GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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技術者で役職もっててプライド高い奴は碌なことしないイメージ


mission120 最凶

 -3週間後-

 

 本部に来てからしばらく経ち、今日も今日とて素材集めにアラガミ討伐の任務を終え、テキトーな雑談をしながら帰ろうとすると、遠方から『バババ…』とプロペラの音が聞こえてくる。

 

「ん?何だあのヘリ?何か吊り下げてる?」

 

 音のする方を見てみると、確かにシルバの言うとおり、ヘリが巨大な人型の何かを吊り下げてこちらに飛んできている。何事かとしばらく眺めていると、ユウキ達の頭上まで来てそのままワイヤーが切り離される。当然、人型は重力に引かれて落下し、そのまま神機使い達を圧し潰そうとする。

 

「うぉぉお?!」

 

「きゃあっ?!」

 

 しかし、歴戦の神機使い達がそんな単調な攻撃に当たるはずもなく、散り散りになって全員躱す。落ちてきた人型を見てみると、ウロヴォロスと同じくらいの高さをしたゴリラにも見える人型…大型の自立型神機が立っていた。

 

「何なんだこいつッ?!」

 

 ケビンが突然現れた自立型神機に混乱していると、相手の肩には見覚えのある人物が立っていた。

 

「ご機嫌よう皆さん」

 

「ワイズマン局長?!」

 

「一体何のつもりですか?!」

 

 不思議にも、それなりに離れているにも関わらずワイズマンの声はよく通り、しっかりとユウキ達に聞こえてきていた。突然の襲撃、しかも本部の技術開発局の局長が自らが動いているのだから神機使い達は動揺したが、対してワイズマンは既に勝った気でいるのか、何処か勝ち誇った様な表情でユウキ達を見下ろしていた。

 

「フフフ…皆様が集めてくれた素材のおかげでつい先程、新型の自立型神機が最終チェックを終えてましてね…結果、ついに最高傑作として完成を迎えることができました。なので、そのお披露目に…」

 

「お披露目ってもな…ただデカいだけじゃぁあの時と何も変わんねぇぞ?本部の開発局長様っても大して頭のデキは良くないみたいだな」

 

 一見すると自立型神機を巨大化させただけにも見える。そんな程度で強化したなどと言い、挙げ句最高傑作などと言い張るのであれば技術者としても下の下だ。しかしシルバの直接的な罵声を聞いてもワイズマンは不敵に笑い続ける。

 

「ご安心を…勿論外観だけではありません。今までの個体から大きく進歩していますよ…『彼女』のおかげでねぇ?」

 

 そう言って自立型神機の胸元に目を落とす。その先にはカプセルの様な装置が埋め込まれていて、中には誰かが意識のないまま、様々な器具を取り付けられた状態で拘束されていた。そして目を凝らしてみると、そこには見たことのある顔の女性が収容されていた。

 

「リゼさん?!」

 

「そうッ!!今回の自立型神機は今までの物と比べて大きく進化しました!!私の頭脳と技術の総てを活用しっ!!その能力を大きく強化する事に成功したのですっ!!そしてその中には今まで有用に使えなかった新型神機使いの持つ感応能力も、私のアイデアで有効に利用することが可能になったのです!!」

 

 カプセルの中に拘束されているリゼを利用して自立型神機を強化できた事に上機嫌になっているワイズマンは自身の成果を力強く、大々的にアピールし、目の前にある自立型神機がいかに歴史的な発明かを話していく。

 そうやって力説するうちに、急激に勢いを落とし、あからさまに落ち込んでいると言いたげに大きなため息をつく。

 

「しかし、私の発明が君達のような一端の兵士程度の頭では到底理解出来ないのはひっじょぉぉにっ!!残念です…しかしっ!!感応能力を戦闘利用出来るブラッドのジュリウス君にはぁあ?!私の言っている事の意味…解りますよねぇぇえ?」

 

