-エントランス-
アリサが原隊復帰してから1週間がたった。この1週間、ツバキの手伝いをしながら訓練をしたり、誰かと一緒に任務に行って手伝いをする等して、少しずつアリサの変化を認める者が増えてきた。
そんな中、書類を抱えたアリサとツバキ、それからソーマ以外の第一部隊が出撃ゲート前でこれから行う任務の説明を受けている。
ツバキ「贖罪の街付近にて、外部居住区への侵攻ルートをたどるヴァジュラが1体確認された。比較的時間はあるが、3時間後には作戦領域に侵入する。ここで仕止めて居住区への侵入を防ぐのが今回の任務だ。何か質問はあるか?」
『質問はあるか』と言う問にユウキが軽く手を挙げて発言する。
ユウキ「えっと、質問と言うより提案なんですが…今回の任務にアリサを参加させてはいかがでしょうか?」
コウタ「そうだね!ちょっと前からちゃんと謝りに行ったり、色んな人の任務を手伝ったりして、頑張ってるんだし…そろそろ正式に実戦に復帰しても大丈夫だと思います。」
ユウキの提案にコウタも同意する。コウタもまた、変わろうと努力するアリサを見ていたので、アリサの変化を認めていた。
ユウキ「もっとも…こちらも強制する気はありません。あくまでアリサの気持ち次第ですが…」
だが、今回の相手はアリサが錯乱する引き金となったアラガミと容姿が似ている。そこから再び錯乱する可能性も捨て切れない。ここはアリサ自身の問題になるので本人が決めなければならないが、まだ無理だと感じた場合の逃げ道としてアリサの気持ちを尊重するとしたのだ。
ツバキ「そうか…サクヤ、お前はどうだ?」
サクヤ「…異論はありません。今の彼女なら、大丈夫だと思います。」
若干の不安はあったが、サクヤもアリサが自分の過去と向き合い、変わったと認めて、出撃しても問題ないと判断した。
ツバキ「だが、今回のターゲットは『アレ』と同型の固体だ。行けるか?」
だが、今回アリサが任務に参加するにあたって最大の懸念が、トラウマを呼び起こしたアラガミと同型であることだ。他の個体であれば問題ないのだが、同型となると少し心配になる。最後の確認として、ツバキがアリサ本人に選ばせる。
アリサ「行きます…自分の弱さを克服するためにも…行かせてください!」
アリサは強い意思を示して承諾する。もう止める必要もないだろう。ツバキはそう考えてアリサを参加メンバーに加える。
ツバキ「よろしい。だが、くれぐれも無理はするなよ?」
アリサ「はい!」
一応心配ではあるので、メンタルに異常を感じたらすぐに戻るように言い付ける。アリサの参加が決まり、作戦の説明も一通り終わったところで、コウタが声をかける。
コウタ「俺が居るから大丈夫!ここで頑張って『汚名挽回』しようぜ!」
ユウキ「…『汚名返上』だよ?」
アリサが同行する事になり、コウタの口調が弾んだものになる。仲間が周りに認められると実感して、喜んでいるのだろう。
…一応コウタが間違えた四字熟語に対してツッコミを入れておく。
アリサ「そうですね…ここで成果を出して、少しでも信頼を取り戻さないと…」
サクヤ「気持ちは分かるけど、あんまり気負いすぎないでね?」
アリサ「はい。」
少し気楽に行くくらいが今のアリサには丁度いいのだろうが、どこか緊張したような雰囲気を出していた。それを感じ取ったサクヤがアリサにフォローを入れる。
ツバキ「2時間後に出発する。それまでに準備をしておくように。」
サクヤ「さ、準備に取り掛かりましょ!」
サクヤの声がかかると同時に各々準備を始める。
-贖罪の街-
第一部隊は出撃準備を終えて、作戦領域に到着した。今回の任務ではユウキが前衛でアリサが遊撃、サクヤとコウタで後衛を担当するという段取りになっている。
