GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

51 / 126
 ついに来たぜ無印編最終決戦!!アルダ・ノーヴァも超強化して第一部隊の壁として立ちはだかりますよ!!


mission50 また明日

 -エイジス-

 

「ゼァア!!」

 

「ハァッ!!」

 

 ユウキとソーマが戦闘開始直後からアルダ・ノーヴァに迫り、神機を振る。

 

  『キィン…』

 

「「ッ!!」」

 

 しかし、2人の神機がアルダ・ノーヴァに当たっても甲高い音が虚しく響いただけで、アルダ・ノーヴァにはまったく効いていないようだった。

 

『フフフ…』

 

 まるでこうなると分かっていたかのように女神はほくそ笑みながら挑発するように手招きして、女神の後ろにいる男神はユウキ達を倒しに行くと言う意思を見せつける様に指をボキボキと鳴らしている。

 

『敵は…アラガミに取り込まれたヨハネス前支部長です!!人工的に作られたアラガミのデータはこれまでにはありません。皆さん!!気をつけて下さい!!』

 

「りょーかい!!」

 

「行きます!!」

 

 コウタとアリサが返事をした後、コウタのモウスィブロウとアリサのレイジングロアが火を吹く。

 

『フン…』

 

 ユウキとソーマの斬撃よりは効いている様にも見えるが、それでも大したダメージを与えられているようには見えない。それを示すように、ヨハネスは鼻で笑い余裕を崩さない。

 

「なら…ここはどう?!」

 

 サクヤのテラスウォームから狙撃弾が放たれる。しかし、アルダ・ノーヴァは動く気配はない。そのまま狙撃弾はアルダ・ノーヴァに吸い込まれる様に向かっていく。

 

  『バシィ!!』

 

 狙撃弾がアルダ・ノーヴァの顔に直撃し大きく仰け反る。全員がどうなったか様子を見ていると、ゆっくりとアルダ・ノーヴァは体勢をもとに戻す。

 

「そんな…!!」

 

「チッ!!」

 

 アルダ・ノーヴァの様子を見てみると、顔や体に銃撃での傷跡こそあるがどれも小さな傷しか着いているだけだった。この程度で倒せるとは思ってはいなかったが、ダメージが入っていない現状を見てサクヤは衝撃を受け、ユウキは舌打ちをする。

 

『この程度か?今度はこちらから行かせて貰おう。』

 

 そう言うと、アルダ・ノーヴァは手をかざす。

 

「散れぇ!!」

 

 ユウキが叫んだ瞬間、ユウキとソーマは前に、アリサは左、サクヤは右、コウタは射線を予測した上で後ろに跳ぶ。

 しかし、そんなコウタの予測に反して、アルダ・ノーヴァの腕の装甲が開くと、そこから辺りに散らばる小さい光弾が発射される。

 ユウキとソーマは光弾が散らばりきる前に出て躱し、アリサとサクヤは横に跳んで射線から外れた。

 

「いい?!」

 

 だが、予測した弾道と違う攻撃立ったため、コウタは未だに射線上にいる。予想外の展開にコウタの動きが一瞬止まる。

 

  『バンッ!!』

 

 コウタに当たる少し前に小さな光弾が爆発する。その爆発に阻まれて光弾が消滅した。

 爆発が収まると、銃形態に神機を変形したユウキが一瞬だけコウタの方を向いているのが見えた。さっきの爆発はユウキの爆破レーザーだったのだろう。

 

「サンキューユウ!!」

 

「コウタ!!援護しろ!!」

 

「任せろ!!」

 

 そう言うとユウキはアルダ・ノーヴァに向き直り、剣形態に変形する。

 

「合わせろ!!ソーマ!!」

 

「誰に向かって言ってやがる!!」

 

 ユウキとソーマが同時に地を蹴る。大きく飛び上がり、お互いにアルダ・ノーヴァに神機を振り下ろす。

 

  『ギィン!!』

 

「クソッ!!」

 

「なに?!」

 

 また高い音が響いた。女神を守るように、男神が両腕でユウキとソーマの攻撃を防ぐ。そして男神は両腕を広げてユウキとソーマを弾き飛ばす。

 

「今よ!!」

 

「当たれぇえ!!」

 

「これでどうですか?!」

 

 サクヤ、コウタ、アリサが銃弾を放つ。両腕を広げた状態の男神が女神を守りに入る事はまもう不可能だ。

 しかし、アルダ・ノーヴァの女神は一瞬身を縮込めると、ヨハネスが不適に笑う。

 

『無駄だ!!』

 

 勢いよく体を大の字にすると、アルダ・ノーヴァを中心に辺りが淡く光る。すると、銃弾はアルダ・ノーヴァに当たること無く霧散して消滅する。

 

「マジで?!」

 

「う、嘘?!」

 

「そんなことって …!!」

 

 コウタ、サクヤ、アリサが驚きの声をあげる。ユウキ、ソーマも声に出さないが驚いている。

 

『解析が一部終わりました!!どうやらこの人工種はアラガミ装甲壁の技術が応用されているようです。並みの攻撃ではビクともしません!!でも必ずどこかに穴があるはずです!!どうにか探して下さい!!』

 

「そ、そんなこと言ったって…どうやって探せばいいんだよ?!」

 

「正攻法じゃ駄目ってだけだ!!攻撃が通る条件を探すぞ!!」

 

 ユウキは狼狽えるコウタを叱責すると、勢いよくアルダ・ノーヴァに飛び込み、袈裟斬りを繰り出す。

 しかし、アルダ・ノーヴァは後ろにスライドする様に移動する。すると標的を失った神機から『ヒュン!!』と空気を斬る音が虚しく響いた。

 ユウキが神機を振り抜いたタイミングで、今度はアルダ・ノーヴァは前にしスライドしながら左腕を伸ばし、鞭の様にしならせてユウキに叩きつける。

 対してユウキは1度目の攻撃は、後ろに下がる事で当たるスレスレで躱し、2度目は下がっていては避けきれないと判断して、バックフリップで左腕を飛び越える。

 そして3度目で当てられると確信して、攻撃体勢に入ろうとしたところで、視界の端に神機を振り下ろすソーマが映る。ヨハネスは攻撃を止め男神の腕でソーマの攻撃を受け止める。

 

  『キィン…』

 

「チィ!!」

 

 ソーマの腕力をもってしてもアルダ・ノーヴァにダメージを与えられない。苛立ちを隠すことなくソーマは舌打ちをする。

 すると、ソーマに気を取られているうちにユウキが再び斬りかかるが、これまた男神の腕で攻撃を受け止めると、男神は両腕を広げてユウキとソーマを弾き飛ばした。

 