 狂気的な笑みを浮かべ、神機使い達をとにかく馬鹿にした口調で煽る。しかし感応現象の戦闘利用するブラッドであるジュリウスにはその内容が理解出来るだろうと話を振ると、何をしたのか察しのついたジュリウスの顔は怒りに満ちていた。

 

「貴様…」

 

「そうっ!!彼女の持つ高い感応能力を利用し、各所のオラクル細胞を強化、活性化させ、設定出力を更に超えさせる事に成功したのですよぉ?!」

 

 ワイズマンがやった事を要約するとブラッドと同じ、感応現象でオラクル細胞を活性化し、強化すると言うものだった。しかし、高い感応能力を持っていても、ブラッド程に強力なものではない。そのため感応波を増幅するヘッドギアを着け、強化した感応波を自立型神機のオラクル細胞に干渉させていたのだった。

 

「先日君たちと戦った個体とは訳が違う!!出力!!強度!!判断能力!!それら共におよそ3倍は強化されています!!いやはやまったく、面白いものですねぇ?!ちょっとした改造と『部品』1つ追加しただけでここまで変わるとは…何が起こるか分からないものですねぇ?!」

 

「お前…」

 

「なんてことを…」

 

「人を部品扱いなんて…最っ低…」

 

「こんなものの為に俺たちは働かされていたってのかよ!!」

 

 感応現象を利用されている間、リゼは死んだようにピクリとも動かない。ただひたすらに感応波を引き出す為の正しく部品と成り果てた。そんなもののために呼びつけられて働かされていたと思うと腹立たしくてケビン、フロリア、瑞希、ジャックが怒りを込めた目線を送る。

 

「君たちごときでは理解出来ないでしょうがね。なにはともあれ…試運転がてら、手始めに…来て早々私に恥をかかせてくれた憎たらしいクソガキ!!英雄などとチヤホヤされて良い気になっているようですがぁ?!私の発明の力で軽くひねってやりましょうぅぅう!!」

 

「…」

 

 現場で戦うしか能のない神機使い達に自分の成果がどれだけ偉大なモノか分かるはずもない。心底神機使い達をバカにした口調で煽り、更にはユウキをターゲットにしていると明言する。どうやらガドリンが言っていたように、来た当初に恥をかかせたユウキへの復讐心を糧にしてここまでの事をしたようだ。自分をこけにしたユウキを倒す(殺す)…それを実現できる兵器を作り出し、意気揚々とユウキを煽り倒すが、ユウキは無表情を崩して、『フッ』と鼻で笑う。

 

「…所詮は他人の技術の寄せ集めか…自分では何も出来ない三流の頭では所詮はこんなものか」

 

 偉大な発明と吹いて回るがこの自立型神機の技術は全て見覚えがあるものだった。大車が可能性を提示した感応現象を利用した新型神機使いとのアラガミとのコンタクト、それを発展させたガーランドの新型神機使いの洗脳と彼らを利用したアラガミの懐柔技術、ラケルが発見したブラッドの感応現象による潜在能力の活性化等…結局ワイズマン自身の技術は自立型神機しかなく、目玉となる技術は全て他人が発見、確立させたものの寄せ集めとなっていた。

 そのことを指摘されると、気にしていたのかワイズマンの額に青筋が浮かび上がり、鬼のような形相でユウキを睨んで喚き散らす。

 

「ッ!?キ、キサマァ〜!!その悔し紛れの減らず口、今ここで叩けなくしてやる!!泣いて許しを請うても許してやるものかぁ!!足の先から頭の天辺までジワジワと切り刻んでいたぶってやるっ!!」

 

 無能とバカにされ、激昂したワイズマンが啖呵を切ると、即座に神機を銃形態に変形して構える。

 

『バンッ!!』

 

「ユウッ?!」

 

 直後、ユウキは迷うことなく狙撃弾を撃つと、ワイズマンの眉間に風穴が開いた。目の前で人を撃ったユウキを見て声を上げるアリサだったが、ユウキは至って冷静な態度で返事を返す。

 

「ホログラムだ。本体は別にいる」

 

