ツバキが訓練状況の報告を終えて支部長室から出てくると、リンドウがエレベータ前のベンチに座っていた。
ツバキ「リンドウ…もう部屋に戻っていると思ったが…何か用か?」
リンドウ「あ~…用と言うか…最近チョイと考えてることがあるんですよ…」
そう言うとリンドウは自分が考えていたことを話始める。
リンドウ「このままアラガミを倒すだけで良いのかって思って…」
ツバキはリンドウの発言を聞き、表情を険しくする。
リンドウ「アラガミを倒すことで驚異を遠ざけることはできても、新入りみたいな境遇の人の助けにはならないって実感したんですよ…」
ツバキ「言いたいことは分かるが…こんな現状では自分のことだけで精一杯なのが現実だ。それに…そのような人を救いたいと思うのは結構だが、足りないものが多すぎる。そんな資源も資金もない。お前はもちろん、フェンリルにもな…」
ツバキが言うことももっともである。地表の世界はアラガミに支配され、あらゆる物資が不足している。そんな中、安全も確保できない地域で人々が生きていくことは至難の技である。要するに、安全に暮らせる場所を確保するための資源と資金をフェンリルでも用意できない状態なのだ。
リンドウもツバキもその事については理解してるつもりだが、やはり納得はできないようだった。気まずい空気の中、2人はエレベータに乗り込んだ。
-翌日-
起床すると通信端末にエントランスに来るようにとリンドウから連絡があった。指示に従い、エントランスまで行くことにした。
エントランスに来たはいいがリンドウの姿が見当たらない。仕方ないから出撃ゲート前のソファで座って待っていることにした。すると銀髪に眼帯をつけた細身の女性が隣に来た。彼女『ジーナ・ディキンソン』は許可を得て隣に座ると、話しかけてきた。
ジーナ「そう言えば貴方、リンドウさんと出たんだってね?運がいいわね。」
なんのことかよくわからず、ユウキは首をかしげる。
ジーナ「ここでは、リンドウさん程生き延びるのがうまい人はいないわ。多分、くっついてれば死ぬことはないでしょ…」
ここで一旦話を区切る。
ジーナ「そうね、まだ来たばかりだし分からない事が沢山あるでしょう?何かあったらいつでも聞きに来なさい。」
コウタ「おはよー…」
エントランスに来たコウタがテンション低めに挨拶してきた。ジーナも挨拶を返していた。
コウタ「訓練がキツくってさ…体力には自信あったのに…」
体力自慢だったらしいがゴッドイーターになってからは通用しなくなって落ち込んでいた。
コウタ「あ!でもツバキさんに『周りをよく見ている分、連携に大きな期待ができる。』って言われたんだ。すぐに実戦に出て追い抜いてやるからな!」
そうしているとリンドウがエントランスに来た。こちらに気づいて話しかけてきた。
リンドウ「お、もう来てたのか。どうだ?少しはここの生活に慣れたか?」
こんな短期間で慣れる訳もなく、ユウキは首を横に振る。
リンドウ「ははは!そりゃそんなすぐには慣れないか。なら、今日はお前と親睦を深めるために飯にでも…と言いたいところだが…ま、例によってお仕事の話だ。」
そう言うとリンドウはユウキを連れて下へ降りていった。降りながら任務の説明を始める。
リンドウ「今度の任務では、遠距離専門の神機使い『橘サクヤ』に同行してもらう。準備ができたら、ヒバリのところで俺が発注したミッションを受けてくれ。いいな?」
任務内容を理解したので、ユウキは頷く。
リンドウ「あぁ、それとな…サクヤは俺の腐れ縁なんだ...まぁ、気のいいやつだから怖がらないでやってくれ、よろしく頼む。」
説明が終わるとユウキはヒバリにミッションの発注をしてもらおうと思ったが、黒髪に赤いジャケットを着た男『大森タツミ』がヒバリと話を続けている。
タツミ「今日も無事帰ってこれたよヒバリちゃん!だからデートしない?」
こちらに気づいたヒバリが無理矢理話を終わらせてこちらに話しかける。
ヒバリ「タツミさん、他の人の迷惑になりますのでこの話は終わりです。お待たせしました。ミッションの受注ですよね?」
