-エントランス-
E26が襲撃を受けた翌日、ツバキからの召集を受けてコウタ以外の第一部隊はエントランスに集合していた。
そんな中、コウタがいつまで経っても来ない事に、アリサは若干イラついていた。
「もうすぐ集合時間なのに…コウタはどこ行ったんでしょうか?」
「あっ!コウタはしばらく実家に戻る事になったよ。」
『ごめん…連絡し忘れた。』と謝罪を最後に付け足して、ユウキはコウタがここに居ない理由を説明する。
しかし、理由の説明をしてもアリサは何処か釈然としない様子で、信じられないと言いたげな表情をしていた。
「あの黒いアラガミと戦うかも知れないこの時にですか?」
「俺が無理矢理実家に帰したんだよ。昨日の襲撃…コウタの実家の辺りで起こったらしくて…家族が気がかりで集中出来ないくらいなら、家族の顔を見て安心してから戻って来るように言っといたんだ。」
「まあ、そう言う事なら…」
コウタの家族が危険な目に遭い、生存確認が通信区画での連絡のみでは心配になるのも無理はない。もしかしたら酷い怪我をしていても、それを隠して連絡を取った可能性もある。
その事が気がかりで戦いに集中出来ないとなると、ハッキリ言って部隊の足を引っ張る事になるだろう。
ならば、家族が無事である事を実際に見て安心してから任務に加わる方が本人を含めた部隊員の生存率アップに繋がると考え、ユウキはコウタを強引に実家に帰したのだ。
アリサもその事を今の説明で理解したので納得してくれた。
「全員揃ったな。」
雑談をしていると、エレベーターからツバキが降りてきた。気のせいかボードに挟んである紙が異様に薄い。と言うより1枚しかない。
しかし、ツバキはユウキがそんな事を気にしているとも知らずに、今回の任務について話していく。
「これより第一部隊には、居住区に進行する黒いヴァジュラ神属禁忌種、『ディアウス・ピター』の討伐に当たってもらう。」
ツバキは手元の資料を読まずにターゲットの説明をする。『黒いアラガミ』『ヴァジュラ神属』この2つの言葉を聞いた瞬間、第一部隊に緊張が走る。
「それから、このアラガミからリンドウの腕輪反応があった。」
「「「「…!」」」」
この情報で全員が確信した。今回の敵はあの黒いアラガミなのだと。リンドウを倒したと言うだけあって、絶対に気を抜くことは出来ない相手になるだろう。
「今回の任務は、このアラガミから居住区を守ると同時に、リンドウの腕輪と神機の回収する事だ。」
任務内容の説明を終えると、ツバキは目を細めて威圧的な雰囲気を放つ。
「以前のプリティヴィ・マータ討伐戦と同様、任務中は私情を捨てろ。戦うことに集中するように。いいな?」
「「「はい…!」」」
ソーマは雰囲気で、ソーマ以外が了承の返事をしたのを聞いてツバキは取り敢えず威圧的な空気を納めた。
「よろしい。さて今回の敵なのだが…残念ながらこのアラガミも、過去に1度目撃されてからと言うもの、一切の遭遇例が無い。対策と言える様なものは…恐らく無い。」
ここでようやくボードを見る。しかし、一瞬目を通したと思ったら再びボードを下ろし、それ以降ボードを見ることはなかった。
「だが、ヴァジュラ神属は共通して火属性と神属性に弱い。この法則が当てはまるなら、この2つの属性での攻撃が有効だろう。それから…」
ヴァジュラ基本種と禁忌種のプリティヴィ・マータはともに火属性と神属性が弱点であると言う事は既に分かっている。ここからヴァジュラ神属の共通する特性であると仮定する事もできると言うのだ。
今回の出撃メンバーの中で神属性の近接武器を持っている者は居ない。ならば、自分は火属性を装備していくべきだろうとユウキは考えた。
「このアラガミは第二種接触禁忌種とされていたが、リンドウでさえ討ち取れなかったと思われる状況から、先日第一種接触禁忌種に認定された。だが、どんな敵にも必ず隙はある。冷静に戦局を見極めろ。くれぐれも慎重に任務に当たれ!」
「「「了解!」」」
禁忌種にも2種類存在する。以前戦ったプリティヴィ・マータの様な第二種接触禁忌種は、基本種や堕天種のアラガミとは比べ物にならない戦闘能力を持っている。その特徴からベテランの神機使いでなければ『戦闘を行う事』自体がタブーとされている。
対して、第一種接触禁忌種は、第二種接触禁忌種をも遥かに凌駕する力を持っている。そのため新米、ベテランに関係無く『出会う事』さえタブーとされている。
それ故に、第一種接触禁忌種に認定されたと言うのは、それだけ危険な相手であると言うことだ。さすがツバキも心配している。
「それから、今回の任務は腕輪にバイタル解析装置を着けてもらう。それと神裂…技術班から新開発したバレットを預かっている。持っていけ。」
「これは?」
そう言ってツバキはユウキにバレットをひとつ手渡した。
「サクヤとアリサには既に渡してあるが、榊博士と医療班が開発した回復錠の効果をバレットで使えるようにしたもの…『回復弾』だ。」
『もっともお前は使われる側かも知れないがな。』とツバキは最後に付け足した。確かにユウキは基本的には前衛を担当している。そのため、銃形態に変形して戦う事は、あまりない。必然的に銃形態の使用時間も短くなっているので使う機会も少なくなる。