 そう言うと、撃たれたワイズマンは落下中に霧散して消えていった。どうやら訓練室と同じ、オラクル細胞を利用したホログラムだったようだ。

 

  『ガァァァアアッ!!』

 

 ワイズマンのホログラムが消えたのを合図に、自立型神機が力まかせに右腕を振り下ろす。その先には啖呵を切ったユウキが居る。しかしユウキは後ろへ跳び、簡単に避けるが、流石に巨大な体積と質量の腕をそれなりの速さで振り下ろせば直撃は避けられても風圧が追撃してくる。両足が地に着いていない状態で風圧を食らい、上半身を大きく後ろに持っていかれて仰反るように体勢を崩した。

 しかしその直後には、身体を反らせて左手を地に着き、バク転の動きで着地する。だが、着地の隙に自立型神機が左のストレートを撃ってきた。

 

  『ガァンッ!!』

 

 しかし、ジュリウスが間に入り、装甲を展開して防御する。その間に、ユウキはジュリウスの左側から飛び出し、神機を左下から右上へと斬り上げる。しかし自立型神機も防がれたと分かると即、腕を引き戻してユウキからの斬撃を回避する。

 『少しは性能が上がっている様だな』と考えていると、何処からともなくシェリーの声が頭の中に響いてきた。

 

(ユウキッ!!加勢します!!)

 

(…いや、ダメだ。気付かれる)

 

 姿を見せぬまま感応現象で思考を飛ばしたシェリーが助力を買って出たが、ユウキは何者かにシェリー達の存在を知られる事を警戒して、シェリーには戦闘領域に近づかない様に言う。その意図を理解したシェリーは少し表情を険しくして、断る原因となった人物の顔を思い浮かべ返事をする。

 

(…あの男ですか?)

 

(ああ…それよりもライラと共にワイズマンを探せ。そこに鎮圧部隊を送る事ができればベストだ)

 

(分かりました)

 

 警戒しているあの男…この状況下でも神機を杖にして大きな欠伸をしているグラムは余程興味が無いのか、やる気のない態度をしている。しかしそれでもユウキと同じブレイカーだ。おそらくシェリーの気配を察知して何かしらのちょっかいをかけに来る可能生は十分にある。

 そんな心配をしながら追撃してくる自立型神機の右ストレートを躱すユウキとジュリウス。それに対して、グラムは気だるそうに尻を掻きながらその様子を眺めていた。

 

(ちッたァ面白イ事になッてきたなァ…)

 

 戦闘を開始した面々を目にしても、動く気の無いグラム…だが、その目は何処か愉しげに嗤っていた。

 

(…さァて、アイツは全力を出してくれるかねェ…)

 

 予想外の事態への対応のため、もしかしたらユウキの力の一端が見れるかもしれない。期待させるだけの力を持っている所を見ることができれば今後の愉しみが増えると思い、グラムは思わずニヤリと嗤う。

 

(さぁ、やるか…)

 

 ユウキとジュリウスが躱した右ストレートはそのまま地面に突き刺さる。突然の襲撃に動揺していた面々も動き出し、一斉に攻撃を開始する。

 2人が下がる間にフロリアが右肘を狙いレーザーを発射し、神機を銃形態に変形したシルバとアリサ、それから瑞希がオラクル弾を連射する。

 しかし、突き刺した腕を軸に上へと大きく回転し、頂点に来ると右腕で反動を付けてその場から大きく離れ、射たれた弾丸はそのまま空を切った。続いてケビンとジャックが正面から接近して追撃するが、前へと跳んで斬撃を躱す。

 

「速い?!」

 

「見かけによらず機敏だなクソッタレ!!」

 

 2人の追撃を避けた自立型神機はそのままユウキとジュリウスを踏み潰そうと飛びがかかる。ユウキは大きく後ろに下がり、ジュリウスは右へと大きく跳んで難なく避けると、2人は再び自立型神機に突っ込んで足を奪うべく横薙ぎに斬りかかる。

 

  『『ギィンッ!!』』

 

 しかし予想に反して、斬られた脚部の装甲からは甲高い金属音が鳴り、装甲にも傷らしいものは着いていなかった。

 

(思いの外硬いな…外殻も厚くなっている。ならば狙うは…)

 

 ユウキは想像より硬い装甲に少し驚いたが、すぐに跳び上がり、今度は逆方向に再び神機を横薙ぎに振るう

 

(関節!!)

