GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ようやくプリティヴィ・マータ戦です。さらに新たな敵も現れ無印編も終盤に向けて動き出しそうです。


mission37 氷の女王

 -嘆きの平原-

 

(あれ…?)

 

 何故自分が平原で仰向けになって倒れているのか、疑問に思ったままユウキは目を覚ました。

 

(…寝てた?いや…気絶してたのか…)

 

 暫くその場でボーッとしていたら、ウロヴォロスの討伐任務を終えた後、力尽きて倒れた事を思い出した。

 端末を確認すると、どうやらあれから1分も経っていないようだ。数秒、あるいは数十秒と短い時間の間だけ気絶していたようだ。

 その後、ゆっくりと立ち上がる。しかし、自らの体の異変を感じていた。

 

(何か…フラフラするし…寒い…)

 

 フラフラとした足取りで待機ポイントに向かっていく。

 

(取り合えず…帰るか…)

 

 どうにかバギーに乗り込み、ユウキは極東支部に向かった。

 

 -極東支部-

 

 途中、ユウキは何度か気を失いそうになりながらも、極東支部に帰還した。そのまま神機保管庫に向かうと、作業中と思われるリッカが居た。

 

「…ただいま戻りました。」

 

「あ!おかぇえ?!どうしたの?!顔真っ青だよ?!」

 

 端末の画面を真っ暗にしたまま自分の顔を確認すると、確かにユウキの顔には血の気がなく、ひどく青い顔になっていた。リッカに言われて漸く気がついた。

 

「…え?いや、ちょっと冷えただけだよ?」

 

 ウロヴォロス討伐の特務で怪我をしたと言えるはずもなく、顔色が悪い理由を任務地が大雨だった事にした。

 

「早く医務室行かなきゃ!!」

 

「いや…でも…」

 

「つべこべ言わない!うわ!?冷た!!やっぱり何か不味いって!!」

 

 そう言ってリッカいつまでも口答えするユウキをの手を取る。その際、ユウキの手から生気を感じない程に冷たくなっていたので驚きつつも、無理矢理にでも医務室に連れていく。

 

「あ…!ちょっと…!」

 

 口では抵抗しているようだが、もうユウキには抵抗する体力は残されていなかった。ゴッドイーターと比べて非力な筈のリッカの手を振りほどく事も出来ず、そのまま手を繋いでエントランスを通り、医務室に向かって行った。

 

「あれ?ユウにリッカさんだ。あ"!!良いなぁ!手ぇ繋いでる!」

 

「っ!!」

 

 当然エントランスに居た者には見られていた。その中にはコウタとアリサも居た。コウタは異性と手を繋いでると羨ましがり、アリサはユウキをリッカを睨んでいた。

 

 -医務室-

 

 ユウキはリッカに連れられて医務室に行くと、ルミコによって様々な検査を受けさせられた。

 一通りの検査が終わると、ルミコは怒っている様な、呆れた様な表情でユウキに話しかけた。

 

「ひとつ質問…何してきたの?」

 

「え?ふ、普通にヴァジュラの討伐任務ですけど?」

 

 やはり特務の事を話す訳にはいかない。記録上での任務の事を話して、誤魔化す事にした。

 すると、大きなため息をつきながら今度こそ呆れた様子で話を続けた。

 

「…結論から言うと、ハッキリ言って君の体で有り得ないことが起きてるんだよ。」

 

「あ、あの…ルミコ先生?一体何があったんですか?」

 

 リッカが恐る恐るユウキの体に起こっている事を訪ねる。すると、ルミコは何枚ものレントゲン写真を取り出して2人に見せた。

 気のせいか腹の辺りに白く写し出された部分が異様な形で写っていた。

 

「…胃を始めとした消化器官、膵臓、肝臓、腹部辺りの臓器ほぼ全て…内臓破裂した形跡があるんだよ。」

 

