-リンドウの部屋-
難民達を追い返す所を目撃してから約1週間が経った。リンドウが部屋のソファでたばこを吸っていると、サクヤが入ってきた。
リンドウ「神裂…どうだった?」
サクヤ「相変わらず…ってところかしら。今日もアナグラに居る間の大半は訓練室に籠っていたわ。ここ1週間ずっとね。」
難民達を助けられなかったあの日から、ユウキは強くなるために任務以外でも訓練室に長時間籠って実戦と模擬戦を繰り返していた。
しかし、端から見ても確実にオーバーワークであるため、いつか体に不調が出るのではないかと心配していた。
リンドウ「やっぱり止めるべきだったかなぁ…」
サクヤ「どうかしら…何の目的も無しに、ひたすら命懸けの戦場に居るよりは良いと思うけど…」
リンドウ「そう…かもな…」
そう言ってリンドウは空虚を見つめ出した。何か考え事をしているようだった。
サクヤ「…リンドウ?」
リンドウ「あ、いや…あいつ…何で無茶な事言ってまで、必死に難民を助けようとしたのかと思ってな。」
サクヤ「そうね、あの子も自分の事情を忘れる程に必死だったものね。」
リンドウ(…いやあいつの過去から察するにそんな風に考えてもおかしくないか…)
ひょんな事から、リンドウはユウキの過去を知る事になったのだが、はっきり言って人の生き方ではなく、知ったときは胸糞悪いとさえ思った。
再び空虚を見つめ、暫くすると『…あ』何か思い出したような声をあげた。
リンドウ「そういやサクヤにはまだ話してなかったな。」
そう語るリンドウの雰囲気はいつものように、飄々とした掴み所のないものではなく、真剣そのものだった。
リンドウ「あいつと…神裂と初めて会ったときの事だ。」
サクヤ「ええ。あなたが居住区で保護したって事しか知らないわ。」
リンドウはごく一部の人間にしかユウキと会ったときの話をしていない。人らしい生活を送ることができなかった上、精神的な問題で喋る事が出来なかったのだ。過去に何かあったことは容易に想像がつく。恐らく過去を知られるのはユウキにとって良くない事だと考えて、本人が話せるようになるまで待った方が良いと判断したのだ。
リンドウ「初めて会ったとき…あいつは人の生活なんて送ってなかった。服かも分からないただの布切れを巻いて、食い物は地面に投げ出して手を使わないで食ってた…まるで獣かアラガミだった。」
サクヤ「…そう…」
短く返事をすると、サクヤの表情も暗くなった。何かあったことは想像できたが、そこまで酷い生活だったとは思っていなかった。
リンドウ「まぁ、あんな悲惨な生活を送ってたからこそ、ほっとけなかったのかもな…良くも悪くも優しすぎるんだろうな…色々抱え込みそうだし、気にかけてやってくれ。」
サクヤ「…了解です。上官殿。」
『よし!』と言ってリンドウは立ち上がり、訓練室に向い歩いていった。
-訓練室-
リンドウ「よう!」
リンドウが訓練室に来ると、調度中型種のホログラムを倒した後だった。声をかけてユウキの隣りに来た。
ユウキ「リンドウさん…何ですか?」
対して、ユウキは休憩に入った直後だったので、疲れから少し愛想のない返事になっていた。別に機嫌が悪いわけでも、リンドウを嫌っているわけでもない。
リンドウ「いや、様子を見に来ただけだ。」
『そうですか』とだけ返して、リンドウから視線を外す。
ユウキ「リンドウさん…」
リンドウ「ん?」
不意にユウキがリンドウに話しかける。
ユウキ「俺は…強くなれてますか?」
リンドウは『やっぱり聞くよな』と思った。予想できた質問だったので、迷うことなく返事をする。
リンドウ「ああ…間違いなく強く『は』なってる。」
実際、実物より脆いとは言え、訓練で中型種3体を同時に相手にできる実力、近接武器を冷却ブレードにして神機を強化、さらにプレデタースタイル『シュトルム』の開放。