「これで!!」

 

「当たれぇえ!!」

 

 アリサとコウタが弾かれた2人のフォローのため、弾幕を張って牽制する。アルダ・ノーヴァは遠ざかりながら旋回してそれを躱す。

 

「諦めないで!!何か攻撃を通す方法はあるはずよ!!」

 

 サクヤも攻撃に加わり、アルダ・ノーヴァに狙撃弾が放たれる。だがその瞬間、アルダ・ノーヴァは急加速して狙撃弾を躱すと、両腕から最初に放った小さな光弾を辺りにばら蒔いた。

 サクヤ、アリサ、コウタはそれぞれ射線から外れたり、間を抜けたりしながら躱していく。

 そして、サクヤ達が躱している間に、女神はゆっくりと上昇していき、最上端に来ると天輪を下に向け、男神も胴体をさらけ出す様に構える。

 『何をするつもりだ?』とユウキ達は考えたが、どう考えても攻撃以外には考えられない。再び回避に入る準備をすると、女神の天輪、男神の手鏡の様な胴体から大きな光弾が全員に向かっていくつも発射された。

 

「グッ!!」

 

「クソ!!」

 

「あぶねっ!!」

 

「こんなところで!!」

 

「当たるもんですか!!」

 

 全員が四方八方に動いて何とか躱している。その様子を見たヨハネスには1つ、理解出来ない事があった。それは圧倒的な力の差…その一部を見せ付けたにも関わらず、まだ誰の目にも諦めた様子が見えない事だった。

 

『理解に苦しむな…』

 

「何?!」

 

 思わずヨハネスの口から漏れた疑問がソーマの耳に届き、噛み付く。その瞬間、回避しながら銃身に変形したユウキからの銃撃がアルダ・ノーヴァの頭に迫る。

 それをギリギリのところで避けると体勢を崩し、そのまま下に向かって落ちていく。

 誰もが好機として反撃に出るが、男神が女神を援護する様に、辺りに光弾をばら蒔き始める。

 サクヤ、アリサ、コウタは避けながら1度後退して距離を取り、ユウキとソーマは光弾を掻い潜りながらアルダ・ノーヴァに近づく。

 

『何故勝ち目の無い戦いを挑んでまで、アーク計画を拒むのだ?仮にこの戦いに勝ち、終末捕食を止められたとしても、人類はアラガミによって滅ぶ運命にある。これは抗う事の出来ない自然の摂理だ。』

 

「それが何だって言うんですか?!」

 

 ヨハネスはアラガミが存在する限り、人が滅ぶのは運命だと言うが、話の内容が見えてこないので、アリサが怒りを露にして聞き返す。

 その間に、スライディングで光弾を潜り抜けたソーマが下から、ユウキは飛び上がり上からアルダ・ノーヴァに三度斬りかかる。しかし、ソーマの斬撃を女神は攻撃を中断して動くことなくそのまま受けるが、傷さえ付ける事ができなかった。ユウキの攻撃も男神が大きな腕で神機の刀身、護人刀を掴んで受け止める。

 

「ユウ!!」

 

「援護する!!」

 

 援護のためアリサが男神、コウタが女神に向かって銃弾を放つ。

 

「ゲハッ!!」

 

「グッ!!」

 

 だが、その瞬間に女神が右腕を伸ばしてソーマに打ち付け、男神がユウキの腹を殴り、それぞれを飛んできた銃弾に向かって殴り飛ばす。

 

「そんな!!」

 

「やべっ!!」

 

 援護のつもりで撃った弾丸が仲間の元に向かい追い詰める。だが、ユウキとソーマは空中で姿勢を変え、装甲で銃弾を防ぐ。

 しかし、ユウキ達が弾かれている間にサクヤが狙撃弾を撃ち、アルダ・ノーヴァの左胸に直撃しようとしている。だが、それでもアルダ・ノーヴァはユウキ達を弾いた後から動くことなく狙撃弾を受ける。しかし、最初に撃ち込んだ時の様に、小さい傷が付いただけでダメージは入っていない。

 

『アラガミが存在する限り、終末捕食はいずれ起こる。だからこそ、私は人為的に終末捕食を起こし、全てのアラガミを滅ぼす事でその可能性を摘み、その上で限られた人類を残すアーク計画を実行に移した。ならばアーク計画こそが人類を救う希望ではないかと思うのだが?』

 

「アーク計画が完遂されれば大勢の人が死んでしまう!私がリンドウを失い悲しんだように、新しい世界に行って真実を知って後悔して悲しむ人たちも大勢いる!!私はそんなの認めたくないわ!!」

 

「そうさ!!ノゾミと母さんだけを助けたって意味がないんだ!!知り合いや友達を犠牲にしたら、俺の家族は笑ってくれない!!生き残る事だけが幸せって訳じゃないんだ!!」

 

 ユウキ達が体勢を立て直している間に、男神は女神を腕に座らせて光弾をばら蒔き始める 。ユウキ達は回避に専念するが、その間もヨハネスは戦意を削ぐ様にアーク計画しか現実的に人類を救う方法は無いと諭し始める。

 しかし、サクヤとコウタは生き残ることだけが救いではないと真っ向から否定する。

 

『愚かな…仮にアーク計画を止めた後、終末捕食起こさずに人類の保存を両立する事が君たちに出来るのかね?』

 

「クッ!!」

 

 ヨハネスの言う通り、アラガミはその特性上絶滅させるのはほぼ不可能と言える。アラガミが存在することで人類が滅ぶことが確定しているのならば、確かにアーク計画以外に人類救済の方法は無い。

 サクヤが言い負かされていると、突然黒い影が女神に向かって行き、横凪ぎに神機を振る。

 

「なら…貴方は何故人類救済に拘るんですか?確か言いましたよね?人類に絶望したって…にも関わらず、何故人類を救うつもりでいるんですか?」

 

 攻撃は通らなかったが、ユウキが一気にアルダ・ノーヴァの懐に入り込む。それを迎撃しようと、男神が上から殴りかかる。後ろに跳んで躱しながらずっと気になっていることをヨハネスに聞く。

 

『アイーシャが自らの命と引き換えにして見出だした希望も…人間は容易く踏みにじり、貧しい大衆から搾取し、一部の人間が私腹を肥やす道具にしかしなかった!!その結果が今のこの世界だ!!』

 

 ユウキの問いを聞いた途端、ヨハネスは声を荒げて反撃に出る。男神が女神を掴んでユウキに向かって投げつける。再び後ろに跳んだことで、辛うじて直撃こそはしなかったが、ユウキが居たところには女神の胴体が地面と水平でスレスレになるように両手両足を伸ばしている。

