-食堂-
新人達が来てから1週間程過ぎ、ユウキは任務をこなしながら新人達の指導をして、その傍らでペイラーの研究室に出入りする毎日を送っていた。
そんなある日の朝、食堂で5人前は軽くあるであろう朝食を摂っていると、アリサが朝食を持ってえ現れた。
「ユウ、おはようございます。」
「もふぁおう。ふぁりふぁ。」
「…ちゃんと飲み込んでから喋って下さい。」
アリサが食べながら喋るユウキをジト目で睨むと、ユウキは頬張った食事をギャグ漫画の様に一気に飲み込んだ。
「ふぅ…ゴメンゴメン!つい反射的に返事しちゃった。」
「もう…」
呆れながらユウキの前に座ると持ってきたサンドイッチとミニサラダを食べていく。しかし、朝っぱらから異様な量を食べる大食漢を見ているとどうしてもそちらに視線が向かう。
「…よく朝からそんなに入りますね…」
「昨日任務で遅くなったから晩御飯食べ損ねちゃって…」
『お陰で地獄を見た。』とユウキは苦笑いをする。と言うのも昨日の任務の帰りにヘリがアラガミに落とされてしまったのだ。襲撃は大したことはなく、パイロットも無事に生還した。しかしそこから迎えのヘリがなかなか来なかったので、日付が変わる辺りまで待ちぼうけを食らっていたのだった。
深夜に帰ってから食堂が開いている訳もなく、配給の食材は既に食堂に引き渡している。結局朝まで何も食べる事が出来ず、食堂が開くまで空腹感と戦うハメになったのだ。
そんな話の最中、ユウキはふと思い出した事をアリサに聞いてみた。
「最近ソーマの研究の方はどう?確か手伝ってたよね?」
「ソーマは相変わらずですね。研究室に籠りっぱなしです。一応正規の回収班が動いているんですけど、例のアラガミが倒されている件の調査の片手間に私とサクヤさんとコウタでノヴァの残滓の回収任務や、研究素材の回収をしたりしてます。私たちの知る限りでは今のところは順調ですね。」
聞く限りではソーマの仕事(手伝い)は順調らしい。しかしソーマの手伝いをしている者達がユウキを除く第一部隊のメンバーと言う事を知るとユウキはなにやらどんよりとした雰囲気を放った。
「…あれ?俺ハブられてる?」
「そんな訳ないじゃないですか。ユウはただでさえ忙しい上に身体の事もあるんですから、ソーマも遠慮してるだけですよ。」
現状ソーマは基本的に研究に専念、サクヤとコウタとアリサがアラガミが倒されている件の調査とソーマの手伝いをしている。
ユウキはその分彼らがこなすはずの通常任務を処理しつつ例の件の調査、そして禁忌種が現れた際の緊急の任務、新人の教練、空いた時間は自身の鍛練、それ以外でもアラガミ化が進行している事でペイラーの研究室に足を運ばなくてはならない。この辺りを考慮した上でソーマはユウキに手伝いを頼まなかったのだ。
「それはそうと、教練の方は順調ですか?何か手伝える事があれば言って下さいね。」
「ウーン…順調…なのかな?神機の扱いに慣れる訓練の最中なんだけど、そろそろ新型ならではの戦術も教えた方が良いかなぁ?」
今度はアリサが手伝える事はないかと話してきた。しかし新人を育てると言う事自体が初めてで完全に手探り状態だ。手伝ってもらうにしても何をしてもらえば良いのかユウキ自身にも分からない。どうしたものかと首を捻っていると、アリサが1つ提案をする。
「戦闘訓練の中で神機の扱いに慣れさせると言うのはどうですか?2つの訓練が同時に出来て時間短縮にもなると思います。」
『こんな時極東では一石二鳥って言うんですよね?』とアリサが言うと、ユウキもその案は理にかなったものだと思った。新人達も少ないが既に実戦に出ている。すぐには出来なくても最終的には自身でその場の状況を判断して適切な動きをしてもらわなければ新人達もその周りも困る。
実戦に出ればアラガミは待ってはくれない。神機の操作にだけ集中出来る環境ならうまく扱えても、実戦で神機を使うのが下手では格好の餌食となる。そうならない様に訓練に時間を割ける今のうち実戦形式の訓練をした方が良いのかも知れない。
「なら…アリサに立ち回り指導をしてもらいながら俺が神機の運用を見るか…」
『立ち回りはゲンさんにも聞いてみた方が良いか…?』と大豆肉の肉丼を食べながら考えていると、今度はアリサの後ろ、ユウキの正面からアネットが現れた。
「あ、神裂先輩!アリサ先輩!おはようございます!」
「あ、おはよう。」
「おはようございます!」
それぞれ挨拶をすると、アネットはおずおずと話しかけてきた。
「あの、ご一緒してもよろしいですか?」
特に断る理由もないのでユウキとアリサは了承すると、アネットは礼を言いながらアリサの横を通って、ユウキの隣に行く。
(な、何故ユウの隣に…?)
