-極東支部-
防衛戦が終わり、ユウキは報告書を書き上げて提出するためにエントランスに向かう。エレベーターから降りたところで少し大きな声での話し声が聞こえてきた。
「本当なのよ!!糸が切れた人形見たいに崩れ落ちて…倒したと思ったわ!!でもすぐに立ち上がって逃げたのよ!!」
「つっても…あり得ないだろ、そんな事…なあ?」
「だよな。そんなのが居るんなら倒しようがないじゃん。」
珍しくジーナが取り乱している様な声をあげている。どんな内容なのか気になってユウキは話に加わる事にした。
「どうかしました?」
「ん?よう神裂。いやさ、さっきの防衛戦で新種が出たって話なんだが、それが「倒しても復活するのよ!!」…って事らしい。」
どうやらジーナと話していたのは彼女と交流のあるスナイパー使い2人のようだ。ちなみにこの2人はアーク計画の一件でユウキの評価を改めた者達だったので、ユウキに話しかけられても特に気にした様子はなかった。
だがそれよりもジーナから信じられない言葉が飛んできた事が気になっていた。
「バカな…コアは破壊か、剥離したんですよね?」
「勿論コアは破壊したわ。でもすぐに立ち上がって逃げたのよ。」
「…ジーナさんがそんな冗談を言うとは思っていませんが…倒しても復活するアラガミだなんて、にわかには信じられないですね…」
ジーナによるとコアを破壊して倒しても蘇生するアラガミに遭遇したと言うのだ。彼女がデマを流す人とは思わないが本当にそんなアラガミがいるのかは疑わしいところだ。そんなアラガミが実在するのなら倒しようがない。
「なら第四部隊の子達にも聞いてみて。同じ事を言うと思うから。」
「あ!博士に報告…」
「もうしたわ。サンプルが無いと何とも言えないって言ってた。それじゃ…」
表情には出てはいないが、少し不機嫌になったジーナがエレベーターに乗ってエントランスから出ていった。それを見届けたユウキはヒバリに報告書を提出して、訓練室に向かった。
-翌日-
防衛戦の翌日、第一部隊はツバキからの呼び出しがあり、ユウキはエントランスで皆を待っていた。
「おはよー。」
「おはよう、コウタ。」
しばらくすると珍しくコウタが一番最初にエントランスにやって来た。挨拶をすると軽く世間話を始めて、待ち時間を潰す事にした。
「昨日の防衛任務、結構ヤバかったんだって?」
「うん。数も結構いて…犠牲者を出してしまった…」
「そっか…ごめん。もっと早く戻れれば…何か手伝えたかも知れないのに…」
コウタが神妙な面持ちになる。自分の家族が外部居住区に住んでいるため、思うところがあるのだろう。
「アラガミが倒されてる件の調査であちこち移動してたんだから仕方ないさ。それに、現場に居たのは俺達だ。『俺が』もっと強ければ…独りでも皆を守れる力があれば…きっと…」
ユウキはうつ向いて拳を握る。チラリと見えた苦悶の表情からは悔しさや自責の念が滲み出ていた。
「スト「ユウ!おはようございます。」…ップ…」
ユウキがマイナス思考に染まりつつあったのを感じ取って、コウタは思わず止めに入るが、それはアリサによって阻まれた。結果的に目的は達成出来たのでその場は大人しく引き下がった。
「あ、おはようアリサ。」
「どうしたんですか?何だか暗いですけど…」
アリサもさっきまでの会話の雰囲気を察したのか、あるいはユウキの表情が明らかに暗いものだったからか、何やら様子がおかしい事を指摘する。
「いや、何でもない。それより、昨日の事聞いた?」
「はい。防衛任務中に新種が乱入したとか…」
「しかも蘇生能力付きだ。」
今度はコウタの後ろからソーマが現れて、新種の特徴を補足する。
「うお?!なんだソーマか…ビックリした。」
後ろから声をかけられてコウタは驚き飛び退いた。
