GOD EATER ~The Broker~   作:魔狼の盾

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ここから8割オリジナル要素のリザレクション編スタートです。


リザレクション編
mission71 予兆


 大いなる陰謀を止めた者達…この中にとある少年がいた。その少年は後に助からない筈の仲間を救い出し、英雄として仲間から多くの信頼を得るようになった。

 しかし、英雄は永い人生において、この瞬間が絶頂期だった。

 ここから先は…少年が運命に踊らされ、狂っていくと分かりながらも、自ら狂う事を選ぶ物語…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が優しいのは、ここまでだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで…」

 

 現在、第一部隊は神機と大きな荷物を背負い…

 

「やって来ましたっ!!山ぁぁぁ!!」

 

 山に来ていた。

 

「元気だなぁ、コウタは。」

 

「準備の手伝いもしないで、はしゃぎ過ぎですよ。」

 

 コウタ以外の第一部隊のメンバーがテントを設置出来そうな場所を探している中、コウタは『ヤッホー!!』と叫んでいた。

 そもそも何故第一部隊が山に来たのか…それは1週間程前に遡る。

 

 -1週間前、極東支部-

 

「どっか遊びに行こうぜ?」

 

「「「「…はい?」」」」

 

 珍しくコウタが第一部隊にエントランスへ召集をかけた。何の話かと思い来てみれば、突拍子もなく遊びに行くぞと言うのだからその場に居たユウキ、リンドウ、ソーマ、サクヤは気の抜けるような返事しか出てこなかった。ちなみにアリサは任務でこの場には居なかった。

 『ごめん、どういう事?』とユウキが聞き返すと、コウタが腕を組んでその発送に至った理由を話し始める。

 

「いやだってさ、リンドウさん帰ってきたし、リンドウさんとサクヤさんが結婚したし、リンドウさん以外昇進したし、ソーマの任務も終わったし…今俺達波に乗ってるし…なんかこう、パァーッと打ち上げ的なことやりたくね?」

 

 コウタの言う通り、ここ最近でリンドウの生還を皮切りにプラスとなる結果や成果が出ているのも事実だ。第一部隊はユウキが中尉に昇進、ソーマ、サクヤが少尉、コウタとアリサが曹長となったが、リンドウは生存が確認されたため、二階級特進は取り消され、元の少尉に降格となっている。

 さらにはソーマが請け負ったノヴァの残滓回収の任務も終了したとのことで、色々とめでたい事が続いているため、打ち上げをするならこのタイミングしかないだろう。その事を熱く語るコウタを尻目に、ユウキはコウタが言った一言が気になっていた。

 

「残滓の回収任務、終わってたんだ。」

 

「ああ、ただ…」

 

 そこまで言うと、ソーマは言葉を詰まらせた。元々、残滓回収任務が終わった事はこの召集のついでに伝えるつもりだったが、ソーマはそれとは別の事が気になっていた。

 

「…何かあった?」

 

「いや…回収量が予測値よりも2割程少なくてな…博士に聞いてはみたが、現状予測値と実測値との差違の可能性もあるって話だ。その辺りはすぐには分からないらしいが…どうにも気がかりでな。」

 

 ソーマは少し悩んだが、気になっている事をユウキに話始める。残滓回収量が予測よりも2割少ない事が何か気になるようだったが、ユウキは『なるようにしかならないさ。しばらくは忘れて結果を待とう。』と軽く受け止める。

 それを聞いたソーマも現実的には待つしか出来ないと思い、今は深く考えない様にして、第一部隊で小旅行に行く事がいかに有意義なものになるか語るコウタの方を見る。

 

「俺は部屋でゴロゴロしてたいんだがなぁ…帰ってきてから動きっぱなしだったし…」

 

「あら、最近は部屋にいる間はずっとゴロゴロしてたじゃない?それに、こんな時でもなければ皆で何処かに行くなんて事も出来ないでしょ?」

 