しかし、そんな最新の技術を駆使して作った回復弾を持ってしても、今回の相手は死ぬ確率の方が遥かに高い。
今までとは比べ物にならない程の過酷な死地に部下を送り出さなければいけないと言う複雑な心境の中、思わず心の内を漏らす。
「死ぬなよ…必ず『全員』生きて帰ってこい…」
ツバキが全員の目を見る。全員の目から『死ぬ気はない』と言う迷いの無い意思を感じて、取り敢えず安心する。
「よし、各自準備に入れ!」
その言葉を最後にツバキは自らの持ち場に戻って行った。
-贖罪の街-
現在、第一部隊はヘリに乗り、旧市街地付近を飛んでいた。すると、ヒバリから通信が入った。
『目標のディアウス・ピターは、現在西の広場にいるようです。油断しているのか、その場から動いていないようです。』
そうしている間に旧市街地の上空に着いた。西の広場の中心には黒い影が見える。間違いなくディアウス・ピターだ。
ディアウス・ピターはヘリに気が付いて目線を移すが、特に動きがある訳でもなく、ただじっとこちらを見ている。まるで『好きなタイミングで来い。それまで待ってやる。』と言っている様だった。
「こっちが来るまで来ない気なのか?何ともまあ紳士的な事で…」
その姿はまるで帝王の余裕を見せ付けている様にも思えた。それをしゃがみ込みながらユウキはヘリから下の状況を確認して感想を漏らす。その後ろにはサクヤとアリサとソーマが立ったまま下の状況を見ている。
(こいつを倒せば…リンドウを少しは越えられる…か?」
「残念だけどそれは無いよソーマ。」
考えを読まれたと思いソーマは驚いたが、ユウキは『声に出てた。』とあっけからんと答えた。
「リンドウさんは独りで、俺たちは複数人…リンドウさんを越えるのはもうちょい先かな。」
「やる気を削ぐことを言うんじゃねぇ。だが…そうだな、アイツを越えるまでは死ぬ気はない。」
そう言うソーマの口角は少しつり上がっていた。それを見たユウキの口角も上がっていた。
しかし、少し視線をずらすと固い表情をしたサクヤが視界に入った。
「緊張してますか?」
突然話しかけられてサクヤは驚いた表情をしていた。
「…そうね…ちょっとだけ…」
「サクヤさん…」
思わずアリサも心配そうな声になる。
「リラックスしないと、いざと言う時からだが動きませんよ?」
それを聞いたとたん、サクヤは鳩が豆鉄砲を食らったような表情になり、次第に表情が崩れてきた。
「ふふっ!まさか私が初めてユウに送ったアドバイスを返されるなんてね…」
緊張が切れたのか、サクヤはいつもの雰囲気に戻り少しおどけた様子になったいた。
「うん…本当はちょっと怖いの。もしアイツから腕輪が見つかれば、リンドウが死んだって認めなきゃいけない…ダメねぇ、私…このままじゃ全然頼りにならないじゃない…」
「そ、そうですよ!もう、しっかりしてください!」
陰りのある表情に変わったサクヤをなんとかいつもの調子に戻そうと檄を飛ばす。
そんな様子を見ていたユウキが不意に口を開く。
「…戦って倒せば、どんなものあっても結果は分かる。俺たちはこいつと戦うしかないんだ。」
「そうね…とにかくアイツを倒しましょ。どんな結果になろうと、倒さなければならないのだから…」
そう言うサクヤはいつもの調子を取り戻していた。
「行きましょう…ユウ…!」
「そうだね…よし!俺が出す命令は4つだ。」
そう言ってユウキは命令を出す度に指を立てていく。
「死ぬな。死にしそうになったら逃げろ。そして隠れろ。運が良ければ不意を突いて…」
そこまで言うと、第一部隊はヘリから飛び降りる。
「ぶっ殺せぇぇぇえ!!!!」
ユウキが叫ぶと穿顎を展開し、ソーマは捕食口を真下に展開して2人はディアウス・ピターに向かって急降下する。そしてサクヤとアリサはディアウス・ピターを囲む様に銃弾を放ちながら降下する。
しかし、ディアウス・ピターはバックステップで銃弾が着弾する前に躱す。標的を失ったユウキとソーマは隕石の様な勢いを保ったまま、地面に落ちる。
『ガアァァァン!!!』
轟音と共に辺りに土煙が舞う。それでもディアウス・ピターは余裕を崩さずに、ユウキとソーマが落ちた所を睨んでいる。
一瞬の間を置いて、ユウキとソーマは土煙から飛び出した。ディアウス・ピターから見てユウキは左側、ソーマは右側から。既に神機を降り下ろす体勢を作っている。
「ぜあぁ!!」
「おらぁ!!」
2人同時に神機を降り下ろす。しかし、ディアウス・ピターは突然前方にダッシュする。そのせいで間合いが変わり、十分な威力が無いままマントに攻撃する事になった。
ディアウス・ピターの向かう先は、ユウキ達が攻撃している最中に着地したサクヤとアリサだ。
「食らいなさい!」
「当たって!」
自分達が標的になったと理解すると、サクヤとアリサは横に跳んで左右からそれぞれ前足を狙い撃つ。
しかし、それを上に飛び上がり難なく躱すと、ディアウス・ピターは空中で体を捻りって真逆…つまり第一部隊の方を向く。すると、予備動作無しで前方に雷球を飛ばしてきた。
「チィッ!!」
「クソ!」
ユウキ、ソーマ、サクヤ、アリサはそれぞれ四方八方にそれを避けると、雷球の着弾地点が抉り取られた。これを食らえば感電どころか体に風穴が開くだろう。
『グルルル…』