そこまで言われてようやくタツミがこちらに気がついた。
タツミ「おっと、もしや期待の新人か!ちょっと先輩らしところも見せとくか!もう知ってると思うけど、ミッションを受けるときは、このカウンターで申請するんだ。無事にミッションを達成した後は清算されて、口座に報酬が振り込まれる。ま、ほどほどに頑張れよ!これからよろしくな!」
ヒバリ「リンドウさんからの依頼で、サクヤさんとの合同ミッションが追加されています!サクヤさんはとても綺麗で優しい人で、きっとすぐに仲良くなれますよ!」
まあ確かに美人だった。まあミッションにそんなことは関係ない。ミッションを受注するとそのまま現地に向かった。
-嘆きの平原-
巨大な竜巻を中心に、地面が大きくえぐり取られている平原についた。竜巻の影響か、周囲一帯は分厚い雲が広がっている。少し離れた所にビルの残骸が残っている辺り、旧時代ではビル街だったのだろうか。待機ポイントにはすでにサクヤがいて、こちらに気づいて話かけてきた。
サクヤ「昨日の新人君ね?確か神裂ユウキ…だったかしら。私は『橘サクヤ』って言うの。よろしくね。」
自己紹介が終わるとユウキが力んでいると感じ、肩を叩き、おどけた雰囲気を出して落ち着かせる。
サクヤ「もしかして緊張してる?肩の力抜かないと、いざと言うとき体が動かないわよ。」
ユウキは理解したという意思表示のため、頷いた。
『グオオオオォォォ...』
突如付近にアラガミの咆哮が響く。するとサクヤのおどけた雰囲気が消えて、真剣な表情になった。
サクヤ「さっそくブリーフィングを始めるわよ。」
そう言うと作戦内容を伝える。
サクヤ「今回の任務は君が前線で陽動、私が後方からバックアップします。遠距離型の神機使いとペアを組む場合、これが基本戦術だからよく覚えておいて。くれぐれも先行しすぎないように。後方支援の射程内で行動すること。OK?」
ユウキは了承の意味で頷く。
サクヤ「うん!素直でよろしい。頼りにしてるわ。さあ、始めるわよ。」
そう言ってユウキとサクヤは待機ポイントから飛び降りた。平原の中心は竜巻と共に大きく反り立っている。そのため、左右どちらかから迂回しなければならない。ターゲットとなっている2体コクーンメイデンを探すため、左から迂回する。すると運よく1体目を見つける。
コクーンメイデンがこちらに気づいて、オラクル弾を一度真上に飛ばし、一度停止した後、こちらに向かって飛んでくる。それを避けてステップで近づいてすれ違いながら切る。するとサクヤが通信機を使って話しかけてくる。
サクヤ「こいつが今回のターゲット、コクーンメイデンよ。実物を見るのは初めてかしら?コクーンメイデンは移動しないけど、こちらを正確に狙う射撃攻撃をしてくるわ。そして接近すると、体内にある針を伸ばして攻撃してくから気をつけて。」
言い終わる頃にはサクヤはユウキと軸をずらした後方からコクーンメイデンを撃ち抜いていた。そのため、1体目はあっさりと倒した。捕食して、素材とコアを回収すると、2体目を探し始める。
近くにいたため、さっきと同様にすれ違いながら切りつける。するとコクーンメイデンの上半身が伸びた。サクヤはこれが攻撃の予備動作と知っていた。
サクヤ「下がって!!!」
サクヤは叫ぶが、コクーンメイデンはすでに攻撃体制に入り、針を伸ばしてきた。当たる。サクヤはそう思ったが、ユウキは攻撃を見てからステップで後ろに下がり、避けたのだ。
サクヤ「なっ!!!」
サクヤは率直に新人とは思えない、と思った。一応サクヤも攻撃の瞬間は見える。しかし、それに体がついていけるかと言われれば答えはNOだ。見えても体が反応できないのだ。しかしユウキは反応できる。これは高い反射神経についていける体を持っていることになる。身体能力が高いのがその理由なのか?そんなことを考えているとコクーンメイデンを上下に切り分けられていた。
これで任務は終わり。そう思っていたが...
