GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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到着早々一悶着あったユウキ達、その後も波乱が続き…?


mission118 最協

 -フェンリル本部、ブリーフィングルーム-

 

 本部の作戦に参加する最後の1人はアリサだった。数ヶ月振りに再開して大きく自信を取り戻せたあたり相当厳しい戦いを経験してきたのだろう。

 

「ああ、久しぶりだな」

 

 しかし作戦の説明を始めると言っている為、話もすぐに切り上げてブリーフィングに集中する。アリサもそれは理解していて、挨拶もそこそこにユウキの隣の席に座る。

 

「あの、ユウキさん、この人は?」

 

「ブリーフィングが始まる。あとにしろ」

 

 だがユリはユウキと親しげにしているアリサの存在が気になって仕方ないようで、アリサについてユウキに尋ねたが、ブリーフィングが始まるので、後から話すと言ってユリの話を遮る。そのタイミングで、アルベルトが任務の説明を始める。

 

「では皆さん揃った所で本作戦の説明をさせていただきます。が、その前に本参加する部隊の重鎮達を紹介します」

 

 そう言ってアルバイトは一緒に部屋に入ってきた面々が見える様に横にズレる。すると腕輪を付けて眼鏡をかけた短い金髪の男から順番に部屋に端から順番に部屋に所属と答えていく。

 

「私はアメリカ支部支部長のエドガー・K・ロジャースです。短い間ですが、よろしくお願いします」

 

「フェンリル極致化技術開発局局長、グレゴリー・ド・グレムスロワだ」

 

「同じくフェンリル極致化技術開発局、開発室長レア・クラディウスです。そして…」

 

「私はラケル・クラディウス…先程紹介したレア・クラディウスの妹です」

 

「私は極東支部支部長のペイラー・榊だ。よろしく頼むよ」

 

 白衣を着た金髪の男以外は各々の自己紹介が終わり、アルベルトは皆が席へと座った事を確認すると、ようやく任務の説明を始める。

 

「さて、皆様には新型対アラガミ兵器の完成に向けた作戦に参加していただきます。現状、新兵器は稼働可能な状態まで完成していますが、最終調整の為の素材が足りない状態であるため、皆様には周辺のアラガミを倒して素材を集めてもらいます。新兵器の詳しい概要と作戦は技術開発局局長から説明してもらいます」

 

 そう言うとアルベルトは目配せして、白衣を着た金髪の男は立ち上がって前に出た。

 

「今回の作戦を立案、要請をした本部技術開発局局長のワイズマン・グレイルです。先程本部長が仰った通り、皆さんには私が発明した新兵器完成の為に周辺のアラガミを倒して素材を集めてもらいます」

 

「あの、何故本部の神機使いではなく、私達が素材回収のために集めらたのですか?」

 

 ワイズマンと名乗った本部の技術開発局局長が、簡潔に任務の目的と内容を話していく。結局のところ、新兵器完成の為の素材回収とそれに伴うアラガミの大討伐…やることはいつもと変わらない旨を聞かされる。誰もがそんな通常任務とさして変わらない作戦に何故各支部の神機使いを招集したのか疑問に思っていた。そんな中、フロリアがその疑問を本部の役員達に尋ねる。

 

「理由自体は単純です。ここ最近外部居住区が頻繁に襲撃されるようになっているため、神機使いの大半はそちらの哨戒任務に就いている状態なのです」

 

 アルベルト曰く、居住区周辺の警備を強化しなければならない状態にあるようだ。本部周辺に建設された居住区は他支部の規模と比べても巨大なものになっている。当然、哨戒任務に割かれる人的リソースも膨大なものになり、他の任務に神機使いの手が回らない状態にであるらしい。結果、その補填と新兵器の素材回収を兼ねて今回各支部から人員を補填したとの事だった。

 アルベルトが説明を終えると、ワイズマンがわざとらしく『ンンッ!!』と咳払いをして作戦の説明を続ける。

 

「話を戻しましょう。そのような事態に陥った原因も人員補強が簡単に行えない神機との適合システムにあります。そこで、この私が発明した新兵器に神機使いの代用…いえ、神機使いに取って代わる主戦力として完成させて全世界に配備するための作戦なのです」

 

 フェンリル側の戦力不足原因は偏食因子に適合した者しか神機使いになれない所に原因があると言い放つワイズマン…その解決策として神機使いに変わる兵器を量産する。確かに理にかなったプランではあるが、それを聞いたジャックは声を荒らげて話を遮る。

 

「おい、じゃあ俺たちは自分で自分の首を締める作戦に参加させられてるってことじゃねぇか!!」

 

 ジャックの言うとおり、ワイズマンの言う新兵器が完成する事で神機使いの価値は大きく下がる。そしてその新兵器を完成させるのは今回集められた神機使い…自分で自分の存在理由を奪う様な作戦に参加させられていると、ここに来て今回の作戦に異を唱える。

 

「結果的にはそうなりますね。しかし、人員確保もままならない現状では大量生産可能な兵器をメインに据える方がよっぽど合理的ではありませんか?」

 

「チッ!!ふざけやがって!!」

 

「現実を見てください。年々、皆様の活躍で神機使いになり得る人材は増えつつはあります。しかし、それ以上に戦場で散っていく神機使いの方が多いのです。神機使いの総数は減っていく一方である以上、何らかの補填は必要なのです」

 

 しかしワイズマンの言うことも理解はしている。実際に入隊する神機使いより散っていく神機使いの方が多いのは皆肌で感じている事実だ。この新兵器が完成すれば十分な訓練を受けた状態で実戦に挑める神機使いが増える。そう言う点でもメリットがあるのだが、いつかは神機使いに取って代わられるのは目に見えていた。

 

「さて、そろそろ私の発明について説明しようかと思ったのですが…ここではきちんとした説明は難しい。現物をご覧に入れますので、皆様には私の研究室へご一緒願います」

 

 それぞれが思うことはあるものの、今は本来の任務の為にも新兵器の概要を説明してもらわなければならない。ワイズマンが自身の研究室へと案内すると言うと、それに続いて皆が部屋を出ていく。ユウキ達は最後に部屋を出る事になったが、その途中でユリがユウキの服の裾を摘んで静止する。それに気がついたアリサも、部屋を出る途中で足を止めた。

 

「…あの、ユウキさん。あの人は一体…?」

 

 ユリはユウキと親しげにしていたアリサの事が気になってしょうがないようだった。後々何度も聞き直されるのも面倒なので、ユウキは小さくため息をついてアリサを紹介する。

 

「彼女はアリサ・イリーニチナ・アミエーラだ。数ヶ月前まで第一部隊に所属していたベテランの神機使いだ。極東支部から離れてからは地元のロシア支部で対禁忌種部隊の教導をしていた」

 

「…そんな凄い人だったんですね」

 

「アリサ、こいつはアリサが転属した後に第一部隊に配属になった天草ユリだ。この任務に同行している部下だ」

 

 続いてアリサにユリを紹介すると、アリサは微笑みながら右手をユリに差し出した。

 

「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。よろしくお願いします、ユリさん」

 

「私はユリです。こちらこそよろしくお願いしますね。アリサさん」

 

 2人は互いに笑顔で握手をする。しかし、その目元には影がかかって威圧的な表情になっている様にも見えた。

 

((…この人、敵だ))

 

 互いに似たような空気を感じ取り、本能的に相手を警戒しあう。握手をしてから数秒経ったが、互いに笑顔で睨みを効かせたまま硬直していた。

 

「もういいか?早く行くぞ」

 

 対してユウキはそんな事を気にも止める様子もなく、皆が先に行ってしまったので早く合流しようと伝えると1人で先に部屋を出ていった。アリサとユリもそれに気がつくと、慌てて皆の所に合流しに行った。

 

 -本部技術開発局、実験室-

 

 長い距離をワイズマンに案内され、ようやくとある大きな扉の前にやってきた。カードキー、指紋、声紋、網膜認証など、数々の電子ロックで厳重に施錠された扉のロックを外し、ようやく扉が開いて大きな研究室が目に映った。ワイズマンの『どうぞ、中にお入りください』と言う言葉を聞くと、集められた重鎮達と神機使い達は次々と研究室へと入っていく。そして大きなガラス張りの実験室内には、胸部には神機と同じ様な橙色のコアがついていて、様々なケーブルが背中に接続されている大きな類人猿を彷彿とさせる骨格フレームをした何かが鎮座していた。