アネットはワザワザ遠いユウキの隣に座り、このあとの予定を聞きあったりしながら朝食を食べていく。残念ながらこの日ユウキは丸1日任務があるので訓練を見れないと伝えるとアネットはショボくれていた。
その様子を見ていたアリサにはユウキを狙っている様にも見えたため、食事中アリサの警戒度が若干上がっていたのは本人しか知らない事だった。
-翌日-
昨日のアリサと話していた新人達の訓練をするため、朝からユウキとアリサは管制室から訓練室を眺めていた。訓練室ではアネット、フェデリコ、ユーリがオウガテイルを2体相手にしている。
「ん~…好きに動いてみてとは言ったけどこれは…」
「…自由過ぎますね…」
新人3人共、言葉通り各々好きに動いているのだ。フェデリコがオウガテイル2体から攻撃を受けているが、いつまでも反撃しないため装甲を展開し続けてひたすら攻撃に耐えている。
(フェデリコは…神機の各操作が遅いか。これはまだ操作に慣れていないせいかな…?防御一辺倒になるのはその辺りを無意識に不安に感じてるからなのかも…まさか全部マニュアル操作してるのか?)
フェデリコの戦い方を分析して自分なりにその原因を考えていると、今度はアネットがオウガテイルの1体にハンマーを振り下ろす。フェデリコへの攻撃の直前で気が付いたオウガテイルがフェデリコから離れてハンマーを避ける。
追撃に向かうアネットだったが、重量級の装備のせいか動きが鈍重なため、追撃が間に合わずにオウガテイルが反撃する隙を与えてしまう。案の定オウガテイルは尻尾を振り回して迎撃体勢を取るが、それを見たアネットはチャンスとばかりにオウガテイルに突っ込む。尻尾を脇腹に叩き込まれながらも力押しで踏みとどまり、ハンマーを振り下ろしてオウガテイルを叩き潰した。
(アネットは逆に攻撃のみか…装甲の展開も回避もない。殺られる前に殺るタイプか。あの重量級の神機構成のデメリットを承知した上での動きなのか?どちらにしてもあのままじゃ早死にするぞ…)
アネットの場合は神機その物が重量級と言う事もあり、どうしても機動力が落ちてしまう。そのため回避も防御もワンテンポ遅れてしまうので、アネットは『回避も防御も間に合わないなら先に殺ってしまえばいい』と言う戦い方をしているのだ。
しかし、その戦い方は相手の動きを読み、反応出来ない速さで敵を討たなければならない。アネットはまだその領域にたどり着くには未熟過ぎる。こんな無鉄砲な戦い方では早々に命を落としかねない事をユウキだけでなく、アリサも気にかけていた。
そんな中、ユーリの方を見てみると、銃形態でフェデリコの援護をしつつアネットの方を何度か見ていたが、結局アネットへの支援は間に合わず、そのままフェデリコの元にいるオウガテイルを倒すまで撃ち抜いてた。
(ユーリは突出したものはないけど全てに置いて平均的だ。その分動きの自由度は高いが…逆にその自由さが長考してしまう原因なのか?そこは経験を積むしかないけど…)
基本的にユーリは単騎ではどんな場面にも対応できるが、仲間の支援となると途端に動きが悪くなる。平均的な能力のお陰でどんな場面でも幅広いサポートが出来るが、その分選択肢が多くなる。今回も装甲を構えているフェデリコよりも攻撃を受けようとしているアネットの援護をするべきだったが、理想的でベストな選択を考えている間に状況が変わって戦闘が終了してしまったのだった。
『討伐訓練終了です!どうでしたか?』
ユーリが上を見上げてユウキ達に報告するとアリサが受け答えをする。ユウキはそのやり取りを聞いて思考の海から現実に意識を引き戻した。
「まだ自分の事で手一杯…と言う印象でしたね。もう分かってると思いますけど、任務は基本チームで動きます。それぞれが自分の役割を理解しているのとしていないのでは任務の難度は大きく変わってきます。今回の場合は、誰か1人が後ろに下がって全体を把握した上で連携の指示を出すと大きく改善できると思います。」
「連携のパターンの一例として、ユーリが後ろで援護しつつフェデリコを最前に置いて攻撃を防御、攻撃後の隙をついてアネットが切り崩して立て直す前にユーリが接近して捕食。そのあと即離脱してリンクバーストでとどめって言うのが良くある連携かな?その辺りの指示を後ろに居るユーリが出すのが今の3人で考えられるベストな連携になると思う。」