「よしっ!!じゃあ決まり!!で?海?!山?!」

 

 あまり乗り気ではないリンドウに対してサクヤは行く気のようだ。コウタは当然旅行に賛成であり、ユウキとソーマもいい提案だと思っている。事実上多数決では既に勝ちが確定している状況に、コウタはウキウキしながら行き先を決めていく。なんやかんや言いながら、リンドウは、『まあいいか』と思いながら眺めていた。

 そんな中、海だと万が一アラガミに襲われた場合、遮蔽物が無いために敵に発見されやすい上、海に引きずり込まれる可能性があると言う意見が出た。そもそもアラガミが現れる以前は今頃冬真っ盛りと言った時期だ。海に行くにしては時期外れも良いところだと言うことで、行き先は山になった。(かと言って山も似たようなものだが…)

 

「よしっ!!じゃあ山でキャンプしようぜ!!必要なものリサーチしてくる!!」

 

 そう言ってコウタは慌ただしくエレベーターに乗り込んだ。嵐の様に去っていったコウタをしばらく眺めていると、不意にリンドウが口を開く。

 

「元気だなぁ…その元気をオッサンにも分けてほしいわ。」

 

「言うほど年でもないだろうが。」

 

「いや、つってももう数年でアラサーだ…ぞ?」

 

 だが、そこまで言うとリンドウは何故か真っ白に燃え尽きた様な状態になる。

 

「リンドウさん?」

 

「…ああ、自分で言っといてあれなんだが、結構年いってるって実感してな…ちょっと凹むわ…」

 

 何かと思いユウキが聞いてみたが、単に年を取ったと実感して落ち込んだだけだったようだ。

 

「楽しそうな話してたわね?」

 

「ジーナさん、カノンさん。」

 

 するとジーナとカノンが下階から上がってきた。先程の話が聞こえていたのか、カノンは羨ましそうな目をしてユウキ達を見ていた。

 

「旅行…良いなあ…休暇が残っていたら着いていったのに…」

 

「…俺の休暇、使います?」

 

「ダメよ?そんなことしちゃ。その休暇は貴方の分として振り分けられていんだから。あらかじめ休暇の日数は決まってるんだから、その辺もしっかり管理しなくちゃ。」

 

 そもそも休暇は個人に一定の日数が与えられ、それをやりくりして休む権利を得るものだろう。それを使いきったから他人の分を使うと言うのは他者のと不公平感が生まれる事になり、それがきっかけでトラブルになる可能性もあるため、ユウキが余っている休暇をカノンに分けようと言ったのをサクヤが止める事になったのだ。

 

「だ、そうです…すいません…」

 

「残念だったな。」

 

「い、いえ…気にしないでください。私の管理が甘かっただけですので…」

 

 本気で羨ましそうにしているカノンを見て、ユウキとソーマが同情を込めた視線を送る。

 

「ま、せっかくのお休みだもの。楽しんでらっしゃい。」

 

「はい。」

 

 ジーナとカノンが会話を終えてこの場を離れる…と思ったのだが、ジーナはユウキをじっと見つめる。

 

「…」

 

「…ジーナさん?」

 

 ジーナはそのまま無言でユウキ近づく。何事かと思い、ユウキは思わず後退りする。そうやって空いた距離をジーナが再び詰めてくる。しばらく下がって行くと、ユウキの背中がターミナルとぶつかり、逃げ場がなくなる。しかし、ジーナはそれでも止まらずにユウキに近寄る。

 

「あ、あの…」

 

 後ろに下がれないユウキ、それでも近づいてくるジーナ…2人の距離が10cm程に近づくとようやくジーナは止まる。そして右手をユウキの左頬に添える。

 ユウキは異性が異様に近い距離に居る事に、カノンは目の前で繰り広げられるラブコメ的展開に顔を赤くし、リンドウは意外だと言いたげな表情になり、サクヤは『またか…』と言う表情になり頭を押さえる。