 

 ユウキが自立型神機の膝を狙い、高速で神機を振り抜く。しかし先と同様甲高い金属音と共にユウキの斬撃は弾かれた。自立型神機はウロヴォロス並みに巨体だ。故に、関節も装甲化出来る程の大きさをしているため、可動軸を狙わなければ足を奪う事は出来なくなっていた。

 

『ヴォォオオッ!!』

 

 雄叫びと共に自立型神機から右の膝蹴りが飛んでくる。ユウキは装甲を展開して直撃こそ避けたが、その威力で後ろに吹っ飛び宙を舞う。そのまま空中で身動きできないユウキを踏み潰そうと、1度大きく足を上げて振り下ろす。

 しかし、ユウキはインパルス・エッジを発射して左へと跳んで避けるが、着地と同時に自立型神機も地に足を着け、右フックで追撃する。

 

(なるほど、あくまでも標的は俺か…)

 

 ワイズマンが是が非でも殺したいと思っているのは恥をかかせたユウキだけだ。故に他の神機使いには目もくれず、ひたすらユウキを亡き者にするため執拗に付け狙っているのだと推察した。狙いが分かるならば対処も容易い。ユウキはインカムのスイッチを入れる。

 

「ユリ、ジャック。聞こえるか?」

 

「はい!」

 

「何だ?!」

 

「2人は奴の死角から足を奪え。お前達なら関節の可動部を潰せるはずだ」

 

 左手の神機で装甲でを展開し、右フックを防御しながらユリとジャックに指示を出す。

 

「それは…できますけど…ユウキさんは?」

 

「コイツの狙いは俺だ。俺が囮になれば全員動きやすくなる。注意が逸れている隙に潰せ」

 

 刃渡りが短く、小回りの利くショートブレードで関節部の隙間を狙い、可動不良を起こす事ができればあとは袋叩きにしてしまえばいい。そのために最優先ターゲットとなっているユウキ自身が陽動に徹し、周囲の面々が足を奪う。ユウキの狙いはすぐに理解できたのだが、刃渡りが短い故に問題となる部分が1つだけあった。

 

「だがあの外装はどうする!?ショートブレードじゃ関節抉じ開けてもホントに足を止める程度にしかならねぇぞ?!」

 

 メカの弱点は関節等可動部⋯定番ではあるものの、今回は巨大故に関節部を護るために分厚い装甲が取り付けられている。ショートブレードではその装甲を貫通する事は難しいうえ、駆動の主要機関に届かないかもしれない。せいぜい軽い動作不良を起こすのが精一杯である可能性が高かった。

 

「問題ない。足さえ奪えればここに居る面子で殺れる。お前達なら外装を引き剝がして足を奪う程度大したこととないだろ?」

 

「あぁもうッ!!やってやるよ!!」

 

 ジャックの懸念点など気にすらしてないユウキの態度にジャックは半ばヤケになって返事をする。

 

「アリサ、俺は単独で動く。他の面子への指示は任せた」

 

「はい!!」

 

 続いてユウキはアリサへと通信を入れて全体の指揮を任せる。フックを受けて再度宙を舞ったが今度は上にインパルス・エッジを発射して即座に着地する。

 

「ジュリウスさんはユウと陽動を!!シルバさんと瑞希さんは右、グラムさんとケビンさんは左からはさみ撃ちにしてください!!フロリアさんと私で全体を援護します!!」

 