 何をしてくるつもりかと身構えた途端、女神は両手両足を伸ばしたり縮めたりして、まるで蜘蛛のように地面を這いながらユウキに向かって突進する。ユウキはそれを横に避けて反撃するが、上から男神が広範囲に大きな光弾をばら蒔いた。さらに着弾地点から光の柱が現れたため全員がそれを避けるのに精一杯だった。

 

『だからこそ私の手でケリを着ける!!この混沌とした世界を作り出した一人としてだ!!』

 

 突進を終えると、地面を這ったまま髪を振り乱し、四方八方にオラクルで成形された刃を飛ばす。

 ユウキ達は前後左右、さらにはジャンプも使って刃を躱す。近接メインのユウキとソーマはギリギリで躱して少しずつ近づいているが、銃身を扱うサクヤとアリサ、コウタは回避先から女神を狙おうとするも、男神の攻撃が回避先に飛んできている。これ程までのラッシュの最中では、回避に専念しなければ、あっという間に攻撃を受けて、連続攻撃から抜け出せなくなる。

 

『私が目指すものはアラガミが現れる以前の世界だ!!だが新たな世界には以前のように人間が存在し続けなければならない!そして君達ゴッドイーターは…人々を守り、賢しく生き、未来を切り開こうとしてきた者達だ!!そんな人間こそが次の世代に残るに相応しいのだ!!』

 

 ラッシュの最中、熱くなったヨハネスが自身の目指す世界を語る。

 

「その果てに犠牲になるのはあの研究に何の関係もない、関係を持てない人達だろ!!大衆はただ振り回された挙げ句に他人の都合で殺される!!そんな大衆の中にも貴方の言う未来を切り開こうとしている人だって大勢いるはずだ!!そんな人たちと共に、どうしようもなく絶望した人たちを救う!!それが俺の信じるゴッドイーターだ!!だから…」

 

 だが、大勢の犠牲を強いた救済は間違ってるとして、ユウキは真っ向から対立するとユウキが語る間にラッシュに間が空く。再び男神に女神をユウキに向かって投げさせる。男神もその後に続き、右腕を振り上げて殴りかかる体勢をとる。

 

「俺達は貴方を止める!!」

 

 ユウキはラッシュが終わった瞬間に一気に前に出る。向かう先は両手両足を伸ばして広げ、着地の体勢をとる女神…ではない。大きくジャンプして女神の背中を蹴り、男神に向かって跳ぶ。

 男神ももう攻撃体勢に入ってるので、攻撃を止められない。振り下ろした拳をユウキに叩き込もうとするが、ユウキの神機が先に男神の拳を捉える。

 

  『ブシャァア!!』

 

 男神の攻撃に対して、下から掬い上げる様にカウンターの用量で攻撃すると、今まで全く通らなかった斬撃があっさりと通り、男神の右腕を切り落とした。

 

「攻撃の時だ!!人工種が攻撃体勢に入ってからなら攻撃が通る!!」

 

 今まで通らなかった攻撃がカウンターであれば通る。さらにはアルダ・ノーヴァの今までの動きも考えると恐らく間違いないと思い、ユウキは全員に攻撃のタイミングを指示する。

 

『当たりです!!攻撃時に人工種のオラクル反応が僅かに乱れています!!それにホールドやスタングレネードでも同様の変化を起こせるみたいです!!』

 

「なるほどな…」

 

 ヒバリが解析を終えてユウキの指示通りに動けば攻撃が通る事を肯定する。

確かにアルダ・ノーヴァは攻撃を受ける際、必ず動きを止めていた事を思い出し、ソーマもユウキの指示とヒバリの解析結果を聞いて納得した。

 

「オッケー…!倒し方が見えてきた!!」

 

「私も前に出ます!!サクヤさん、支援お願いします!!」

 

「任せて!!」

 

 戦い方は決まった。ヨハネスもユウキ達を倒さねばならない以上、必ず攻撃のチャンスは来る。アリサが剣形態に変形し、コウタはサポートかしやすい位置で、かつ射線が通る場所に移動する。サクヤは戦況把握のため、狙撃範囲ギリギリまで後退したところで、ユウキからアリサに指示が入る。

 

「アリサ!!来い!!」

 

「はい!!」

 

 ユウキが後ろを向いてアリサが前衛に入るよう指示を出す。アリサは即了承し、前衛に加わる。その際、ユウキは指示を出し終わりにコウタの目を見る。

 

(頼むぞ…!!)

 

(了解!!)

 

 ユウキはコウタとアイコンタクトを取ると、ユウキは少しだけ旋回すると、一気にアルダ・ノーヴァに飛びかかる。その時、コウタはユウキの影に隠れるように旋回し、ユウキが飛びかかった後も旋回し続けた。

 

  『ギィン!!』

 

 アルダ・ノーヴァに飛びかかったユウキは、攻撃が通らないと分かっていながらも攻撃を仕掛ける。男神がユウキの攻撃を受け止めると、ユウキを弾き飛ばす。

 その直後、反対側からソーマが切りかかる。その攻撃を女神が無傷で受け止め、ソーマを振り払う。

 そのせいでアルダ・ノーヴァの意識はソーマに向いた。その瞬間、ユウキは銃形態に変形して女神のこめかみに狙撃弾を撃ち込む。

 大したダメージは入っていないが、攻撃を受けたことで今度はユウキにアルダ・ノーヴァの意識が向かうと、アルダ・ノーヴァがユウキに向かって殴りかかろうと距離を詰め、拳を振り上げる。

 

  『バン!!』

 

 短い炸裂音が聞こえた瞬間、アルダ・ノーヴァの目の前に狙撃弾が飛んできた。このまま攻撃を続けていたら、今ごろ頭に風穴が空いていただろう。ヨハネスは内心冷や汗を流しつつ、サクヤに向かって手をかざす。

 

  『ガツンッ!!』

 

 ヨハネスは突然側頭部に何かがぶつかるのを感じた。一瞬だけ視線を移すと目の前にスタングレネードが浮いている。そしてその奥にはニヤリと不適な笑みを浮かべるユウキが見えた。

 

  『バンッ!!』

 

 炸裂音と同時に辺りが閃光に包まれ、アルダ・ノーヴァの目が眩む。その瞬間、男神が女神を守るように包み隠した 。

 

「今だ!!総攻撃!!」

 

 ユウキの指示で一斉に攻撃が始まる。ソーマが一気に男神に近づいて一撃を与え、サクヤの狙撃弾が男神の腕に着弾し、アリサが男神を捕食する。

 

  『ブシャッ!!』

 