『ガアアアァァアア!!!』
突如獣の咆哮が響く。そう虎に似たアラガミ『ヴァジュラ』が現れた。新人に倒せる相手ではない。サクヤは撤退を指示しようとするが、その前にユウキがヴァジュラに斬りかかる。当然ヴァジュラもこちらに気づく。
サクヤ「ああもう!帰ったらお説教よ!」
ヴァジュラは切り裂く様に前足を振り上げる。ユウキは横に跳んで避ける。避け際に、前足の付け根を切る。効いた様子もなく、そのまま飛びかかってくる。跳んで来るヴァジュラの下をステップで潜り、無防備になった尻尾に斬りかかる。今度は相当効いたのか、大きく仰け反った。
サクヤがその隙を見逃すはずもなく、ヴァジュラの腹に撃ち込む。しかし、このままではサクヤがヴァジュラに狙われる可能性がある。そこでユウキは後ろ足を斬りながらヴァジュラの眼前に出るが、ヴァジュラが飛びかかるため構える。するとサクヤが前足を撃ち抜いて、風穴を開けた。ヴァジュラはたまらず倒れる。その隙に捕食してバーストする。直ぐに銃形態に変形して、手に入れたアラガミバレット3発全てサクヤに受け渡し弾として射つ。するとリンクバーストが発動し、サクヤがバースト状態になる。しかも通常のバーストと違い、限界を越えたバースト、リンクバーストLv3となる。
サクヤ「すごい…!これがバースト状態?!」
倒れたヴァジュラの顔面を斬りつける。すると、いつものように吹き飛ばすとはいかないがヴァジュラを動かした。このとき、ヴァジュラも体制を立て直した。ユウキは飛び上がり、神機を突き刺そうとするが、ヴァジュラの周囲に電流が走る。ユウキは電撃に直撃し倒れる。痺れているのか動けないでいる。ヴァジュラがユウキを喰らおうと口を開けて近づいてくる。しかし...
『ダァン!!!』
スナイパーのものとは思えない大きな炸裂音が鳴り響く。その瞬間、雷球がヴァジュラの体を貫き、巨大な風穴を開けて倒した。ユウキは体の痺れがとれず動けないままであったため、サクヤはユウキを抱えて待機ポイントに戻っていった。
-極東支部、病室-
目を覚ますとユウキは病室で寝かされていた。起き上がると枕元に書き置きがあることに気づいた。
『俺の部屋に来るように リンドウ』
とだけ書かれていた。読み終わるとちょうどルミコが入ってきた。
ルミコ「あ、もう動けるんだ。特に異常もなかったし、好きに動いていいよ。」
動いていいようなのでそのままリンドウの部屋に向かう。部屋に着くとリンドウとサクヤがいた。
リンドウ「おう、来たか。そう言えば、俺の部屋に来るのは初めてだな。どうだ調子は?」
リンドウの問いに対してユウキは特に反応はなかった。
リンドウ「元気が無いみたいだが大丈夫か?体調管理も立派な仕事だぞ。具合が悪いならちゃんとメシ食ってしっかり寝とけよ。」
こちらに気を使っているのか命令無視の事には触れない。するとサクヤが口を開く。
サクヤ「お疲れさま!さっきのミッション、初めてにしてはなかなかいい連携で動き易かったわ!」
予想外にもサクヤはユウキとの連携がよかったと誉めていた。が、
サクヤ「…って言いたいところだけどね、油断は禁物よ。成熟していなかったとはいえ、新人の貴方がヴァジュラを相手にするのがどれだけ危険かわかったでしょ?命令を聞く前に突っ込んだのも減点よ。以後こんなことの無いようにね。」
厳しい口調でしかりつける。
サクヤ「それに、銃と剣…両方使えるって事がどういう事か考えてみて。旧型には出来ない事を、貴方はしなくちゃいけないの。それだけでも大変なのにあんまり無茶すると体が持たないわよ?」
確かに、剣と銃を使えると言うことはそれだけ臨機応変に対応しなければならないということだ。ユウキは表情に出さないが反省した。
サクヤ「…なんてね!大丈夫!何かあったら助けてあげるわ。一人前の神機使いになるまで、しっかりサポートするからね!」
さっきとは売って変わっておどけた口調になった。そのまま次のミッションのことを聞いてエントランスに向かう。エレベータを降りると金髪の青年『カレル・シュナイダー』とシュンが話している。そのまま横を通ろうとすると、話しかけられた。
カレル「ほぅ…噂してるそばから現れたか、新型さんよ。それも特殊能力ってヤツか?見た目はただのガキだが…ま、せいぜい頑張って稼ぎな。」
シュン「そうそう、逃げ回るのはネズミの美徳ってな…男の価値は撃破数と報酬だぜ!」
嫌みのつもりだろうか?味方を全員生かして返すよう頑張っている男だって十分にカッコいいと思うが。ユウキはこの話に無意識にリンドウを重ねていた。
シュン「あ!そういえばお前んとこの隊長みたいだな。これは、失敬失敬!」