そんな事を考えている間に着地したディアウス・ピターは低い唸り声をあげながら姿勢を落とし、ついに戦闘体勢を取る。
『恐らく今のはほんの挨拶代わりです。皆さん…ご武運を!』
ヒバリからも通信で激励が送られる。仕切り直しとなり、全員が神機を握り直す。
「俺とソーマで前衛!サクヤさんは後衛へ!アリサは遊撃!」
「「「了解!!」」」
その瞬間、ユウキとソーマが前に飛び出し、サクヤが後ろに跳ぶ。
「アリサ!来い!」
「はい!」
ユウキの怒鳴り声にも似た指示を聞くと、アリサは剣形態に変形してユウキに続く。それを迎え撃つと言わんばかりに、ディアウス・ピターはバチバチと帯電しながらユウキ達に飛びかかる。
「行くわよ!!」
飛び上がったディアウス・ピターの額をサクヤが狙い撃つ。しかし直撃の瞬間、ディアウス・ピターは放電し、サクヤの放った狙撃弾を電撃で焼き払って防いだ。
だが、防がれたにも関わらず、サクヤはそれを見届けると、まるで『狙い通り』だと言わんばかりに不敵に笑った。
そう、本来前衛組に飛びかかって電撃で焼き尽くす筈だったのだが、その電撃を攻撃ではなく自身の防御に使ったのだ。それを再び放電するには一瞬のラグがある。こうなってしまえばただの飛びかかり攻撃でしかない。
前衛の3人であれば、そんな攻撃に当たることはなく、この隙に反撃することができる。
そして案の定、ただの飛びかかかりになった攻撃を3人は後ろに下がって難なく躱し、前衛3人は捕食の体勢を取った。
「喰い尽くせ!」
ユウキの声と同時にソーマは弐式、アリサは壱式での捕食、ユウキはメビウスで連続捕食を狙っている。その隙を援護しようと、サクヤがホールドトラップの効果を弾丸で使えるように開発されたホールド弾を撃つ。
ユウキとソーマが捕食し、バーストすると同時にホールド弾が着弾する。そしてディアウス・ピターの動きが止まり、その隙にアリサが捕食し、ユウキが再び捕食する。だが、その隙も長くは続かず、一瞬でホールド状態から復帰する。
ディアウス・ピターが次の行動に移る前にアリサとソーマは一旦離れる。その後、ディアウス・ピターは姿勢を落とすと、辺りに再びバチバチと帯電している音がなる。
それでもユウキは止めるつもりは無い。ゼクスホルンを展開してディアウス・ピターに喰い付く。そこからわずかに遅れてディアウス・ピターが腰を落として放電の体勢になる。
そして、放電と同時にゼクスホルンの砲塔からオラクルを吹き出して、ユウキを後ろに移動させる。
ギリギリで放電を躱すと、ユウキは太刀牙を展開して再度捕食する。そのための隙を確実に作るため、ソーマがユウキに攻撃させないように神機を降り下ろし、アリサが銃形態に変形してソーマと反対方向から銃弾を乱射、そして、サクヤが正面から再び額を撃つ。
「なに?!」
「そんな!」
「うそ?!」
しかし、その攻撃もディアウス・ピターは少し向きや姿勢を変える事で対処した。サクヤの狙撃は姿勢を落としつつ頭を横にずらして、アリサの銃撃は左の前足を少し前に出して左のマントで防御し、バーストしてパワーアップしたソーマの攻撃でさえも、逆に右足を少し引いて体を若干あげてマントで防御して凌ぎきる。
これだけの状況把握と反射にも近い速度での判断が可能な存在はアラガミの中でもそう多くは無いだろう。間違いなく戦い慣れている。3人がその判断力に驚きの声をあげる。
「まだだあぁぁあ!!」
しかし確実に隙は出来た。その間に太刀牙を展開し終えて、ユウキが咆哮と共にディアウス・ピターに喰う。
だが、それを見るとすぐにディアウス・ピターがバックステップで後ろに跳んだのだが、その捕食攻撃を躱しきる事が出来ずに、右肩を少し喰われた。
そのお返しと言わんばかりに、サクヤに狙いを定めて大きくジャンプして飛びかかる。
「やらせるか!!」
ユウキがそう言うと、翔瀑を展開して下から飛び上がり、ディアウス・ピターに喰いかかる。
しかし、ディアウス・ピターはそれを空中で無理矢理体を捻って避けるが、避けきる事が出来ずに、右足を少し喰われてしまった。
今度はユウキに狙いを変えて、ディアウス・ピターは尻尾の先から3つの雷球をユウキに放って反撃する。
それを装甲を展開して防御すると、ユウキも間髪入れずに穿顎を展開して一気にディアウス・ピターとの距離を詰める。
対してディアウス・ピターはソーマとアリサがいる方向に向かって走り、その捕食を避けようとするが、尻尾の先を捕食される。
しかし、ディアウス・ピターは止まることなくソーマとアリサにタックルをかます。それをアリサは横に跳んで横顔に銃弾を撃ち込み、ソーマは敢えて前に出て、ディアウス・ピターの懐に入り込む。
そして、地面と水平になるように跳び、不安定な体勢のままディアウス・ピターの腹に攻撃する。
ディアウス・ピターは一瞬体勢を崩すが、着地した後サクヤに向かってタックルをかます。
それをサクヤは左に避けて、ユウキが攻撃し続けた右足に狙撃弾を撃ち込む事で、ディアウス・ピターの右足に少しヒビが入った。
『グルルル!!』
ディアウス・ピターが唸ると周囲から自らを守る様に何時もと違う赤い電撃を放つ。それと同時に背中のマントが蠢いて、少しずつ刃の様に鋭い一対の翼が生えてきた。
