mission116 出向
-支部長室-
「やあ、急に呼び出してすまないね」
ユウキとユリが本部に行く事に決まってからしばらく経ったある日、2人は突然ペイラーから呼び出されて支部長室に来ていた。
「いえ…で、今回は何故俺達を呼んだんですか?」
何の要件か聞かされる事なく来たため、ユウキはペイラーに要件を聞く。
「今回の本部への召集なんだけど、私も同行する事になったよ」
「…何故?」
「アラガミ迎撃システムの検分を頼まれたんだ。新しい迎撃システムは一技術者として非常に興味深いものだからね」
どうやら新しい迎撃システムの事で呼び出しがかかったようだ。ペイラーは新しい技術に(開いているかも分からない細い)目を輝かせて召集に同行することを伝えてきたが、ユウキは興味が無さそうに『そうですか』とだけ伝えて踵を返して支部長室を出ようとする。
対してユリは呼び出されたのに本当にそれだけで終わりなのか思い、引き止めた方が良いのではないかとわたわたと慌て始めた。そして帰り際に、ペイラーが『ああ、そうだ』と言うと、ユウキは足を止める。
「それから、初日には君たちとの懇親会を開く予定だそうだ。相応の格好をしなければならないが…まあそれはこちらで用意しよう。ユウキ君はタキシードで十分だろうから、ユリ君は後で要望を聞かせてくれ」
「分かりました」
「それじゃあ当日、よろしく頼むよ」
召集のある日にパーティがある事を告げられ、ドレスコード用の衣装を用意する事を伝えられると、ユウキはそのまま支部長室を出ていき、ユリはその場に残ってパーティドレスの要望を伝える事にした。
-数日後、神機保管庫-
本部への召集にペイラーが同行する事を伝えてから数日が経った。神機保管庫ではリッカが整備を禁じられているにも関わらず、ユウキの神機の前で何かの作業をしていて、その様子を少し後ろでシェリーがじっと見ていた。
「あ、あの…」
当然リッカもその視線に気づいていて、苦笑いしながら振り向きシェリーの方を見る。
「そんなに見られると作業しにくいんだけど…」
やりにくいと言いつつも作業の手を止めないのは流石というべきか、手元を見ることなくマニピュレータを正確に動かしていく。
「…失礼。ただ、ユウキの神機…私達には触るなと言われているのに、何をしているのかと気になったので…」
「『ユウキ』君からの依頼。神機の柄を以前のタイプに偽装するユニットを作ってるの。ただ、今の神機構成だと銃形態が使えなくなるから、変形機構も変更しなきゃいけないんだけど…そこは本人も分かってるみたいだし、後は自分で何とかするんじゃないかな?」
(貴女なら、まだユウキの事を任せられたのに…)
神機の形状を通常のものに偽装するためのパーツが作られていくのを眺めるシェリー…心の内ではユウキの事を任せられるとしたらリッカしかいないと考えていたが、それを口に出すことはしなかった。リッカ自身が既にユウキの考えが分からないと言って距離を取り始めた時の事を本体である神機を通しながら見た時の事を思いながら、数日前の事を思い出していた。
-数日前、自室-
本部遠征が決まった後、すぐにシェリーとライラはユウキの部屋に呼び出されていた。2人は一緒にユウキの部屋の扉を開けた。
「ヤッホーユン君、来たよ!!」
「ユウキ、今回はどのような用件でしょうか?」
2人が部屋に入ると、座って書類整理をしていたユウキは一旦作業を止めて『話がある』と行って2人を自身の元へと来させた。
「今回の本部出向だが、俺が2つの神機を扱える事は出来れば本部の連中には隠したい。そこで今回の任務では基本的に片方を使う」
ユウキは自身の特異性を隠す為、今回は2つの神機接続やブレイクアーツを使わずに戦い抜く事を2人に伝える。シェリーとライラもそれは当然の事だと思っていたが、そうなるとどちらを使うのかが気になるところだ。
2人はどちらが選ばられるのか、緊張した面持ちでユウキを見ていた。
「今回使う神機はシェリー、お前だ」
ユウキの指名に『分かりました』と返事をするシェリーに対して、ライラは大きな声をあげて抗議する。
「そんなぁ!!私はお留守番?!ひもじい思いをしてユン君とシェリーの帰りを待ってなきゃいけないの?!」
彼女らの本体が神機…アラガミである以上、捕食衝動は本能から来るものだ。コアを休止状態にしておけば取り敢えずは抑えられる。だが長い間整備もなく突然の戦闘になれば、先の捕食本能の開放も合わせて思わぬトラブルになる可能性もある。
「…シェリーは俺と一緒に本部に潜入、その後は独立して内部の調査をしてもらう。特に、本部長や俺を呼びつけた本部技術開発局長の動向を探って欲しい」
「承知しました」
ユウキが当日の動きを伝えるとシェリーは快諾する。しかし実質待機を命じられ、自身の話を聞いてもらえなかったライラは『無視しないでよぉ!!』と喚きながら地団駄を踏む。
「ライラは別ルートからの潜入だ。ヘリまでは同行してもらうが、現地に着いたら別行動だ」
暗に連れて行けと駄々をこねるライラだったが、ユウキは無視して己の要件だけを淡々と進めていく。そんなユウキの態度に腹を立て、ライラは半泣きで頬を膨らませてユウキを睨んだ。
「合流出来たらあとは各々の判断に任せる。本部長と技術部の思惑を探りさえ出来れば手段は問わん。それから、何かあれば2つの神機を使う事も考えている。万が一があれば俺の元に来い」
「ぶぅ~…りょーかーい…」
これ以上無視すると面倒な事になりそうだと思い、ユウキは連れて行きはするものの、あくまでも基本は別行動だと伝える。そして背に腹は代えられない状況になった時はライラが本体の神機も使う事を伝えて、今回の打ち合わせを終了した。
-極東支部、ヘリポート-
出向の話が来てから1週間、準備が終わっていよいよ出向当日となった。先にユリ、シェリー、ライラが荷物と一緒に来ていて、ヘリは既に準備が完了して、プロペラを回して待機している状態だった。
「準備はできたな」
続いて少し遅れてユウキがヘリポートに来た。既に来ていたユリ達に支度は済んでいるかを確認する。
「はい。大丈夫です」
「ええ」
「はーい…」
ユリとシェリーは問題ない旨を伝えるが、留守番が確定しているライラはまだ納得していないのか、気落ちした声で返事をする。
(片方の神機はヘリの装甲内に隠して、長期間使わなくても大丈夫なように調整した…普段使う神機も普通のものと変わらぬ様にオプションを取り付けた。後はブレイクアーツを使わずに済めば良いが…)
本部に自身の特異性を知られない為にもユウキなりに準備はしてきた。後は神機を1つで、かつブレイクアーツ無しでこの依頼を終わらせる事が出来れば良いのだが、ユウキには何かが起きそうな予感がしてならなかった。
「いやぁ遅れて済まないね。最後の最後で重要な書類をカバンに入れ忘れてしまったよ」
「いえ、俺達も今来たところです。何ら問題ありません」
「それじゃあ、行きましょうか」
そして最後の1人、ペイラーも荷物を持って現れた。メンバーが揃った所で、3人と2人(?)はヘリに乗り込むと、プロペラは回転数を上げてゆっくりと飛び上がり、ある程度上空に上がった後に遂に本部へ向けて動き出した。
To be continued
あとがき
怪しさ満点の本部出向への準備回でした。次話で新キャラが多数出てきてワチャワチャしたりギスギスしたりする予定です。
さて、救世主の帰還探してくるか…