 男神が肉厚な分攻撃は中々有効打にはならないが、今までと違い明らかに攻撃が通っている。

 飛ばされたユウキが体勢を整えると、一気に飛び出して男神に一撃入れる。それと同時にアリサも再び捕食してリンクバースト用のアラガミバレットを補充する。

 目眩ましから回復したアルダ・ノーヴァの男神が片腕で何やら祈る様な構えを取ると、女神がゆっくりと上昇していく。

 

「逃がすか!!」

 

 ユウキが男神を踏み台にして女神の真後ろに飛び上がる。背中合わせになったところでユウキは体を捻ると、女神に向かって横凪ぎに神機を振る。

 

『これが…圧倒的な力の差だ!!』

 

「グッ!!」

 

 しかしユウキの攻撃が届くよりも先に、女神と男神が左手を天に掲げると、女神を中心に光の柱が現れる。

 ユウキは反射的にインパルス・エッジを発射する。爆発の勢いでユウキは後ろに跳び、光の柱を回避する。

 

「何?!これっ?!?!」

 

 しかし、光の柱が現れたと同時に、ユウキ達の視界が揺れる。上下左右、さらには遠近も複雑に入れ替わり、平衡感覚を失い第一部隊はまともに立っていることさえ出来ず、サクヤは思わず声をあげる。

 だが次の瞬間、人1人分が収まりそうな大きさの円形の光が、点々と床に現れた。視界が揺れているが、ソーマの足元にもギリギリ掛かって現れているのが何とか確認出来た。

 

「クソ!!」

 

「きゃあ!!」

 

 一瞬の間を置いて、床の光から光の柱が現れた。平衡感覚を失いつつもソーマは後ろに跳んで躱すが、次々と光の柱は現れてアリサやサクヤの足元にも現れて第一部隊を襲う。

 最初の平衡感覚を奪う攻撃の効果もすぐに消えたが、そのまま光の柱はランダムに上がり、第一部隊を追い詰める。

 

「ユウ!!」

 

 そんな中、空中で平衡感覚を失ったせいか、ユウキが背中から落ちていくのがアリサの目に映った。さらにはユウキの着地点にも光の円が現れている。このままではユウキが光の柱で焼かれてしまう。かといってアリサを含めた他の第一部隊のメンバーも回避で精一杯の状況ではまともな援護は出来ない。

 アリサがどうするか迷っていると、突然ユウキは『ぐりんっ』と上半身を捻り、右手が下…つまり地面に向くように姿勢を変える。

 

  『ガシャン!!』 『ガギン!!』

 

 突如装甲が開く音が聞こえると同時に金属同士が叩かれる様な音も聞こえてきた。その直後、ユウキは体を回転しながら地面に対して水平にスライドするように跳ねて、光の柱を躱した。

 

「え?!な、何をしたんですか?!」

 

「なるほど。装甲の展開を利用したのか。」

 

 ソーマの言う通り、ユウキは装甲が開く動作を利用して、装甲を地面に叩きつけて方向転換をしたのだ。

 未だ光の柱は点々と上がっているが、女神はゆっくりと地上に降りていく。アルダ・ノーヴァが反撃のため手をかざす。

 

『グゥ!!』

 

 しかし、突然アルダ・ノーヴァが動かなくなる。ヨハネスはどうにか足元を見ると、いつの間ににかホールド・トラップが仕掛けられていた。

 

「やりぃ!!今だよ!!」

 

 そう、今までコウタが攻撃に一切参加しなかったのはホールド・トラップを密かに仕掛けるためだった。

 ユウキ達は身動きが取れなくなったアルダ・ノーヴァに向かって一斉攻撃に入る。ユウキとソーマの斬撃で切り傷が付き、サクヤ、コウタ、アリサの銃撃が弾痕を作る。アルダ・ノーヴァは確実にダメージを受けていく。

 

『クッ!!調子に乗るな!!』

 

 ホールドが解除されたアルダ・ノーヴァの女神が両腕を伸ばして駒のように回転する。ユウキは後ろに下がって回避し、ソーマは上にジャンプしてアルダ・ノーヴァの回転に合わせて腹にフルスイングで神機を振るう。

 

『グアァ!!』

 

 アルダ・ノーヴァは攻撃体勢を取っていたこともあり、女神の腹部には斬られた痕を付けながら後ろに飛ばされる。

 反撃に転じようと、アルダ・ノーヴァ手をかざすと、真正面からユウキが飛びかかってきた。ヨハネスも攻撃体勢を取っている最中に真正面から突っ込んでくるとは思っておらず、アルダ・ノーヴァの動きが 一瞬止まる。

 

  『ドクン…』

 

 ユウキは両腕で神機を強く握ると、神機から鼓動を感じる。その瞬間両手の感覚が曖昧になる。さらには以前感じた腕が突然伸びる様な感覚になる。

 これはここ最近で掴んだ神機と一体になる感覚と同じだ。実戦でも訓練でもこの感覚を覚えた時はどんな相手でも一撃で切り捨ててきた。

 『これで行ける!!』と、止めを刺せると確信したユウキは全力で神機を振り下ろす。

 

『うぁっ!!』

 

 突然女神が後ろに下がる。男神に肩を掴まれて後ろに投げられたからだ。女神と男神が入れ替わった事で、ユウキと神機が一体になった攻撃は男神が受ける事になった。

 

  『ブシャァァ…!!』

 

 攻撃体勢でない状態にも関わらず、ユウキの一撃は男神を真っ二つに切り裂いた。

 

『大型の人工種が沈黙!!』

 

 ヒバリの通信が入ると、残った女神は一気にエイジスの中央塔の端に移動して天輪を掲げた。

 

『この…愚か者共があぁぁぁあ!!』

 

 ヨハネスの咆哮と共に天輪から明後日の方向に極太のレーザーが放たれる。だが、それを見た途端、ユウキはコウタの方に跳び、ソーマはサクヤの前に出て装甲を展開する。

 

「グエッ!!」

 

 ユウキが乱暴にコウタの首根っこを掴むとアリサの前に跳ぶとコウタを後ろに下ろして装甲を展開する。

 すると、レーザーはアルダ・ノーヴァを中心に扇状に回転する。

 

「ぐっ…おおぉぉぉあああ!!」

 

「があああぁぁぁああ!!」

 

 ソーマとユウキは装甲で極太のレーザー防ぐが、防ぎきれずに全身をウロヴォロスとは比べ物にならない威力で焼かれる。

 さらには壁となるユウキとソーマが居なくなった事で、サクヤ、アリサ、コウタにも極太レーザーが直撃する。

 

「「きゃああああああ!!」」

 

「うああああぁぁぁあ!!」

 

 第一部隊の叫び声がエイジスに響く。極太レーザーが辺りを凪ぎ払うと、あまり時間をかけずにレーザーは収束して消えていった。

 