「おはよ、ソーマ。」
「ああ。ツバキが来る前に少し話がある。」
「え?なになに?!」
ソーマが真剣な表情で報告があることを伝えると、コウタは何か楽しい話かと思い、無邪気に催促する。
「楽しい話題ではなさそうだね。」
だがユウキはソーマの様子を察して、素直に楽しめる話ではないと感じた。
「まあな。しばらくしたらノヴァの残滓の回収と研究のサポートをする事になった。そうなったら今までの様に任務に出られなくなるかも知れない。」
「う"…!!マジか…」
研究のため、任務に出られる頻度が少なくなると伝えるとコウタが思わず唸る。
「緊急の任務や防衛戦には勿論参加する。その時は遠慮なく声をかけろ。」
緊急時には任務を優先するとは言ってくれるが、それでも主戦力のソーマが任務に出られなくなるのはかなり痛い。
「でもソーマが簡単に任務に出られなくなるのは痛いですね…」
「その辺は榊のオッサンも分かってるハズだ。ある程度は融通を聞かせてくれるだろ。」
「任務と研究の両立か…大丈夫?」
ソーマが任務と研究を兼任する事となったと知ると、ユウキはその負担が大き過ぎないか心配する。
「いや、俺は一応はひとつの事に集中できるからな。お前らは通常任務に例の事件の調査に博士からの任務もある。」
そこまで言うとソーマは親指をユウキに向ける。
「こいつに至ってはそれに加えて毎日の訓練を欠かさないうえに、周辺の禁忌種討伐も請け負ってる。俺達よりもよっぽど忙しいだろうな。」
「ハハ…そうだね…」
ユウキは日々の訓練に通常の任務、それに加えてアラガミが倒される事例の調査に最近増えてきた禁忌種の討伐とやることが一気に増えたきた。
階級が上がり、少尉になったからと言って楽ができるなんて事はなかった。そのくせ、責任のある仕事が増えて大変な思いをしているのも事実だ。ユウキは渇いた笑みを浮かべる事しか出来なかった。
そうこうしているうちにツバキがやって来た。
「全員揃っているな。」
ツバキが全員と言ったところでコウタがある疑問を持つ。
「あれ?サクヤさんは?」
「サクヤは別動隊を率いてアラガミが倒されてる件の調査だ。 今回はこの4人で動いてもらう。」
「分かりました。それで任務の内容は?」
サクヤは別動隊を率いてい る…要するに今回の任務はこの4人で遂行する事になる。その事を了承したユウキは任務内容の説明を求める。
「『ハンニバル』…昨日の防衛戦で新種が発見された白い身体の蜥蜴…いや、竜の様な外見の新種だ。そのハンニバルが旧ビル街に現れた。サンプル取得も含めてターゲットを討伐するのが今回の任務となっている。」
討伐対象は昨日の防衛戦に現れた新種にアラガミであるハンニバルだ。しかし、もしそうなら1つ気になる事がある。
「あの、ツバキさん。この新種には蘇生能力があると聞いてます。その能力への対策は何かあるのでしょうか?」
ユウキが聞く前にアリサが気になった事をツバキに尋ねた。話の通りなら蘇生能力があるはず。この能力の対策をどうすれば良いのか、現状対策があるのかをアリサは聞いている。
「いや、現状対策らしい対策はまだない。それを見つけるためのサンプル採取でもある。蘇生能力についてはコアの欠片が僅かでも残っていると再生するためか、コアが複数あるかのどちらではないかと言うのが支部長代理の見解だ。倒した後は速やかに撤退するように。」
「となると…可能性を潰す意味でもコア周辺をごっそり捕食してコアを回収するのがベストですね。」
現状では蘇生能力はどうしようもないらしい。倒したらコアを回収して即撤退するのが望ましいようだ。
「そうだな。それから先日交戦したジーナと第四部隊の報告から炎を扱うようだ。恐らく火属性の攻撃は効果が見込めないだろう。それ以外の装備を携行する事を視野に入れておく様に。」