ユウキが先行して周囲を策敵し、最後尾のアリサが後ろ、真ん中のコウタ、サクヤの2人が左右の警戒をしている。
が、一通り見回ってみたが標的が見つからない。
ユウキ「見当たりませんね…」
サクヤ「まだ作戦領域に来てないのかしら…?」
この会話を聞いていたのか、ヒバリから通信が入る。
ヒバリ『反応が疎らで確証はありませんが…最後に反応があった地点から推測すると、恐らく作戦領域内には居ると思われます。』
最後に反応があった地点は作戦領域のすぐ近くだった。今まで反応があった地点を結ぶと、蛇行しながらも外部居住区に向かっていた。この事からも、作戦領域に侵入してから外部居住区に向かうと考えるのが妥当だと考えられた。
ユウキ「どうしましょう…散開しますか?」
そう言って教会の入り口に向かうため、外側を曲がろうとしたら、突然ユウキが立ち止まり、静止をかける。
ユウキ「…居る。角の向こう。」
サクヤ「本当に?」
ユウキ「足音が聞こえるんです。」
普通であれば疑われるところだが、ユウキは一度戦闘中に向かって来るコンゴウの足音を聞いて、コウタを逃がした実績がある。少なくとも聴覚による策敵はこの中で最も優れていると思われる。
サクヤ「分かったわ。アリサ、私と来て。裏側から挟み撃ちにするわ。」
アリサ「はい。」
アリサの返事を合図に2人は反対側に向かって走っていった。こうして話している間もヴァジュラはこちらに向かって移動していたのだ。可能な限り早く前に出てヴァジュラを引き付ける必要がある。
ユウキ「コウタ、俺が合図したら攻撃開始…グレネードの用意もしといて。」
コウタ「りょーかい!」
手短に指示を伝える。その指示に対するコウタの返事を聞くと同時に、教会の影から飛び出す。
『ガアァァァ!!』
教会の入り口近くにいたヴァジュラが、吠えながら突っ込んでくる。飛び出した勢いでヴァジュラを横切って、それを躱す。
そのまま教会の入り口とは反対側にある大きなビルに延びる一本道を走る。それをヴァジュラが追走する。
ユウキ「コウタぁ!」
コウタ「待ってましたぁ!」
コウタは声をあげると同時に飛び出して、神機を吹かす。この時、ヴァジュラはユウキを追っていたので、コウタに後ろを見せている状態だ。
そのがら空きになっている後ろ側を銃弾の雨がヴァジュラを襲う。後ろから足を撃ち抜かれてヴァジュラが怯む。その間にユウキが接近してヴァジュラの顔面を斬る。
その衝撃でヴァジュラを動かして、後ろを向かせる。振り向かせた先には、スタングレネードを構えたコウタがいる。
コウタ「動くなよ!」
コウタがグレネードを叩きつけ、辺りが閃光に包まれた。光で目が眩んだヴァジュラの動きが止まる。
ユウキ「喰い潰せ!」
シュトルムを展開して距離を詰めて捕食する。が、ヴァジュラが帯電しているのが、辺りにバチバチと放電する音が聞こえる。
ユウキ「まだまだぁ!」
しかし、そんな事は知らぬと言わんばかりに、再び捕食口を展開して捕食する。今度はゼクスホルンを展開して、捕食後に後ろに下がる。
下がった瞬間にヴァジュラの周辺に電撃が走る。
ユウキ「コウタ!場所を変えるぞ!」
コウタ「オッケー!」
今のままでは、視界が回復したらコウタが狙われる。その前にユウキがヴァジュラの眼前に出て、コウタが後方に下がらせる。
その後、すぐにヴァジュラの視力が回復してコウタに噛みつく…筈だったが、眼前にいたのはユウキだった。しかし、コウタの代わりに前に出てすぐだったため、体勢を整える事ができなかった。
ユウキ「クソッ!」
避けるのもカウンターも間に合わないと判断して、装甲を展開して防ぐ。が、バックラーに分類されるティアストーンでは衝撃を受けきれずに、後ろに飛ばされる。
その後、即座に体勢を立て直す。
ユウキ(速い…バックラーってこんなに展開が速かったのか?)