「グッ…うぅ…」

 

 直撃を受けた後、直ぐ様ソーマは意識を取り戻した。神機を杖代わりにして辛うじて立て膝をつくことは出来たがまともに動く事も出来そうにない。辺りを見回すとソーマ以外は皆倒れてピクリとも動かない。

 最悪の状況を思い浮かべると、ヒバリから通信が入ってきた。

 

『…さ…!!……した……すか?!…………く…さ…!!……!!……………………!!』

 

 こちらの状況の変化に気が付いているようだが、ノイズでもはや何を言っているのかさえ理解不能だった。最後の方はもうノイズしか聞こえなかった。もうヒバリの解析によるサポートも受けられないだろう。

 どうにか立ち上がろうと必死に全身に力を込めるが、その度に全身に激痛が走り動けないでいる。

 すると、アルダ・ノーヴァがゆっくりとソーマの近くまで移動してきた。

 

『終わりだ…ソーマ。お前たちは負けだのだ。』

 

「う…るせぇ…まだ…終わ…って…ねぇ…!」

 

 こんな状況でもソーマは未だ戦う事を止めようとはしない。何度も立ち上がろうとするが、まだ全身に激痛が走る状態のままで、動く事が出来ない。

 

『そうか、あくまで戦うか…ならば、ゆっくり眠るがいい。』

 

 ヨハネスは小さくため息をつくと、アルダ・ノーヴァの右腕を伸ばし、その先に付いている楔がソーマ目掛けて飛んでくる。

 

「クッ!!」

 

 極太のレーザーを受けたソーマはダメージが大きすぎて未だに満足には動けない。『ここまでか…』と半ば諦めた様に目を瞑る。

 

  『ブシュ!!』

 

『なっ!!しまっ!!』

 

 アルダ・ノーヴァの楔が肉を貫き、血が吹き出る音が響く。しかし痛みは一向に襲ってこない。それどころかヨハネスにとって不味い事が起きたのか、珍しく狼狽える様な声が聞こえてきた。状況が気になり、ソーマは目を開ける。

 

「な…ユ、ユウ…お前…!」

 

 そこにはソーマを庇い、腹にアルダ・ノーヴァの楔が突き刺さったユウキが居た。しかも捕食されているにも関わらず、突き刺さった楔を引き抜こうと引っ張っている右腕を離すまいと神機を持っていない左手で必死に掴んでいる。

 

「これで少しは…リーダーらしい事が出来たかな?」

 

 口から血を流しながらも、痛がる事なく笑顔でソーマに語りかける姿はハッキリ言えば異常だった。

 その光景を見て呆けたソーマとは対称的に、ヨハネスは焦燥感を隠す事なく声を荒げる。

 

『クッ…は、離さんか!!』

 

「バ、バカ野郎!!早く離せ!!喰われるぞ!!」

 

「…」

 

 ヨハネスの声に反応してソーマが我に返る。触れただけで捕食するオラクル細胞の塊を腹の中に撃ち込まれた上に触れ続ければ無事ではすまない。

 ソーマが怒鳴り声に近い声をあげるが、ユウキからの反応はない。

 

『ええい!!離せぇ!!』

 

「クソッ!!」

 

 今度はアルダ・ノーヴァの左腕を伸ばしてユウキの左肩を狙う。このままではユウキの左腕ごと切り落とされかねない。ソーマは足に力を込めるが、ダメージが足に来ているのか、立ち上がる途中でよろけてしまう。

 アルダ・ノーヴァの左腕がもうユウキの右肩に届く。

 

  『ギィン!!』

 

『なっ!!』

 

 突如金属音が響くが、肉を貫く音や血が吹き出る音は聞こえない。何故ならユウキが一瞬のうちに神機を床に突き刺し、アルダ・ノーヴァの左腕がユウキに届く直前に右手で捕まれたからだ。

 人間離れした速さにヨハネスも驚いていると、不意にユウキが口を開く。

 

「離せ…?無理だね…」

 

 その瞬間 、ユウキがニタァと黒い笑みを浮かべる。

 

「強敵が身動き取れない…こんな絶好のチャンスは…そうないよなぁ?」

 

『クッ!!』

 

 ユウキが何を考えているか察しがついてヨハネスは焦り出す。どうにか自由になろうと必死に両腕を引き戻そうとしているが、ユウキがしっかりと掴んで離さないためジタバタと足掻いているだけとなった。

 

「なあ…まだ…終わってねえぞ…」

 

 突然ユウキはヨハネスでもなくソーマにでもない誰かに向かって語り出す。

 

「お前らは…こんなところでくたばる様な奴らじゃねぇだろ…この世界で…守りたいモノがあんだろ?!さっさと起きやがれ!!寝坊助共!!」

 

 ユウキの声が届いたのか、サクヤ、コウタ、アリサがピクリと動く。

 

「あ、ああ…こんなところで殺られるかよ…」

 

「当然…です…!」

 

「ええ…もうこんなチャンスは無いでしょうね…」

 

 コウタ、アリサ、サクヤがボロボロにされてもなお立ち上がり、ヨハネスを睨みながら神機を構える。

 そんな3人を見たソーマも立ち上がり神機を構える。

 

「これで終わらせるぞ…!!叩き潰せぇぇぇえ!!」

 

『クッ…クソッ!!』

 

 ユウキの咆哮を合図にアリサ以外が前に出る。アリサは後退して銃形態に変形すると、砲身を仲間達に向ける。

 

「渡します!!」

 

 アリサが受け渡し弾を与えてソーマとサクヤとコウタをリンクバーストさせる。

 

「オオオォォォォオ!!」

 

 バーストした身体能力を生かしてソーマが一気に前に出る。両腕をユウキに掴まれて動けないアルダ・ノーヴァに全力で袈裟斬りを叩き込む。

 

『グゥッ!!』

 

 アルダ・ノーヴァはユウキに掴まれている両腕ごと切られて大きく後ろに飛ばされる。さらにアルダ・ノーヴァの両腕が切り落とされた事でユウキが動けるようになり、突き刺されたアルダ・ノーヴァの腕を左手で引き抜きながら右手に神機を握り前に出る。

 

『クッ!!…この…!!』

 

 飛ばされながらも体勢を整えて反撃に移るが、すでにサクヤとコウタの神機が攻撃体勢をとっていた。

 

「当たれぇぇぇえ!!」

 

「くらいなさい!!」

 

 サクヤとコウタはリンクバーストで得た濃縮アラガミバレットをアルダ・ノーヴァに向けて放つ。コウタの神機からは3枚の刃が飛び出し、サクヤの神機からは極太のレーザーを放つ。

 