 

「これが、私が開発した最新鋭の対アラガミ迎撃兵器、自立型神機です」

 

「自立型…神機?」

 

「ただの金属製フレームに見えますが…?」

 

 エドガーとレアがそれぞれ珍妙な兵器に疑問を呈する。神機使いに代わる新兵器と言うからには、巨大な大砲や無数の機関銃と言った、無骨で巨大な兵器を思い浮かべていたのだが、思いの外小さくてヴァジュラと同じ程度の大きさしかない鉄の骨に拍子抜けしてしまった。

 

「フフ…まだこの自立型神機は起動すらしていません。本来の姿を見せるには起動状態にする必要があります。では、実際にご覧入れましょう。少し離れていてください」

 

 そう言ってワイズマンが実験室の外に出るように促すと、神機使い達や要人達は一旦実験室から出る。それを確認したワイズマンも続いて実験室から出ていくと、近くのコンソールを操作し始める。するとフレームが四足歩行の骨格に変形し、フレームからオラクル細胞が溢れ出てきた。細胞はすぐにフレーム周辺に定着し、肉体を形作るとヴァジュラと同じ姿に変わった。

 その場に居た者たちが驚きの声を上げる中、開発者のワイズマンは得意気な顔になって自立型神機の詳細を説明し始める。

 

「どうです?これが私が開発した自立型神機です。素体フレームには対アラガミ防壁と同等の物を使用、起動時には骨格タイプを指定してフレームを変形、そしてフレーム内に充填させたオラクル細胞を纏わせて外殻を形成…指定したスペックを発揮するためにオラクル細胞の結合と駆動出力を制御、そしてコアに学習させた敵対勢力に独自の思考で攻撃する…さらにはリアルタイムでモニターと監視、状況を見て遠隔での簡易操作も可能です」

 

「ふん…こんなもの、無意味な機能を付けて無駄に金をかけているだけではないか。我々の開発する神機兵の方が生産性、コスト、原材料の調達、あらゆる面で優れている。旧時代の遺産となる金属製品を必要としている時点でコストと運用のバランスが取れておらんわ」

 

 ワイズマンが自立型神機を嬉々として説明する中、極致化技術開発局局長のグレゴリー・ド・グレムスロワ…皆からはグレム局長と呼ばれている男が生産性と運用コストが見合ってないと鼻で笑い、今度は自分達が開発している神機兵の方が組織運用する上では優れていると力説する。

 

「随分な言いようですね。私の発明は貴方がたと違って高性能、かつコアによる自己進化をコンセプトとした新兵器です。まだ運用が可能かも分からない屑鉄を生産するだけのあなた方の発明と一緒にしないでいただきたい」

 

「貴様…今の無礼な発言、録音しておいたからな!!法廷に来い!!訴えて賠償金を搾り取ってやる!!」

 

 どうやら自身が出資する神機兵を屑鉄扱いされた事でグレムの逆鱗に触れたようだ。顔を真っ赤にして凄みながら、証拠があると言い裁判を起こして金を毟り取るつもりのようだ。しかし、ワイズマンは意に介する事もなく鼻で笑ってスルーして話を続ける。

 

「少々邪魔が入りましたが、皆様には早速自立型神機の性能を見てもらいましょう。標的は…『彼』です」

 

 自立型神機のデモンストレーションを行う旨を伝えると、ワイズマンはとある神機使いの方を見る。

 

「たった数ヶ月で最強の一画にまで登りつめた鬼才の神機使い…神裂ユウキ」

 

 どうやらデモの相手にユウキを指定したいらしい。これで今回の招集にユウキ自身を含めた強力な神機使いが集められたのか理解した。要は自身が発明した自立型神機の有用性を見せびらかして自慢したいのだ。その手段として手っ取り早く強力な神機使い達を集めて打ち負かし、その優秀さを証明してみせようと言うのだ。

 

「彼を超えた意思なき忠実な兵器…これがあれば神機使いなど無用の長物。むしろ感情を持つが故に反乱を起こす不穏分子の掃除に大きく貢献できます。そして人々を救った兵器を作り出した私は、偉大な発明者として後世に永遠にその名を刻むことでしょう」

 

 元々ナルシシズム気質なのか、ワイズマンは自らの発明で人類を救う英雄であると嬉々として自称する。それをテストの標的にされたユウキは『アホくさ…』と思いながら呆れていた。

 しかし、ワイズマンはそんなユウキの心情を知る由もなく、いつの間にか持ってきていたユウキの神機がカーゴの上に用意されていた。早く準備をしろと言いたげなワイズマンの勝ち誇った様な顔に小さくため息をついて、ユウキは神機を収めるアタッチメント付のベルトを腰に巻き、そこに神機を刺して実験室に入っていく。

 

「それでは…行きますよ!!」

 

 ワイズマンのかけ声と共にヴァジュラに擬態した自立型神機がユウキに飛びかかる。

 

「…」

 

 それを軽く後に跳んで避けると、追撃に前足で切り裂いてくる。それも軽く下がって回避すると、今度は真っ直ぐ突っ込むタックルを繰り出してきたが、それも横に軽く逸れることで回避する。

 

(大振りな動きに直線的な攻撃…しかも遅い。コアの学習が追いついていないのか?)

 

 自立型神機との戦闘中も別の事を考えながら、ユウキは難なく攻撃を躱す。肝入りの新兵器と言うからには何かあると思っていたのだが、現物を見ても特に何も変わったところがないどころか本物のヴァジュラにも劣っている様にも感じていた。その間に自立型神機は振り返って再びユウキに向かって飛び込み噛み付いてきた。

 

(終わらせるか…)

 

 ユウキは腰を落としつつ軽く前に出て自立型神機の顎の下に潜り込む。そして右手を勢いよく振り上げて首元を掴む。するとユウキの意図とはまったく違い、右手が喉元を貫通して内部のフレームごと破壊した。そして手の先にコアと思わしき球体に触れると、さらに奥へと腕を突っ込んでコアを鷲掴みにして一気に引き抜いた。

 すると自立型神機は力なく崩れ落ち、身体に纏っていたオラクル細胞が霧散して、後には金属製のフレームだけが残された。

 

「ふふん、流石にやりますね。しかし今のは出力をかなり抑えた個体です。貴方のデータなどとうに解析してそれを超えられるように設計してあります」

 

 自身の発明があっさりと倒されたのに、ワイズマンは余裕の表情をユウキに向けていた。どうやらかなり弱く調整したものだったようで、こいつがやられても痛くも痒くもないと言いたげな様子だった。

 

(随分と脆いな…本当に神機なのか?)

 

 しかし、ユウキはあまりにもあっさりとオラクル細胞の外殻を破壊できた事に何処か怪訝そうな顔になる。あまりにも細胞間の結合が弱すぎる事実に疑問を抱きながらも掴んだコアを見つめていると、先と同じ様にヴァジュラの姿をした次の個体が実験室に投入される。

 

「始めますよ!!覚悟しなさい!!」

 

 ワイズマンの指示で自立型神機がユウキに襲いかかる。自立型神機はタックルで攻撃してきたが、ユウキはそれを造作もなく避け、標的を失った自立型神機は壁を破壊した。

 

(さっきよりは速いが…それだけだな)

 

 ただ速くなっただけ…それがユウキの率直な感想だった。その質量とスピード、増強されたパワーで結果的に一撃の威力は上がった。しかし肝心の自立型神機本体がその増幅された能力に振り回されている。これでは戦闘能力の向上など図れはしない。

 こんな無意味なデモンストレーションに付き合わされる事がバカバカしく思えたユウキは振り返って突っ込んできた自立型神機の側頭部に右足で蹴りを入れる。すると自立型神機の軌道が逸れて右へと吹っ飛び、その衝撃に耐えられずに頭が引きちぎられた。

 

「ば、バカな…彼の戦闘スペックの3倍は引き上げた設定だぞ?!」

 

