-極東支部 エントランス-
そこにはミッションの発注、神機の整備、強化等のための各種手続き、それぞれの目的のため、多くの神機使いが集まる。
適合試験が終わり、扉の先はエントランスとなっており、案の定多くの神機使いで賑わっていた。
先ほど支部長から待っていろと言われたが、エントランスのどこで待っていればいいのか聞いていない。とりあえず黄色いニット帽を被った少年の隣が空いているのでそこに座る。
ニット帽の少年「ねぇ…ガム食べる?」
不意に声をかけられる。こちらの返事を待つ前にポケットを漁っている。
ニット帽の少年「あ、切れてた。今食べてるのが最後だったみたい。ごめんごめん。」
ユウキ「...」
会話が途切れる。少年は退屈なのか足をブラブラさせている。
ニット帽の少年「あんたも適合者なの?その落ち着いた感じから俺より少し年上っぽいけど…ま、一瞬とはいえ俺の方が先輩ってことで!よろしく!」
ユウキ「…」
無言のままであるがうなずく
ニット帽の少年「あ、自己紹介がまだだったね。俺は『藤木コウタ』って言うんだ。よろしく!」
ユウキが返事をする前に白いスーツに身を包んだ女性がヒールの音を響かせて近づいてくる。
白スーツの女性「立て。」
コウタ「え?」
白スーツの女性「立てと言っている!立たんか!」
有無を言わせない強い口調で命令する。あまりの迫力に思わず立ち上がる。
白スーツの女性「これから予定が詰まっている。簡潔に済ますぞ。」
どうやらこれからの予定を伝えに来たようだ。
白スーツの女性「私の名前は『雨宮ツバキ』。お前たちの教練担当者だ。この後の予定はメディカルチェックを済ませた後、基礎体力の強化、各種兵装等の扱いのカリキュラムをこなしてもらう。今までは守られる側だったかもしれんが、これからは守る側だ。つまらないことで死にたくなければ、私の命令にはすべて『YES』で答えろ。いいな?」
言っていることはもっともだが、まるで独裁者のような物言いに思わず怯んでしまった。
ツバキ「わかったら返事をしろ!」
コウタ「はい!」
ユウキ「...」
勢いよく返事をするコウタに対し、ユウキは相も変わらず無言だった。
ツバキ「早速メディカルチェックについてだ。まずは神裂、お前だ。」
ツバキがこちらに目を向け指示を伝える。その様子からは返事をしなかったことは特に気にしていないようだった。
ツバキ「ペイラー・サカキ博士の部屋に一五〇〇までに行くように。まだ時間があるうちに、この施設を見回っておけ。今日からお前たちが世話になる、フェンリル極東支部、通称『アナグラ』だ。メンバーに挨拶のひとつでもしておくように。」
そう言われるとユウキはアナグラ内を見回り始めた。
コウタ「あの...雨宮さん...」
ツバキ「ツバキでいい。アナグラ内に私の弟もいてな、ややこしくなるから名前でよんでくれ。で、何が聞きたい?」
コウタは先ほどからずっと気になっている娘とをツバキに質問する。
コウタ「あの、俺の同期なんですけど、何であんなしゃべらないんですか?」
ツバキ「そうだな、同期ということもある...お前にも話しておこう。恐らくだが、あいつ、神裂ユウキと言うのだが、過去に精神的ショックを受けて言語と表情を失ったのだろう。こんな時代だ、みんな傷の一つや二つ抱えて生きている。」
あそこまで自分の殻に閉じ籠るのは珍しいがな、と付け足す。
ツバキ「一応、言葉を理解できるし、文字も書ける。相槌でコミュニケーションはとれるようだ。同期のよしみだ、気にかけてやってくれ。」
先ほどとは変わって、柔和な雰囲気で話している。
コウタ「わかりました。」
ツバキ「頼むぞ。」
コウタがユウキの友達になろうと決心した瞬間だった。
-一方、エントランス-
コウタと別れたユウキはカウンターの女性に話しかけられた。
ヒバリ「はじめまして。新しい神機使いの方ですね?私はミッション発注の管理をする、竹田ヒバリと申します。」
丁寧な口調で話終えた後にお辞儀をしてきた。こちらもお辞儀で返す。
ヒバリ「えっと...新人研修を終えなければ出撃を許可できませんので、メディカルチェックを終えてから来てくださいね!」
そう言われるとユウキはアナグラを見回りに行った。
ヒバリ(本当に無口な方ですね...表情も全く変わっていませんでしたし...)