「なぁ!?そんなの死んじゃうじゃないですか?!」

 

 消化器官を含めた腹部周辺の臓器全損。普通に考えればまず出血多量のショックで死ぬだろう。

 驚きの声を挙げるリッカと言葉を失う程に驚くユウキを尻目に、ルミコは淡々と話を続ける。

 

「うん。普通は死ぬ。でも神裂君は生きてる。多分、強い衝撃でこんな事態になったんだと思う…その経緯を教えてもらえる?」

 

 強い衝撃と言えば、ウロヴォロスの体当たりが真っ先に思い当たるが、特務の内容は話せない。記録上ヴァジュラと戦闘したことになっているので、それを利用して誤魔化す事にした。

 

「ゆ、油断してヴァジュラのタックルを真正面から受けました…それで、回復薬って新薬を使って傷を治しました。」

 

「…それでもこれは有り得ないよ?言ったでしょ?『内臓破裂した形跡がある』って。もうほとんど治ってるんだよ。」

 

「そ、そんなこと有り得るんですか?」

 

 漸くユウキが声を出した思ったら、情けない声で自分の症状につい聞き返した。

 

「さっき有り得ないって言ったよね?まあ、何にしても今日は入院だよ。輸血と点滴で事足りるとは思うけど…今日は絶対安静ね。」

 

 そう言うと、ルミコはリッカと協力してユウキをベッドに押し込んで、点滴と輸血用のチューブをユウキの腕に刺した。

 

 -エントランス-

 

 エントランスには様々な目的で人ざ集まる。任務の発注をする者、談笑する者、任務の後処理をする者も居る。そんな中、コウタは偵察任務の後の報告書を初めて書くので、書き方をアリサから教わっていた。

 だが、ユウキとリッカが手を繋いでる所を見てからと言うもの、アリサの機嫌は最悪なまでに悪かった。

 

「な、なあ…」

 

「…何ですか?」

 

 コウタの呼び掛けに対して、アリサは威嚇するような目で答える。

 

「いや、そんなに気になるなら様子見に行ったら?ユウも顔色が悪く見えて何か様子がおかしかったし。」

 

 コウタの言う通り、ユウキとリッカを見て以降、エレベーターの扉をチラチラと見て気にしていた。

 正直コウタとしてはさっきの事を気にして、変なところで八つ当たりされても堪らないので、もう様子を見に行けと提案したのだ。

 

「…そ、そうですね!全くもう!ここ最近でユウは強くなって頼れるリーダーになってきましたけど、何処か抜けてる所がありますからね!私がしっかり見ておかないと!」

 

 口では仕方がないと言っているが、アリサは何処か嬉々とした雰囲気を出していた。コウタの報告書をさっさと書き終わらせて、コウタを巻き込んでユウキを探しに行った。

 

 -医務室-

 

 あちこちとユウキを探し回ったが、顔色が悪いと言うならば、医務室しか行き先は無いだろうと、探している途中でアリサが気がつき、2人は医務室に向かった。

 

「わあ?!」

 

「きゃあ?!」

 

 アリサが医務室の扉を開けようとしたら、扉が勝手に開いて、中に居たリッカとアリサは驚いた。

 

「アリサか…ビックリした。」

 

「す、すいません。あ!ユウはこっちに居ますか?」

 

 驚いて本来の目的を忘れかけていたが、アリサは医務室にユウキが居るはずだと思ったので、リッカにユウキの居場所を聞いてみた。

 

「居るよ。じゃあ神裂君!お大事に!」

 

「うん。ありがとう。」

 

 そう言うとリッカは軽く手を振って医務室を出て行き、代わりにアリサとコウタが医務室に入ってきた。

 

「アリサにコウタ…どうしたの?」

 

 正直、ユウキはアリサやコウタに医務室に行くところを見られていたと思っていなかったので、何故医務室に来たのか分からなかった。

 だが、ベッドで横になっているユウキの顔色を見たとたんにコウタが騒ぎだした。

 