『グルアァァァ!!』
ディアウス・ピターが吠えながら『ジャギン!!』と刃物が擦れる音を立てて構える。
「何ですかあれ?!」
「翼が生えた?!」
アリサとサクヤが驚いているとディアウス・ピターが一番近くに居るサクヤに翼を横凪ぎに振りながら一瞬の内に距離を詰めて飛びかかる。
「くぅっ!!」
それをサクヤはギリギリの所で前に飛び込んで、ディアウス・ピターの下を潜って避ける。そして着地の隙を突いて振り向き様にさっき生えてきた翼の付け根を狙い撃つが、ディアウス・ピターはその銃弾を翼を定位置に戻しつつ切り裂いた。
「動きが変わった?活性化したのか!?」
『いいえ!オラクル細胞の活性化率は変化していません!あれが本来の姿だと思います!』
「取り合えず敵とは認識されたって事か…」
ヒバリからの通信を聞いて、ユウキはボソリと呟いた。そしてヒバリの話が本当なら、この先活性化して更に能力を上げてくる筈だ。
恐らくディアウス・ピターの活性化は避けられないだろう。ならばそうなった時に対抗出来る様に、今の内から自身等の能力を限界まで引き上げておく必用がある。
そう考えると、ユウキはソーマと共にディアウス・ピターに向かって走り、アリサとサクヤは後退する。
そして再び翼を横凪ぎに振りながら飛びかかる。ソーマはそれを大きく上にジャンプして避け、ユウキは翼の下をと地面の隙間を潜って避ける。
眼前に来たディアウス・ピターの顔面を切り上げながら変形して、銃形態にする。
そして、後ろでユウキよりも高い位置に居るソーマの右足を左手で掴んで、そのまま振り下ろす。ソーマもそれに合わせて、全力の一撃をディアウス・ピターの背中に叩き込む。
今まで余裕を崩さなかったディアウス・ピターがついに体勢を崩す。ソーマはそのまま腕をバネにしてその場から離脱する。
その隙に変形していおいた銃形態で、ソーマに2発の受け渡し弾を撃つ。最初に捕食してバーストした分も含めてリンクバーストLv3となる。
「全員バースト状態を維持しろ!!限界まで力を引き出さないとこいつは倒せない!!」
ユウキが何を言いたいのか即座に理解して、アリサもユウキに受け渡し弾を2つ渡してリンクバーストLv3まで引き上げ、逆にユウキはアリサに2つ渡してLv3にする。
そして、残り1つとなったアリサのアラガミバレットをサクヤに渡してバーストさせる。
その間に剣形態に変形して、立ち上がり始めたディアウス・ピターに獄爪を展開して背中喰い付いく。それを振り払う様にディアウス・ピターはジタバタと暴れる。
「ガァッ!!」
散々暴れ最後はユウキを教会の壁に叩き付けて振り落とした。一瞬思考にノイズが走るが、その間にも銃形態に変形して銃口をサクヤに向けて受け渡し弾を渡してリンクバーストLv2にする。
しかし、叩きつけられた衝撃でユウキに隙が出来た。そこを狙ってユウキを切り裂きこうと三度目の攻撃を仕掛けるため、翼を一瞬後ろに引く。
「させません!!」
ディアウス・ピターが暴れている隙に、神機を剣形態に変形アリサが鮫牙を展開して捕食する。それを感知してディアウス・ピターは後ろに跳ぶが、足先を食われる。そして銃形態してサクヤに受け渡し弾を渡して、サクヤのバーストレベルをLv3に引き上げる。
そして、その逃げた先にはソーマがチャージクラッシュをいつでも撃てる様に準備していた。しかし、それを見る事もなく察知してディアウス・ピターは前に出て躱す。
「逃がさない!」
その瞬間、サクヤの神機から狙撃弾が放たれる。狙撃弾が眼前に飛んできたのを見たディアウス・ピターの動きが止まる。
「くたばれえぇぇぇえええ!!」
ソーマの咆哮と共にチャージクラッシュで作り出されたオラクル刃がディアウス・ピターに直撃する。その瞬間、轟音と共にディアウス・ピターが地面に叩きつけられる。
しかし、体勢を崩しながらも、ソーマを突き刺すように翼を後ろに振る。だが、ソーマも体勢の悪い攻撃を簡単に見切り、後ろに跳んで避ける。
「今度こそ!!」
サクヤが再び狙撃弾を放つ。狙う先は標的を失い振り抜いた後の翼の付け根だ。今度こそ付け根に直撃して貫いた。だが、自らの一部に穴が空いたにも関わらず、ディアウス・ピターは特に活性化等はせず、まだまだ余裕だと言った雰囲気を放っていた。
「いい加減に沈んで!!」
攻撃を受けてサクヤに気をとられている隙に、アリサが神属性の爆破弾を撃ち込む。今までと違い、攻撃を受けて怯んでいる。
「!!っユウ!!ソーマ!!今です!!」
壁に叩きつけられてから起き上がったユウキと一旦後退したソーマが、ディアウス・ピターの前後から斬りかかる。
それを見てディアウス・ピターはダメージ覚悟でアリサの方に走る。
「くっ!!」
咄嗟に横に逃げ、躱す事には成功したが、その後も反撃の隙を与え無いようにディアウス・ピターは赤く染まった雷球を辺りにばら蒔く。
「今さらそんなの…!!」
「食らうかよ!!」
ユウキとソーマが小さくジャンプして雷球を躱す。そのままディアウス・ピターに全力の一撃を叩き込むため、2人共構える。
だが、ディアウス・ピターがまるでチャージクラッシュの様に赤いオーラを纏った翼をユウキ達に振り下ろす。
咄嗟に2人は装甲を展開して防御する。しかしその瞬間、2人には神機を通じて強い衝撃が全身に走る。