「了解。」
「よし、それでは頼むぞ。」
任務の確認を終えると、ユウキ達は各々準備に入った。
-神機保管庫-
「あっ!ユウ!ちょっと!!」
氷刀新を装備した神機を受け取りに保管庫に入ると、リッカに止められた。
「なに?」
「何か装甲と装甲の展開パーツがかなり痛んでるんだよね。傷も今まで見たことも無い傷だし…何か心辺りはない?」
その言葉を聞いた途端、ユウキからダラダラと冷や汗が流れ始めた。
「…ユウ?」
「…そ、装甲を使って跳ねたとか…かな?」
「え?何それどういう事?」
何を言っているのか理解出来ずにリッカは思わず聞き返す。着地の瞬間に装甲の展開を利用して跳ねた事を伝えると、リッカは大きなため息をついた。
「ハァ…そんな使い方したら痛むに決まってるよ…ここ最近忙しすぎてろくな調整も出来てないんだから、無理な使い方はしないで。この任務が終わったら強制フルメンテだからね!」
「え?!ちょっ!!それは困る!!」
今回の任務が終わったらフルメンテナンスのためにしばらく使えなくなる…それを聞いた途端、ユウキは焦りを見せてフルメンテナンスを止めるように言うが、リッカは聞き入れてはくれなかった。
「絶対ダメ!!ユウの命にだって関わるんだから!絶対に使わせないからね!!」
「…分かった…」
ものすごく渋い顔をしながらユウキは諦めて了承する。
「もう少し素直に言うこと聞いてくれないかなぁ?そんなに私の事嫌い?」
リッカが涙目で拗ねたのでユウキは焦ってリッカが言った事を否定する。
「い、いや!そんな事はないよ!ただ…ただでさえ時間が無いのにまだ何も成し遂げていない、動けない現状で出来る事って言えば…動けるようなった時の為により多くの資金と資財を集めておく事くらいしかないからさ。」
「…あまり根詰め過ぎないでね?」
「?…うん。分かった。」
ポカンと間抜けな顔でユウキは返事をする。恐らく目の前の男はリッカの言った事をキチンと理解していないのだろうな…と思いながら話を終える。
「じゃあ、そろそろ行くよ。」
「あっ!ごめん!最後に1つだけ。一月前に開放された『天ノ咢』…実戦で使ってみたかな?」
アーク計画の後、開放されたプレデタースタイル『天ノ咢』について聞かれたが、ユウキは気まずそうに視線を逸らせて頭を掻いた。
「ああ…いや、あれは展開が遅すぎて扱いが難しすぎる。この間だって展開しきる前に解いちゃったし…常にアラガミの動きを誰かに止めて貰わないと…」
「うーんやっぱりか…なかなか実戦のデータが取れないなぁ…」
天ノ咢が開放されたばかりの頃、実戦でアラガミをダウンさせてから使ってみたは良いが展開が遅すぎて捕食するより先にアラガミが体勢を立て直したため、結局捕食せずにとどめを刺した事を思い出しながら話していく。
「今日でなんとか使ってみようかな。」
「いや、無理に使わなくてもいいよ!!ユウが帰ってくる事の方が大事だし。あっ!ほら、そろそろ行かないと!」
リッカが焦った様子で無理には必要は無いとユウキを止める。横目で時計を見ると、ユウキが来てから少し時間が経ったので、任務に行くように促す。
「おっと!そうだね。 行ってきます。」
「うん。行ってらっしゃい。」
-嘆きの平原-
「アイツがハンニバル…」
待機ポイントでそう呟くユウキの視線の先には白い身体の竜が映っていた。
「よし、最終確認だ。今回の任務はハンニバルの討伐、及びコアの回収…ただし蘇生能力があるので、コア回収後に離脱…その後蘇生までのデータを取る。」
「分かりました。」
ユウキがみんなの方を向いて任務の最終確認をすると、代表でアリサが返事をする。
「それから、今回の任務では俺は神機の力を引き出す事はしない。」