「そうですね。パターンは違いますけどこの連携は私たちも良く使うので、実用性はあると思います。」
アリサが問題点とその改善策を提示し、ユウキがその具体策を挙げていく。今の内容でそれぞれの動きの特徴を踏まえた上での役割を与えて連携の練習をさせていく。理想を言えばこの役割分担で自身の動きを客観的に見て理解出来れば良いのだが、まだ新人の彼らには難しいだろう。
『と言う言は…人員の配置も意識しないといけないんですよね?』
「そう言うこと。もう1度同じ配置でホログラムを出すから、次はユーリが後衛とアシスト、フェデリコとアネットが前衛で隙を作ってとどめ。この連携が可能な配置を考えて準備するんだ。」
一応は今回行う模擬戦で使う戦術について、何が重要なのかは理解しているようだ。敵は何なのか、何処に現れるのかが分かっている。そのため、後は戦術を最大限に生かすように自分達を配置しなければならない。
3人は1度集まってどんな配置にするかを話し合っている。しばらくすると配置が決まったのか3人は移動していく。フェデリコを先頭にその後ろにアネット、少し右に離れてユーリが既に銃形態に変型して神機を構えていた。
「配置についたね。それじゃあ始めるよ。」
ユウキが端末を操作すると、フェデリコの正面にオウガテイルが現れ、さらにはそこから右にもう1体のオウガテイルが出現した。
「アネットとフェデリコはそのまま前に!!俺がもう1体を抑える!!」
模擬戦が始まると、ユーリが離れているオウガテイルに弾丸を撃ち込み、フェデリコが剣形態で正面のオウガテイルに斬り込む。しかし体勢を崩すにまでは至らず、オウガテイルが尻尾を振り回して反撃する。
「隙が出来た…アネット!!」
「せーのっ!!」
それを装甲で防御すると、オウガテイルは尻尾を振り抜く事が出来ずに隙を作る。その間に後から追い付いたアネットがハンマーでオウガテイルを上から叩き潰す。そしてユーリはもう1体のオウガテイルを撃ちながらアネットが攻撃を加えたオウガテイルに近づくと、剣形態に変型して捕食する。
「バーストさせる!!フェデリコはもう1体の方を!!」
「分かった!!」
その直後、ユーリは後ろに下がりつつ銃形態に変型して、受け渡し弾をアネットとフェデリコに渡してリンクバーストさせる。そしてアネットはもう1度神機を振り上げると、バーストした腕力を乗せてオウガテイルをペシャンコに叩き潰してミンチにした。
そしてフェデリコはモタつきながらも装甲を収納すると、残ったオウガテイルの元に走る。その間、ユーリが再び残ったオウガテイルに銃弾を撃ち込み、隙を作る。フェデリコが到着すると、アラガミバレットを発射して最後の一撃を与える。これで当たれば良し、倒せなくてもフェデリコによるとどめが待っていると踏んでの事だった。
しかし、アラガミバレットによる攻撃はオウガテイルが後ろに跳んだ事で狙いが逸れ、両足を吹き飛ばす程度となった。
だが、素人目から見ても明らかなこのチャンスをフェデリコが見逃すはずもなく、足を失ったオウガテイルが地面に倒れる前に神機を振り抜き、オウガテイルを両断した。
-エントランス-
「それじゃあ、連携についてのおさらいです。」
訓練が終わり、今回の総括と反省点を話し合いが一区切り着いたので、アリサがまとめに入る様に促す。
「連携で重要なのは自身と出撃メンバーの役割を認識する事です。自分とメンバーの動き方や得意な戦い方を考慮した上で戦術を組む事が出来れば戦闘がグッと楽になります。」
「自分や仲間の苦手だったり不利な部分で勝負に出ない事も重要だね。」
アリサが要点をまとめて、ユウキが簡単に補足する。何が言いたいのかは理解したようで、アネットとフェデリコは納得した様な表情になったが、ユーリは少し難しい顔付きになった。
「なるほど…連携を取るときは自分だけでなく同じチームの人の戦い方を知る必要あるんですね。」
「でも、それでは以前神裂先輩から聞いた話と少し食い違う所がある気がするのですが…」
ユーリがユウキから聞いた話と今聞いた話では違う所があると言うと、今度はユウキがその事を思い出そうと難しい顔付きになる。
「ん~…?どんな所?」