体勢を整えながら装甲を展開した時の事を考えていた。想像していたよりも展開スピードが速く、0.5秒もかかっていなかった事に驚いた。
ユウキ(いや…恐らくアリサが使っていたときの調整のお陰か…)
そう結論付けて、戦闘に意識を戻す。後ろに下がったユウキをヴァジュラが追撃するために飛びかかる。それを下から神機を振り上げて、カウンターを決める。その衝撃でヴァジュラを上に飛ばす。
しかし、ヴァジュラは飛ばされながらも雷球を四方八方に飛ばす。
ユウキ「チィッ!!」
コウタ「うわっ!」
ユウキとコウタがどうにか避ける。が、雷球が地面に当たると衝撃で辺りに土煙が舞う。2人の動きが止まっている間にヴァジュラが着地する。
ユウキもコウタも視界が悪くなり、動きが悪くなる。ユウキに関しては、聴覚での策敵のお陰で、ヴァジュラの位置は分かるが、誰を狙っているのか、どんな攻撃をしてくるのかは分からない。
サクヤ「貫け!!」
焦りが見え始めたところで突如サクヤの声が聞こえてきた。サクヤの神機『ステラスウォーム』から一筋のレーザーがヴァジュラの顔面を横から貫く。そのまま貫通して、ユウキ付近の土煙が晴れる。
アリサ「あ、当たって!!」
アリサも銃形態『レイジングロア』が火を吹く。それに続いてユウキがヴァジュラを斬りつける。
しかし、ヴァジュラがマントで受け止める体制で防御する。サクヤのレーザーもマントによる防御であまり効いてないようだ。
アリサ「くっ!なら!!」
アリサが別のバレットを装填し、再び乱射する。すると、着弾と同時に爆発を起こした。爆発でマントが砕けて結合崩壊を起こす。
アリサの攻撃でヴァジュラが怒り、活性化する。その鬱憤を晴らすようにアリサに狙いを定める。ヴァジュラが飛び掛かるが、アリサは恐怖から動きが鈍る。
コウタ「やらせるかよ!!」
跳んでいるヴァジュラに爆破弾が当たり、軌道が逸れる。着地に失敗して倒れ込む。
サクヤ「ユウキ!今よ!」
ユウキが一気にヴァジュラに近づいて、横凪ぎに神機を振る。が、ヴァジュラがその骨格と巨体からは想像も出来ないほど綺麗なバックフリップで回避する。
しかし、跳んでいるヴァジュラを腹から首にかけて下から斬る。うまく捉えて綺麗な切り傷をつけ、コアがむき出しになった。
空中で怯んだため、着地に失敗して倒れる。しかし、コアの摘出はまだできていない。ヴァジュラが立ち上がり、ユウキ達に背を向け始める。
止めのチャンスとして、ユウキが接近して神機を振るが、それを回避してヴァジュラは逃走に成功する。
コウタ「逃げるよ!追いかけなきゃ!」
サクヤ「散開して捜索するわ!皆…気を付けて!」
ユウキ「了解!」
コウタ「了解!」
ユウキとコウタが勢い良く返事をすると、ユウキとサクヤが北側から回り込み、コウタが南側から回り込む。
アリサ(私も…行かなきゃ…!)
そう思ったと同時にコウタと同じ方に走っていった。
サクヤ「ユウキ!私は先に教会を探すわ。貴方は裏から回り込んで!」
ユウキ「はい!」
そう言うとサクヤは真っ直ぐに教会の中へ入り、ユウキは教会の外側を回り込むように移動する。
コウタ「俺は先に奥を調べるから、アリサは広場から探して!」
アリサ「はい。」
南側から回り込んだコウタとアリサも二手に別れて捜索する。アリサが教会の側面に沿って北側へ移動する。
一旦先が行き止まりになっている教会の入り口に入って、姿を隠しながら辺りを見渡す。
アリサ(居た!)