 相当に自信があっただけに、自立型神機が2度もあっさりとユウキに倒された事にワイズマンは取り乱している。しかもスペック上はユウキの能力を遥かに上回る様に調整しただけあって余計に理解出来なかった。

 はっきりと言えば無様とも言える慌てように、外から見ていたグラムがケタケタと笑いながら小馬鹿にしてきた。

 

「カカカッ!!ご自慢の発明品もこんな程度じゃ邪魔くさい粗大ゴミじゃねぇか?」

 

「ふ、ふざけるな!!こうなったら、限界まで戦闘力を上げた設定に変更っ!!」

 

 グラムの挑発を受けてワイズマンが怒りに任せて乱暴にコンソールを叩き始める。操作が終わると、今までの物よりも大きなヴァジュラとなった自立型神機が配置され、ユウキと睨みつけて唸り声を上げている。

 

「逃げるなら今の内ですよ?!君ごときでは敵う相手ではありません!!」

 

「…」

 

 ワイズマンなりの慈悲のつもりだろう。今負けを認めればここで終わりにしてやろうと言うが、ユウキは何故こうも自立型神機が脆いのか検討がついていたので、ハッキリ言って何処まで強化しようが負けるとは思っていなかった。

 

「ふ、ふん!!素直に逃げればいいものを!!私の発明で君ごとき!!捻り潰してやる!!」

 

 ユウキが無言のまま自立型神機を睨み付ける。戦う意志があると受け取ったワイズマンが自立型神機に指示を送る。すると、大口を開けて地面を砕きながら高速で自立型神機が突撃してくる。対してユウキは右の拳を硬く握り、左から右へと大きく腕を振るい、自立型神機の側頭部に鉄槌をぶち当てた。

 その威力で自立型神機の頭はバラバラに砕け、さらには本体も横へと吹っ飛び、ダメージによって機能停止になるまで追い込まれた。そして最強にまで強化した自立型神機が力無く横たわる様を見て、ワイズマンもまた驚愕してワナワナと震えていた。

 

「そ、そんな…また、一撃…?」

 

 結局1度も神機を使わせる事もなく、素手で自立型神機を破壊された事実が信じられず、ワイズマンが震えた声で今起きた事を確認するかの様に呟いて崩れ落ちる。対して特に手応えも感じられずにデモンストレーションが終わり、新兵器への期待も無くなったユウキが無表情のまま実験室から出てきて、ワイズマンを見下しながら抑揚の無い声で話しかける。

 

「一体いつの俺のデータを使ったのかは知らんが…神機使いも日々戦いの中で進化していく…そこを見誤っているようでは、端から勝負にならんぞ」

 

 好き放題に言われたワイズマンは恨めしげにユウキを睨み付ける。しかしユウキは気にする様子もなく、そのままアリサとユリの方へと歩いて行き、途中でグラムの横を通り過ぎる。

 

「お前、半分人間じゃないだろ…?」

 

 すれ違いざまにユウキの正体を看破したであろうグラムの指摘に、ユウキはほんの一瞬動揺して動きを止める。しかし即座にいつもと変わらぬ無表情に変えたユウキは向き直る事はせずに冷たい物言いで返す。

 

「…意味がわからん」

 

「カカッ…そうかい、忘れてくれ」

 

 ぞんざいな態度で否定したユウキだったが、グラムは何処か上機嫌な様子で返した。その後は特に会話も無く、ユウキはアリサ達の元へと帰っていた。

その間に放心していたワイズマンが我に返る。目の前で起きた現実が信じられず、怒り狂った形相で怒鳴り散らす。

 

「クソッ!!彼の成長速度が常軌を逸してるだけだ!!他の神機使いならば!!」

 

「なら俺がヤってもいいかい?」

 

 自身の発明が決して劣っていた訳ではない。ユウキが異常なだけだと言って、他の神機使いになら勝てるとヒステリックに叫びながら相手を探す。するとすぐにグラムが自立型神機の相手に名乗りを上げたが、監視員が待ったをかけた。

 

「勝手な事を言うな!!貴様には」

 

「良いのかい?そんな事言ってもよォ…」

 

 監視員が語気を強めてグラムを止めるが、当の本人は不敵な笑みを浮かべながら逆に強気な姿勢を見せてきた。

 

「『コイツ』を握ってるから安心だと思ってるみてェだがヨ、テメェ1人殺して自由になるくらいどうって事ねぇンだよ…ならどうすンのが賢い選択か…分かるよな?」

 

 グラムは自らの首に繋がれた鎖を監視員に見せつけ、監視員にだけ聞こえる様に耳元で小さな声で囁くと、監視員は苦虫を潰した様な顔になる。グラムの首輪は鎖に繋がれている。そして鎖の先には爆弾が仕掛けられていて、鎖を引っ張れば首周りが吹っ飛ぶといった代物だ。

 この鎖を掴まれている以上、正にグラムの命綱はこの監視員に握られている。しかしその事実に臆する事なく、寧ろ暗に殺してここから逃げるのも容易だと脅しをかけてくる。少なくともここで戦わせてくれるのなら大人しく元の檻に入るのならば、どうするべきなのかは考えるまでもなかった。

 

「チッ…」

 

 これでは主従が逆転していると、屈辱に顔を歪める。しかし監視員も自分の命は惜しい。監視員は首輪と鎖を繋ぐ鍵と、腕輪の拘束を外すとジャラジャラと音を経てて鎖が外れグラムは自由になり、両手を軽く振った後、グラムの神機が運ばれてくる。白い刀身に黒い包帯で封印が施されたバスタータイプの『封印サレシ虚無の大剣』と白いバックラーの『超回避バックラー』と変わった構成の神機だ。それを掴むと共に、グラムの腕輪から黒い触手が伸びて神機のコアと接続される。

 

「よぅし、任務前の準備運動と行くかァ」

 

 何処か愉しそうな声色でグラムが実験室に入っていく。その後、自立型神機が再度投入されて機動するとヴァジュラの姿に形を変えた。

 

  『ガァァァアッ!!』

 

「ちょいさぁー!!」

 

 再度限界までスペックを引き上げた自立型神機が襲いかかる。それをグラムは狂気的な笑みで神機を振り下ろして迎え討つ。

 

  『ガァァァンッ!!』

 

「あ?」

 

 金属フレームを粉々に破壊しながら自立型神機の頭部は一撃で粉々に砕け散った。ここまで見てきて脆いのは分かっていたが、こうもあっさりと破壊されるとは思っておらず、グラムは拍子抜けした顔になった。

 

「チッ!!なンでぇ、マジで大した事ねぇじゃねぇか。つまンねぇな…」

 

 本当につまらなかったのだろう。拍子抜けした顔からゴミを見る様な顔つきになって自立型神機を見下して悪態をついた。戦ってみる価値さえ無かったと言わんばかりに乱暴に扉を開けて実験室を出る。

 後は約束通り神機を返して、再度拘束を施されるために監視員の元へと戻っていく。それを眺めながらアルベルトはここまでの自立型神機の活躍から総評に入る。 

 

「残念ながら、現時点では神機使いに取って代わるような代物ではなさそうですね…」

 

「そ、そんなッ!?本部長!!」

 

「しかし、練度を上げれば減っていく一方である戦力の補填になるはずです。今回の作戦で、自律型神機の完全に近づけていただきたい」

 

 オブラートに包んだ言い方ではあったが、現状の完成度では使い物にならないと酷評を受けた。しかし戦力補填の手段としてならば価値が見いだせるとフォローも入れたが、ワイズマンとしては自立型神機が主戦力とならなければ自身を英雄として後世に名を残すことが出来ないため、何としてでも神機使いに変わる兵器にするべく食い下がる。

 

  『ガァァァンッ!!』

 

 しかし、突然本部内に轟音が響き、その後すぐに警報が鳴り響く。何人かは何事かと慌てる中、アルベルトはすぐに端末を取り出して状況を確認すると、集まった神機使い達へと向き直る。

 

「どうやらアラガミが近づいてきているようですね…早速、このアラガミ達の討伐に行ってもらいます。皆様のお手並み、拝見させていただきますよ」

 