 赤くなりながらも何をされるのか分からず、少し不安を覚えてユウキは思わず目を瞑る。するとジーナの右手が上に上がり、ユウキの左目の眼帯を上にずらした。

 

「…やっぱり…」

 

「…へ?」

 

 何の話か分からず、ユウキはすっとんきょうな声をあげる。

 

「左目の傷、ほとんど消えてるわ。あんなに深い傷だったのに…」

 

 左目を摘出したことで、目蓋が抉られたように凹んでは居るものの、左目が潰れる際に付いた傷はかなり消え、よく見れば薄く残っている程度には綺麗になっていた。この先、このまま跡が薄く残る程度になるか、完全に消えるかは分からないが、普通ではない再生力なのは間違いない。

 気になった傷の確認が出来た事で満足したのか、ジーナはユウキの眼帯を元に戻す。

 

「ななっ!!なっ何やってるんですかジーナさん!!」

 

 だが、このタイミングでアリサが任務から帰って来た。ユウキとジーナがあまりにも近い距離に居るため、帰ってくるなり焦りと(若干の)怒りで顔を真っ赤に染めてユウキとジーナを問い詰める。

 

「何って…」

 

 しかし、ジーナは体を寄せ、左手をユウキの頬に添えて顔と顔がくっつくくらいに近づいて、すごい剣幕のアリサに退くどころか挑発する。

 

「男と女がここまで近づいてやることなんて…キスぐらいしか無いんじゃない?」

 

「なっなな!!な、何言ってるんですかジーナさん!!!!」

 

「こ、公共の場でそんなことを?!?!ハ、ハレンチですっ!!!とにかく離れてください!!!!」

 

 予想してない答えにユウキは羞恥心から狼狽え、アリサは動揺と焦り、それから羞恥で顔を真っ赤に染めて、ユウキとジーナの間に割って入ると、2人を引き離す。

 

「フッフフフ…!」

 

 しかし、ジーナはまるで楽しくて仕方ないと言いたげに笑っている。

 

「もう、この間からかうのは止めてって言ったじゃない…」

 

「ごめんなさい。毎度毎度、反応が可愛いからついね。」

 

 サクヤに咎められたが、ジーナは謝りはしたが特に気にした様子はなかった。別に本気で怒らせようとか考えている訳ではないと、2人とも分かっているので、特に深く追及したりはしなかった。

 

「イタズラも成功したみたいだし、私達はもう行くわ。」

 

 そう言ってジーナはカノンと共にエレベーターに乗り、去って行くのをリンドウ、ソーマ、サクヤが見送った。その間、ユウキはアリサに『もっとしっかりと断るべきです!!』などと言って怒られていた。

 ちなみにツバキやペイラーに旅行に行く事を報告した結果、ツバキからは『たまには良いだろう。』とあっさり許可が出て、ペイラーからは『うん、いいんじゃないかな?アラガミの生態調査の研究に似たような事をするつもりだったし…その練習ってことで行ってくるといい。それに君たちならどんな敵でも対処出来ると思うし、ゆっくり羽を伸ばしてくるといい。』と後押しされた。

 想像以上にあっさりと許可が出て拍子抜けしたが、許可が出た以上、第一部隊は旅行を目一杯楽しむべく準備を始める事にした。

 

 -とある山-

 

 山に来てから、何処かキャンプ地になりそうな場所を探して少し登ったところに平地で川が流れている場所を見つけた。第一部隊はそこをキャンプ地にするべく、テントの設置やバーベキューのコンロを用意する。

 だがそんな中、ユウキはコウタが明後日の方を向いて棒立ちしているとのが目につき話しかける。

 

「どうかした?」

 

「あ、いや…博士の講義でアラガミに自然は滅ぼされたって聞いてたけど、結構残ってるもんだなぁって…」

 