「うお?!大丈「どうしたんですか?!真っ青ですよ?!」」

 

 心配するコウタを押し退けて、アリサがユウキの元に駆け寄る。

 

「うん…任務で油断して…でも、リッカやルミコ先生も面倒見てくれたから、もう大丈夫。」

 

「そういや、少し前からリッカさんとよく一緒に居るよね。この間も何か呼び止められてたし。」

 

 押し退けられたコウタがユウキに話しかけ、アリサはいつでもユウキが水を飲める様に横にあったコップに水を注ぐ。

 しかし、コウタとユウキの話を聞いた途端にアリサの表情が険しくなる。

 

「ふーん…そうですか…美人二人を侍らせて両手に花だった訳ですか…それは良かったですね!!!!」

 

 『ガン!!』とコップを勢いよく叩きつけてユウキに渡す。何故突然怒ったのか男2人は理解が出来ずに慌てる。

 

「え?ちょっとアリサ!」

 

「こうして無事生きてる事は確認できたんですから問題ないでしょう?精々ルミコ先生に手厚く介護してもらえば良いじゃないですか!!」

 

 アリサは怒っている事を隠そうともせずにユウキに刺のある言葉をかける。結局そのままアリサは医務室を出ていって、部屋にはユウキとコウタだけになった。

 その後、医務室を出ていったアリサはエレベーターを待ちながら、あることを考えていた。

 

(何で…?ユウが他の娘と居る所を想像すると…イライラする…!)

 

 アリサ自身、その感情が何なのかぼんやりと理解しているが、そう思う根幹とも言える感情にはまだ気がついてはいなかった。

 

「怒らせたちゃったな…」

 

「何だ?アリサのやつ。」

 

 医務室に取り残されたユウキとコウタはアリサが何故怒ったのか理解できずに悩んでいた。

 

 -1時間後-

 

 コウタとユウキが談笑をしていると、医務室の扉を開けてツバキが入ってきた。

 

「神裂、居るか?」

 

「ツバキ…さん?」

 

「藤木。すまないが…」

 

 ツバキがコウタに話しかける。だが、いつものようにハッキリとした物言いではなく、歯切れが悪いものだった。

 

「あ、分かりました。ユウ!早く体治せよ!」

 

「うん。今日はありがとう。アリサにもお礼言っといて貰えるかな?」

 

「おう!任せとけ!」

 

 ツバキの様子から何かを察して、コウタは医務室を出ていった。すると、ツバキから手厳しい一言が飛んできた。

 

「手酷くやられたようだな。」

 

「…」

 

 ツバキの一言で自分が未だに弱いということを思い知らされ、思わず黙りを決め込んでしまった。

 

「落ち込んでいるところに悪いが、動揺しないようお前には事前に知らせておく事がある。」

 

「?…はい?」

 

 一体何の話かと思い、間抜けな声で返事をしてしまった。

 

「つい先程、前リーダーの腕輪反応を確認した。」

 

「!!!」

 

 思わず表情が強張る。少なくともリンドウの仇を討つ機会がもうすぐ来るのだ。

 

「近くに何体かの大型の反応が入り乱れていたため、確実とは言えないが、一応反応はロックした。お前が回復次第、正式な任務として第一部隊で討伐に向かってもらう。」

 

「分かりました。」

 

 かつてリンドウを倒した敵に自分達がどこまで通用するか分からないが、こうなったらやれるだけの事をやるしかない。そのために、早く回復して前線に復帰できるようにしなければならない。

 そう考えていると、不意にツバキが話を続ける。

 

「念のため言っておくが、リーダーとしてお前の役割は何だ?」

 

「部隊の統率。部隊員の作戦行動中の管理です。」

 

「そうだ。部隊員が感情的に行動しないように、お前がしっかりと手綱を握っておけ。」

 