 本来ならば本部の神機使いが出る仕事ではあるが、生憎と大勢が出払っている。集めた神機使いの実力を見るにもいい機会だと思い、アルベルトは集めた神機使い達に出撃要請を出すと、全員が一斉に任務へと向かった。

 

 -本部外、荒野-

 

 神機使い達は自らの神機を持って本部の外部居住区の外に出ていた。そして彼らの視界には多種多様なアラガミの群れが映る。

 対して神機使い達もそれぞれ神機を構える。その構成は実に多種多様で、特に異質だったのはシルバと瑞希だ。2人はアメリカ支部で独自の派生系統で開発された神機を使っている。シルバが扱うのはパッと見は白い武装の新型神機に近い『レーヴァテイン・ツヴァイ』シリーズを装備した神機、瑞希は先端に銃口が付いたブーメラン形の神機だ。

 そしてリゼはチャージスピア『ハルバート極』とスナイパーの『F士官小銃氷神型極』、シールドの『F士官兵装B型甲極』を使用している。続いてジュリウスはブラッドが扱う新型の更に先の世代である第三世代神機、ロングブレードの『ヴォリーショナル』、銃身はアサルト『エクゼキューター』、装甲はシールドの『レインフォース』、ジャックは旧型のショートブレード『宝剣貂蝉極』とバックラー『イオニアンガード』の構成の神機を逆手に持っている。

 ケビンもグラムと同じ旧型神機のバスターブレード『クレイモア極』とタワーシールド『剛氷タワー極』と言う構成、そしてフロリアは旧型スナイパーの『マスドライバー極』を装備している。

 

「数が多いですね…皆さん、まずは陣形を…」

 

「そんなまどろっこしい事やってる時間はねぇ!!目の前の敵を討てばそれで済む話だろ!!」

 

「カカッ!!ちげェねエ!!」

 

「この数ならば…問題はない!!」

 

「会ったばかりの人達との適切な連携は難しいと判断、任務の即時遂行を優先します」

 

 アリサが陣形の相談をしようと話しかけたが、ジャックが聞く耳を持たずに飛び出した。続いて愉しそうに笑うグラムが前に出る。そして元々ワンマンであるジュリウスと、この面子では適切な連携は出来す、その相談をする時間も惜しいと判断したリゼが単独戦闘の意思表示をして前線に加わった。

 

「あっ!?ちょっと!!」

 

「チッ!!しゃあねぇな!!」

 

 瑞希が止めようとするが4人共静止を聞かずに飛び出した。それを頭を掻きながらバックアップに回るべく、シルバが単独で飛び出した。

 

「…」

 

「ど、とうしましょう…これじゃあ連携も何も…」

 

「血の気の多い連携だな…強力な力を持つ分スタンドプレイになりやすいのか?」

 

「これでは1体でも討ち漏らせば居住区はの被害を防げなくなってしまいます!!我々で後衛を担当しましょう!!」

 

 ユウキは無言、統制のなさに慌てるユリ、戦闘狂ぶりに呆れるケビン、後衛を担当すべきと提案するフロリア…反応はそれぞれ違ったが、これではまともに戦い抜けない事は容易に想像できた。

 

「…俺も前衛に出る。高火力で強力な個体を予め排除、討ち漏らしを後衛に任せる。何人かは後衛に引っ張るが…それまではどうにか耐えてくれ」

 

 戦闘態勢になり、先の丁寧な口調から変わったユウキが、前衛の動きと後衛の役割を簡潔に説明する。その後すぐに既に戦闘が始まっている前衛に向かって行った。

 

 -戦場、最前線-

 

 戦闘が始まってしばらくは皆順調に敵の数を減らしてきたが、統制など無い陣形の為、後ろへと抜けられてより分断されやすくなり、孤軍奮闘せざるをえない状況になりつつある。そんな状況にジャックが苛立ちを見せながら敵を葬り去る。

 

「クソッ!!次から次へと増えていく!!」

 

 シユウの肩へと後ろから跳び乗り、神機を振り抜いて首をはねると、そのまま傷口から神機を突き刺してコアを破壊して飛び降りる。すると今度は極地対応型のグボロ・グボロが右から突っ込んでくる。連続攻撃に悪態をつきつつもジャックは後ろに跳びながら神機を順手に持ち替えてグボロ・グボロの砲塔を切り落とす。

 

「敵個体の能力は然程高くはありませんが、こうも数が多いと…」

 

「戦力差を見誤ったか?集団戦の心得が無い事がここで響いてくるとはな…」

 

 リゼとジュリウスもまた、途切れない敵からの攻撃に苦戦を強いられていた。リゼに飛びかかってくるプリティヴィ・マータをバックフリップで避け、チャージスピアからオラクルを吹き出した勢いで敵へと突撃して胴体を穿つ。

 ジュリウスの方にも尻尾の針で突き刺してくる荷電性ボルグ・カムランの攻撃を避け、跳び上がりながらボルグ・カムランの尻尾を切り落としてその後に着地する。そしてジュリウスが後に一気に跳び、ボルグ・カムランの股下を通ると同時に、ボルグ・カムランの胴体は左右真っ二つに切り裂かれた。

 戦闘開始時は破竹の勢いだった前線組も終わりの見えない1対多数の状況に少しずつ圧され始め、焦りと疲労が見えてきていた。

 

「ハッハァ!!オラァ!!」

 

「チッ!!めんどくせぇ、無駄に数だけはいやがる」

 

 そんな中でも絶好調な者が2人いた。グラムは愉快に笑いながら神機を振り回してクアドリガ堕天種の頭を横から叩き割り、そのまま神機の向きを変えて地面に叩きつける。そしてシルバは不満を垂れ流しながら突撃してくるヴァジュラを真っ向から2つに切り捨てる。

 その間にジャックが先のグボロ・グボロを倒すと、神機を逆手に持ち直して向かって来た黄色のヴァジュラテイルの懐に一気に潜り込み、右フックの様な動作で神機を振る。切られた時にヴァジュラテイルは体勢を崩して動きを止め、その間にジャックは左手を柄に添え、ヴァジュラテイルの首元に神機を突き刺して倒した。

 だがその隙にジャックの左からヴァジュラが飛びかかってきくる。ジャックが小さく舌打ちし、迎撃に動くが間に合わない。ダメージ覚悟で距離を詰めようとすると、突然ヴァジュラが血を吹き出して一刀両断される。

 

「お前ッ?!」

 

 後ろに流れてきたアラガミを倒しながら前線まで来たユウキが切り分けられたヴァジュラの影から現れ、ジャックは助けてくれと言った覚えは無いと言いたげに恨めしそうに睨み付ける。

 

「下がれ。アンタは後衛にまわれ」

 

「ざけんなッ!!オカマ野郎の命令なんぞ聞けるか!!」

 

 ユウキが後退するよう伝えていると、後ろからシユウ堕天種が雷を纏って滑空しながら突っ込んできた。ユウキはそれを反転して横薙ぎに神機を振り、シユウの軌道を変え、倒しながら話を続けるが、その間にも青いザイゴートが高速で体当たりしてきたので、腰を落として捻りを加えたアッパーでザイゴートの下からカウンターを決めつつもユウキの指示は受けないと言い放つ。

 

「アンタの戦い方は前線向きじゃない。打ち合いの中、一瞬の隙を突い急所を狙う、或いは気配を殺して確殺するスタイルだろ?その戦い方なら多量の小型種を短時間で無駄なく排除できる。そうなれば前線組は中、大型種への対処だけで済み、多少後に逃してもアンタ達が処理する分、前線も動きやすくなる」

 

「…」

 

 ジャックはナイフの様な短い獲物を逆手に持つ戦闘スタイルだ。順手と比べて手首の自由は効かないが、その分一撃に込められる力、伝達できる威力はより大きなものになる。これにより、懐に飛び込んでボクシングの様なパンチを放てば斬撃になり、上から振り下ろせば強烈な一撃で敵の肉を貫けるゴリゴリのインファイターだ。

 真正面から殺り合う時は元来持っている高い腕力、軽い神機構成による高速での一撃で撃破するインファイタースタイル。また、身軽さを活かして背後からでもコッソリと近づいて倒すアサシンスタイルと2つのスタイルを取れるのが特徴だ。