「そうだね。人が少なかったり、居なかったりする場所は割と自然が多く残ってるよ。」

 

 『さすがに講義で言ってた桜や紅葉は見れないけどね』と最後に付け足すと、2人の後ろからリンドウの声が聞こえてくる。

 

「おーい!!二人とも早くテント作るの手伝ってくれぇ!!」

 

 少し離れたところでリンドウが呼んでいる。話をテキトウに切り上げてテントの設営を手伝う。

 そんな中、女性陣はコンロの設置ついでに持ち寄った食材の調理を始めたのだが…

 

「ア、アリサ…?いくら使いやすいからって言っても神機は使っちゃダメよ?」

 

「え"っ?!」

 

「ま、待ってアリサ!!火力上げすぎよ!!それじゃ焦げるわ!!」

 

「ご、ごめんなさいぃっ!!」

 

 食材を切るのに神機を持ち出したり、火力を最大まで一気に上げたりと、相変わらずの不器用さを披露したアリサだったが、サクヤが制止したため惨事になることはなかった。

 そんなこんなで大自然の中、食事を終えてしばらくは出された料理の感想を言い合ったりと雑談にふける事になった。

 

「いやぁ旨かったな。けど皆で持ち寄ったとは言えちっと少なかったか?」

 

「じゃあ、魚捕りますか?」

 

 味には満足したリンドウだったが、少々物足りないようだった。そんなリンドウの感想を聞いたコウタが、食料を現地調達しようと言い出した。

 

「え?釣具も無いのにどうやって?そもそも魚なんてこの辺りに…」

 

「フッフッフッ…実はテント作ってる時に魚が居るのを見てるんですよね。」

 

 先程コウタが明後日の方向を見ていた時、川魚が泳いでいるのを見たそうだ。

 

「けど、サクヤさんも言ってましたけど、釣具無しでどうやって捕まえる気ですか?」

 

「そんなの手づかみでいいって。」

 

 そう言うとコウタは川に入り、バシャバシャと音を発てながら魚が居る場所に歩いていく。

 

「神機使いの身体能力があれば…それっ!!」

 

 魚の近くまで来たコウタが勢いよく両手を水の中に突っ込む。 

 

「…あれ?」

 

 しかし両手には魚は居らず、何も握っていなかった。

 

「よっ!!はっ!!ていっ!!」

 

 その後、何度か手を突っ込んでみたものの、魚が捕まる事はなかった。

 

「…だぁぁぁあっ!!逃げるなぁあ!!」

 

 結局1匹も捕まえる事が出来ず、自棄になって追いかけながらデタラメに水の中に手を突っ込む。

 

「…そんな闇雲に追いかけても先に逃げられるのがオチだろうが…」

 

「じゃあソーマもやってみろよ!!結構難しいんだぞ!!」

 

「こんなの慎重に近づいて横から掴めば行けるだろ。」

 

 そう言うと、今度はソーマが川に入り、代わりにコウタが出ていくコウタと比べると静かに川を歩いて、魚の背後に陣取る。

 そして『バシャッ!!』と言う音を発てて水の中に手を突っ込んだ。

 

「…」

 

 しかし、手に魚の感触はあったが、コウタの時と同じように空振りとなった。その後、魚は挑発するようにソーマの周りをチョロチョロと泳ぎ始める。

 

「…クソッ!!このっ!!ま、待ちやがれっ!!」

 

「だぁっはははっ!!やっぱりソーマも無理じゃんか!!」

 

「テ、テメェ…覚えてろコウタ…!!」

 

 魚の挑発に乗ったソーマもまたデタラメに水に手を突っ込む。だがソーマもまた魚を捕まえる事が出来なかった。

 そんなソーマを見たコウタが腹を抱えて大笑いし、ソーマは悔しそうな表情でコウタを睨んでいた。

 

「リンドウさんはどうすか?」

 