1週間でこれだけできれば十分に成長しているので、リンドウは素直に伝えることにしたのだ。
だが、ユウキはそれでも浮かない顔をしている。難民達を助けられなかった事を未だに引き摺っているのだろう。仕方の無いことだから、ユウキが抱え込む必要はないのだが、割り切る事ができずに抱え込むタイプだとリンドウは感じた。
リンドウ「自分にできること、できないことをしっかり考えてみな。その結果、助けられない人達もいるだろうけど、そこまで気にしてたらキリがないし、お前自身が持たない。だからそこまで気に病む事はないんだぞ?」
ユウキからの反応はない。分かっていても納得できていないのだろう。リンドウはガシガシと頭を掻いて話を続ける。
リンドウ「シンプルに生きるってのは難しいな。生きていると色んなものをごちゃごちゃと抱えちまう…ま、ここでぼやいても仕方ないけどな…」
ユウキ「そう...ですね...」
遠回しに一人で抱え込むなと伝えたのだが、話が遠回りし過ぎていたため、ユウキは分かったような、分かってないような状態になっていた。
リンドウ「よし!ここで1つ頼れる上官からのアドバイスだ。」
話題を変える為、リンドウは先の訓練で感じた改善すべき点を伝える。
リンドウ「訓練して実力をつけるのは結構だが、無理のない程度にしとけ。疲労ってのはバカにできないぞ?無理な訓練のせいで、現場で体が動かないであの世行き…なんて事もありえる。」
ユウキ「…分かりました。でも、少しでも早く強くなりたいので…ちょっと無理する程度にしておきます。」
リンドウ「そうか。あぁそれとな…いつ、何が起こってもおかしくない仕事だ。常に準備は万全にしておけよ?」
ユウキ「はい。」
そう言ってリンドウは訓練室を出ていった。ユウキは暫くその場で先程言われた事を考えていた。自分に何ができて何ができないのか。今できる事と言えば戦う事をぐらいしかない。それが結果的に先日の様な難民を助ける事にならない。それは過去の自分の体験からも分かってはいる。
だからと言って見捨てていいわけでもない。リンドウの言い分は助けられなくても気にするなと言っているようにユウキは感じた。それは間違っているような気がするが、その事を全て抱えると自身が持たないと言うのも理解している。
結局、どうすればいいか考えてが纏まらないままでいた。
ヒバリ『第一部隊所属の橘サクヤさん、ソーマ・シックザールさん、神裂ユウキさん、藤木コウタさん。至急、エントランス、ミッションカウンターまでお越しください。繰り返します。…』
突如ヒバリに呼び出された。恐らくミッションの指令だろう。考えるのを中断してエントランスに向かう。
エントランスに着いたらサクヤとソーマが既に到着しており、コウタも5分と掛からずに到着した。
ヒバリ「先程、『ヴァジュラ』の反応を捕捉しました!外部居住区に侵攻するルートを辿っています。その前に目標の排除をお願い致します!」
4人とも即座に任務を了承し、バギーに乗って作戦地域に向かった。
-贖罪の街-
居住区への侵攻を防ぐため、第一部隊は贖罪の街に来ていた。ヴァジュラを西の広場で発見し、ソーマとユウキは気配を殺しなが背後に回る。暫くするとヴァジュラは教会の裏手に移動し、そこで別のアラガミの死体を見つけて捕食し始めた。
その間にコウタとサクヤは教会の影から狙いを定める。ソーマ、ユウキは捕食形態を展開する。捕食形態を展開したのを確認すると、サクヤがヴァジュラの尻尾を狙い射つ。コウタはワンテンポ遅らせて発砲する。
着弾したのを確認すると、ソーマとユウキはヴァジュラを捕食する。その間にコウタは前に出て、ヴァジュラを射ち陽動する。サクヤはさらに下がって安全圏からヴァジュラを射ち抜く。