 ジャックの戦闘スタイルを分析し、何処に配置するのがベストかを考えながら、ユウキにタックルしてきたプリティヴィ・マータに神機を軽く振って一刀両断する。ジャックの方も殴りかかってきたコンゴウに対して、それよりも先に懐に飛び込んで、右手を上から下へと捻りをした加えながら振り押し、コンゴウの腕を切り落とす。

 

「何の意地を張っているかは知らんが、今は全員生き残る為の戦いをするべきだ」

 

「チッ!!あぁクソッ!!分かったよ!!」

 

 しかし、大型種ばかりを相手にする現状ではショートブレードの一撃でコアを破壊するのは難しい上に、ジャックの戦闘スタイルはタイマンでこそ真価を発揮する。前線に出るよりも後衛で流れてきた小型種をアサシンスタイルで一撃で葬る方法で防衛に徹する方がより能力を活かせる。

 クアドリガが放ったトマホークを踏み台にし、そのままクアドリガの側頭部に不規則な軌道で蹴り飛ばしたユウキがそれを暗にその点をジャックに指摘する。対してジャックはコンゴウの腕を切り落とした流れで、コンゴウの胸元に神機を突き刺しながらもヤケになって後退するべく動き出す。

 

「なら、前線は高火力で比較的バラけて動ける者で構成する。俺とグラム、リゼ、ジュリウス、そしてシルバだ」

 

 ユウキがインカムのスイッチを入れ、神機の切先を下に向けて落下すると、蹴り倒したクアドリガに神機を突き刺しつつも前衛の部隊構成を話していく。

 

『…いや、俺は後衛に行く。今の面子じゃ後衛の火力が足りないぜ?』

 

「…後に流れる分、1人で2人分は仕事をしなければならないぞ?」

 

『楽勝だ。何ならあと1人2人分はオマケがついてくるぜ?』

 

 しかしシルバがインカム越しに後衛の人員が足りないと異議をとなえる。ユウキの考えでは前衛でほぼ全てのアラガミを始末する予定だった。しかしそれでは後衛に強力な個体が複数漏れた際の対処が危うくなる。

 この作戦に呼ばれた以上、後衛担当もまた高い討伐技術を持っているはずだが、彼らの実力そのものはユウキ自身も知り得ない情報だ。実際に前衛でその実力の高さを見せたシルバをメイン火力に後衛の守りを固めた方が無難だと考え、ユウキは最終確認をする。するとシルバはニヤリと不敵な笑みを浮かべて問題ない事を伝える。

 

『それよりも、そっちは良いのか?俺が居なくて大型を取り逃がすなんて事はするなよ?』

 

「問題ない…」

 

『そうかい、んじゃあ俺は後退するぞ』

 

 シルバへの負担が増える事を心配していたが、それよりもユウキ達前衛がヘマをしないかを心配されてしまった。当然、この程度なら問題にならないとユウキが返すと、シルバは通信を切って颯爽と後衛に回った。

 

「…アリサ、俺達4人で敵を崩す。後ろの指揮は任せた」

 

『はい!!』

 

 ユウキは後衛の指揮はアリサに任せて、向かって来たディアウス・ピターに神機を振り下ろした。

 

 -後衛-

 

 ユウキが前衛にたどり着いてシルバとジャックが後退し始めた頃、後衛でも討ち漏らしたアラガミ達との戦闘が既に始まっていた。ユウキからの指示で後衛の指揮を任されたアリサは向かって来た極地対応型のコンゴウを切り伏せながら現状のメンバーでの部隊構成を思案する。

 

「後衛の部隊配置を指示します!!シルバさんとジャックさんが後退するまではケビンさんと私で前を抑え、ユリさんは遊撃!!瑞希さんとフロリアさんは後ろで援護と流れたアラガミの対応をお願いします!!」

 

「2人が来た後は?!」

 

 瑞希がブーメラン型の神機を振り回して突進してくるグボロ・グボロを真正面から叩き潰しながら、最終的な配置をアリサに確認する。

 

「シルバさんを前に出してジャックさんには遊撃に周ってもらいます!!その後は瑞希さんを前衛に移して私が後衛全域のサポートに周ります!!」

 

 アリサがコンゴウを倒し、最終的な全体の配置を話す間に背後から緑色で2足歩行する甲虫の様なアラガミ『ドレッドパイク』が接近してくる。それをドレッドパイクの真横から狙撃弾が放たれ貫通すると、ドレッドパイクは霧散して消えていった。

 そしてフロリアが狙撃に集中する中、黄色のヴァジュラテイルが横から接近してきたが、その更に後ろからユリが気配を殺して急接近すると、ヴァジュラテイルの首元を切り裂いた。

 

「ソイツは無茶だぜ?!アリサ独りで後衛全域をカバーしようってのか?!」

 

「ええ!!それが私の戦い方です!!」

 

 ケビンがマグマ対応型ボルグ・カムランの針を躱して跳び上がり、自身の神機で敵の頭を吹っ飛ばしながら、アリサの対応範囲が広すぎて負担が大きいと指摘し、再考するように進言する。

 しかし、広範囲サポートはアリサが極東支部にいた頃からずっとやってきた戦い方であり、ロシア支部でも同様の戦い方で自陣のサポートをしてきた。今更普段より範囲がサポート範囲が広くなろうが大した問題ではなかった。

 

「…分かった!!各自、陣営を作ろう!!」

 

 ケビンが陣を作るように呼びかけると、全員すぐに動き出す。とは言え、元々完成に近い配置での戦闘だった為、既に陣は完成していると言っても良かった。

 そんな中、荷電性ボルグ・カムランが盾を構えたまま尻尾の針を前に出してケビンに向って突進してきた。ケビンは迎え討つべくチャージクラッシュの準備をする。しかし、その隙にシユウ堕天種が電撃を纏って滑空し、ケビンの後ろから接近してきたが、いつの間にかシユウ堕天種のすぐ真上にユリがいた。

 

「やらせない!!」

 

 構えていた神機を全力で振り抜くとシユウ堕天種の左翼手が切り飛ばされ、バランスを崩してそのまま地面へと激突した。

 

「ケビンさん!!」

 

「サンキューユリ!!」

 

 ユリのお陰で後ろを気にする必要はなくなった。ケビンは正面から突っ込んでくる荷電性ボルグ・カムランにチャージクラッシュを叩き込む。

 

「この程度のアラガミ、俺の敵じゃねぇ!!」

 

 針を切り裂き、盾を砕いて、敵の脳天に強力な一撃を浴びせる。そのまま鎧の様に硬い甲殻を押し潰してコアを破壊する。

 しかし2人は留まることはせず、即座に次の標的に向って走り出す。そんな中、青いザイゴートが真正面からフロリアに突っ込んでくるが、炸裂音と共に電撃レーザーで撃ち倒す。

 

「…次」

 

 顔見せの時とは打って変わり、口数が少なく、鋭い目つきでクールな印象へと変わったフロリアは更にもう1体、倒したザイゴートの後ろから飛び出してきた赤いザイゴートを再度電撃レーザーで撃ち抜いた。

 しかしその間にフロリアの左右と後ろから多種多様なザイゴートが向かってくる。

 

「こんのぉお!!」

 

 咆哮と共に瑞希が神機を投げつける。するとその形状の通り、弧を描きながらフロリアの周囲に居たアラガミ達を切り裂いて瑞希の元に戻っていく。

 

「フロリアさん!!存分にやっちゃって!!」

 

 戻ってきた神機を受け取ると同時に瑞希が声を上げる。それを聞いたフロリアは遥か前方を見据えて銃身を構える。

 

「…狙い撃ちます!!」

 

 標的は遥か先、ケビンの後ろから襲いかかろうとするサリエルだ。豆粒程度にしか見えない敵の側頭部を正確に射抜き、ケビンが邪魔されるのを防いだ。

 しかし後衛側の勢いも数分程度しか保たなかった。流れてくるアラガミもそうだが、前衛を迂回して直接後衛に攻め込む個体が増え始めていて、その対処に追われる様な状況になっていた。

