 

「…?」

 

 何かおかしいと思ったが、その瞬間ユリの方を見ると、小型種に囲まれて相手をしているユリの頭上にトマホークが再生成され始めていた。

 

「チッ」

 

 ユウキはユリのフォローをすべく駆け出す。その際、銃形態でトマホークを撃ち抜こうと考えたが、その際に変形して、構え、狙いをつけて撃つ、そして着弾まで時間もかかる。一瞬であの場に行ける方法は無いかと考えていると、1つ思い付いて、ユウキは黒い霧に包まれた。

 

「もぅ、さっきから付き纏って…これじゃあ逃げられ…きゃぁっ!!」

 

 ユリが小型種の相手をしていると、突然何かに抱えられてその場から離れる事になった。落ちたトマホークが辺りに爆弾を撒き散らしながら残った小型種を一掃する中、何事かと思い抱えてきた張本人の方を見ると、アラガミ化したユウキが目に映った。

 

(…そん、な…うそ…)

 

 ユリの目にはアラガミ化したユウキの顔だけでなく、更に後ろを向くと背中に生えた黒い翼も視界に入った。その姿を見て呆気にとられていたユリだったが、ユウキとポセイドンはそんな事に構わず戦闘を続ける。ポセイドンはユウキとユリを踏み潰そうとダッシュしてくる。

 

「…」

 

 ユウキはその場で手を放してユリを落とすと、獣脚の瞬発力を活かして近づいてくるポセイドンに接近する。そして間合いに入ると、地を蹴って跳び上がり、顎を蹴り上げてポセイドンを怯ませる。その隙に自身の鋭利な爪と急降下する勢いを使って、ポセイドンの顔面に向かって振り下ろす。

 『スパンッ!!』と小気味良い音と共に着地すると同時にポセイドンはバラバラに切り刻まれ、そのままゆっくりと崩れ落ちる。そしてユウキはゆっくりと立ち上がると再び黒い霧包まれる。霧が晴れるとそこには見慣れたユウキが立っていた。

 

「今見たものは他言無用だ…それが破られた場合、命の保証はしない…」

 

「…」

 

 ユウキはアラガミになれる事を漏らすなと警告するが、ユリはずっと呆けたままだった。人からアラガミになり、更には元に戻るところを見れば当然かと思い、ユウキは神機を捕食形態に変えてポセイドンへと向けた。

 

(黒い…羽…)

 

 しかしユリが呆けていたのは、人とアラガミの姿を自由に変えるところを見たからだけではなかった。アラガミ化したユウキを見てからというもの、ユリの眼にはユウキの背中から生える黒い翼が焼き付いて離れなかった。

 

(そっか…『アイツ』が…お父さんとお母さん…皆の仇…)

 

 両親や研究所の人たちを屠り、地獄の様な外の世界に追いやった相手…その相手の特徴的な黒い羽をしたアラガミの正体が、あろう事か目の前にいる信仰の域に達する程に慕っている男だった。それを知った瞬間、ユリの中でドス黒い感情が蠢いた。

 

「…早く回収しろ。帰るぞ」

 

「…はい」

 

 自分の分は回収した。あとはユリが回収すれば任務は終わりだ。ユウキがユリので方に振り向く事なく回収する様に言う。そしてユリは抑えきれない怨嗟が漏れ出たかの様に低くい声で返事をする。だがユリは湧き上がった憎悪を今は必死に抑えてポセイドンから素材を回収すると、2人は極東支部へと帰投した。

 

To be continued




あとがき
 成長して少しずつユウキとやり会える様になったユリ、危ない疑惑を持たれたユウキ、そして救世主の帰還とのコラボアラガミ、ポセイドンとの戦いでした。ポセイドンと聞くと海の神様と言う側面が有名ですが、地震を司る神でもあるらしいです。多分GEのポセイドンは地震を司る方が元ネタなんでしょう。次は同じく救世主の帰還とのコラボからあのアラガミが出ますよ。

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