 アリサが大まかなポジションと役割を伝えるとやる気の無かったグラムも含めて即行動に移す。

 シルバ、瑞希は左へ、グラムとケビンは右へと走り、アリサとフロリアは自立型神機に発砲しつつ距離を取る。その間にユウキとジュリウスは前に出て神機を横薙ぎに振り、右足をユウキ、左足をジュリウスが狙うが甲高い音と共に弾かれる。

 直後に自立型神機がユウキを叩き潰そうと右腕を振り下ろす。ユウキは外へと跳んで拳を避けると、追撃に左のフックを放ってきた。ユウキは装甲を展開してそれを防御する。その際、装甲を外側に傾けて受け流すと、その場で1回転しつつ自立型神機から離れる様に跳ぶ。

 そして自立型神機が空いている右手を振り上げ、ユウキを叩き潰そうとハンマーの様に振り下ろす。

 

「やらせねぇよ!!」

 

 シルバが銃形態で自立型神機の右手を撃つ。しかしその程度では圧倒的な質量をもつ腕の軌道を変える事はできない。

 

「当たれッ!!」

 

 追加でアリサも弾幕を浴びせる。無数の弾丸が着弾すると爆発し、僅かに外へと逸れる。

 

「…そこッ!!」

 

 フロリアが極太のレーザーを発射し腕関節の可動部に撃ち込むと、撃ち込まれた部分が変形する。

 

『ガァァンッ!!』

 

「いっけぇッ!!」

 

 振り下ろした拳が轟音を響かせ、ユウキは自立型神機の左側へと走る。その瞬間、瑞希がブーメラン型の神機を投げて変形した所にぶつけるが、切断できずに弾かれる。

 瑞希は振り下ろされた腕を蹴ってフラフラと宙を舞った神機を掴むと、神機の銃口を先の変形した関節部に銃弾を撃ち込む。

 その間にシルバが腕に飛び乗り駆け上がる。その最中にフロリアと瑞希が変形させたところへと峰打ちで振り下ろすと変形した関節部が大きく凹む程に変形する。しかし次の瞬間には自立型神機が肩を大きく跳ね上げてシルバを振り落とす。だが、振り下ろされる直前にシルバは幅跳びの様に大きく跳び、そのまま自立型神機の肩部分へと神機を振り下ろす。可動の為に空けられたクリアランスに神機を叩き込み、右腕の可動が変形して動きを完全に封じる。

 

「そこだぁッ!!」

 

 続いてケビンが左足にチャージクラッシュを横薙ぎに叩き込む。足首の装甲が僅かに凹む。だがそんな事お構いなしに自立型神機は足元のユウキを叩き潰そうと左腕を高く上げて引き絞る。

 

「オラオラッ!!俺の事も忘れンなヨォ!!」

 

 自立型神機が攻撃するよりも先にグラムが足首への攻撃を叩き込む。凹んでいた装甲が更に凹んだことで装甲が可動部に触れて行動に制限がかかる。

 しかし、自立型神機は構わずユウキへパンチを繰り出す。ユウキは軽く左へ跳んで難なく避ける。その隙にジュリウスは神機にうねりを加えたオラクルを纏わせ、左足の装甲の隙間に足をかけて一気に膝へと駆け上がる。そして関節部の装甲へと神機を振るう。

 

「ブラッドアーツ、発動!!」

 

 神機を振り下ろすとうねりを加えたオラクルの斬撃が短時間のうちに何度も膝装甲に叩きつけられる。その結果、強固な膝に切傷が付いた。

 パンチを避けたユウキを追撃しようと右腕を振り回そうとするが、変形した肘と肩が可動部に干渉したせいでうまく右腕は動かず、『ギギギギギッ』と軋む音がしつつゆっくりとユウキの方へと向かっていく。

 

「そこッ!!」

 

 ユウキと自立型神機が戦っている間にユリが後ろから近づいて左足を駆け上がる。そのままジュリウスが付けた傷跡をなぞる様に全力で神機を振ると、装甲が裂けて関節部の機構が剥き出しとなる。

 すると自立型神機が膝上のユリを振り払う様に外へと大きく腕を振る。

 