 個々の能力はハッキリと言えば大したことはない。しかし数で圧倒されるとどうあっても手が回らなくなる。このままでは防衛ラインを突破されるのも時間の問題だ。眼前のシユウを薙ぎ倒し、更に後ろに居たコンゴウ堕天種を倒しながらも、ケビンはこの状況に危機感を覚えていた。

 

「圧され始めてるぞ!!このままじゃ…」

 

「大丈夫!!きっともうすぐ…」

 

 焦りと疲労で周囲の警戒が疎かになってきたところで、ケビンの後ろからサリエル堕天種が突進してくる。辛うじて反応は出来たが迎撃が間に合うかギリギリの所まで来ている。一か八か、後ろを向きながら神機を振る。すると上から黒い影が降りたと思うと、サリエル堕天種の上からジャックが飛び乗り、額の目玉に神機を突き刺した。

 

「来たぞ!!」

 

「ジャックさん!!前に出ている神機使いのサポートをお願いします!!貴方なら死角から一撃で敵を仕留められるはず!!」

 

 額の目玉を突き刺されてコアを損傷したサリエル堕天種から飛び降りてジャックが後衛に加わると、アリサがジャックの配置伝えてコンゴウの頭を跳ね飛ばす。しかしコンゴウの影からコンゴウ堕天種が飛び出して、上からアリサに襲いかかる。更に首を飛ばしたコンゴウもまだ生きていて、アリサに殴りかかってきた。たが、次の瞬間には上に連なったコンゴウ達が真っ二つに切り裂かれて、吹き出した血の間からシルバの姿が見えた。

 

「おう、戻ったぜ」

 

「遅いよシルバ!!」

 

 軽い口調で防衛に戻ってきた事を伝えるシルバに対して、防衛ラインが圧され始めて焦りを見せる…ように見せかけて軽口を飛ばす瑞希、その際に油断したのか動きが止まる。黄色のヴァジュラテイルが迫ってくるが、真上からユリが落下してきて、ヴァジュラテイルの脳天を突き刺し、すぐに次の標的に向かっていく。

 

「無茶言うな。アラガミ倒しながら戻ってきたんだぞ?」

 

 軽口を言いながらも後ろから突っ込んでくるボルグ・カムランを回転しながら真っ二つに切り裂く。そして右から水球を発射してきた局地対応型グボロ・グボロの攻撃を避け、ユウキの神機と似た変形機構でライフルの様な銃形態に変形する。レーヴァテイン・ツヴァイAの銃口が火を吹いた。すると、砲塔、牙、顔面をあっという間に砕いていき、最後は大きな口から口腔内を銃撃してコアを破壊した。

 その間、射撃に集中しているシルバにザイゴートが毒ガスをバラ撒こうと近づいてきている。しかしいつの間にか近づいてきたジャックが右フックの要領でザイゴートを切り裂く。そして怯んだ隙に一歩前に出て神機を突き刺した。

 

「後ろが薄くなってます!!瑞希さん!!私と中衛を形成してください!!シルバさんは前へ!!」

 

「おう、了解した」

 

「了解!!」

 

 全体的に後ろにアラガミが流れきている。後衛のフロリア援護をしていた瑞希を前ではなく中間に配置し、フロリアの負担を減らしてその目前で防衛線を張ることで全体的な後衛ラインを持ち上げる必要がある。アリサの意図を察したシルバと瑞希はすぐに行動に移す。

 

「コイツッ!!」

 

 瑞希はオウガテイルが針を飛ばしてきたので避け、その間にシユウが接近してくる。神機を突き出してオウガテイルとシユウを爆破弾で迎撃すると、オウガテイルは倒せたが、シユウは頭部を結合崩壊させるにとどまった。

 しかしシユウはそれでも止まらずに接近してくる。対して瑞希は捕食口を展開して待ち構える。間合いに入り、シユウが先に摺り足で瑞希との距離を詰めるが、カウンターに捕食攻撃が刺さる。上半分を食い千切られてシユウは絶命し、代わりに瑞希がバーストする。上昇した能力を使って神機を投げると、弧を描きながら周囲に居たありとあらゆるコクーンメイデンを切り倒していく。

 

  『ゴァァアッ!!』

 

 しかし神機が手元に無くなると言うのはその間無防備となる事と同義だ。この隙を逃すまいと、ヴァジュラが雄叫びと共に瑞希に向かってダッシュする。

 

「やらせない!!」

 

 だが間にユリが立ちはだかり、ヴァジュラの左目に神機を突き刺す。すると痛みでヴァジュラは仰け反り動きを止めた。

 

「ありがとユリちゃん!!」

 

 瑞希が礼を言うと同時にユリが顔面を数回切り付ける。顔面に傷を付けられたヴァジュラは怒りのままにタックルしてくる。たがそれをユリは横に跳んで躱すと、すれ違いざまにその場で回転しながら神機を振るい、ヴァジュラの首や胴体に傷を入れる。

 

「瑞希さん!!」

 

「こんのぉお!!」

 

 ユリがヴァジュラに横一文字の傷を入れた時、瑞希の元に神機が帰ってきた。そのまますぐに神機を投げると、ユリが付けた傷をキレイになぞって首を切った。顔面や胴体の一部が内側から吹き飛ぶ程の一撃だったが、コアは露出させたものの攻撃は届かず、顔の上半分を失ったヴァジュラが反撃しようと構え始めていた。

 

「クッ!!浅い!!」

 

「…そこ!!」

 

 しかし何処からかフロリアが撃った狙撃弾がヴァジュラのコアを撃ち抜いた。その狙撃能力の高さに驚くユリと瑞希だったが、撃った本人はそんな事は気にせず、目の前に残る多数の小型種を掃討すべく神機を構える。

 

「乱れ打ちます!!」

 

 フロリアの声と共にマスドライバー極から発砲音が響く。すると動かない球体が発射されたが、数秒後には扇状に何度もレーザーが発射される。自作バレット拡散レーザーで周囲の小型種を一掃してしていった。

 

「うらぁ!!」

 

 そして後衛の前線でケビンがクアドリガが発射したミサイルを潜り抜け、前面装甲に強烈な一撃を叩き込む。前面装甲を砕き、チャージクラッシュの体勢を取る。その間、ドレッドパイクがケビンに突っ込んできたが、ジャックが敵の上空から落下してきた。

 

「くたばれ!!」

 

 ドレッドパイクの頭に神機を突き刺した為に、ドレッドパイクの奇襲は失敗に終わる。続いて走ってきたコンゴウに向かっていく。コンゴウが殴りかかってきたが、それよりも先にジャックは懐に入りアッパーの要領でパンチを繰り出すと、振り上げたコンゴウの左腕が切り飛ばされる。

 しかしコンゴウもすぐに反撃に右腕で殴りかかるが、ジャックは攻撃が来ない左へと姿勢を落としながら跳び、コンゴウの脇をすり抜ける。その際に、左足を切り落とすとコンゴウは転倒する。ジャックはすぐに反転し、コンゴウの背中へと神機の切先を振り下ろす。

 

「トドメだ!!」

 

 ジャックの神機がコンゴウへと突き刺さる。そのままコアまで攻撃が届き、コンゴウはコアを失い霧散していった。

 そしてジャックがコンゴウと戦っている中、ケビンもチャージクラッシュの準備が終わり、目の前のクアドリガへとトドメをさそうとしていた。前面装甲が破壊された為に、トマホークがノーモーションで飛んでくる。しかし、それでも構わずに、ケビンは神機を振り下ろす。

 

「これで…終わりだぁあ!!」

 

 発射された瞬間のトマホークを切り捨て、そのままクアドリガの顔面にチャージクラッシュを叩き込むと、爆炎が巻き起こると同時にクアドリガが真っ二つに叩き潰された。

 続いてすぐ近くで戦っているアリサの元に加勢しようかと思ったが、状況を見た結果、必要無いと考えて前から敵が来ないかしばし様子見する事にした。

 そして中衛のアリサは飛びかかってくるヴァジュラの下を潜りながら鮫牙で左前足を捕食する。そのままヴァジュラの後ろを取ると、急ブレーキをかけてその場で回転する。

 

「たぁぁあ!!」

 

 バーストして上昇した能力を上乗せし、ヴァジュラの後ろの左足を回転切りで跳ね飛ばす。片側の足を全て失い、自由が効かなくなったヴァジュラにアリサがクイック捕食弐式で横腹から胴体を捕食してコアを回収する。