リンドウに対しての陰口だったようだ。その事を理解した瞬間、表情こそ変わらなかったが明確に殺意を覚えた。殴りかかろうと拳を握ると不意に手を捕まれ、下の階につれていかれた。手を引いていたのはコウタだった。
コウタ「…くそっ!あいつら、人のことバカにしやがって…」
どうやらコウタもあの2人になにか言われたようだ。
コウタ「あそこの2人、絶対新人イジメするタイプだぜ!あーあ…あんなのと一緒にミッションに行きたくないなぁ。」
全くだと同意する。しかし、怒りを抑えリンドウに言われたミッションを受注するため、ヒバリのもとに向かう。…案の定タツミがいた。タツミを押し退けヒバリにミッションの申請をするが…
タツミ「だぁー!今ヒバリちゃんとイイ所なんだから邪魔するな!」
…厄介なことになった…
-鉄塔の森-
鉄塔の森に着くと、赤いベストを全開にして、全身に刺繍をいれた派手な男が近づいてくる。
エリック「ああ、君が例の新人君かい?噂は聞いてるよ。僕はエリック、『エリック・デア=フォーゲルヴァイデ』。君も精々僕を見習って、人類のため華麗に戦ってくれたまえよ?」
挨拶をしていると後ろのフードを被った青年が何やら構えている。すると
ソーマ「エリック!上だ!」
エリック「ん?」
青年が叫ぶとユウキは後ろに跳ぶが、エリックはその場から動かず上を見た。するとオウガテイルがエリックに飛びかかってきた。
エリック「う、うあああああぁぁぁ!!!」
オウガテイルがエリックに馬乗りになる。
『グチャッ!!!!!』
嫌な音と共にエリックの頭が食いちぎられた。あまりの突然の死にユウキの頭が真っ白になった。
ソーマ「ボサッとするな!」
ソーマがオウガテイルを切り裂き、吹き飛ばす。そこには頭を食いちぎられたエリックだったものがいた。
ソーマ「ようこそ…クソッタレな職場へ…」
ソーマがなにかを言っているが頭に入ってこない。ただエリックのだったものから目をそらすことができない。
ソーマ「俺の名は『ソーマ』…別に覚える必要は無い。言っとくが、ここでは人が死ぬなんて当たり前の事だ。」
ソーマが神機を突きつける。ここでようやく目線だけソーマに移すことができた。
ソーマ「お前はどんな覚悟を持って『ここ』に来た?」
…覚悟?なんだそれは?まさしくユウキの心情を表すとそんな感じだった。ただ適合していたから流れで神機使いになった。そんな自分になんの覚悟があるというのだ。そんなことを考えていた。すると微かにソーマが笑ったように見えた。…なぜ笑える?
ソーマ「なんてな…時間だ。行くぞルーキー…とにかく死にたくなければ、俺にはなるべく関わらないようにするんだな…」
しかし、ソーマが背を向けると直ぐにオウガテイルとコクーンメイデンが沸いてきた。アラガミを見た瞬間、ユウキにどす黒い感情が沸いてきた。
ユウキ(次に死ぬのは俺なのか?あんな風に頭を食われて腕も足も、ナニもかも喰われて、なくなる…?オレがシヌ?…嫌だ、オレはシにたくナイ。まだイキていたい。死ぬのが…怖い)
ここでようやく自分がどんな仕事をしているか理解した。神機を持ったからと言って、死なないわけではない。戦場と言うものを表面的にしか理解していなかったのだと思い知らされた。そして同時に、黒い『何か』が沸き上がるような感覚になる。。
ユウキ(そうだ…コロされるなら…その前に殺してシまエばイイ…!!)
するとソーマが攻撃しているのとは別のオウガテイルを斬りつけ、怯ませる。その隙に蹴り飛ばし、オウガテイルを遠ざける。そして高台にいるコクーンメイデンを攻撃するため、高台を蹴り上がり、そのまま脳天から真っ二つに切り捨てた。そして、銃形態に変形し別の高台のコクーンメイデンをひたすら撃ち抜いた。オラクルを使いきる頃にはコクーンメイデンを倒していた。下を見るとソーマがオウガテイルを2体とも倒しており、任務が終了していた。ふと足元を見るとオウガテイルを蹴った方の靴底がなくなっていた。恐らく捕食されたのだろう。そんなことを考えているとヒバリから通信が入った。
ヒバリ『…これにて任務完了です。すみません…私が気を付けてればこんなことには…』
ソーマ「…フン」
暗い声色で話すヒバリ、ソーマも若干の苛立ちを見せていた。しかし、ユウキはいつも通り無表情だった。
To be continued
今回は試験的にミッション2つ分を詰め込んで見ました。その結果字数が多くなって若干雑になったような気がします。(じゃあやるなよ)そして強敵相手に敗北、目の前の死に恐怖を覚える主人公。これが彼のトラウマであり、行動理念になります。