 『感情的にならないように手綱を握る』言うだけなら簡単だが、今の第一部隊にはリンドウに限りなく近い者と、暗殺に荷担してしまった当事者がいる。

 この2人は敵わない敵だとしても深追いする可能性もある。しっかりと2人の感情を押さえられるようにしなければいけない。

 

「はい。」

 

「よし。万全の状態で任務に向かえる様に、今は休んでおけ。」

 

 そう言うと、ツバキは踵を返して病室を出ていった。

 

 -翌日-

 

 ユウキが回復して、顔色もすっかり元に戻ったところで、第一部隊に召集がかかった。現在、エントランスではユウキ、サクヤ、アリサ、コウタが任務の説明を受けている。

 ちなみにソーマは別任務で既に極東支部を出ている。しばらく待っているとツバキが厚めの資料を持って現れた。

 

「全員揃ったな。今回のターゲットは『プリティヴィ・マータ』通称、氷の女王…ヴァジュラ神属の第二種接触禁忌種だ。」

 

 そう言うと、ツバキは手元の資料をペラペラと捲りながらターゲットであるプリティヴィ・マータについて説明していく。

 

「何年も前にユーラシアで発見されたという報告を受けてから、暫くは目撃報告が無かったが、ここ最近で急激に目撃情報が増えたようだ。」

 

 ツバキは淡々と説明を続ける。

 

「目撃情報と過去の記録から、氷を扱う攻撃をしてくるようだ。火属性による攻撃が有効だろう。」

 

 氷の女王と言う異名は伊達ではないらしい。自身もまた、氷を扱う攻撃をするのだから、必然的に氷属性には強いだろう。

 ならば、氷属性の敵には火属性が有効…昔から良く言われている事だ。

 

「これらの情報と現状の戦力を鑑みて、倒せない敵ではないと判断した。そして最後に…」

 

 資料から目を離して、第一部隊をいつも以上に鋭い眼光で見る。

 

「今回のターゲットから、リンドウの腕輪と思われる反応をキャッチした。」

 

「「「!!!!」」」

 

 ユウキを除く、出撃メンバーが全員驚いた。いきなりリンドウを倒した敵を相手にする事になったのだから、動揺もするだろう。

 

「仇などと言う雑念を持ち込むな。あくまでいつも通り、冷静に対処しろ。」

 

「「はい!」」

 

 動揺する第一部隊に釘を刺す様に、雑念を捨てろとツバキが言う。それを了解し、返事をするユウキとコウタだったが、サクヤとアリサはそうではなかった。

 

「リンドウ…やっと…やっと…!」

 

「…サクヤさん!」

 

 思わずサクヤは小声で心の内を漏らす。それに釣られてアリサも小声でサクヤに話しかける。

 しかし、聴覚で策敵出来る程に鋭くなったユウキの耳にはしっかり届いていた。

 

「サクヤさん、アリサ…分かっていると思いますけど、あくまで感情的な行動はしないようにお願いします。」

 

「!!…わかってます!!」

 

(アリサ…?)

 

 アリサはイラついた様にユウキに対して言い返す。サクヤも何故突然怒ったのか理解できずに、どうしたら良いか分からないでいた。

 そうしているうちに、出撃の時間になり、第一部隊は旧寺院に向かった。

 

 -鎮魂の廃寺-

 

 ユウキは神機の刀身パーツを火刀に変更して、サクヤ、アリサ、コウタと共にヘリで鎮魂の廃寺に来た。現在、待機ポイントでターゲットの動きを確認するため、ヒバリからのオペレートを待っている。

 

「ヒバリさん、状況は?」

 

『現在、ターゲットのプリティヴィ・マータは本殿付近に居るようです。』

 

 どうやら作戦領域内にはいるようだ。ターゲットの位置と自軍の戦力を分析して、作戦を考える。

 

「…了解。サクヤさん俺と一緒に西側へ回ります。アリサとコウタは東側から本殿へ。」

 

「「「了解。」」」

 

 ユウキの指示にサクヤ、アリサ、コウタは素直に従う。それぞれのペアに別れて作戦を開始する。

 

(…っ!!)