先ほどの会話を苦笑いしながら思い出していた。エントランス内をキョロキョロと見ていると銀髪の少女に話しかけられた。
銀髪の少女「あ、新型の人だね、はじめまして。君のことツバキさんから聞いてるよ。あたしは楠リッカ、よろしくね。神機整備に関しては最善を尽くすよ。君が現場で困らないようにね。」
すると何か思い出したように話を続けた。
リッカ「あ...サカキ博士のとこでメディカルチェックか...すぐそこの扉からラボラトリにいって奥の部屋だよ。まあ、今度暇なときにでメシでも食おうよ。じゃあね。」
ユウキは会話が終わったと判断するとそのままエレベーターに乗り込んだ。
リッカ(う~ん...ツバキさんから聞いてたけど、ほんとに反応が無いなぁ...聞いてるのか聞いてないのかわかんないや)
頭を掻きながらエレベータの方を見ていたリッカだった。因みに、ヒバリとリッカの他にも退役した神機使い『百田ゲン』とフェンリル職員ではないが裕福そうな少女、『エリナ』と出会った。
ゲンからは神機使いは人々に疎まれることもあるが、そんな人たちも守っていると言っていた。エリナは父親と来たがはぐれたため好きに見て回っているとのことだった。
エレベータに乗ったはいいが、まだメディカルチェックまで時間がある。先ほど言われた通り、アナグラ内を見て回る。まずは新人区画で降りる。すると帽子を被り、黄緑のジャケットを羽織った少年がいた。
帽子の少年「ちっ、しけた報酬だぜ…配給品の質も落ちてるし最悪だ...」
報酬の内容が気に入らなかったのか、ブツブツと文句を言っている。こちらに気づいたのか帽子の少年『小川シュン』が話しかけてきた。
シュン「あ?何だお前?初めて見る顔だな...ああ、そう言えば新入りが来るとか言ってたな。神機使いは待遇がいいとはいえ、命かけて、こんなショボい報酬じゃわりに合わないぜ…ま、お前も死なない程度にがんばれよ。命あっての物種だからな。」
会話が終わり、辺りに人がいないと判断して、そのままエレベーターに乗り込んだ。
シュン「あ!おい!なんだぁ?あいつ!せっかくアドバイスしてやろうと思ったのに!しかもなにもしゃべらねーし、無表情だし、気色わりーな。新型だからチョーシ乗りやがって!」
シュンは怒りを露にして独り言をいっていた。まあ彼が怒るのも無理はないが。
次にベテラン区画、役員区画で降りたが誰もいなかったので、見て回るだけとなった。
まだ約束の時間には若干早いがラボラトリに行くことにした。ラボラトリで降りるとピンク色の髪をした女性『台場カノン』がいた。こちらに気づいて話しかけて来た。
カノン「あ...はじめまして...あ!もしかして新人の方ですか?!2人新しい方が来るって言ってたっけ...じゃあ、今からメディカルチェックですね!廊下のつきあたり、サカキ博士のラボですよ。博士ってちょっと変わってますけどとても優しいい方なんです。大丈夫ですよ!」
なにやらテンション高めで話続けている。その後、カノンが簡単にラボラトリ内を案内し、最後に病室に案内された。
カノン「ここが病室です。病室もいくつかあるんですが、ここが一番小さいですが利用しやすい病室なんです。怪我したときはまずここに来るといいですよ。」
ここに来てカノンが突然申し訳なさそうな口調になる。
カノン「ごめんなさい。私このあと防衛任務があるので、案内できるのはここまでなんです。」
言い終わるともう一度ごめんなさいと言った。それに対してユウキは首を横に振る。カノンはそれじゃあと言い残しエレベーターに乗った。
この先利用する可能性が一番高い病室であるため、一度見ていこうと思い、扉を開ける。そこにはツナギの下にビキニ、さらに白衣を纏っている珍妙な格好をした女性がいた。
白衣の女性「おや?見ない顔だね。さては噂の新人君かな?はじめまして、ルミコだよ。よろしく。」
こちらも頭を下げて挨拶する。
ルミコ「ほんとに無口だね。まあその内に話せるようになったらお話しようよ。人と話をするのが好きなんだ。あ、だからって気負いする必要は無いから。自分のペースでゆっくりなれていけばいいよ。」
先のカノンと同じで、テンション高めで話続けている。
『bbbbb』
不意に端末からコール音がなった。
ルミコ「っと...ごめんよ、呼び出しがかかっちゃった。お話はしたいけど、あまりここを利用することが無いことを祈ってるよ。」
そう言い残してルミコは病室を出ていった。