ソーマは左後ろ足、ユウキは左前足を狙い神機を振るが、ヴァジュラは右に跳んで回避した。そのままサクヤを一番遠くにいるサクヤを狙い走り出す。
コウタ「うえぇ!?」
向かってくるヴァジュラの顔面を射ち続けたが、怯む事なくサクヤがいる方に走る。タックルするような勢いで走るヴァジュラを、コウタは横に転がることで回避する。さらにそれをソーマとユウキが追いかける。2人共バースト状態であるため、いつもより速く追走する。
ユウキ「コウタ!早く!」
コウタ「ちょ!無茶言うなよ!」
よく忘れてしまうが、コウタは旧型『銃身』神機使いなのだ。自身ではバーストできない。そのため、バーストするには新型の支援が必要なのだ。
ユウキ「だったら…渡すよ!」
ユウキはヴァジュラの方へ跳びつつ後ろを向く。その間に銃形態に変形して、コウタをリンクバーストさせる。
コウタ「おっしゃあ!」
いつも以上に神機を吹かしながらユウキと一緒にヴァジュラへと走る。コウタの攻撃はヴァジュラの後ろ足に命中している。
しかし、ヴァジュラは止まる様子はなくサクヤに向かう。
サクヤ「貫け!」
サクヤが集中してヴァジュラの右目を射ち抜く。大きなダメージが入ってヴァジュラが仰け反る。その瞬間にソーマが一度踏み込んでヴァジュラに一気に近づく。仰け反った影響で頭が上に向いている隙に、ソーマの黒いノコギリ状バスターブレード『イーブルワン』がヴァジュラの顔面に叩き込まれる。
ユウキ「ソーマさん!サクヤさん!」
サクヤとソーマをリンクバーストする。ソーマは先のバーストも加算されてリンクバーストLV2となる。
サクヤ「いくわよ!」
ソーマ「くたばれ!」
サクヤがアラガミバレットを射ち、マントを破壊する。その直後、ソーマが神機を横に振るう。再び顔面に当たり、ヴァジュラが吹き飛ぶ。
教会の影からユウキとコウタが飛び出す。ヴァジュラがこちらに飛んできたのでユウキが迎え撃つ。
ユウキ「なっ!!」
コウタ「うそぉ!」
ヴァジュラが空中で体勢を建て直し、ユウキの攻撃を躱し、教会の壁を後ろ足で蹴り、斜め向かいのビルを蹴って広場に着地した。着地の隙にサクヤがヴァジュラの足を狙い射つが効いた様子はない。
ヴァジュラは前面に雷球を展開して前方に広範囲に攻撃する。連続で飛んでくる雷球をサクヤとソーマは難なく躱し、ユウキは躱しつつヴァジュラに突っ込む。コウタは避ける事で精一杯なようだ。
雷球を掻い潜りヴァジュラに迫る。ユウキがヴァジュラの眼前に来ると、ヴァジュラが前足を降り下ろす。それをバック宙で躱して向き合ったときに顔面を斬る。直後、ヴァジュラがタックルしてきたので横に跳んで避ける。
ユウキ「逃がすか!」
ユウキがステップで近づき、さらにプレデタースタイル『シュトルム』で一気に近づき尻尾を捕食する。
仰け反った隙に再びソーマが顔面を叩き斬る。その衝撃でヴァジュラが地面に叩きつけれらる。さらにユウキが下から腹を切り裂く。冷却ブレードでの切り口が凍りつき、振り抜いた勢いでヴァジュラを上に飛ばす。そこにサクヤとコウタがひたすら射ち込み、ソーマが背中を力任せに斬りつけ、地面に叩き落とす。落とした瞬間にユウキが全力で神機を振る。以前は浮かして動かすことしかできなかったヴァジュラを吹き飛ばして2、3回バウンドさせた。
立ち上がったヴァジュラが雷球を連射してきたので、ソーマとユウキはかそれを掻い潜る。
ソーマ「終わりだ…くたばれぇ!」
ユウキ「ぜあああぁぁ!」
ユウキが左前足、ソーマが頭と右前足を斬る。
『ガアァァ…』
2人の豪腕がヴァジュラをビルの壁まで吹き飛ばした。そしてヴァジュラは断末魔をあげて倒れていった。