 

 待機ポイントから飛び降りるユウキとサクヤを見てアリサは2人を後ろから睨む。 しかし、ユウキとサクヤはその視線に気が付かないまま西側のルートを回って本殿に向かう。

 その後しばらくしてアリサとコウタのペアも東側を回って本殿に向かった。

 

「…いた。」

 

 最上階に通じる階段の影から本殿の方を見ると、何かを探すようにプリティヴィ・マータがキョロキョロと視線を移している。

 

「どうするの?」

 

「アリサとコウタが来てから突撃して、左右から同時に挟み撃ちにします。」

 

 サクヤは今後の動きを確認する。ユウキが作戦を考えていると、いつの間にかアリサとコウタが反対側の階段から現れた。どうやら2人もユウキからの指示待ちのようだ。今ならターゲットのプリティヴィ・マータも完全に油断している。

 

「よし…行くぞ!!」

 

 ユウキの合図で全員が飛び出す。一斉に多方向から敵が飛び出した事で、『誰を優先して倒すべきか』と言うことを考えてしまい、プリティヴィ・マータの反応が遅れる。

 

「先手はもらった!!」

 

 その隙にコウタがスタングレネードを投げつけて、動きを止める。

 

  『ガアァァァア!!』

 

 しかし、折角のスタングレネードもプリティヴィ・マータには大した効果は無いようだ。怯みこそはしたが、即座にコウタに目線を向けて迎撃の体勢を取る。

 

「えぇ?!マジかよ!!」

 

 スタングレネードが効かない事に驚き、コウタは動きが鈍る。だが、アリサは気にする事なくプリティヴィ・マータに突っ込む。

 

「やっと見つけた…こいつだけは!!」

 

「アリサ!落ち着け!あくまでも冷静に!状況を分析しろ!」

 

「分かってます!!」

 

 イラついた様子でユウキに答える。その間もプリティヴィ・マータはコウタの方に走る。つまり、一緒に来たアリサの方にも走ってきている。

 すると、アリサはポケットからホールドトラップを取り出して自分の足元に設置した。そして、コウタと共に後ろに後退する。

 後は2人を追って来たプリティヴィ・マータがホールドトラップに掛かり、動きが止まる。

 

「今がチャンスよ!ユウ!」

 

「今だ!!総攻撃!!」

 

 サクヤの後押しもあり、ユウキは総攻撃を指示する。

 

「チャンスターイム!」

 

「貫け!!」

 

 全員が命令を承諾し、サクヤは狙撃弾で攻撃が通る所を探し、コウタは爆破弾による高火力な破砕攻撃、ユウキとアリサはチャージ捕食『壱式』を展開する。

 

「食い潰せ!!」

 

「頂きました!」

 

 ユウキとアリサがバーストする。そしてお互いに銃形態に変形して、リンクバーストするはずだった。

 しかし、バーストした時点でプリティヴィ・マータがホールドから逃れて、自由になってしまった。

 

  『ガアァァァア!!』

 

 自由になった途端、プリティヴィ・マータは吠えながら姿勢を落として構えの体勢を取った。

 

「アリサ!離れろ!」

 

 アリサも何かを察したのか、ユウキとほぼ同時に後ろに跳ぶ。その瞬間、プリティヴィ・マータの周囲に青白い粉が舞い上がった。恐らく、自身から発した冷風で空気中の水分を凍らせたのだろう。生身であれを受けたら氷付けにされただろう。

 結局、回避に専念したため、銃形態にも出来ずリンクバーストも出来なかった。

 冷気での攻撃が終わると、プリティヴィ・マータはユウキに向かって飛びかかる。それを後ろに下がって回避しつつ、顔面に斬撃を決める。その間に、いつの間にかプリティヴィ・マータの真横まで移動したサクヤが、敵の胴体を撃ち抜いた。