「があああああ!!」
「ぐおああああ!!」
どうやら翼は帯電していたらしい。その翼を防御した瞬間、ユウキとソーマは感電してしまった。
「ユウ!!」
「ソーマ!!」
思わずアリサとサクヤも声を挙げる。その声を来た途端、翼を撃ち抜かれた事を根に持っているのか、ディアウス・ピターはサクヤを狙って走り出す。
「待てよてめぇぇぇえ!!」
ユウキは動きが鈍くなった体を無理矢理動かしてシュトルムを展開する。シュトルムの推力を限界以上に高めて、いつも以上の速さでサクヤの元に突っ込む。
ディアウス・ピターの迎撃にサクヤ神属性のレーザーを放つが、それでも止まる事はなかった。しかも、それを食らった後、さらに速度を上げてサクヤに飛びかかる。虚を突かれて動きが止まったサクヤを、シュトルムで加速したユウキが抱えて離脱する。
「っ!!」
それを見た瞬間、アリサが剣形態に変形してソーマと共に前線に出る。
「サクヤさん!今のうちに距離を取って下さい!」
それを聞くと、ユウキはサクヤをその場に置いて前線に復帰する。しかし、ディアウス・ピターはそれを妨害するように、ユウキたちに落雷を落とす。
「これでっ!!」
アリサが神機を横凪ぎに振り、ディアウス・ピターの足を狙う。しかし、それを察知したのか、バックフリップで避けながら雷球をアリサに飛ばす。
アリサはそれをディアウス・ピターの方に避けて、大きく周り込みながらディアウス・ピターの後ろを取るために走る。
そして空中にいるディアウス・ピターを叩き落とそうと神機を構えてソーマが跳ぶ。だが、翼を一度畳んで内側にソーマとディアウス・ピターの間に滑り込ませて、振り下ろしてきた神機に自身の翼をぶつけて防御する。
そして、翼の伸びきっていない部分を伸ばして、逆にソーマを地面に叩き落とす。
だが、今度は着地の瞬間に、サクヤの神機から狙撃弾が放たれ、着地の体勢を崩しながらもそれを避けて着地する。
その隙を見逃すはずもなく、ユウキが神機を振る。しかし、ディアウス・ピターはそれも後ろに跳んで躱す。
「いただきます!!」
しかし、躱した先にはアリサが先回りしていた。それに気が付いて前に走るが既に遅かった。アリサの神機がディアウス・ピターの尻尾を切り落とした。
『グルアアアア!!』
『オラクル細胞が活性化します!注意してください!!』
ついに活性化した。ここからが情念場だ。誰もがそう思っていた。全員が神機を握る手に力が入る。
しかし、ディアウス・ピターはこちらに背を向けて逃亡した。
「!!っ逃がさない!!」
そう言ってディアウス・ピターの一番近くにいたアリサは追いかける。
「待てアリサ!1人じゃ危険だ!!」
1人で追いかけに行ったアリサを追いかける。すると、ディアウス・ピターは教会の壁に空いた穴から中に入っていくのが見えた。
全員が揃ってから教会の中に入ると、ディアウス・ピターは待っていたと言いたげに再び翼を構える。
『グルルルアア!!』
『高濃度オラクル反応確認!大きいのが来ます!!』
ヒバリの警告通り、ディアウス・ピターが吠えると、室内にも関わらず、第一部隊全員に何度も落雷が落ちてくる。
「くそ!!」
「このままじゃ…!」
ソーマとユウキは焦りを感じながらも落雷を避けて反撃のチャンスを伺う。すると、いつの間にかディアウス・ピターの後ろに居たアリサが鮫牙を展開して一気に距離を詰める。
後ろからの攻撃をバックフリップで避け、アリサに雷球で反撃する。
「読んでいました!!」
すると、アリサは今までとは逆方向にスライディングしながら銃形態に変形して、ディアウス・ピターの腹に神属性の爆破弾を撃つ。
ガードの甘い部分に攻撃が通り慢心したのか、アリサに隙が生まれる。スライディングが終わった後、その場から離れるのではなく、攻撃を再開しようとしたのだ。
だが、空中で回転しながらアリサを突き刺そうとディアウス・ピターが翼を振る。
「アリサァァァア!!」
再びシュトルムを展開して、限界を越えた推力でアリサに迫る。『もうダメだ』アリサがそう思った瞬間、鈍い痛みが体に走り、突き飛ばされた。
「一体何…が…」
さっきまで自分がいた場所を見て言葉を失った。
※
なぜならそこにはディアウス・ピターの翼に胸を貫かれて血を流しているユウキが居たからだ。
「ぁ…ユ、ユウ…?」
ディアウス・ピターはアリサがショックを受けているのを見るとニヤリと笑い、ユウキを空中に投げ出した。そして動けないユウキの腹を切る。すると、切られた腹から夥しい量の血が吹き出し、辺りを血の海に変えた。
「あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"…」
腹を切り裂かれてユウキは悲鳴を上げる。そして、腹の中身が見えるようになったことを確認すると、翼で胃を突き刺し、そのまま翼を定位置に勢いよく戻した。
すると、胃に引きずられて食道や腸も一緒にズルリと引き抜かれた。
「ゴパァ!!」
血を吐きながら空中で意識を失ったユウキに止めを刺すため、翼でユウキの腹を突き刺し、ぐったりとしているユウキを、ディアウス・ピターは軽く翼を振って振り落とす。
ディアウス・ピターに肺を潰され、臓物を引き抜かれたユウキがまるでゴミを捨てる様に捨てられる。
