第一部隊がリンドウを残し、命からがら帰還すると、即座に救出部隊の編成が始まった。現場状況の把握と伝達のため、第一部隊もこの救助部隊に編成されている。
そのため、第一部隊のメンバーは神機の簡易整備と補給を受けた後、再度出撃することになっている。その途中でサクヤが目を覚まし、他のメンバーと一緒に再出撃の準備をする。
しかし、アリサは未だに目を覚まさないため、ユウキが病室に運んだ。その後でサクヤに睨まれながら準備に参加した。
-贖罪の街-
リンドウの救助のため、救助部隊を引き連れて再び贖罪の街に戻ってきた。
救助部隊が活動できるように、作戦領域内にアラガミがいないことを確認しに行く。先の新種は見当たらないがシユウを一体発見した。
すると、ソーマがストレス解消と言わんばかりの全力攻撃で、シユウの頭に神機を降り下ろして、一瞬のうちに真っ二つにしてしまった。
シユウを排除し、教会の瓦礫を撤去する。そこにはリンドウのものと思われる帯状に広がった血の痕があった。他には戦闘の余波で荒れている以外は何もなかった。
ソーマ「あのバカ…自分の命令も守れないのか…クソッ…!」
コウタ「だ、大丈夫だよ…リンドウさんの事だし、ビールの配給日に帰ってくるって…」
サクヤ「リンドウ…」
ユウキ「…」
悔しそうに表情を歪める者、生存を微かに信じる者、生死が分からず悲痛な表情をする者、何も言わず暗くなる者と反応は様々だった。
サクヤ「何で…何であの時撤退したの!全員であの新種を倒せばリンドウの救出だってできたじゃない!!!」
ユウキ「…」
サクヤがユウキに詰め寄るがユウキは黙ったままだ。普段の冷静な彼女であれば、あの状況では撤退するしかないと考えるが、リンドウの生死がかかった状態では冷静な判断ができないでいた。
コウタ「サクヤさん落ち着いて!ユウキにそんなこと言ったってどうにもならないよ!」
コウタに諭されてサクヤは一応落ち着いた。
サクヤ「っ!…そうね…ごめんなさい…先…戻るわ…」
そう言ってサクヤは待機ポイントに戻って行った。その後、周囲を捜索してもリンドウは見つからなかったため、一緒に来ていた捜索隊に引き継いで第一部隊と救助部隊は引き上げた。
-救助部隊出動直後-
時は救助部隊が出動した直後に遡る。エントランスでは第二部隊とツバキが何やら騒いでいた。
ブレンダン「教官!俺たちもリンドウさんの捜索に向かわせて下さい!」
ブレンダンが第二部隊をリンドウの捜索に加えるよう交渉している。
ツバキ「何度も言わせるな。正規の捜索隊が動いている。報告を待て。」
この手の話は散々してきたのだろう。ウンザリしたような口調に若干の苛立ちが込められている。
タツミ「しかし!人数が増えれば捜索範囲が拡大出来ます!」
しかし、ここで引き下がる訳にはかないと、捜索に加わった際のメリットを提示する。
ツバキ「くどい…」
ツバキの声色に込められた苛立ちが強くなる。
カノン「リンドウさんには何度も危ない所を助けてもらったんです!だから今度は私たちが…」
何としても捜索に参加したいが為に食い下がる。それだけの大恩があるのだろう。
ツバキ「くどいと言っている!!」
だが、その意思を足蹴にするようなツバキの怒鳴り声がエントランスに響く。あまりの迫力に3人は思わず萎縮する。
ヒバリ「…ツバキさん、支部長がお呼びです…」
ヒバリも自分が怒鳴られた訳でもないのに、怯えながら要件を伝える。
ツバキ「わかった。しばらく頼む。」
ヒバリ「…了解しました。」
ツバキはいつもの凛とした口調に戻して、支部長室に向かった。
「「「…」」」
第二部隊の3人は完全に意気消沈していた。何故弟が行方不明になったのに冷静でいられるのか?何故真っ先に駆けつけないのか?自分が行けないなら捜索隊の人数を増やすよう直談判しないのか?落ち込みつつもそんな事を考えていた。
ゲン「おいテメェら…あいつの目の前で何人死んだか…教えてやろうか?」
不意にゲンが話しかける。
カノン「あ…」
カノンは何か気付いた様に小さく声をあげた。ツバキはゴッドイーターの中では珍しい、『退役した』神機使いなのだ。当然、現役時代には多くの仲間の死を見てきた。その中には大切な人も居たかもしれない。