 すると、随分と呆気なく胴体が崩れて、結合崩壊した。

 

  『ガアアァァア!!』

 

「サクヤさん!!前に出すぎです!!下がって!!」

 

 プリティヴィ・マータが吠えると同時に活性化する。すると、冷気を纏いながら真横にいるサクヤに飛びかかる。

 

「くっ!!」

 

 近すぎたせいでかなりギリギリで突進を避ける。その後は向きを変えてユウキに向かって飛んできた。

 それをバックステップで一旦後ろに下がり、その後プリティヴィ・マータの上を弧を描く様に飛び上がりつつ、銃形態に変形する。

 

「当たれ!」

 

 最上点で銃口を下に向けて結合崩壊を起こした胴体に狙撃弾を撃ち込む。ダメージは入っているようだが、特に怯んだりはせず、そのまま後ろに飛んだユウキに狙いを定める。

 そして、ヴァジュラと同じ様に前面へ鋭く尖った氷堺を展開する。

 

「ヴァジュラと同じなら怖くないね!!」

 

 コウタの声に合わせて、アリサも前面に出て爆破弾を撃ち込む。ヴァジュラが雷球を展開するように、プリティヴィ・マータも動きを止めながら氷堺を展開している。

 発射後に余程奇妙な軌道にでもならなければ、いつもと同じ感覚で避けられるとコウタは考えていた。実際、出撃したメンバーも同じ考えを持っていたため、この間は絶好のチャンスとして、一気に攻撃を仕掛けていた。

 

「ここで決める!手を緩めるな!」

 

 そう言ってユウキは真正面から剣形態に変形して突っ込み、アリサとコウタはユウキと軸をずらした正面の位置から砲撃、サクヤは後方から胴体を撃ち抜き続けた。

 

「!!」

 

 しかし、総攻撃で敵が怯む事もなく、氷堺が飛んできた。ユウキは咄嗟にジャンプで躱し、それを合図にアリサとコウタもジャンプで回避する。

 

「いい加減…沈んで!!」

 

 回避後、空中で放ったアリサの爆破弾がプリティヴィ・マータの顔面を捉える。すると、大きな爆発を起こしてプリティヴィ・マータの顔が結合崩壊を起こし、大きく仰け反った。

 

「くたばれ!!」

 

 咄嗟に上から降り下ろすつもりで構え始めていた神機を、急遽逆手に持ち変えて、神機を振り上げる。

 プリティヴィ・マータの顎を捉えて、吹き飛ばしながら結合崩壊した顔に大きな裂傷を作った。

 しかし、プリティヴィ・マータは空中で体勢を立て直し、尻尾から氷堺を連続で飛ばす。

 

「ぐぅっ!!」

 

 未だ空中にいるユウキに、この攻撃を防ぐのは至難の技だ。取り敢えず装甲を展開して最初の4発の氷堺を防御するが、空中では踏ん張りも効くはずもなく体勢を崩しながら防御に撤する。

 その途中、プリティヴィ・マータはサクヤの方に飛ぶように調整して着地した。そのせいでサクヤは回避に気を取られて、ユウキの援護が出来なかった。

 まともな着地が出来ずに、ユウキは腕だけで残りの氷堺を受ける。5、6発目の氷堺は受けられたが、7、8発目で受けきれずに腕を降り上げて、神機を離してしまう。

 

「させない!!」

 

 サクヤが不安定な体勢のまま狙撃弾を放ち、9発目を破壊する。しかし、最後の10発目は確実にユウキの体を貫く軌道に乗っている。このままではユウキが串刺しになる。

 

「おらぁ!!」

 

 気合いの入った声と共に左足を外から回して、氷堺に足の裏を叩きつけて無理矢理軌道を変える。

 その直後、プリティヴィ・マータがユウキ飛びかかる体勢を取る。対してユウキは右手で地面を殴って神機を回収するために飛び上がる。

 