そして、ディアウス・ピターは翼に刺さったままの臓器をまるで周りに見せつけるように喰い尽くす。
※
『ブチッ!!』
「てめえぇぇえええええ!!」
ソーマが激昂してディアウス・ピターに突っ込む。限界を越えたリンクバーストLv3状態で怒りに任せた一撃を叩き込む。
通常のゴッドイーターを遥かに越えるソーマの身体能力をさらに越えた一撃で辺りが揺れる。
しかし、その一撃でさえもディアウス・ピターは翼で防御して、ダメージを最小限に抑えた。
「ソーマ!!やつを引き付けて!」
「分かってる!!」
そう言ってソーマはディアウス・ピターに攻撃する。そして、アリサとサクヤはユウキに駆け寄る。
「ユウ!!起きて下さい!!ユウ!!!!」
アリサはユウキを揺すってどうにか意識を取り戻させる。
『神裂さんのバイタル!!危険域にまで下がっています!!このままでは!!』
「まだよ!!ユウ!!しっかりしなさい!!まだ…こんな所で死ねないでしょ!!」
余りのグロテスクなユウキの状態を見て、正直アリサはとサクヤは目を背けたくなったが、それでもユウキの命を繋ごうと、何か出来る事はないか思考する。今必用なのは体の再生…ならば回復錠で人体の再生するのが一番時間がかからないだろう。
だが、今のユウキは臓器を引き抜かれていて、回復錠を体内に取り込めない状態だ。ならば、今考えられる方法は1つだ。
「下がってアリサ!!ありったけの回復弾を撃ち込むのよ!!」
「は、はい!!」
そう言われて、取り乱していたアリサも銃形態に変形して、回復弾を撃ち込む体勢を取る。
アリサとサクヤがユウキに回復弾を撃ち続ける。すると、撃ち込む度に信じられない速さで臓器と血管が再生していく。
『カチッ!!カチッ!!』
しかし、臓器と血管が完全に再生したところで2人のオラクルが尽きてしまった。
『ま、まだです!まだ神裂さんのバイタルは未だ危険域にあります!!』
それでもユウキの命を繋ぐにはまだ足りない。臓器は回復したが、ユウキ自身は未だに生死の境をさ迷っている状態だ。回復しようにも自分で回復錠を噛み砕く事ができない。
「回復弾が尽きた!どうすれば…!!っアリサ!?」
サクヤの目にはアリサがポケットを漁っているのが見えた。そして、ポケットから回復錠を取り出して自分の口に放り込む。
『ガリッ!!』という音を立てて回復錠を噛み砕くと、アリサはユウキの横にしゃがみこむ。
そしてアリサはユウキの顔に自分の顔を近づける。所謂、アリサは口移しでユウキに回復錠を飲み込ませる。
(お願い…!早く…!目を覚まして!)
そう願いながら何度もユウキに回復錠を無理矢理飲み込ませる。しかし、体の傷は塞がっていくが、それでも目を覚ます事はなかった。
「ぐあああ!!」
「「ソーマ!!」」
ついに最後の回復錠も使いきり、どうしたら良いか必死に考えていると、ソーマの叫び声が聞こえてきた。どうやらディアウス・ピターがソーマを押しきったようだ。
そのままディアウス・ピターはサクヤとアリサを切り裂こうと2人に向かって走る。オラクルも尽きて、2人には反撃の手段がない。アリサは咄嗟に前に出つつ剣形態に変形して、装甲を展開して防御する。
だが、それでも防ぎきれる自信はなく、思わず祈るように目を瞑ってしまった。ここで終わるかもしれない。そう思うと怖くて現実を直視する事ができなかった。
『ギィイイン!!』
金属を打ち付ける様な音がした。しかし何時まで経っても衝撃が来ることが無く、恐る恐る目を開ける。
「ユ、ユウ!!」
「…」
そこには赤い刀を縦に構え、ディアウス・ピターの翼を受け止めているユウキが居た。アリサは嬉々とした様子でユウキの名を呼ぶ。
だがユウキからの反応はなく、構え方も今までと違い、右手のみで神機を握り異様なまでに低い姿勢で翼を受け止めていた。
「ユ、ユウ?」
何時まで立っても返事がないことが気になり、もう一度ユウキの名を呼ぶ。すると、ヒバリから通信が入る。
『か、神裂さんの心拍数や血圧、全バイタルが異常値を示しています!!一体何があったんですか?!』
「わ、わかりません…私たちも何が何だか…」
「…」
翼を受け止めていた火刀を振り下ろす。それを避けようとディアウス・ピターは後ろに跳ぶ。しかし、猛スピードで間髪いれずにユウキは追撃する。片手で神機を振り下ろす。ディアウス・ピターはそれを翼で受け止める。
ユウキはそのまま腕をバネにして、弾丸の様なスピードで天井まで飛び上がり、勢いを殺すこと無く天井を蹴って着地する。
「「「…!!」」」
全員からユウキの顔が見えるようになると、全員が驚いた。今のユウキは左手を床に置き、姿勢を異様に低くして右手で神機を握りながら後ろに軽く持ち上げて構える。そしてその目は瞳孔が完全に縦に割れ、時折見せる『獣の様な』目ではなく、完全に『獣そのもの』と言える目だった。さらにはさっきからの神機の使い方は太刀筋など関係ない、暴力だけで武器を振るう、獣が武器を持った様な荒々しい使い方だった。
「グルルルルル…」
ユウキは低い唸り声を上げてディアウス・ピターを威嚇する。全員がユウキの豹変ぶりに驚き呆けていると、ユウキが一瞬の内にディアウス・ピターに近づいて、右手で神機を力任せに振り下ろす。