『グアァァァア!!』

 

 コウタの放った刃は旋回して後ろからアルダ・ノーヴァの髪を切り、サクヤの放ったレーザーは脚部装甲を焼き尽くしてどちらも結合崩壊させる。

 

『クソッ!!』

 

「させません!!」

 

 ヨハネスが悪態をついて反撃のために天輪を前に出そうとする。しかしその後に反撃する隙など与えないと、アリサが連続攻撃を仕掛ける。大きく飛び上がって剣形態に変形して、銃口をアルダ・ノーヴァの頭に向ける。

 

  『バアァアン!!』

 

 インパルス・エッジの大きな爆破音と共に、アルダ・ノーヴァの頭が爆発する。その衝撃で極太レーザーを射つために前に出した天輪は結合崩壊し、アルダ・ノーヴァも体勢を崩す。

 

『クッ!離れろ!!』

 

 ヨハネスもまだ倒される気はない。失った右腕の残った部分を伸ばして、鞭の様にしてアリサに反撃する。

 

  『ギィン!!』

 

「くぅっ!!」

 

 ギリギリで装甲の展開が間に合って、直撃は避けられたが衝撃で後ろに吹き飛ばされた。

 だが、その間にユウキがアルダ・ノーヴァに向かっていくのが見えた。アリサは飛ばされながらも銃形態に変形して、受け渡し弾をユウキに渡す。

 

「受け取って下さい!!」

 

 受け渡し弾をユウキに渡した後、後ろに飛ばされながら着地しつつ、ありったけの回復弾をユウキに撃ち込む。

 その間にユウキはアルダ・ノーヴァの前に出て眼前に飛び上がり、右手で握った神機を上段に構える。そのタイミングで受け渡し弾と回復弾が届いてユウキの傷が塞がり始めて、さらにバーストする。

 

「ジャラァア!!」

 

『くう!!』

 

 ユウキが右腕を全力で振り下ろす。それを避けようとヨハネスは後ろに飛ぶが、結局避けきれずに左肩から横腹まで深く切り裂かれた。

 だが、アルダ・ノーヴァも避けながら天輪を前に出して反撃の体勢になる。

 

『負けられない…私は、負けられないんだ!!』

 

 ヨハネスが吼えると光球を天輪から飛ばしてきた。しかし、アリサに破壊された天輪ではすぐに飛ばせる光球は一発が限度のようだ。

 その光球を反射的に左手で持っていたアルダ・ノーヴァの伸びきった右腕を光弾との間に挟んで防ぐ。直撃こそしなかったが、衝撃を吸収することなど出来るはずもなく、ユウキの左腕は勢いよく後ろに弾かれ、ユウキ自身も後ろに飛ばされる。

 だが、その瞬間ユウキの口角がつり上がる。そのまま鋭い目付きでアルダ・ノーヴァを睨み、不敵な笑み浮かべるその表情は獲物を前にした猛禽類を思わせた。

 

『ッ!!』

 

 その迫力にヨハネスは一瞬怯む。その間にユウキは真後ろからアルダ・ノーヴァに迫るソーマを見る。その視線には鞭の様にしなるアルダ・ノーヴァの右腕がソーマに向かうところが映る。

 ソーマもユウキが何を考えているのか気がついて、手元まで来たアルダ・ノーヴァの右腕を掴むと、ユウキは左腕を全力で縦に振る。

 

「ソォォォォオオマァアアアア!!!!」

 

 ユウキが吼えながら全力を超える力で左腕を振りかぶり、ソーマを加速させる。そしてその勢いでソーマは異常な速さで弧を描きながらアルダ・ノーヴァに迫る。

 

「オオオォォォォオ!!!!」

 

 ソーマが咆哮と共に神機を振り下ろす。

 

  『ブシャァァア!!』

 

『グアァァァア…!!』

 

 血が吹き出る音とヨハネスの断末魔が響く。辛うじて生きてはいるが、ソーマのイーブルワンで切られたグチャグチャに深く付けられた傷が右肩から左足の付け根まで走っている。

 

『この…私が…こんな…とこ…グゥ…アアァァァ…』

 

 アルダ・ノーヴァは一瞬だけ耐えたが、ダメージが大きすぎてすぐに膝から崩れ落ちた。

 

 

「はぁ…はぁ…や、やったか!?」

 

 突如エイジスが揺れ始める。何が起こったのかと思ったが、この場で本来止めるべきはアルダ・ノーヴァではない事を思い出す。

 

「いや!!まだだ!!まだノヴァが止まってない!!」

 

「クソ!あのデカブツ、どうやって止めるんだよ!!」

 

「一体…どうすれば…」

 

「諦めないで!!何か、何か方法があるはずよ!!」

 

 巨大なノヴァを止めようと、第一部隊は思考するが島1つ分の大きさのノヴァを止める方法などすぐに思い付くはずもなかった。

 

「む、無駄だ。覚醒したノヴァは止まらない…」

 

 そんな第一部隊を嘲笑うように、ヨハネスは無慈悲な現実を突きつける。

 

「この私が珍しく断言する。不可能です…」

 

 そして戦闘が終わった事を確認したペイラーがヨハネスと同様の事を言いながらエイジスに姿を現した。

 

「なんとかならねぇのか!!博士?!」

 

「残念ながらヨハンの言った通りだ。溢れ出した泉が、ノヴァが止まることは…ない」

 

「ふざけるな!!何か…何か手があるはずだ!!無いのなら思い付いた事を片っ端から試してやる!!」

 

 だが、そんな簡単にノヴァを止める方法など思い付くはずもなく、ユウキは 左手で拳を作り、自分の額をコツコツと叩きながら思考する。

 

(考えろ…!!考えろ!!アイツを止める方法、手段!!何か…何か!!)