広場の北端に、壁になるように建てられたビルの大穴からヴァジュラが見えた。
だが、傷のせいなのかあまり派手に動くことは出来ないらしい。ビルの中でぐったりと座り込んでいる。
もう一度辺りを見渡し、仲間が居るか確認する。
アリサ(まだ…誰も居ない…)
しかし、現在広場には誰も居ない。援護は期待出来ないだろう
アリサ「パパ…ママ…」
両親の顔を思い浮かべて、戦う覚悟を決める。
アリサ(お願い…私に…戦う勇気を…)
『ここで逃げたらきっと一生逃げ続ける。』そう思うと逃げるわけにはいかなかった。なんとか自分を奮い立たせ、物陰から飛び出してヴァジュラに銃口を向ける。
ヴァジュラもアリサが視界に入ったのかゆっくりと立ち上がる。そして、構えると同時にアリサと目が合う。
アリサ(!!)
この瞬間、両親の死を連想した。錯乱こそしなかったが、恐怖で動けなくなってしまった。
すると、教会の影から誰かが現れた。
ユウキ「アリサ!」
アリサ(ユウキ!)
現れたのはユウキだった。ヴァジュラにまだ気が付いていないのか『そっちには居なかったのか?』と聞きながらアリサに向かって軽く走ってくる。
すると、ヴァジュラがユウキに気付いて飛びかかろうと構える。
アリサ(!!まずい!)
だが、ヴァジュラを撃とうにもユウキが射線にいる。このまま撃てばユウキにも当たる。どうすればいいかを考える間もなくヴァジュラが動く。
『ガアァァァ!!』
咆哮と共にヴァジュラが飛びかかる。
ユウキ「っ!!」
さすがにユウキも気が付くが、気が緩んでいたのか反応が遅れる。振り向いて避けるよりも先にヴァジュラの攻撃で死ぬ。
『仲間が死ぬ。』一瞬のうちにそこまで理解すると、もう無意識に体は動いていた。
アリサ「避けてぇぇぇ!」
ユウキ「!!」
アリサが叫びながらガトリングを連射する。射線上のユウキは視界の端に弾丸を確認する。それを咄嗟に横に跳んで回避して受け身をとる。
弾丸はヴァジュラに着弾すると爆発して、コアを破壊した。
アリサ「はっ!はっ!はぁ…」
ヴァジュラを倒して安心したのか、アリサはその場に座り込んで放心していた。
その後すぐに、爆発を聞き付けてサクヤとコウタが現れた。サクヤは現場の状況を見て察したのか、アリサに歩み寄る。
サクヤ「アリサ…良くやったわ…」
アリサ「こ、ごわがっだ…また…人を撃ってじまうんじゃないがっで…だいせづな仲間を…私のせいで失うって…」
アリサは涙声になり、目尻に涙を溜めながらサクヤを見る。そんなアリサの様子を見て、サクヤはアリサを抱きしめて宥める。
サクヤ「大丈夫…貴女は誰も撃ってないわ…貴女がユウキを守ったのよ。」
アリサ「う…うぁ…ああぁぁぁ…」
緊張の糸が切れたのか、恐怖から解放されたからか、ついにアリサは本格的に泣き出してしまった。
そんな中、ユウキは泣いているアリサを放心しながら眺めているとコウタが小声で話しかけてきた。
コウタ「危機一髪だったね。」
ユウキ「うん。アリサのお陰で助かったよ。」
まだアリサは泣いている。暫くは泣き止む様子はなさそうだ。
ユウキ「さて、邪魔な野郎2人は退散して影で見守るとしようか。」
コウタ「そーだね!」
そう言うとユウキとコウタは待機ポイント直前の教会の角に隠れて、アリサとサクヤが戻って来るのを待つことにした。
To be continued
ようやくアリサが正式に実戦へ復帰となります。もっとアリサを活躍させた方が良かったですかね…
正直錯乱するほどのトラウマを克服するのってやっぱり簡単な事じゃないんでしょうけどそんな経験無いので上手く書けないorz
そして、定番の汚名返上ネタを無理矢理詰め込んだ結果、シリアスな雰囲気がぶち壊しになったような気がします…
ちょっと気になったのですが、台本形式よりも小説形式の方が読みやすかったりするのでしょうか?
アドバイス等頂けると助かります。