コアを回収して、他に驚異となるアラガミがいないことを確認するために周囲を索敵を始めた。
-???-
リンドウとアリサは、強力なコア反応を示すアラガミが現れたとの情報が入ったので調査しに来たのだ。珍しく、反応をキャッチしてから然程時間をかけずに来られた。しかし、目標が作戦領域にいる筈なのに発見できずにいた。
リンドウ「これは、いよいよキナ臭くなってきたな。」
『ガアァ…』
どこからかアラガミの鳴き声が聞こえる。
アリサ「…っ!!」
その鳴き声を聞いた瞬間、黒い顔、誰かの手、狭い空間といった、何かのイメージが一瞬アリサの脳裏を過る。
リンドウ「どうした?」
アリサの動きが突然止まったので、不審に思いリンドウが声をかける。気のせいかアリサの神機の銃口がリンドウに向いていた。
アリサ「い、いえ…問題ありません。側面、後方共にクリアです。」
なんとか答えるが、リンドウは結局不信感を拭えないまま任務を再開する。
リンドウ「そうか…進むぞ。」
そう言って、周囲を警戒しながら周囲を捜索していく。
-数分後-
サクヤ、ソーマ、ユウキ、コウタの4人はヴァジュラ討伐後、安全確保の為、教会付近を捜索していた。
すると、教会の影からリンドウとアリサが現れた。
ソーマ「…なに?!」
リンドウ「お前ら?」
コウタ「リ、リンドウさん?!アリサ!」
ユウキ「な、何で…」
アリサ「何故貴方たちがここに…?」
サクヤ「どうして同一区画に2つのチームが…どう言うこと?」
特例を除き、本来ならば1つの作戦区画に2つ以上のチームは配備されないのが原則となっている。これは作戦領域の指令や指示、命令の混乱を防ぐためである。
今回は救助の要請などはしていないため、同一区画に2チームが配備されることは無いはずだった。これだけで事態の異常性が伺える。
リンドウ「考えるのは後だ。先に俺達の任務を終わらせてさっさと帰るぞ。俺とアリサで中を確認する。お前たちは外の警戒。いいな。」
しかし、リンドウは今考えるのを一旦中断させる。任務を終わらせてからであればいくらでも考える時間がある。そのため、任務を終わらせる事を優先した。
リンドウの指示に従い、サクヤのチームは教会の入口を固めて、リンドウのチームは教会内部の捜索を開始した。
教会の中心に着き、変わった様子が無いことを確認して、引き返そうとしたとき、ステンドグラスがあったと思われる所に開いた穴から、一体のアラガミが現れた。
恐ろしい女性の様な顔で、背中には青いマントが生えており、ヴァジュラと同じ骨格をしていた。今までに見たことが無い新種のアラガミのようだ。
リンドウ「アリサ!!後方支援を頼む!」
新種は口が裂け、顎が外れた様に大きく口を開けてを吠える。その瞬間、アリサの脳裏に、黒い大きな顔が2人の男女を見ており、その男女は逃げ惑うイメージが映し出される。
アリサ(パパ…!?ママ…!?やめて…食べないで…)
新種がリンドウを切り裂こうと、前足を降り下ろす。それを後ろに跳んで躱す。直後、リンドウが一歩踏み込んで顔面を斬る。
しかし、いつまで経ってもアリサからの援護が無いことに気が付く。
リンドウ「アリサぁ!どうしたぁ!?」
アリサはリンドウの声にも反応を見せず、後ろに下がり続ける。
???『そうだ!戦え!打ち勝て!』
何処かで聞いたような凛々しい声に鼓舞されて、神機使いになった時の事を思い出す。
???『こう唱えて引き金を引くんだ…
アリサにとって知っている筈の声の主が肩に手を置き、諭すようなゆっくりとした口調でアリサに話しているイメージが脳裏に過る。
アリサ「
アリサの目から光が消えた。
???『そうだよ…そう唱えるだけで、君は強い子になれるんだ。』
先程のイメージの続きが再生される。声の主も先と変わらない口調でアリサに語りかける。