ディアウス・ピターはそれを片方の翼で受け止めて、反対の翼でユウキを切る。
それをさっきと同じように、右手を振った勢いで天井まで飛び上がる。その後、壁、床、天井を蹴って縦横無尽に飛び回りつつ何度も切り裂き、ディアウス・ピターを撹乱する。
「ガアァァァア!!」
ユウキの咆哮と共にディアウス・ピターの横から切り込む。しかし、ディアウス・ピターも下から掬い上げるように、翼を振り反撃する。
それを神機を振りつつ無理矢理体を捻る。しかし避けきる事が出来ず、翼に切られながらも吹き飛ばされる。だが、ディアウス・ピターの胴体にも大きな切り傷ができた。
翼に吹き飛ばされながらもユウキは空中で体勢を整え、ディアウス・ピターに背中を見せるように着地する。
そして、背中を丸めて、だらんと両手を垂らしてふらふらと立ち上がる。そして左手を軽く上げ、人差し指に親指に添える。
「オ"、お"ナ"…お"ナ"ガ…オ"ナ"ガぁ"ァ"、ズ、ずィ"、ずい"ぃ"ぃ"、ズい"ィ"ィ"い"ぃ"だア"ァ"ぁ"あ"ァ"あ"ァ"あ"…」
ユウキが親指に力を込めつつ、勢いよく体を反らせてディアウス・ピターを見る。
『バキッ!』
「ヨ?」
その顔を見た瞬間、全員の背筋が凍った。目は獣のままだが、口元はまるで裂けたのではないかと思うほどにつり上がっていた。
獣の本能と人の執念が入り混じったアンバランスなその表情は完全に狂気に染まりきっていた。
その表情にディアウス・ピターでさえも一瞬怯み、その間に上下逆さまになったままディアウス・ピターに飛び込む。
「グルアァァァア!!!!」
獣の雄叫びと共に上から下、つまりユウキから見て下から上に向かって神機を振る。
ディアウス・ピターはそれを右の翼で防御し、左の翼でユウキの首を跳ねようとする。
しかし、ユウキは一瞬の内に上下を入れ変えて、眼前に迫った刃をまるで白羽取りの様に噛みついて受け止める。
ならば直接喰い殺すまで。そう考えて、そのままユウキを口元に運ぶが、ユウキの左手に押されてそれを阻まれる。すると、右の翼を両足で挟み、自由になった右手を振りかざす。
しかし、今まで神機の攻撃を受け止め続けてきたこの翼を壊すことなど普通はできない。もしそれが可能であるとしたら先程サクヤが翼の付け根に開けた風穴を狙うしかない。だが、この体勢ではほとんど真反対にある付け根を狙うことは出来ないだろう。それでもユウキは神機を逆手に持ち変えて、全力で後ろに向かって振り抜く。
『ゴキッ!!ボキッ!!』
鈍い音と共に勢いだけで肩と肘の間接を外し、右腕の稼働範囲を無理矢理広げる。
『ブシャアッ!!』
神機の切っ先が見事に風穴に当たり、右の翼を切り落とす。すると反対側からの抵抗力が無くなりユウキは後ろに、ディアウス・ピターから見て右側に流された。そして翼を左に戻そうとした瞬間、足で挟んだ翼でディアウス・ピターの顎を切り落とした。
そのまま流された勢いで噛みついていた翼から離れて、足で挟んだ翼を左手に持ち直して着地する。
『ゴキン!!』
外した間接を筋力だけでもとに戻し、翼を握ったまま再び左手を地面に着けて、腰を異常に落として構える。
「グルアァァァア!!!!」
再びユウキが吼えてディアウス・ピターに飛び込む。相手も翼に帯電させてユウキを迎え撃つ。
「待てユウキ!!」
ここまで呆けていたソーマがこの技を見て我に帰る。あの技は受けるだけでも危険だ。その事は自分も受けたからよく分かっている。ソーマはユウキがこの技を避けることを願ったが、現実はソーマの思い通りにはならなかった。
『ギィイイン!!』
翼と神機がぶつかり合い、金属音がなると同時にユウキは感電する。しかしそれでもユウキは止まることなく、今度は左手に握った翼でディアウス・ピターの頭を切る。
何度も何度も切る。その度に空気が震え、辺りを揺らす。切られる度にディアウス・ピターは体勢を崩され、まともに動けない。
するとしびれを切らしたのか、翼でユウキの神機を受け止めたまま、左の前足でユウキを切り裂く。
すると、ユウキはジャンプしてそれを避けると、上から翼をディアウス・ピターの顔面に向かって突き刺す。
その衝撃に耐えられなかったのか、翼は先端だけ刺さって砕けてしまった。その刺さった翼を左の拳で殴り、深々をディアウス・ピターの顔面に突き刺した。
『ガアアア…』
ディアウス・ピターは大きく仰け反ると同時に、ユウキを上に投げ飛ばす。
「い"だだぎ…」
ユウキが両手で神機を握り、捕食口を下にして弐式を展開する。
「ま"あ"あ"あ"あ”あ”あ”ず!!!!」
ディアウス・ピターの背中に喰らい付き、背中を大きく抉り取る。そのままユウキは第一部隊のいる方に飛ばされた。
「ソーマ!!俺と来い!!サクヤさんとアリサは援護を!!」
その声を聞いて、呆けていたサクヤとアリサも我に帰る。
3人共バーストは切れているが、呆けている間にバースト状態のオラクル回復能力であと数発は援護射撃が可能だった。
ユウキの目もいつの間にか縦ではなく、丸い瞳孔に戻っており、表情からは狂気は感じられなくなっていた。
ユウキとソーマが走り、ディアウス・ピターが迎撃に向かってくる。
「動いちゃダメよ!!」