 

「アラガミの行き着く先は星の再生…やはりこのシステムに抗うことはできなかったようだ。」

 

「ふざけるな!!ここまで来てそんな事…俺は認めねぇぞ!!」

 

 ソーマもまた抗えない運命だからと言って何故そんなものに従って死なねばならないのかと、焦りと怒りを露にしている。

 

「そう…それでいいのだ…ソーマ…お前たちは早く箱舟に…」

 

 『ゲフッ』と咳き込むと同時にヨハネスは血を吐く。

 

「支部長…貴方…もう…」

 

「余計な事は気にするな…もとより…あの船に私の席は…ない…」

 

「何ですって!?」

 

 思考しながらもユウキは『やっぱりそうか…』と思っていた。本当に自分達を殺してアーク計画を完遂するつもりならば、アルダ・ノーヴァの火力と特性を考慮して最初から最高火力で自分達に襲いかかればものの数秒で片がつく。

 それに、アラガミの居ない新たな世界に降り立つつもりならば、アラガミに取り込まれるなどと言う手段は取らなかっただろう。

 

「私は世界に多くの犠牲を強いた大罪人だ…新たな世界を見る資格など…無い…後はお前たちの…仕事だ…ふふ…適任だろう?」

 

「親父…」

 

 ソーマがヨハネスの事を『クソ親父』ではなく『親父』と呼んだ。これまでのやり取りでヨハネスが決して私利私欲のために動いていたわけではなかったと知って少しヨハネスに対する認識が変わったのだろう。

 

「アイーシャ、すまない…私たちは結局、こんな争いの先にしか答えを探せなかった…私たちは、君に償えたと言えるのだろうか…?」

 

「母さん…ノゾミ…ごめん…!約束…守れなかった…」

 

 ペイラーとコウタが諦めたように懺悔すると、ユウキはそんな雰囲気を払拭するように声を大にして叫ぶ。

 

「諦めるな!!アイツを止めれば良いんだろ!!」

 

「つっても…あんなのどうやって止めるんだよ…」

 

 コウタの問いに1つ思い付いた策がある。そしてそれはユウキやソーマの様な神機との適合率が異常に高い者であればもしかしたら出来るかもしれない事だ。

 

「喰う!!」

 

「えぇ?!」

 

 ユウキがあまりに奇想天外な事を言い出すのでコウタは思わず耳を疑った。

 

「アイツを喰い尽くす!!」

 

「そ、そんな事出来るわけないわ!!あんな大きさのアラガミをどうやって?!」

 

 サクヤも物理的に無理だと言うがユウキはそんな事お構いなしにミズチを展開する。しかし、何時ものミズチではなく全体的に紫色に着色され、所々淡い紫色に発光している三股の捕食口だった。

 

「俺は諦めない!!この世界で皆と生きる!!大勢の人を殺さずに済む…そんな方法を見つけるんだ!!」

 

 ユウキがコアに左手を添えると、少しずつ捕食口が巨大化していく。

 

「す、少しずつ…大きくなっていく?!」

 

「で、デカイ…!」

 

 ユウキが力を込めると、捕食口はさらに早く巨大化していく。

 

「も、もう少し…もう少しだ…!力を…貸してくれ!!相棒!!」

 

「す、スゲエ…」

 

「なんて大きさなの…ノヴァとほぼ同じ大きさの捕食口なんて…」

 

 ユウキが叫ぶと、それに呼応す様に一気に捕食口がノヴァよりも少し小さいと思えるような大きさになる。しかし、力の入れすぎなのか、神機に侵食されいるのか分からないが、ユウキの身体中の血管は異常なほど浮き出ていた。

 

「あと…ほ、ほんの…少し…!!」

 

 ユウキが奮闘する中、突如シオの体から触手が伸びて床に絡まり始めた。

 

「シオ!!」

 

 シオの変化に気が付いてソーマが思わず声をあげる。すると地鳴りが止まり橙色の輝きが失われて、ノヴァが活動を停止する。

 

「ありがとね…」

 

「…え?」

 

 突如辺りにシオの声が響いくと同時に橙色に光っていた所が青色に輝き、全員が驚く。

 

「みんな、ありがと。」

 

「これは…」

 

「シオ…なのか…?」

 

 聞き間違いかと思い、全員が戸惑っていると再びシオの声が響く。未だに信じられず、サクヤとソーマは確認するようにシオに語りかける。

 

「シ、シオ…」

 

「まさか…ノヴァの特異点となっても…人の意識が…残っているなんて…」

 

 予想外の事態にユウキとペイラーは放心した。そのせいで巨大化した捕食口も無意識に解除して霧散していく。

 そして、地鳴りをさせながらノヴァがゆっくりと上昇していく。

 

「ノヴァが…上昇していく?!」

 

「シオ…お前…何をするつもりだ!?シオ!!」

 

「お空の…向こう…あの、まあるいの…」

 

 シオが何をしようとしているのか分からず、サクヤとソーマが何をするつもりか聞くがシオは脈絡のない事を言っている。

 そしてシオの言う空の向こうの 丸いものと言えば1つしかない。

 

「えへへ…あっちの方が、お餅みたいで美味しそうだから…」

 

「ま、まさか…!!ノヴァごと…月へ…持っていくつもりか!!」

 

「シオ!!アイツまだ生きてるんだろ?!榊!!!!」

 

 シオが生きていると分かると、コウタはペイラーの胸ぐらを掴んで助ける方法は無いのかと問い詰める。

 

「わ、私にも分からん!!ただ…そんな事が…!!」

 

 ペイラー自身も何が起こっているのか分からず、混乱しているとシオが再び語りかけてくる。

 

「分かるよ…今なら…分かるよ…皆に、教えてもらった。本当の『人間の形』…」

 

「シオ…」

 

 シオなりに人間というものが何なのか答えを見出だしたのだろうか。ユウキ達が混乱しているのを余所に、シオはなおも語り続ける。

 

「食べることも…誰かのために、生きることも…誰かのために、死ぬことも…誰かを許す事も…それが、どんな形でも…皆、誰かと繋がってる。」

 

「何言ってんだ?!戻ってこいよ!!」

 

 コウタはシオが何を言っているのか分からず、早く戻ってこいと言うがシオは聞き入れてはくれない。

 

「シオも皆といたいから。だから今日は、サヨナラするね。皆の形…好きだから…偉い?」

 

「全然…偉くなんか…ないわよ…!!」

 

 シオが何をするつもりかようやく理解が追い付いたアリサが泣き崩れる。

 

「へへへっ…そっか…ごめんなさい…」

 

 するとノヴァの上昇が止まる。シオのコアが抜き取られたときに使った触手が未だにシオの体と繋がっているからだ。

 

「もう…行かなきゃ…だから、お気に入りだったけど…そこの、『お別れしたがらない』…自分の『形』を…食べて…」

 

「そんな事…出来るわけないだろ!!」

 

「ソーマ…美味しくなかったらごめん。」

 

 皆が助かるにはシオの体を喰うしかない。そしてシオ自身も皆を守るためにそれを望んでいる。

 

「…1人で勝手に決めやがって…」

 

「だけど…お願い…離れてても…一緒だから…」

 

 シオの最後のワガママを叶えてやろうと、ユウキが口を開く。

 

「…ソーマ…頼む…」

 

 ユウキの言葉でソーマはシオの元に歩き出す。その途中、下を向いているユウキを横目に見る。顔を伏せているがボロボロと大粒の涙を流している。

 そしてソーマはシオの前に来ると、捕食口を展開する。だが、すぐには捕食せずにノヴァとなったシオに向かって話しかける。

 