「ええ?!何で?!」
ユウキが神機の力を引き出す事をしないと伝えると、コウタが心底驚いたような声をあげる。
「今回の目的はデータ収集だ。一撃で倒してしまったら攻撃方法や弱点、習性と言ったデータが取れなくなるだろう。」
「あ、そっか。でも勿体ない気もするなぁ。その力を使えば一瞬で任務も終わるのに。」
ソーマが任務の目的を再確認させるとコウタも納得した。
「まあ、ヤバいと感じたら迷いなく使うさ。データ取りも命あっての事だからね。それじゃ、行こうか。」
ユウキは再びハンニバルを見据えると、目付きが鋭くなる。
「任務…開始!!」
ユウキの合図と同時に第一部隊は待機ポイントから飛び降りてハンニバルに向かって走る。
『グォォォオオ!!』
ユウキ達を見つけたハンニバルは右手を地につけて構える。そして左手を上に向けて炎を吹き上げながら 尻尾で地面を叩き付けて吠える。
「アリサとコウタは後ろ!!ソーマは右から周り込め!!」
ユウキは指示を出すと正面からハンニバルに突っ込み、アリサとコウタは後ろに下がり、ソーマは右からハンニバルの横に周り込む。
『ブンッ!!』
ハンニバルの左腕が空気を切り裂きながらユウキを殴る。それをユウキは後ろに下がって回避する。しかし、ハンニバルは一歩踏み込んで右腕で殴り追撃する。
「シッ!!」
ユウキは追撃をジャンプして躱すと小さく息を吐いて神機を横凪ぎに振ってハンニバルの頭部を切り裂き、その衝撃でハンニバルの身体の向きを無理矢理横に変える。
「今です!!」
「いっけぇ!!」
ハンニバルが体勢を崩した隙に後方からアリサとコウタが弾丸を乱射して、ハンニバルはそれを両腕でガードを固める。
「くたばれ!!」
向きを無理矢理変えたハンニバルにソーマが正面から迫る。しかし、ハンニバルは左腕のガードを解いて地面に着くと、左腕を軸にして身体の上下を反転させて上に跳んでソーマの攻撃を躱す。
「チッ!!なんて器用な奴だ!!」
その巨体からは想像も出来ないようなアクロバットな動きでソーマの一撃を回避する。その様子を見てソーマは思わず舌打ちをする。
その間にユウキは着地し、ソーマも追撃の体勢を取る。しかし、ハンニバルの口元から炎が漏れている。このままだと反撃を受けてしまう。ユウキとソーマは咄嗟に回避する体勢を取る。
『ゴォォォオオ!!』
ハンニバルが火の輪を口から吐き出した。
「「っ!!」」
ユウキとソーマは火の輪を離れるように横に跳んで回避する。さらに火の輪は真っ直ぐに飛び、アリサとコウタの方に飛んでいく。
「こんなもの!!」
「当たるかよ!!」
アリサとコウタも横に大きく移動して躱す。しかし、火の輪がさっきまでアリサとコウタがいた場所を結んだ場所に来ると、火の輪が爆発した。
「あっぶねえ!!」
「大きく移動しなければ巻き込まれていましたね。」
結果的に爆発を躱したことに安堵していると、その間にユウキとソーマがハンニバルに向かう。
しかしハンニバルが二足で立ち上がると両手に炎が集まり、剣の形に姿を変える。
「クソッ?!」
「なに?!」
ハンニバルは炎の剣を振り下ろしてユウキとソーマの神機を受け止める。すると、ハンニバルは両腕を振り抜いてユウキとソーマを弾き飛ばす。
ユウキとソーマが体勢を崩している間に今度はハンニバルは炎の槍を作り出し、大きくジャンプする。そしてコウタに向かって急降下する。
「うわぁあ?!あっぶねえ!!」
想像以上のスピードにコウタは思わず飛び退いた。ギリギリで回避すると、標的を失った槍が地面を突き刺した。この隙にアリサの援護射撃が入るが、当たる直前でハンニバルが軽くジャンプして躱す。
ハンニバルは空中で体勢を立て直すと口から炎のブレスを吐き出してアリサを焼き付くそうと する。