 そして前線で最も大きな壁となっているシルバは目の前のセクメトを頭上から神機を振り下ろして一刀両断する。続いてハガンコンゴウが横回転しながら後ろから殴りかかってきたが、シルバもその場で回転して、敵を一瞬で切り捨てる。続いて右からクアドリガ堕天種がミサイルを乱射してくる。シルバは駆け出してミサイルの下を潜り、全て避けきると下から上へと神機を振り上げる。するとクアドリガ堕天種は綺麗に切り裂かれて大量の血が吹き出した。

 しかし血飛沫の後ろから大量のザイゴートが向かってきて、その中に1体ヴァジュラも混じっている。雑魚とはいえ、流石に多数を単騎で相手取るのは難しいのか、シルバは小さく舌打ちする。

 

「シルバ!!」

 

「渡します!!」

 

 しかし、瑞希とアリサが受け渡し弾を発射してシルバをバーストLv3に引き上げる。神機の開放に特殊な調整を受けた身体、自身の力の増幅を肌で感じたシルバは不敵に笑う。

 

「んじゃぁ、そろそろ終わらせるか!!」

 

 言うやいなや、シルバは全力で神機を横薙ぎに振る。すると轟音と共に多数のザイゴートとヴァジュラが一発の斬撃のもとに粉々に吹き飛ぶ事となった。

 

「これで片付いたか。前衛の連中は上手くやってんのか…?」

 

 シルバは当たりを見渡し、アラガミが居ない事を確認する。現状では敵対する様な存在は見当たらなかった。その際、別れた前衛達がどうなっているのか気になり、思わずその旨を小さく呟いた。

 

 -前衛-

 

 後衛が流れてきたアラガミを倒し続けてそろそろ終わりが見えてきた頃、前衛メンバーも大半のアラガミを掃討できていた。

 その最中、ユウキはディアウス・ピターを始め、ハガンコンゴウ、テスカトリポカ、セクメト、プリティヴィ・マータ、その他諸々…多数のアラガミを葬り去り、今も翼を出して活性化した別のディアウス・ピターを相手にしている。ダッシュしてくるディアウス・ピターに対して、ユウキも真っ向から向かっていく。刃の様に鋭い両翼でユウキの頭と足を斬り落とすべく横から振りかぶってくる。ユウキはその翼の間に身体を捩じ込む様に飛び込んで、ディアウス・ピターの目の前で神機を振り抜いて一刀両断する。

 コアごと斬り裂かれ、真っ二つになったディアウス・ピターの間を抜けて着地すると、前方から焔の玉が飛んでくる。それを装甲を展開しながら神機を振って弾くと、視界に岩のような篭手を装備した前足に赤い鬣を生やした狼の様なアラガミが唸り声を上げて睨んでいるのが見えた。

 

「コイツ…初めて見るアラガミだな」

 

「ガルムです!!焔を扱う上に素早い相手です!!」

 

「ハハッ!!締めにはちっと物足りないが、最後の相手だ。愉しませてもらうぜぇ?!」

 

「4体…1人1体を仕留めて、この仕事も終わりか。そろそろブラッドの力を発動できる頃合いだな」

 

 各々が眼前のガルムと対峙する中、ジュリウスが神機を構えると、前衛全員が突然バースト状態になる。

 

「「「ッ?!」」」

 

 ジュリウスの意味深な発言の後、捕食した訳でもないのにバーストした事で全員がジュリウスの仕業だと察しがつく。しかし、その数秒後に、ユウキは急激な高揚感を感じるなと、自身の異変を感じ取る。

 

「バーストLv3?!単騎でここまで能力を引き上げられるのですか?!」

 

「カカカッ!!イイねぇ!!そうこなくっちゃなぁ!!」

 

 高揚感を覚えたのはどうらやらユウキだけではないらしい。リゼとグラムも同様の感覚を覚えたようだが、ジュリウスだけがこの事態に少しだが困惑していた。

 

「この力は…?」

 

 最初のバーストは間違いなくブラッドの持つ特異な能力である血の力『統制』によるものであり、一定範囲内の神機使いを強制的にバーストさせるものだ。しかしそれで開放される力はバーストLv1のはずなのだが、今現在ジュリウスの能力でバーストした前衛達は3段階まで力を開放している。

 この事態に1つの可能性を確信したジュリウスは、取り敢えず皆と同様に目の前の敵を処理する事に頭を切り替える。

 

 

 -リゼside-

 

「今ならガルム程度、相手になりません!!」

 

 ガルムが右の前足を振り下ろす。リゼはそれを右へと躱し、チャージグライドの発動準備をしつつ、下からハルバードを振り上げてジャンプする。そのタイミングで神機が2つに分かれ、リゼは神機の切先を後に向ける。しかし、ガルムは何をされるのか察したのか、その場から逃げようと走り出す。

 

「逃しません!!」

 

 切先の向きを変え、チャージグライドを発動させる。神機はガルムの背中に深く突き刺さり、怯んだガルムは動きを止める。そのまま神機を振り上げて大きな裂傷を作り出し、リゼは背中から飛び降りる。その際、再びチャージグライドを発動させる為にチャージし直す。対してガルムは火球を投げつけて対抗するが、リゼにはあっさりと避けられしまう。

 

「トドメ!!」

 

 チャージグライドが発動して、ガルムとの距離が一気に詰まる。

 

  『グシャッ!!』

 

 肉が裂け、血が飛び散る音と共にリゼのハルバードがガルムを穿った。

 

「任務終了、あとは…ッ!?」

 

 ガルムは倒した。しかし、それとは別の理由でリゼはまた驚愕する事となる。

 

 -ジュリウスside-

 

 そして少し遡り、ジュリウスの方はガルムの飛びかかりを後に大きく下がって避けるが、ガルムが着地直前に両前足のガントレットから爆発を引き起こす。幸いジュリウスに当たる事はなかったが、視界は完全に塞がれた。その間にガルムは身を翻し、ジュリウスの後ろを取って上から叩き潰そうと右前足を振り下ろす。

 しかしジュリウスは一瞬で攻撃を避ける為に最小限の距離を右へと跳び、そのまま回転しつつ後ろへ下がってガルムの右前足をガントレットごと切り捨てる。そして着地と同時にジュリウスが身を少し引き、神機を構えると刀身の周りにうねりを加えたオラクルが纏わりつく。

 

「ブラッドアーツ、発動!!」

 

 ジュリウスが呟くと、そのまま猛スピードでガルムとの距離を詰める。

 

「終わりだッ!!」

 

 勢いそのままに神機を横薙ぎに振ってガルムを横切る。すると無数の斬撃が瞬時にガルムを襲い、ズタズタに切り裂き、最終的にはバラバラの肉塊へと姿を変えさせた。その際の斬撃の1つがガルムのコアを切り裂き、ジュリウスと対峙していた敵はそのまま絶命する事となった。

 

「この程度なら、ピクニックにでも行く感覚で任務をこなせそうだな」

 

 神機を振って刀身に着いた血を振り払う。途中苦戦はしたが結果だけ見れば思いの外余裕のある戦闘に何処か気楽ささえ覚えていた。

 

(それにしても…瞬時に部隊構成を発案し、その通りに構成させる統制能力…そして『彼』から発せられたあの感覚…あれはまるで…)

 

 ジュリウスは『彼』からの感覚に自身と近しいものを感じ、違和感を覚えていた。本来この血の力はブラッドが混迷した世界で戦う神機使い達を導く希望の光となるべく手にした力だ。それに近いものをこの場にいる者から感じ取れたとなれば疑問に思うのも無理は無い。そして同時にその疑問の先に自分の理想とする神機使いの姿を見せてくれる者かもしれないと思い、是非とも話をしてみたいと思うと同時に、この戦いで自身への課題も見えてきた。今後、ブラッドが隊として形をなす時に、彼のやり方はきっと参考になると思っていると、視界の端に『見たことのない物』が映り込む。

 

「なんだッ?!あの『神機』は?!」 

 

 -グラムside-

 

「ホラホラ、こッちだワンちャンよッ!!」

 