「シオ!!必ず迎えに行く…だから…良い子で待ってろ!!」

 

 シオへのメッセージを伝え終わると 、ソーマはシオの体を捕食した。

 

「ありがとう…皆!!」

 

 シオの最後の言葉が聞こえると、ノヴァが黒から白に変わって、勢いよく上昇する。その勢い地上に根のように張られたノヴァの一部を引きちぎりながら月へ向かう。そして宇宙に出るとノヴァは地上からでも見えるような大輪の花を咲かせて月を喰らい、新たな命を作り出していく。

 その途中、光の粒子がまるで雪の様に地上に降り注いだ。そしてソーマはその様子を記憶に焼き付けておこうと、周りがよく見えるようにフードを脱ぐ。そして目の前に降りてきた粒子を掴み取り、何かを誓うように目を閉じた。

 

「行こう…シオが守ってくれた世界…俺たちの手で守らなきゃ…」

 

 しばらくその幻想的な景色を見ていたが、ユウキの帰還命令で第一部隊はエイジスから引き上げようと踵を返す。

 しかし、ユウキだけはその場から動かなかった。

 

「支部長…まだ、生きてますよね?」

 

『…ぁぁ…』

 

 ユウキの問に弱々しい声でヨハネスが応える。

 

「以前話した『カルネアデスの板』…あれの答えをまだ言ってなかったですよね…」

 

『聞かせて…もらおう…』 

 

「俺が泳いでもう1人が舟板に掴まる…俺が疲れた替わってもらってもう1人が疲れたら俺と変わる…これが俺の答えです。」

 

 それを聞いた途端アルダ・ノーヴァとなったヨハネスは力尽きようとしているにも関わらず、大きく目を見開いて驚きた顔をしていた。

 

『フ…ハハ…最低な…答え、だ…命題の…解答…に、すら…なってない…とはな…』

 

 ヨハネスの言う通り、ユウキの答えはどちらが生きるか、或いはどちらが死ぬかと言う答えですらなかった。2人共生きると言った事やもう1人が協力してくれる事が前提だったりと無茶苦茶な解答だった。

 

「分かってます。でもあれは生きるか死ぬかを選ぶ命題ではなく、正しいか正しくないかを問う命題のはず…それについては正しくないと思って…でも自分が死ぬのも嫌だ…だから、協力して2人共生きる方法を探す道を選ぶ事にしたんです。」

 

『…』

 

 ユウキが自身の答えを得て、どんな考えに至ったかを語るが、ヨハネスからの返事はない。

 ユウキはヨハネスの命が尽きようとしている事を察し、ゆっくりと倒れているアルダ・ノーヴァに近づく。

 

「支部長…貴方の意思は俺達が引き継ぎます。多分貴方が思い描いた世界にはなりません…でも、貴方が目指した…人がアラガミに怯えることなく生きていける世界…そんな世界を作っていきます。」

 

 神機を逆手に持ち変えながら捕食形態に移行して、倒れているアルダ・ノーヴァの胸部…人間で言うと心臓に位置する場所の真上に持ってくる。

 

「…だから、アイーシャさんと…空の上から見守っててください。」

 

『…』

 

 もうヨハネスからの返事は返ってこないがまだ微かに息がある。だが、息があるのは彼がアラガミに取り込まれた故だ。そしてユウキは神を喰らう者…ゴッドイーターだ。ならばやることは1つしかない。

 

「さようなら…ヨハネス支部長…」

 

  『グチャ!!』

 

 ユウキはヨハネスに別れを告げると、嫌な水音と共にアルダ・ノーヴァのコアを喰らう。

 

「っ?!ユウ?!」

 

 突然後ろから血が吹き出る様な音が聞こえてきた。後ろにはユウキがいたはず。何かあったのではないかと思い、アリサが慌てて振り向く。

 

「何でもない。アルダ・ノーヴァのコアを回収しただけだよ。」

 

 ユウキが応えると同時に、それを証明するようにアルダ・ノーヴァが霧散していく。戦いは終わったがどこか浮かない表情のまま、ユウキはその場で佇んでいたが、すぐに皆の元に歩き出す。

 

((ありがとう…))

 

「っ!!」

 

 突然後ろから聞いた事がある男女の声が重なって聞こえたように感じて、ユウキは思わず勢いよく振り向く。しかし、後ろには誰も居ない。本当にただ聞こえた気がしただけのようだ。

 

「…ユウ?」

 

 コウタが不審に思い、恐る恐るユウキに声をかける。

 

「いや…何でもない…」

 

 そう言ってユウキは再び皆の方に向き直る。

 

「帰ろう…アナグラに…」

 

 そう言った時のユウキの表情は、さっきの様な浮かない表情ではなく、どこか落ち着いていてフワリとした優しい笑顔を向けていた。

 

 こうして、人の手によって作り出されたノヴァの驚異は去った。しかし、まだ、アラガミはこの地上を闊歩し続けている。そう、神の摂理さえもねじ曲げてしまった俺達に…楽園など与えられるはずもない。

 ただ、あの日を境に…俺の神機は天使の羽のような真っ白い色に変わっていた。月に遷都した神が人間に残した物は…この真っ黒なままの地球で永遠に…罪を償い続けるための道だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして同時に…人類と言う存在にとって最善の選択ではあるが、後に最悪の結末をもたらすであろう未来も回避された。しかしそれは、1人の男を■=〇■□〇〇への序曲が始まるきっかけでもあったのだ。

 その■■◻・=したとき…その男の■■…◻◻◻…そし▲■◻さえも〇▲せる事になるとは…このときの俺達は…知る由もなかった。

 

          極東支部第一部隊活動手記

           著:ソーマ・シックザール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カチッ』

 

 ■〇■■=が=〇■った。

 

To be continued




後書き
 これにてアーク計画編、最終話となります。シオが皆と一緒にいられる未来を信じて『今日はサヨナラするね…』と言ったのかと思うと胸に来るものがありますね。人間の心や生き方、在り方はそれぞれ違うが、それは何処かで誰かと繋がっていて、いつか巡り会うとシオが第一部隊と過ごして学んだ結果なのではないかと思ってます。
 最後は皆とシオの絆が起こした奇跡ですね。ちなみに月を捕食した際の花は百合の花に見えたので、百合の花言葉を調べてみたのですが、『純粋』『無垢』『威厳』だそうです。シオの性格を表しているとともに、ヨハネスやアイーシャが純粋に人類救済を望んでいた事も表している様に思えました。
 アーク計画編はこれにて完結ですが、恐らく後日談的なものを一話入れた後、バースト編に入る予定です。少し間が空くとは思いますが、また読んでいただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。