そろそろメディカルチェックの時間になるため、サカキ博士のラボに向かった。ラボにはいるとヨハネスとペイラーがすでに室内にいた。ペイラーは端末を操作しており、ヨハネスはそれを見ている。
ペイラー「ふむ...予想より726秒も早い。よく来たね。『新型』君。私は『ペイラー・サカキ』アラガミ技術開発の統括責任者だ。以後、君とはよく顔を合わせることになると思うけど、よろしく頼むよ。」
そう言いながらもキーボードを操作する手は止まらない。
ペイラー「さて、と...見ての通り、まだ準備中なんだ。ヨハン、先に君の用件を済ませたらどうだい?」
話を振られるもヨハネスは呆れたような様子でペイラーに叱責する。
ヨハネス「サカキ博士...そろそろ公私のけじめを覚えていただきたい。」
先程の呆れた様子もなく、凛々しい表情で此方に顔を向ける。ON・OFFの切り替えが得意な人なのだろうか。
ヨハネス「適合テストではご苦労だった。私は『ヨハネス・フォン・シックザール』。この地域のフェンリル支部を統括している。改めて適合おめでとう。君には期待しているよ。」
ペイラー「彼も元技術屋なんだよ。ヨハンも『新型』のメディカルチェックに興味あるんだよね?」
ヨハネス「あなたがいるから、技術屋を廃業することにしたんだ...自覚したまえ。」
ペイラー「ホントに廃業しちゃったのかい?」
ヨハネス「...さて、ここからが本題だ。我々フェンリルの目標を改めて説明しよう。君の直接の任務は、ここ極東一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが、それらは全てここ前線基地の維持と、来るべき『エイジス計画』を成就するための資源となる。」
ペイラー「この数値はっ!!!」
突然ペイラーが声をあげたため、ペイラーに視線を移してしまった。
ヨハネス「エイジス計画とは...簡単に言うと、この極東支部沖合い、旧日本海溝付近に、アラガミの脅威から完全に守られた『楽園』を作るという計画だ...」
ペイラー「ほほぅ」
ヨハネス「この計画が完遂されれば、少なくとも人類は、当面の間絶滅の危機を遠ざけることができるはず...」
ペイラー「すごい!これが新型か!」
ヨハネス「ペイラー...説明の邪魔だ...」
声色に怒気が込められている。三度も説明の邪魔をされたからだろう、視線からも怒りを感じた。
ペイラー「ああゴメンゴメン。予想以上の数値を叩き出したからね。ついはしゃいでしまったよ。」
怒気を孕んでいたヨハネスに対して、軽い謝罪で済ませたペイラーだった。
ヨハネス「ともあれ、人類の未来のためだ。尽力してくれ。じゃあ、私は失礼するよ。ペイラー、あとはよろしく。終わったらデータを送っておいてくれ。」
そう言ってと部屋からヨハネスは出ていった。ペイラーは片手を挙げて返事をする。支部長という立場の相手にここまでフランクに接することからもやはり親しい仲のようだ。
ペイラー「よし準備完了だ。そこのベッドに横になって。少しすると眠くなると思うが、心配しなくていいよ。次に目が覚めるときは自分の部屋だ。戦士のつかの間の休息という奴だね。予定では10800秒だ。ゆっくりおやすみ。」
そして次第に眠気が襲ってきてそのまま眠ってしまった。
---夜---
ヨハネス「彼らのデータを見せてもらったよ、ペイラー。2人とも期待できそうだ。」
ペイラー「そうだね。コウタ君はあのツバキ君の神機を引き継いでいる。さらに適合率も76%と申し分ない。経験を積めばきっと凄腕のゴッドイーターになるね。」
ヨハネス「そうだな。神裂君も大いに期待できる数値だ。」
ペイラー「神裂君は適合率が異常なほど高いね。ソーマの92%に次いで90%だ。今まで適合率では2番手だったカノン君の88%を越えている。さらにリンドウ君の82%を大きく越えている。これは大きな戦力になるだろうね。」
ヨハネス「なんにしても有効に運用したいものだな。それでは失礼するよ。」
そう言ってヨハネスは通信を切った。
To be continued
今回は、メディカルチェック前後のお話でした。ツバキさんは何だかんだ言ってリンドウさんと似ているイメージだったのでこんな感じになりました。適合率とルミコ先生の性格等に関しては完全に自分の独自解釈です。以下ルミコ先生の設定です。
ルミコ
漫画版GODEATER-スパイラルフェイト-に登場した医療班に所属する女性。話好きな性格もあり、気さくで明るく話しやすい人物。ツナギの下にビキニという珍妙な格好をしている。