「させるかよ!!」

 

 コウタがほんの少しでも隙ができるならと思いプリティヴィ・マータにスタングレネードを投げつけた。

 

  『バァアン!!』

 

 スタングレネードが爆発した瞬間、プリティヴィ・マータがぐったりと倒れた。

 

「なんか分かんねえけどダウンした!今だ!!ユウ!!」

 

 コウタの声を聞くと同時に空中に放り出してしまった神機を掴む。

 

「決めてください!ユウ!!」

 

 アリサが受け渡し弾3発をユウキに射つ。これでユウキはリンクバーストLv3になる。

 ユウキはリンクバーストLv3となったインパルス・エッジで一気にプリティヴィ・マータとの距離を詰める。

 

「ああぁあぁああ!!」

 

 咆哮と共にプリティヴィ・マータに斬りかかる。ダウンから回復することが出来ないプリティヴィ・マータは成す術もなく、真っ二つに切り裂かれた。

 そのまま、コアを回収するために捕食形態を展開して捕食する。そして、リンドウの遺品が無いか確認するため、跡形もなく喰い尽くした。

 

「無かったね…」

 

「うん。こいつじゃ無かったのか?」

 

 遺品が見つからないとコウタがぼやくと、思わずユウキも苦虫を潰した様な表情になる。

 サクヤとアリサは喜んで良いのか、落ち込めば良いのか分からず、複雑な表情をしていた。

 

「でも、あのときの新種はあと4体位は居る。そいつらを一体ずつ確実に潰せば…!!!!」

 

 突然、驚いた様にユウキが明後日の方向を見る。

 

「どうかしま…!!」

 

  『ガアアァァァ…』

 

 アリサがユウキに何があったのか聞いている最中に、獣が雄叫びの様な声が遠くから聞こえてきた。

 もう作戦領域内に何かが居るのは間違いない。全員が雄叫びが聞こえた方に走る。行き着いた先は廃寺の東側中腹、最上階に続く階段があるところだ。そこにある聳え立つ崖の上には、ヴァジュラの様な骨格に髭をたっぷり生やした黒く、邪悪な顔のアラガミがいた。

 

  『グルルル…』

 

 アラガミは低い声で唸り、ユウキ達を威嚇しているようだ。第一部隊も構えを解くことなくアラガミを見据える。

 

(あいつ…何処かで…?)

 

 そんな中、ユウキは警戒しつつも、黒いアラガミを何処かで見た様な気がして、記憶の中から探していた。

 

(そうだ…!確かアリサの記憶を見た時の黒い顔…!)

 

 以前アリサとの感応現象で隙間から見えた黒い顔と同じ顔だった事を思い出す。言わばアリサの人生を狂わせた張本人であり、全ての元凶とも言える相手だった。

 すると、興味が失せたのかアラガミは向きを変えて、そのまま去っていた。

 

「逃げた…?いや、見逃してくれた…のか?」

 

「何にしても、あいつを倒さないとダメって事ね…待ってなさい…!」

 

 サクヤだけではなく、その場に居た全員が思った事だった。確証がある訳ではない。だが、あの黒いアラガミがリンドウを倒したのだと直感で理解した。

 新たな敵の存在を目の当たりにし、一度緩んだ気を再び引き締めながら、第一部隊は帰投した。

 

To be continued




後書き
 ついにプリティヴィ・マータの討伐しました。原作でこの辺りのムービーを見ている時には、サクヤとアリサが焦って何かやらかすのではないかと思ってヒヤヒヤしてました。
 今回の戦闘ではアリサやサクヤ、コウタを動かして見たつもりですが、上手く動いていたでしょうか?
 髭ヴァジュラも登場していよいよ無印編も最後に向けて動き出しました。ユウ君が死に目を見る日も近そうです。
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