「今の不利な部分…苦手な部分では戦わないって所です。新型には高い支援能力があるのは分かりましたけど、神裂先輩は支援は得意ではないとも言ってました。この状態で部隊に新型神機使いが先輩しか居ない場合、苦手な支援のための動きになると思います。こんな時はどんな風に戦えば良いのでしょうか?」
確かに、ユウキは以前新人達には新型神機ならでは支援を重視した動きを真っ先に覚えろと言った。しかし、ユウキの様に新型でありながら支援が苦手と言う者は必ずいる。そう言った状況で自らが支援に回らなければならなくなった時はどうすれば良いのか…と言う事を聞きたいのだろうとユウキは捉えて、
「そうだな…結論から言うと状況次第だね。知っての通り、俺は前線に出るアタッカーだけど、最低限の中衛、後衛での支援能力もあるつもりだ。俺が前線に出る必用のない状況や相手なら後ろで援護するし、前に出る必用があるなら本来のアタッカーの動きに支援のための動きを組み込んで戦ったりするね。」
「結局全部出来た方が良いって事でしょうか?」
ユウキ自身も支援能力が高い訳ではないが、最低限支援が必要な場面では斬り込みながらも支援する事はできる。要するに前衛の戦術に支援の動きを組み込んだ戦い方が出来ると言う事だ。
それを聞いたユーリは前衛と後衛、そして支援の 全ての戦術をマスターする必要があると感じたようだ。
「最低限のレベルには達していた方が良いって言うのは間違いない。ただそれでも得意不得意はあるから、不得意を克服する程度になったら得意な部分を伸ばした方が良いと思う。」
「そうですね。どんな部隊でも人員の選出は得意な分野を観て決めるので不得意な部分を極めるまで訓練するよりも得意な部分を伸ばす方が色々と都合が良いですね。それに、チームで動くと言う事は、苦手な部分はそれが得意な誰かがカバーしてくれます。自分に出来ない事があるからと言ってそこまで気にする事はないですよ。」
例外はあるものの、通常任務はチームで運用する。そこで役割と言うものがあるのなら、それ以外の部分はそれを担う者に頼ればいい。何時かツバキがユウキに送った『自分を使い仲間を使う』と言う言葉をユウキなりに考えてその答えを伝える。しかし、ユウキ自身がその答えから離れていっている事には気が付いていなかった。
「ただ…覚えていてほしいのは、俺達が今まで教えてきた戦術は自由度の高い討伐任務での戦術なんだ。施設や民間人を守りながら戦う防衛任務や隠密性が必要になってくる偵察任務なんかは討伐任務とほまた違う動きを前提にしたものもある。そこは各部隊で指導を受けて欲しい。」
『あまり憶測で指導して間違った事を教える訳にもいかないからね。』と付け足すと、アネットとフェデリコは何処か気まずそうな表情になる。
「?…どうかしたの?」
「あの…その…実は、所属部隊での戦い方とか…何だか教えてもらえる様な雰囲気じゃ無いんです。」
部隊内で何かあったのかと聞いて見ると、アネットから指導を受けられる状態ではない事が明かされた。
「…どう言う事ですか?」
「えっと…部隊内の人の様子が変なんです。同じバスターを使うブレンダンさんの動きを観察してみたんですけど…何と言いますか…任務に集中してないように思えて…カノン先輩は何処と無く上の空って感じで…なので今のところはタツミさんに防衛任務の事を教わってます。」
「俺も似たような感じです。シュンさんやカレルさんには嫌われてるのか避けられてて…ジーナさんから防衛任務の事を聞いてはいるんですけど…どうにも抽象的過ぎて理解が…」
(未だにアーク計画の事を引き摺ってるって感じか…第二部隊は自身への問答でアネットの事まで手が回らない…第三部隊は新型使いそのものを嫌っている節があるから関わらない…か…)
ブレンダンとカノンはアーク計画での自分の選択を悔い、どうにかその後悔を払拭する事ばかりを考え、アネットの事をタツミに丸投げ…シュンとカレルは新型神機使いであるユウキを中心にアーク計画を止めたと言う事で、同じ新型であるフェデリコを毛嫌いしているのだろう。
防衛任務では施設や民間人のを護ると言う制限があるため、討伐任務よりもさらに高度な連携を要求される場面が多い。そんな中、同じ部隊の人間の戦い方を知る機会さえないと言うのは非常にマズイ状況と言えるだろう。
(支部全体の士気も下がってるし…マズイな…)