「ん?俺はいいや。この腕じゃ掴んだ瞬間に喰っちまう。それより…ユウ?どうだ?」

 

 ひとしきり笑った後、コウタはリンドウにもやってみないかと薦めるが、右腕がアラガミ化しているため、触れた瞬間捕食してしまう。なのでリンドウは魚取りを断るが、代わりに川沿いでしゃがみ、水に手を入れて手を冷やしているユウキに話を振る。

 話を聞くと、ユウキはおもむろに立ち上がり、可能な限りゆっくりと音を発てないように川の中を歩いていく。時々足をゆっくり大きく、または素早く動かしたりしながら川上に少しだけ登り、小さな岩の前で止まる。そして熊の手の様な手の形にして構える。

 

  『バシャッ!!』

 

 水が跳ねる音と共にユウキの手が水面に入る。そして手を水中から抜くと、そこには小振りではあるが鮎がしっかりと握られていた。そして同じようにユウキは何匹か魚を捕まえていった。

 

「な、何かユウの目が…」

 

「獲物を狩るハンターみたいね…」

 

 だがその最中、ユウキの目付きが任務の時よりもさらに鋭いものに変わり、確実に獲物を仕止めると言う意志が滲み出る様な目付きになっていた。

 

 -30分後-

 

 ユウキが鮎を15匹捕まえ、それに火を通して皆で食べた後、自然の中での食事に満足して寛いでいた。

 

「ふぃ~食った食った!!」

 

 コウタが腹をポンポンと叩いて仰向けになり、完全に自室等でだらけきる状態になっていた。

 

「だらしないですよコウタ。」

 

「いいのいいの!!今までが色々ありすぎて忙しかったんだし、こんな日くらい気を抜いたっていいじゃん?」

 

「そうね。半年近く全く落ち着ける状況じゃなかったんだし、たまには良いじゃない?」

 

 確かにユウキとコウタが入隊してから半年以上だったが、アーク計画の一件とリンドウの捜索と落ち着いている時間など本当に最初だけだった。そんな慌ただしくも、大切なものを失い、見つけた日々を思い出して懐かしんでいた。

 

「そうか、俺達が入ってからもう半年は経ったのか…もうすぐ1年経つし、何かあっという間でしたねぇ…」

 

 もうすぐ自分達が入隊して1年経つ事をコウタが思い出したが、1年に1度あるはずのイベントがある人物に来ていない事に気が付いた。

 

「そう言えば、ユウとアリサって誕生日来てたっけ?そんな話は特に聞いてないけど?」

 

「私は3月25日で…もう少し先ですね。」

 

 どうやらアリサの誕生日は少し先らしい。それを聞いたユウキは何やら気まずそうな顔になったが、コウタはそれに気が付かずにユウキの誕生日を聞く。

 

「…えっと…」

 

「ん?どした?」

 

「…実は…知らないんだ。誕生日…」

 

 本当の親は誰なのか、本当の名前は何なのか、何処で生まれたのか…このご時世では珍しい事でもないが、自分の出生について一切知らない事はユウキにとって大きなコンプレックスだった。

 誰にも話していないから仕方ないとは言え、あまり話したくない話題になってユウキは複雑な顔になる。

 

「え?そうなの?」

 

「…うん、まあ…色々とあって…」

 

 期待に応えられなくてユウキは申し訳なく思い、ポリポリと頬を掻く。するとコウタが『そうだっ!!』と何か思い付いた様に手を置く。

 

「じゃあさ、俺達が入隊した日!!4月10日を誕生日ってことで祝おうぜ!!ユウが産まれてきてくれてありがとうってね!!」

 

 コウタがそう言った途端に、『え?!ちょっと?!』『どうかしたんですか?!』とサクヤとアリサが声をあげる。リンドウとソーマも声を出してはいなかったが驚いたようだった。

 

「ど、どうした?!そんなに嫌だったか?!」

 