「キャアァッ!!」

 

 膝から飛び降りようと跳んだタイミングで攻撃が飛んできたため、ユリは装甲で防御するが、その衝撃で大きく後ろへ飛ばされる。その間に今度はジャックが膝上に駆け上がる。

 

「こんだけ隙間が開いてりゃ…」

 

 神機を両手でしっかり握り、装甲の隙間に神機を突き刺す。

 

「軸を斬る事だってできるっ!!」

 

 そのまま手前に神機を引き寄せ、『バキバキッ!!』と言う音と共に突き刺した周囲を砕きながら可動軸を切断する。すると体重を支えられなくなった自立型神機は力なく膝を突く。

 するとユウキは動かなくなった右腕を駆け上がり、右肩に来ると一気に横に跳んで胸元のカプセルに収納されているリゼに向かっていく。そしてカプセルごとリゼの首を斬り落とすべく神機を振るべく構える。

 

「ダメッ!!ユウッ!!」

 

「っ?!」

 

 ユウキが何をするのか理解したアリサが咄嗟にユウキの行動を制止すると、ユウキも咄嗟に神機の軌道を大きく手前へと引き戻し、コンパクトになる様に変える。

 

『バリンッ!!』

 

 カプセルが大きな音と共に割れると中の培養液が溢れ出す。そのままカプセルの内部に左手を突っ込みリゼを強引にカプセルから引きずり出す。すると強化用の感応波を失った自立型神機は完全に機能を停止し、ユウキの腕の中には意識の無いリゼが眠っていた。

 

 -???-

 

「そんな…バカな…私の…私の最高傑作がッ!!最高傑作だぞっ?!このっ!!私のっ!!最高傑作なんだぞっ?!それが何でッ!!」

 

  『プシュゥ…』

 

 最高傑作であるはずの大型自立型神機が神機使い達に止められ、強化の要だったリゼも救出された。結果は完全敗北だ。最高傑作さえも神機使い達には敵わなかった現実に取り乱すワイズマンだったが、突然地下室の扉を開けるシリンダーの音が聞こえてきた。

 

「な、何だ?!扉が勝手に?!」

 

 驚きのあまり数秒硬直し、思考も止まっていたが、聞こえてきた音が扉を開ける音だと気がついた。しかし自分は扉を開けてなどいない。なぜ突然開いたのかと取り乱していると、足音と共にワイズマンには知っている声がいくつか聞こえてきた。

 

「な、なぁ…突然床が吹っ飛ぶとかありえないって…辞めとこうぜ…」

 

「大丈夫だって。長い時間何かのガスでも漏れ続けただけだろ?」

 

「それにしてもしっかりと造られた地下室だな…電気も通ってるし…一体誰がこんなものを…」

 

「なッ?!お、お前たち?!」

 

「あれ?ワイズマン局長?何でこんなところに?」

 

 突然床が吹っ飛び、あまつさえそこから隠し部屋が出てきたのだ。何も知らない者からしたら恐ろしいと思うのも無理はないし、逆に探究心が擽られる者が現れるのも理解出来る。

 各々好き勝手な事を言いながら、ライトを片手に階段を降りると、自分達の上司が巨大な画面と大きめなコンソールを前に居るのを目撃する。しかし本部の外でついさっきまでワイズマンが駆る大型自立型神機が神機使い達と死闘を繰り広げていたとは知らない技術開発局の局員達は何故ここにワイズマンが居るのか理解出来ずにうろたえる事となった。

 

「チィッ!!」

 

 しかしワイズマンとしてはこの状況は非常にマズい。確たる証拠が見つかる前に皆を追い出し、証拠を消さねばならなかったが、この時のワイズマンは冷静さを欠いていたのか逃亡を図った。『局長?!』と職員が呼び止めるのも聞かず、一目散に外へと通じる階段を駆け上がる。

 

「そこまでです」

 