そう言った状況では、皆に動揺が伝染病の様に伝わり、指令や情報に混乱が起きやすくなる。この時、勝手に出撃して捜索に行ったりすると、どうなるかは簡単に想像できる。最悪な二次被害、三次被害を引き起こす。だからこそ正規の部隊に捜索を任せ、それ以外の者はそれぞれの役目を果たすべきなのだ。
現役時代にはよく体験していたため、緊急時に勝手な行動を取ることがいかに自分や周りを危険に晒すかを身をもって実感していたのだ。
ゲン「ましてや血を分けた弟だ。飛び出したいのはあいつの方だろうに...」
ツバキは役員区画に着いた。が、支部長室には行かずに自室前に向かって歩いていた。実は支部長からの呼び出しは、ツバキを一人にするためにヒバリがついた嘘だったのだ。実際、ヒバリが要件を伝えた時にはコール音が鳴っていない事にはツバキは気付いていたので、その厚意に甘えることにしたのだ。
ヒバリのフォローのお陰でツバキは一人になり、周囲に人が居ないことを気配で察知する。
『ガン!!!』
弟助けにも行けない自分に苛立ち、情けなくなり思わず壁を殴る。そして力なく項垂れ、現役時代感じた自分の無力さを再び思い知ったのだった。
統率者としての責任もあり、飛び出したくても飛び出すわけにはいかなかった。
-エントランス-
救助任務を終えてエントランスに着くと、サクヤはフラフラとした足取りで自室に向かい、ソーマはツバキを交えて、状況の報告をしに支部長室に向かった。
ユウキとコウタだけがエントランスに残っていた。
ユウキ「第一部隊…リンドウさんがいないと…機能しないね…」
コウタ「うん…ごめん…俺も先に戻るよ…」
そしてコウタも部屋に戻って行った。取り合えずヒバリに報告しようと下階に降りる。そこには、リンドウの帰還を待っていた者達がいた。
ゲン「おう…どうだった?」
捜索隊が戻って来ない事から察しはついていたが、もしかしたらと言う淡い希望を持って聞いてみた。
しかし、ユウキは顔を横に振った。
ゲン「そうか…信じられん事だが…」
カノン「いつだって…リンドウさんみたいな、優しくて強い人が犠牲になっていくんですね…あの…捜索任務、もし無理じゃなかったら同行させてくれませんか?」
先程ツバキに捜索は正規の部隊に任せろと念を押されたが、それでも諦めきれないでいる。なので、捜索任務に選抜されるであろう人物に声をかけ、連れていって貰う事にしたのだ。
カノン「私、こんなですけど…リンドウさんに助けられたままで、何も恩返しできてないんです。まだ、ひとつも…」
ユウキ「わかりました。選抜されたら、その時は声をかけます。」
そう言ってヒバリに任務終了の報告をする。カウンターのすぐ横にはリッカもいる。リッカもリンドウが、帰ってくると信じてここに来ていた。
リッカ「その様子じゃ…見つからなかったみたいだね…」
ユウキ「…うん。」
リッカ「こんな時に言うのも何だけど…捜索隊には…あんまり期待しない方がいいよ。あの人達の主な任務は…神機の捜索だから…」
ユウキ(人命より神機優先か…らしいと言えばらしいか…)
難民達の件でもそうだったが、フェンリルは人命を軽視する傾向が強いようだ。戦える人間に物資を優先するのは理解できるが、その戦える人間に対しても冷たいと思い、ユウキは半ばフェンリルを見限っている節がある。
そんなことを考えながらヒバリに報告をした。
ユウキ「あ、アリサって…どうなったかわかりますか?」
ヒバリ「アリサさんは…まだ面会謝絶らしいです…面会できるようになったら、ご連絡しますね…」
ユウキ「お願いします…」
任務中に様子がおかしくなったアリサが気になるので聞いてみたのたが、面会すら出来ないとの事だった。
ユウキ「あの…1ついいですか?」
ヒバリ「はい。何でしょうか?」
ユウキ「アリサと面会出来るようになっても、暫くはサクヤさんには伝えないで下さい。今のあの人は何をするか分かりませんので…」
救助任務で落ち着いたような事を言っていたが、未だ感情的で暴走している状態なのは容易に想像できる。下手をすればアリサに危害を加える可能性があるので、暫くはサクヤとアリサを会わせない方がいいと考えたのだ。