アリサ「
強くなれる。その言葉を信じて疑わない様にひたすら呟く。その度にアリサの目は虚ろになっていく。
???『こいつらが君たちの敵…アラガミだよ…!』
様々なアラガミの画像をモニターで見ている。次の画像が映し出されると、そこにはリンドウの姿が映し出された。
『こいつが敵』そう思い、リンドウに照準を合わせた瞬間、とあるリンドウとのやり取りを思い出す。
リンドウ『混乱しちまった時は、空を見るんだ。』
アリサ「いやぁ!やめてぇ!」
ハッとしてリンドウから照準を外す。しかし、その銃口は上を向き、デタラメに撃ちまくり、天井で爆発した。その衝撃で天井が崩れ、教会の唯一の出入口が塞がれてしまった。
突如鳴り響いた爆発音に気がついて、事態の把握の為にサクヤとユウキが教会の入口に来た。
サクヤ「あなた!!…いったい何を!!」
2人が駆けつけた頃には、出入口が塞がれていた。結果、未知の新種と一緒にリンドウを閉じ込めたのだ。サクヤの困惑してアリサを問い詰める様な反応は当然のものだった。
アリサ「違う…違うの…パパ…ママ…私、そんなつもりじゃ…」
ユウキ「なんだか様子がおかしいですよ。会話になってない。」
サクヤ「くっ!」
サクヤは神機を構え、瓦礫に向かって撃ち込むが、貫通力に優れたスナイパーでは、瓦礫の山を破壊する威力はない。これでは瓦礫を取り除いて救助に向かう事もできない。
ユウキ「サクヤさん!下がって!」
そう言われてサクヤが下がる。今度はユウキがインパルスエッジを発射して瓦礫を吹き飛ばす。…が
ユウキ「うわっ!」
サクヤ「くっ!!」
局所的に瓦礫の破壊が起こったので、瓦礫が崩れて危うく3人が巻き込まれるところだった。
ユウキ「ダメだ!インパルスエッジじゃ破壊する範囲が狭すぎる!もっと広い範囲を破壊出来る攻撃…そうだ!ソーマさん!!」
局所的な破壊ではなく、広範囲に及ぶ破壊力を持つチャージクラッシュなら或いは…と考えたが、ソーマから更に厳しい状況を告げられる。
ソーマ「悪いが無理だ…新種に囲まれてやがる…!」
リンドウが対峙している新種が教会の外にも現れていた。入口を囲む様に4体がこちらを向いている。
コウタ「うぁ!」
新種がコウタに体当たりをして、教会に押し込む。侵入してきた新種がサクヤとユウキの方を向いている。
ソーマ「早くしろ!完全に包囲されるぞ!」
ソーマが入口を陣取っていた新種を切り裂き、退路を開く準備をする。さらに、侵入してきた新種をサクヤが撃ち抜き、ユウキが首筋を突き刺して投げ飛ばし、教会から排除する。
リンドウ「サクヤ!!アリサを連れてアナグラに戻れ!これは命令だ!!」
サクヤ「でもっ!」
リンドウから自分を置いて生きて帰れと命令されるが、サクヤは納得できないように食い下がる。
リンドウ「聞こえないのか!!!アリサを連れて早くアナグラに戻れ!サクヤ!全員を統率!ソーマ退路を開け!」
リンドウが怒鳴りながら命令を出す。余程余裕が無いのだろう。
アリサ「パパ…ママ…そんな…つもりじゃ…」
ユウキ「アリサ!しっかり!」
サクヤ「リンドウも…早く!!」
ユウキが戻ってきて、アリサを背負ったのを確認す。するとサクヤがリンドウに早く戻るように促す。
リンドウ「わりぃな、こいつがなかなか帰してくれなくてな。ちょっと帰るのが遅くなる。配給ビール、とっといてくれよ。」
サクヤ「ダメよ!私も残って戦うわ!」
リンドウ「サクヤ…これは命令だ!!!全員必ず生きて帰れ!!!」
サクヤ「いやあぁぁぁ!!!!」
コウタ「行こう!サクヤさん!このままじゃ全員共倒れだよ!!」
コウタがサクヤの腕を掴み、撤退しようとするがサクヤが暴れてその場に残ろうとしている。
サクヤ「嫌よ!リンドウゥゥゥ!!」