 もうすぐで階段を登りきるところで聞き覚えのある声が響く。そして出口には数名の特殊部隊員がアサルトライフルを構えて道を塞いでいた。

 動きを止めて呆然としていると、特殊部隊員の後ろから見知った顔…本部長のアルベルトが姿を表した。

 

「ほ、本部長…?」

 

「まさか、貴方が彼らを襲撃した犯人だったとは…」

 

「ち、違います本部長!!私はあくまでも自立型神機の有用性を証明するために…」

 

「黙りなさい」

 

「…ッ!!」

 

 自立型神機を使って襲撃していれば自らが犯人と言っているようなものだが、ほんの僅か…他者が自立型神機を乗っ取った可能生を信じていたが、それも打ち砕かれた。それでもなお言い訳するワイズマンに対して、アルベルトは冷徹な口調で遮った。

 

「ワイズマン局長、貴方には今回の件で、謀反の疑いがかけられています。査問委員会にて然るべき処分を受けていただきます」

 

 アルベルトの処分と言うワードを聞くと、部隊員は一斉にワイズマンを取り囲み、ライフルを突きつけながら両腕を後ろ手に繋がれ拘束される。

 

「ま、待ってください!!本部長!!私はっ!!」

 

「我々が生き残る為であってもで、無理矢理人を生きた部品にするなど…許されるはずはずもありません。そのような者は…このフェンリルに必要ありません」

 

「本部長ォォォォォオッ!!!!!!」

 

 命を弄ぶ者に居場所はない…自分にも言い聞かせる様に、ゆっくりとした口調でワイズマンに冷徹な判決を伝える。しかし、なおも言い訳をしようとするワイズマンは叫びながら拘束を抜けようと暴れるが、ズブの素人が特殊部隊員に勝てるはずもなく、あっさりと制圧される。その光景を冷たい目で見ていたアルベルトは踵を返し、あとは特殊部隊に任せてその場から去ろうとする。それを悲鳴にも近い叫び声で引き留めようとするワイズマンだったが、アルベルトは気にとめることもなく去っていた。

 

 -翌日-

 

「結局、無駄足だったか…」

 

「まぁ、状況が状況ですし…仕方ないとは思いますが…」

 

 今回の任務で集めた素材は、ワイズマンが大型自立型神機の開発に全て回していた上に自衛のためそれを破壊した。しかもこの件で自立型神機の開発は凍結され、招集自体も無意味なものになってしまった。結局骨折り損のくたびれ儲け、何の成果も無い招集となり、事件の後すぐに簡単に調書を取り、その翌日には各々支部の長を残して神機使い達は先に帰る事となった。

 結果的に無駄な時間を過ごした事にユウキはため息をつくが、そこはもう割り切ろうとアリサが嗜める。

 

「でも、貴重な体験ができてプラスにはなりました。お友達もできましたし」

 

 対してユリは瑞希と言う友人ができたからか、嬉しそうにクスクスと笑っていた。ちなみに戻ったら瑞希とメールでやり取りしようと約束もしていた。

 

「神裂少佐!!」

 

 ヘリが動き出し、アリサ、ユリが乗り込み、ユウキもこれから乗ろうとしたところでリゼがユウキに声をかけてきた。先の事件の影響もなく、小走りで近くまで走ってくる。

 

「もう具合は良いみたいだな…」

 

「ええ、改めて今回の件、助けていただきありがとうございます。お陰で…また戦うことが出来るようになりました。少し検査をした後、問題がなければガドリン大佐の部隊に配属となって前線に復帰します。それに…」

 

 数日間、病室で退屈している所に何度か足を運び話すうちに多少は打ち解けて色々と話す関係となり、心配していた今後の配属先について報告する。そしてワイズマンの件について礼を言うと、今回の件で思うところがあるのか、リゼは自分の手を見つめ、噛み締める様に言葉を続ける。

 

「戦闘中に感応現象を使う…そんな事考えた事もありませんでした。今まではこんな力がなんの役に立つのかと思っていましたが、自分の力の使い道を考えてみようと思います」

 

「そうか…次に合うときにはスタイルが変わっているかもしれないな…楽しみにしている」

 