「くうぅ!!」
思わずアリサの顔が険しくなる。咄嗟に剣形態に変形して装甲を展開して防御する。幸いにもアリサの神機に装備されているプリム・ストーンは炎に強い装甲だったため、アリサにも神機にも大したダメージはなかった。
「足元がお留守だぞ。」
いつの間にかソーマがハンニバルの左前方に来て神機を振り上げようとしていた。
ソーマの声に反応してハンニバルは左腕の籠手で防御すると、ソーマの一撃が籠手を砕いて結合崩壊を引き起こした。
そのままソーマが追撃するために神機を振り下ろすが、ハンニバルは後ろに跳んで回避する。
「おぉぉぉおお!!」
頭を狙い、ユウキが跳びながら吼えつつハンニバルに向かっていく。それを横目で確認すると、ソーマは神機の峰が上に来るように振り上げる。
「ユウ!!乗れ!!」
ソーマの声を聞くと同時にユウキはイーブルワンの峰に足をかける。その瞬間 、ソーマが神機を振り下ろす 。するとユウキはものすごい勢いでハンニバルに迫る。
「くたばれ!!」
ユウキの怒号が響くと同時に袈裟斬りでハンニバルの頭と胴体が切り裂かれて大量の血が吹き出す。そのまま着地し、逆袈裟斬りを放つがハンニバルは後ろに下がって躱す。
「逃がさないよ!!」
コウタが逃げた先に弾幕を張る。しかし、ハンニバルは背中に着いている突起で弾幕を受け続ける。
『バギィ!!』
固いものが砕けるような音と共に背中の突起が結合崩壊を起こす。
『グォォォオオアアア!!』
ハンニバルが怒りで活性化すると同時に、背中に炎の輪が現れ、その周りに6枚の羽根が生える。
「なに?!」
「な、なんかやばそう…」
「ユウ!!」
これまで戦闘中に形態が変わるアラガミは居たが、ハンニバルもその類いのアラガミだろうかとユウキは考えていたが、その何れも基本的に強くなる、本気を出せる形態になる場合が多かった。
どちらにしてもこのまま無策に攻め続けるのは危険だ。一瞬でも様子を見て『一撃』で仕留める。
「全員一旦下がれ!!ソーマは回避に専念!!あとは遠距離から攻めろ!! 」
ユウキの合図と共に一斉に距離を取る。ユウキも銃形態に変形して遠距離から攻撃する。
しかしハンニバルは攻撃を自分を抱き締めるような格好で防御しつつ少しずつ上に浮き上がっていく。
『グォォォオオ!!』
ハンニバルが両腕を広げると、ハンニバルを中心に大きな火柱が上がる。
「きゃあ!!」
「あっぶね!!」
「クソッ!!」
「チッ!!」
ハンニバルを包むように現れた火柱からさらに四方に新たな火柱が飛び出してきた。さらに新たに飛び出してきた火柱は渦を巻くような軌道で動いているので、避けるのが難しかったが、全員なんとか避けきった。
(なるほど…背中の突起を破壊すると本来の力を発揮するのか。言うなれば竜の逆鱗と言ったところか。)
火柱を避けきると、ユウキは未だ浮いているハンニバルに向かって走る。しかし、ハンニバルは両腕に炎の剣を持ち、両腕を外から内に振ってユウキをスライスしようとする。
しかし、ユウキは身体を捻りながら炎の剣の間を抜けハンニバルに迫る。
「とどめだ!!」
地面に降り立つ瞬間を狙いユウキはハンニバルの胴を切り裂き、大量の血を吹き出すハンニバルの横を抜けていく。
「チィ!!狙いが逸れた!!」
本来なら胴から上を切り捨てるつもりだったが、無理矢理ハンニバルの攻撃を抜けて反撃したため、狙いった場所を斬ることが出来なかった。
追撃のためユウキは即反転する。しかしハンニバルはゆっくりと膝から崩れ落ちて倒れていった。
「倒した…コアは破壊してないよな?」
「まさか出血多量か?…何にしてもまだコアの摘出は済んでいない。慎重に近づくんだ。」
そう言ってユウキ達は神機を構えながらゆっくりと近づく。全員が目と鼻の先になるまで近づいたが、それでもハンニバルは起きる気配はない。