-病室前-
面会謝絶と言われたが、アリサの容態が気にかかるので、どんな様子かだけでも教えてもらおうと、ユウキは病室の前まで来た。
すると、耳を澄ませるまでもなく話声や叫び声が聞こえる。
アリサ「見ないで...もうほっといてよ...!来ないで!!」
やはりアリサの声だった。普段の強気な雰囲気を思わせる声ではなく、ヒステリックに大声をあげ、叫んでいる。
アリサ「私なんか…私なんかぁ!!」
ツバキ「鎮静剤を!クッションは交換しておけ!」
ツバキも一緒にいるようだ。正直、ユウキはツバキのメンタルの強さには驚いた。自分の弟をほぼ直接的に行方不明にした張本人にも関わらず、こうして面倒を見ているのだ。
アリサ「あぁ…ゴメンナサイ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…」
アリサは錯乱し、ひたすら謝り続けている。任務中の時よりも酷くなっているように感じる。
アリサ「パパ…ママ…私違う!違うの!!」
ツバキ「私だ…ツバキだ...わかるか?アリサ。」
ツバキの口調は子供を諭す様にゆっくりと、刺の無いように気を付けながら語りかけている。
しかし、任務の時も感じたがどうにも周囲とアリサの間で会話が噛み合っていないように感じる。先の謝罪も、一見リンドウやその関係者に向けられているように思えるが、次にアリサから出てくることは両親の事ばかりだった。
アリサ「そんな!そんなつもりじゃなかったの!!!違うの!!私じゃない!!私のせいじゃない!!!」
ツバキ「くっ!!」
アリサが暴れているのだろうか、ツバキが小さくうめき声をあげる。
アリサ「ほっといてよ!!私のなんか!!ほっといてよくれれば良かったのに!!!!」
『ほっといてくれれば良かったのに』その言葉を聞いた瞬間、無意識に病室の扉を開けようとスイッチに手を伸ばす。
???「あぁ、君か。」
ユウキ「!?」
突然ユウキに対して声をかける人物が現れた。面会謝絶の張り紙も張られていたこともあり、かなり焦ってスイッチから手を引いてしまった。
???「今は会わない方が良いだろうな。薬が切れるとあの調子だ。日を改めた方がいいぞ。」
ユウキ(誰だ?…この人)
ユウキに声をかけたのは見覚えのない太った男だった。
大車「あぁ、面と向かって話すのは始めてだったな。私は大車ダイゴだ。アリサの主治医をしている。」
ユウキ「…始めまして、神裂ユウキです。」
ハッキリ言って、ユウキにはこの男が医者には見えなかった。ユウキが聞いたことのある医者はというのは、職業柄という事もあり清潔感のある白衣やシャツを纏っているものだと思っていた。
だが、この男はヨレヨレでシワくちゃのシャツを着てボサボサの長髪に黄色いバンダナを巻いている。そして剃る気が無いように無造作に髭を生やしている。さらには喫煙スペースではない廊下で歩きたばこをしている。
汚いオッサンに白衣を着せただけといった感じだった。医者と言われても説得力が無い。
アリサ「イヤアァァァ…」
鎮静剤を打たれたのだろうか。アリサの悲鳴が聞こえてきて、そのあとは静かになった。
大車「彼女だって今の様子は見られたくないだろうからな。」
ユウキ「そうですね…出直してきます。」
そう言ってユウキは自室に戻って行った。
To be continued
さて、最後に大人気の大車先生が出てきました。大車討伐ミッション、楽しみですね。
初プレイ時にも思ったのですが、リンドウがいなくなった後の第一部隊ってまとまりの無さが目立つ気がします。下手をすれば全部隊の中で一番酷いかもしれません。暫くはそんな第一部隊となっています。
下書きの段階ではサクヤが主人公に八つ当たりしたときに
「ヒスってンじャネぇよクソアマ...」
とか言わせて大喧嘩させたり名探偵ソーマにリンドウ生存説を熱く語らせようかとも思ったのですが、どちらもそんなキャラじゃないと思いやめました。
ツバキさんの探しに行きたくても行けない葛藤やリンドウさんが行方不明となる原因を作ったアリサの面倒を見る(仕事だからかもしれないですが...)辺りから滲み出るツバキさんの優しさを表現できていたら良いのですが...