子供が駄々をこねる様に我が儘を言う。
ユウキ「チィッ!」
ユウキがサクヤの首筋に手刀を入れて気絶させた。
コウタ「お、おい!ユウキ!」
ユウキ「こうするしかねぇだろ!リンドウさんがこんなところでくたばるわけない!そう信じて応援と救助班を呼びに行くぞ!」
実際、暴走状態だったサクヤを止めて、命令通り全員で生きて帰るにはこうするのが手っ取り早かった。
コウタ「なら、サクヤさんは俺が…」
『俺が連れていく』と言う筈だったが、ユウキに遮られた。
ユウキ「装甲を展開できないお前が真っ先に下がらないでどうする!!さっさとバギーの準備をしろ!!」
言われてコウタは教会から飛び出し、一目散にバギーへ走る。続いてユウキも、二人を抱えて教会から出る。ソーマが退路を開いたお陰で、新種の4体は教会の入口から離れていた。
ユウキ「ソーマさん!」
呼ばれてソーマはユウキの方を見る。アリサとサクヤを抱えて待機ポイントに向かって走っていた。
その様子を見てすぐに察しが付いた。ソーマも待機ポイントに向かって走る。そのままユウキを追い抜いて、前に突き出ていた鉄骨を足場にして待機ポイントまで跳び移る。
ソーマ「神裂!!」
ソーマが手を伸ばす。反射的に反応してサクヤを投げた。上手くソーマが受けとめ、バギーに乗り込む。その間にコウタがバギーのエンジンをかけ、後はユウキがアリサを連れて待機ポイントまで駆け上がってくれば逃走できる。…はずだっだ
ユウキが駆け上がるのとほぼ同時に、新種が教会の壁を蹴り上がって来たのだ。
ユウキ「出せ!コウタ!!」
一瞬迷ったが言われた通りバギーを走らせる。そのバギーを追いかけながらユウキと新種が走る。
ソーマ「速すぎだ藤木!神裂が追い付けねぇぞ!」
コウタ「つってもこれ以上遅くしたら新種にも追い付かれるよ!」
ユウキ「チッ!だったら…!」
そう言うと、ユウキは幅跳びの要領で一度踏み込み、前に跳ぶ。一応はバギーとの差は少し縮まった。
しかし、バギーにはまだ届かない。新種も飛びかかり、ユウキとアリサに迫ろうとしていた。
『ボッ!』
突如ユウキが加速した。プレデタースタイル『シュトルム』を使い、バギーまで加速したのだ。どうにかバギーに乗り込み、新種は飛びかかりが失敗したため、少し遅れて再び追走する。
ユウキ「コウタ!グレネードは!?」
コウタ「ポーチに入ってる!」
ソーマにアリサを預け、コウタのポーチを漁ってスタングレネードを取り出し、バギー後方に向かう。
ユウキ「大人しくしてろ!」
新種にスタングレネードを投げつける。閃光が辺りを包み、新種は目を眩ませ、動きが止まる。その隙にバキーは極東支部に向けて全速力で走っていた。
-撤退直後-
リンドウ「行ったか…」
ユウキ達が待機ポイントから撤退した直後、周囲から戦闘音が聞こえなくなったので、リンドウはうまく逃げ延びたと判断した。倒した新種の亡骸の横で座り込み、壁に凭れながらたばこを吹かしている。教会の出入口は塞がれているので、救助が来るまで待っていなければならない。
しかし、そこに黒い顔のヴァジュラが教会に侵入してきた。
リンドウ「はぁ…ちょっとくらい休憩させてくれよ…体が持たないぜ…」
リンドウはたばこを吸い、煙を吐く。吐き終わると残ったたばこを投げ捨てて立ち上がる。神機を担ぎ、黒く邪悪な顔のヴァジュラに向かって歩いていった。
To be continued
リンドウさん( ノД`)…初プレイ時の時は取り乱すのは仕方ないと思ってましたが、全員を統率する立場であることを考えると、この時のサクヤさんの暴走具合ってかなりヤバイですよね。ここから本格的に物語が加速し始めます。第一部隊の面々の変化にも注目です。
...共闘ってなんだかすごく書きにくいです...(´・ω・`)