まさか極東支部での冷戦の影響がこんな形で出てくるとはユウキも思ってはいなかったため、この話を聞いてからは少し焦りをみせていた。
「ユーリはどう?配属先の部隊は?」
「今話に上がった様な事は特にないですね。遊撃部隊の立ち位置や役目やら…まだ最低限のところですけど、教えてもらっていますから。」
「うぅ…このままじゃユーリに置いてかれる…」
フェデリコがユーリに部隊の現状を聞くと、一応指導を受けているようだ。その話を聞くとアネットが項垂れる。
「部隊内での新人教育については俺からも言っておくよ。話を聞く限りじゃ…ちょっとマズイ…」
「いいんですか?そんなことまで…」
「ろくな訓練も受けられないせいで任務が失敗したり、君達が命を落とすなんて事にはしたくない…上手く行くかは分からないけどやれるだけやってみる。」
「…ありがとうございます!」
流石に部隊内で新人の指導が進んでいないと言う現状はどうにかして解消しなくてはならない。冷戦の原因でもあるユウキが何かを言った所で火に油かも知れないが、何もしないよりは良いだろう。
訓練の総括を打ち切ると、ユウキは立ち上がり第二、第三部隊のメンバーを探しに行った。
-食堂-
総括の後、防衛班を探しに支部内を周ってみたが結局見つからなかった。夕食時になり、腹が減った事もあってユウキは取り敢えず食堂に向かった。
「あ!!シュンさん、カレルさん。」
食堂に着くと目当ての人物、シュンとカレルが居た。どうやら2人共夕飯が終わりかけのようで、皿にはもう料理は無かった。ユウキが声をかけると、2人は露骨に嫌そうな顔になる。
「チッ!!」
「ちょっ…!ちょっと待ってください!!」
ユウキの顔を見た途端に、シュンとカレルは舌打をして席を立ち、足早に食堂を出ていく。ユウキはそれを追いかけ、いつの間にかエントランスに続く廊下まで来ていた。
「シュンさん!!カレルさん!!」
「チッ!!何なんだよさっきから!!鬱陶しいんだよ!!」
何時までも着いてくるユウキにいい加減ウンザリしたのか、シュンが声を荒らげながら振り向く。
「いや、この間入ってきた新人のフェデリコが第三部隊ではどんな指導を受けているのか聞きたくって…」
「知るかよ!!同じ新型で何でも出来る『英雄様』が教えてるんだから俺達が教える事なんざねぇだろ!!」
「そう言う事だ。お前が教えてるならそれで良いだろ。」
シュンとカレルは新型を使うユウキが指導しているならそれで良いとして、さっさとその場から去りたいと言う雰囲気が出てきている。
「そう言う訳にもいかない!フェデリコが最も活動する部隊で部隊員の動きを知らなければ連携さえ難しくなる!そうなるとフェデリコだけでなく第三部隊の生存率も…」
「うっせぇんだよ!!胸くそ悪い偽善者が偉そうに説教すんじゃねえ!!お前みたいな優等生に俺達の何が分かるってんだよ!!」
なおも食い下がり、フェデリコへの指導状況の改善を迫るユウキにシュンが遂にキレた。
「…俺は心が読める訳でもない。だからアーク計画の件でアナグラの空気が悪くなっているのは分かっても、その中身って言うんでしょうか?そこまでは分かりません。話してくれないと皆が何について蟠りを覚えるのか分からないんです。」
「何でテメェに話さねぇと行けねぇんだよ!!消えろ!!ウゼェんだよ!!」
ユウキ自身、極東支部が冷戦状態なったのは自分達がアーク計画を止めた事が原因だとは分かっている。そしてこの冷戦状態をどうにかしたいとも思っている。しかし、ここまで来るともう個人の問題になる。こうなると実際に伝えてもらわないとどうすれば冷戦を解消出来るのか分からない。たがこの様子では話してくれないだろう。
「…分かりました。今回はこの辺にしておきます。ただ、フェデリコはアーク計画の件には関係ないはずです。だから、そこは割り切って指導してあげて下さい。」
これ以上は平行線になるだろう。取り敢えず一旦引き上げる事にしたユウキは『それじゃあ。』と言ってユウキは食堂に引き返した。
To be continued
後書き
今回は後輩の指導と冷戦の影響を垣間見る回でした。冷戦の影響で新人にとばっちりが来ましたが実際になこんな事になるんでしょうかね?と書き終わった時に思いましたが…大丈夫ですよね?