 また少し遡り、上空から両前足で踏み潰さんとガルムが急降下してくる。対してグラムは後ろへ下がって躱すと、左手で手招きしながらガルムを挑発する。それを見たガルムは大きく口を開けて飛びかかってくる。グラムはまた後ろへ下がってそれを避けると、今度は前に出てガルムの眼前に出るが、反撃等はせずに直立したまま何もしなかった。

 それを好機と見たのか、ガルムが右前足を内へと横薙ぎに振る。それもあっさりと後ろへ躱されたが、またグラムはすぐに眼前に戻る。続いて外へと振るがまた躱され、グラムが眼前に戻ってくる。反撃するでもなくわざわざ攻撃範囲に戻ってくる。完全に遊ばれてる事実を前に、ガルムは頭に血が登ったのか、両前足を上に上げるという大振りな動作によって、グラムを力でねじ伏せようとする。

 しかし、予備動作がバッチリ見える動きなど、グラムにとっても避けるのは容易な事だ。ガルムの攻撃が空振りした後、例によってグラムはガルムの眼前に戻ってくる。すると、ガントレットの隙間が赤く輝き出し、次の瞬間に大爆発が起こった。

 だが、それさえもグラムは後に下がって簡単に避けてみせる。そして今度は前には出ず、距離を取る為ににさらに後に下がる。

 

「そうだなッ!!ワンちャンは元気なのが一番だよなァ?!」

 

 言うやいなや、グラムは神機を構えると捕食形態を展開する。しかし、その形状は通常の捕食口とは大きくかけ離れていて、まるで死神を連想するかの様な歪な鎌の形をし、刃はおろか柄の部分にまで『キィキィ』と甲高い声を上げる無数の小さな捕食口が着いている不気味な形態をしていた。

 

「ブレイクアーツ発動!!『インフィニティモウ』!!」

 

 グラムが使ったのはユウキと同じブレイクアーツだった。『無限の胃袋』の意味を持つ不気味な捕食口を横から振り回すと同時に爆炎の中からガルムが飛び出してくる。しかしガルムの横腹に捕食口が突き刺さり、そのまま掬い上げる様に上に持ち上げると、ガルムを下にして神機を振り下ろす。そしてガルムを引きずりながら鎌を柄を引き戻し、グラムの横を通り過ぎたところでまた上に振り上げて横腹を大きく切り裂きながら放り投げる。その際、引き裂かれた所からガルムの内側が顕になる。鎌が突き刺さった周辺は中身が無く、スカスカになり、それ以外の場所もボロボロになっていた。

 グラムのブレイクアーツで内側からズタズタにされたガルムが宙を舞い、その後を追うべく、グラムが神機を元に戻しながらガルムに向かって跳び上がる。

 

「やっぱ戦闘ってのァ!!白兵じゃねぇとなァ!!」

 

 両手で構えた神機を上から全力で振り下ろす。ガルムが真っ二つに切り裂かれながらも隕石と見間違う様な威力で地上に叩きつけられ、グラムもその後を追うように地上へと着地する。

 

「…チッ!!つまンねェな…」

 

 切り捨てられ、その上叩け付けられてバラバラのミンチになったガルムの成れの果てを見下ろすグラム…さっきまでの興奮は何処へ行ったのか、本当につまらなかったのだろう、冷めた目で哀れな肉の破片へと変わったガルムを睨みつけた後、グラムはその場から去っていった。

 

 -ユウキside-

 

 そして最後はガルムと対峙し始めた頃のユウキ…ガルムは唸りながら睨み付けるが、ユウキは別の事を考えていた。

 

(ガルム…ここでは珍しいアラガミでもない様だな…)

 

 ならばデータを取る必要も無い、後から本部のアーカイブで記録を見ればいいと考え、即任務を終わらせる事にし、突っ込んできたガルムに向かって一気に跳んで距離を詰める。そして横一閃、バーストLv3にまで上昇した戦闘力で、ガルムが攻撃行動に出るよりも先に一瞬でガルムを斬り捨ててみせた。

 

「…あれがブラッド…感応現象を戦闘利用した神機使い…」

 

 ガルムを両断してから数秒後、ジュリウスがブラッドアーツを発動させてガルムにトドメを刺したのが目に映る。神機を1振りするだけで非常に強力な一撃を繰り出す様はブレイクアーツとよく似ている。しかし、無駄に大きな破壊力や派手さと言った荒々しさは無い。キチンと制御され、その力の範囲を限定させて凝縮し、見事に洗練された()だった。力の制御、それを感応現象で行えればさらに上のステージへと行けるのではないかと考えていると、視界端にグラムがブレイクアーツを発動する様が映った。

 

「ブレイクアーツ…博士が言っていた事は事実だったのか…」

 

 いつかペイラーがブレイクアーツを使える者がいると言う『都市伝説』的な噂があると言っていた事を思い出す。ユウキ自身と言う実例がある為に他にも1人2人はいるだろうと思いはしたが、内心信じてはいなかった。

 しかし、今は実際にブレイクアーツを扱える者が目の前に居る。それを目の当たりにした事で、ここではブレイクアーツはそこまで珍しいものでも無いのかも知れないと考える。

 

(あの男がブレイクアーツを使えると知られているのならば…いや、使わないに越した事はないか…)

 

 しかし、不可思議な存在を研究したがるのが学者と言うものだ。ユウキ自身がそのブレイカーと知られたら、何をされるか分かったものじゃない。最悪、そこから特異点たどり着く可能性だって十分にある。ならば下手なことはせずに『普通の神機使い』を演じるほうが得策と考え、ユウキは通信機でアリサに連絡を入れつつその場を離れていった。

 

To be continued




あとがき
 前に投稿したのが確か4月…空きすぎですね。待っている人が居るかは分かりませんが申し訳ない事をしました。
 ここ最近のリアルでのゴタゴタが収束の兆しが見えてきて、ようやく投稿できました。しかしながらまだ安定して投稿するには時間がかかるので、しばらくはまた間隔が空きそうですが、また読んで頂けると嬉しいです。
 次ページにグラムとアルベルトの設定を載せときます。恐らく大半の方がお察しの通り、グラムの中身は焼け野原ひろし事、アリー・アル・サーシェスをイメージしています。

グラム・エスパーダ(20)

使用神機
 刀身:封印サレシ虚無ノ大剣(バスター)
 銃身:無し
 装甲:超回避バックラー

 鋭い目付きで常に不敵な笑みを浮かべる、クセのある黒髪に青い目の青年。ロンドン支部に所属。幼少期にスラム街に捨てられ、その後長い間殺人を繰り返し、次第に殺人鬼として認知されていった。どうやって生きてきたかは不明とされているが、一部では殺した人間を喰らい続けて生き延びたと言われている。倫理観を持ち合わせていない異常者で戦闘狂。被害者には神機使いも居た為、ロンドン支部が直接動いて捕らえた。後に適合する神機が見つかり、『ブレイカー』となる程の適合率をはじき出した事で監視、拘束付きで神機使いとなるが、当の本人は日々戦いを楽しんでいる。

・ブレイクアーツ

 インフィニティモウ

 グラムが編み出した捕食形態を発展させたブレイクアーツの1つ。死神を思わせる歪な鎌の様な形状をしていて、刃の部分だけでなく、柄にも小さな捕食口が無数についている。
 形状は自在に変えることも可能で、敵アラガミを包み込む様な形状にして全方位から喰い散らかすと言った使い方も可能。バーストは出来ないが、どんな敵でも拘束し、全てを喰い尽くすまで攻撃を継続させる事もできる。

アルベルト・F(フェンリル)・フューラー(43)
 フェンリルの本部長。青みがかった長い銀髪に青い目の男性。礼儀正しく紳士的で、他者への思いやりも忘れない為、本部内、本部の居住区でも高い人望がある。前身である穀物メジャー企業から現在のフェンリルに企業形態を移行し、しばらく経った後に前本部長である父が急死した為、その後を継いで本部長に就任する。しかし、数年に一度、何故かフェンリルの経営に関われなくなる。何かの病気と言われていたり、神童商事の跡取り娘と何かあった事を引き摺っているとも憶測が交わされている。
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