「よし。今のうちにコアを摘出する。」
そう言ってソーマはシオが見せた捕食形態と同じ天使の羽でできたような白い捕食形態を展開してコアをめがけて神機を突き出す。
『グジュッ!!』
粘着質な水音と共にソーマの神機がハンニバルを噛み千切る。そのままコア周辺の素材ごと捕食する。
「…レア物だな。」
「まあ新種だしね。」
ソーマのレア物発言にユウキは突っ込みを入れると、ふと座り込んでいるコウタに目を向ける。
「いやあ、強敵だったね。すぐに蘇生するって聞いてたけどそんなこともなかったし。案外どうにでもなるもんだね。」
そう言ってコウタは神機の銃口で倒したハンニバルの口を開けたり、頭をつついたりして遊んでいた。
「なにバカなことしてるんですか!!コアを回収したら即撤退するのが今回の任務です。早く戻りますよ!!」
「同感だ。」
「帰るよ、コウタ。」
コアは回収した。ならば本来の目的通り、撤退してコアを極東支部に持ち帰るべきだと、コウタ以外は待機ポイントに向かい歩き出す。
「えー!せっかくカッコいい新種なのにー!」
皆が帰ろうとするのを見たコウタが急いで立ち上がりユウキ達に続く。しかしもう少し新種を眺めていたかったのかブーブーと不満を言う。
「まったく…」
『危険な相手に変わりないんですよ?』と言葉を続けようと後ろを向くと、恐れていた事態が発生した。
「っ!!コウタ!!後ろ!!」
「なに?!」
「チィ!!」
アリサの声に反応してソーマとユウキが後ろを向く。そこには倒したはずのハンニバルが炎を纏って浮かんでいる姿が目に映った。
「え?うしろ…うわあぁぁぁあ!!」
すぐ真後ろで蘇生したハンニバルを見て、コウタは驚きのあまり尻餅を突いてしまった。
さっきのお返しと言わんばかりにハンニバルは右腕を振り上げて攻撃体勢を取る。
「クソッ!!今になってか!!」
ユウキが悪態をつきながら庇うためにコウタの前に出て装甲を展開する。
『ガギッ!!』
しかし展開の途中で異音が鳴ると、そこで展開が止まってしまった。
(ヤベッ!!)
そう思った時には既に遅かった。展開しきってない装甲にハンニバルの爪が突き刺さる。
『メキメキベキッ!!』
硬いものを砕く音と共にティア・ストーンが砕ける。そのままハンニバルの爪は守りを失ったユウキの腹を引き裂いて弾き飛ばす。
「ガハッ!!」
飛ばされた先の壁でユウキは頭をぶつける。打ち所が悪かったのか、そのまま気を失ってしまった。
「ユウ!!」
アリサがユウキの元に駆け寄り、取り敢えず生きている事は確認できた。
「クソッ!!コアを摘出しただけじゃ駄目だったのか?!」
「何にしても撤退です!!コウタ!!ユウの事お願いします!!」
「わ、わかった!!」
「俺が時間を稼ぐ!!早くユウを離脱させろ!!」
アリサの指示でコウタはユウキを背負い、待機ポイントまで走る。そしてアリサは銃口をハンニバルに向けたまま少しずつコウタの後を追う。
アリサからユウキが待機ポイントに着いた事を確認すると、アリサも撤退した。その後、ソーマを除き全員が撤退した事を確認すると、ソーマはスタングレネードを投げつけ、ハンニバルの視界を奪った後、戦闘領域を離脱した。
To be continued
後書き
ハンニバルと初戦闘です。初見でも大した事ないと思ったのは私だけではないはず。しかしルックスやモーションがカッコよくて私は大好きです。炎で武器作ったりして夢が広がりました。
炎で武器を作ったりした辺りで『やたらと人間臭い動きをする奴だなぁ』と感じたのでここでは他のアラガミにはない人間の様な出血多量でも死ぬと言う特性を付け加えました。(今後この特性が生きてくる事は無いとは思いますが…)