「ええ、お互いにもっと強く、大きくなってまた会いましょう」

 

 そしてリゼは右手を差し出す。所謂握手と言うやつだ。ユウキは特に何か考えるまでもなく、それに応じて自身も右手を差し出しリゼの手を掴む。

 

「なっ?!?!」

 

「えぇ??!!」

 

 するとリゼは僅かに身を屈め、手を繋いだままユウキの手の甲を口元に持ってくる。そして『チュッ』と小さく音を立てて軽く手の甲にキスすると、アリサとユリは顔を真っ赤にして驚いた。

 

「また、会いましょう…」

 

「あぁ」

 

 ユリは蠱惑的な笑みを浮かべて踵を返す。対してユウキはアホなのでただの友好の証として受け止め、顔色1つ変えずに返事をしてヘリへと乗り込んだ。

 

To be continued

 




あとがき
 お久しぶりです。ちょっと諸事情でメンタルヤラれてだいぶ放置してましたが、また書きたい欲が少し出てきたので投稿します。あとがき前書きやらあとがきは今後書きたいときに書きます。
 下でケビン、フロリア、ジャックの設定を載せておきます。

ケビン・ケーニッヒ

使用神機
 刀身:クレイモア極(バスター)
 銃身:無し
 装甲:剛氷タワー極(タワーシールド)

 ドイツ支部に所属する旧型神機使い。アネットの兄。アネットと同じ金髪赤目の青年。アネット同様、バスターブレードで力任せで豪快な戦い方をするが、回避と防御も的確にこなし、必殺の一撃を与える戦闘スタイルを得意とする。
 妹のアネットを溺愛しており、アネットに彼氏が出来ていないかとユウキを揺さぶりながら問い詰めたり、ユウキと恋仲にあるのではないかと問い詰めたりもした。
 妹の事となると豹変するが、基本的には周囲との協調性を重んじる性格をしており、初期のスタンドプレーになりがちな招集メンバーの仲を率先して取り持つなど、共闘の為の下地作りに貢献した。

フロリア・カルーゾ

使用神機
 刀身:無し
 銃身:マスドライバー(スナイパー)
 装甲:無し

 イタリア支部に所属する旧型神機使い。フェデリコの姉。癖のある長い黒髪に朱色の瞳の女性。普段から柔和な笑みとおっとりとした雰囲気を出している。その為、並大抵の事では動じず、『あらあらうふふ』と笑って流す事ができる。
 しかし、1度任務に出るとその雰囲気はガラリと変わり、冷たい雰囲気を纏ったスナイパーへと変貌する。遥か遠くに居るサリエルの頭を狙撃で撃ち抜く集中力やスナイパーとは思えない早撃ちなど非常に芸達者な面もある。
 フェデリコが激戦区の極東支部に移籍する際には、慎重すぎて長考する癖で身動きが取れなくなるのではないかと心配していたが、小隊長を任され、その慎重さが多くの隊員を救った事を聞くと安心していた。

ジャック・ダルストン

使用神機
 刀身:クレイモア極(ショート)
 銃身:無し
 装甲:剛氷タワー極(バックラー)

 オセアニア支部に所属する旧型神機使い。筋骨隆々の褐色肌な青年。極東の英雄と聞き、会える事を楽しみにしていたが、実際に会ってみると、イメージしていた逞しい男ではなく、細身の優男だったため、初対面のユウキの事を女男と見下していたが、すぐにその評価を改める事になる。
 神機の構成はナイフ系のショートブレードと小さなバックラーで纏めており、それを逆手に持って使用する。パンチが直接斬撃になる他、逆手でナイフを刺す際に力を入れやすくなる等、小回りの効く戦い方が得意な為、相手の懐に飛び込んで、急所を狙い撃つスタイルが非常に強力となっている。
 最後の自立型神機との戦闘ではその小回りを活かして膝関節の装甲を剥がし、僅かなクリアランスを突いて可動軸を折る等、逆転の一手となる。
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