サクヤが神属性のレーザーを放つ。狙いはここまで狙い続け、ヒビを入れた右足だ。レーザーが当たると、ディアウス・ピターの右足が砕けて前に進みながら倒れ込む。
しかし、敵もただやられるつもりはないようだ。最後の抵抗に、残った翼でユウキとソーマを纏めて叩き切るために翼を振り下ろす。
「させません!!」
アリサが神属性の爆破弾を放ち、振り下ろされた翼を爆風で押し戻す。
「大人しくしやがれ!!」
未だ慣性で動いているディアウス・ピターの顔面に神機を振り下ろし、ディアウス・ピターは地面に叩きつけられて動きを止めた。
「これで…終わりだ!!」
動きを止めたディアウス・ピターにユウキが全力で神機を振り下ろす。その瞬間、顔面を含め、胴体まで深く切り裂いて、ディアウス・ピターはついに動きを止めた。
「や、やりましたね…」
「ええ…」
激戦の末、ついにディアウス・ピターは倒れた。しかし、未だコアの摘出は済んでいないため、次にやることは決まっている。
「…サクヤさん。」
「分かってる。それじゃあ、始めましょう。」
その言葉を聞いて、ユウキとソーマ、アリサが捕食口を展開して、ディアウス・ピターを喰い漁る。
すると、ユウキがコアを発見してそのまま捕食し、アリサが腹の辺りで何か棒状の物を発見して引き抜く。その少し後に、ソーマが喉元の辺りで赤い人工物の一部が見えて、サクヤがそれを取り出した。
「当たり…です。」
「こっちも見つけたわ。」
アリサがリンドウの神機『ブラッドサージ』を引き抜き、サクヤが腕輪をディアウス・ピターの喉元から引き剥がす。
「これは…間違いなく…あの…人の…!」
そう呟いて腕輪を眺めるサクヤの視界はぐにゃぐにゃにボヤけ始めていた。
「リン…ドウ…」
「リンドウさん…ごめんなさい…」
リンドウの腕輪と神機がディアウス・ピターから出てきた。この状況から考えられるのはリンドウの死だ。
その事を理解すると、ついにサクヤとアリサは泣き崩れてしまった。ソーマも表情には出してはいないが、明らかに気落ちしている。
(なん…だ?視界ガゆれ…ル…?)
しかし、ユウキはそれどころではなかった。リンドウの死を理解して悲しいのだが、突如として視界がおかしくなった事に激しく動揺していた。いや、もはや思考する事さえも出来ないでいた。
「と…とリア…えず…いッたン…あなぐらに、かえリ…ま…」
回らない頭でどうにか言葉を発したが、結局全て言い切る前にユウキは勢いよく、膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れてしまった。
「「ユウ!!」」
「おい!どうした!」
突然ユウキが倒れて全員狼狽える。
「ユウ!どうしたんですか?!しっかり…!!!」
アリサがユウキに駆け寄り、ユウキの体勢をうつ伏せから仰向けに変える。すると、ユウキの瞳孔が完全開いていた。どう考えても危険な状態だ。
アリサが焦りながらも呼び掛けつつユウキを揺するが、ある事に気が付いて不意に呼び掛けも揺する事も止めてしまった。
「………ない…」
「アリサ…?」
アリサが周りに聞こえるか聞こえないかの声量でぼそりと呟く。サクヤが聞き返すと、ひどく怯えたような表情をサクヤに向けた。
「息…してません…」
全員に衝撃が走る。あまりの出来事にアリサ以外は言葉を失った。
「ユ、ユウ…?何の冗談ですか…?もう!たち悪いですよ!」
再びユウキを揺すり、どうにかいつもの調子で話そうとするが、声も手も震えている。
「ねぇ…起きて下さい…風邪引きますよ…?」
何度も揺するが、相変わらず瞳孔は開いたままで、息もしていない。少しずつ体温も氷の様に冷たくなっていっていくのを感じてアリサはさらに焦る。
「ユウ…起きて下さい!!ユウ!!!!」
ついにアリサは声を荒げて泣き出してしまった。その声を聞いてソーマは我に帰る。
「どけ!!!!ヘリに乗せる!!今ならまだ間に合う筈だ!!」
そう言うとソーマは強引にアリサを引き離してユウキを抱える。まだ心肺停止状態から時間は経ってない。ならばヘリに積んであるAED で蘇生出来る可能性は高い。その可能性に賭けてソーマは全速力でヘリに走り、サクヤとアリサもその後に続く。
結局、勝利の余韻も悲しみにくれる間もなく、第一部隊は尽きかけた命と共に慌ただしく帰投した。
To be continued
後書き
ついに来たぜ!髭ヴァジュラことディアウス・ピター戦!実機でやったときは動きが完全に別物になってて新鮮でした。
今回は因縁のアラガミと言う事で、接戦になる様に書いてみたらどちらの攻撃もあと一歩で当たらないと言う無駄に長い戦闘になりました。
戦闘描写も今回は長い事以外は満足出来ました。どうやら私はユウ君がズタボロにされて悲鳴を上げる様を想像すると興奮してしまう変態に覚醒してしまったようです。
指パキについては、東京喰種(無印)のカネキくんの指パキがカッコ良すぎたので思わず入れてしまいました。
リンドウさんの神機と腕輪も見つかり、例の『置き手紙』が開けられる様になりました。その置き手紙には何が書かれているのか…私気になります!(スットボケ
それにしても長い…過去最長ですけど、まあ見せ場だし、いい…よね?
人命救助はノーカン扱いで良いですよね?(ボソッ