「え?な、なんで?そんなはずないよ。」

 

「いやだって…泣いてるし…」

 

「…え?」

 

 コウタに言われて自分の目元に触れてようやく分かった。確かに目からは涙が流れていて、自分が泣いてると理解する。

 

「あ、れ?な、なんで…?」

 

 ユウキ自身、産まれてきた事を祝ってもらうのは嬉しいと思っているにも関わらず、何故泣いてるのか分からないでいた。

 そしてそれを見ていたコウタ達もどうしたら良いのか分からずに狼狽える。

 

「まあ、このご時世…色々とあるわな。」

 

 おもむろにリンドウが立ち上がり、ユウキの頭に手を乗せてワシャワシャと撫で回す。

 

「何があったかは聞かないからよ、その時が来たら気にせずに祝ってもらえ。な?」

 

 ユウキ本人も知らないが、リンドウはユウキの過去を知っている。もしリンドウかユウキと同じ半生を送ってきた場合、生きてて良かったと、産まれてきて良かったと思う事など出来ないと思っていた。

 だからこそ、ユウキにはこの先の人生で生きていて良かったと思える様な人生を送らせてやりたいと言うリンドウの親心にも似た思いをユウキに伝える。

 

「…はい。」

 

 泣いているものの、ユウキは笑みを浮かべてキレイに笑う。

 

「皆…ありがとう。」

 

 『まだ早いよ!!』と言うコウタのツッコミから始まり、皆でユウキを囲んで(主にコウタが)じゃれつく。こんな日々が続けば良いと、その時誰もが思っていた。

 

 -夜-

 

 深夜となり、女子側はお肌に悪いからと早々に就寝し、しばらくエロトークで盛り上がっていた男子側のテントも寝静まった中…

 

(…眠れません…)

 

 アリサは唐突に目が覚めた。少し前から何度か寝て起きてを繰り返し、今ので目が冴えてしまった。『いつもと違う環境だからだろうか?』と考えながら、夜風にでも当たろうかとサクヤを起こさぬようこっそりとテントを出る。

 

(…綺麗…)

 

 外に出て、空を見上げると満天の星空…思わず心の内で感嘆の声をあげる。

 

「眠れない?アリサ。」

 

「っ?!」

 

 唐突に名前を呼ばれてアリサの肩がビクリと跳ねる。声の主は最初の見張りをしているユウキだが、辺りを見回しても見当たらない。

 

「こっちこっち。」

 

 何処に居るのかと辺りを再度見回していると、また声が聞こえてきた。声のした方に向かうと、傾斜になっている場所があり、ユウキはそこを少し下り、テントから丁度見えない位置に座っていた。

 

「よく…分かりましたね。」

 

「ん?女性陣のテントから気配がしたから。」

 

「それだとサクヤさんの可能性もありますよ?何で私だって…」

 

 何故自分だと分かったのか…アリサが感じた純粋な疑問だった。特に声を発した訳でもなく、ユウキが直接自分を見た訳でもない。そんな状況でここに居る人間が分かったのかを問いながら、アリサはユウキの隣に座る。

 

「ん~勘…かな?確証があった訳じゃないけど、アリサだって事は分かった。」

 

「そ、そうですか…」

 

 まるで(一方通行だが)以心伝心する程に親密な男女の仲のようにも感じて、

アリサの顔に少し熱が集まる。

 その熱を冷ます様に、アリサは頭を軽く左右に振ってから空を見上げて話題を変える。

 

「星空…よく見えますね。」

 

「うん…月も綺麗だし…こうしてると、戦い続ける日常が嘘みたいだ。」

 

 今まではこうして落ち着いて夜空を見上げる余裕すらなかった。もしかしたら気付いていないだけで、こんなに綺麗な空がずっとあったのかも知れない…などと少し感傷的な雰囲気に浸りながら、ユウキとアリサは月へと行った仲間の事を思い出していた。

 

「…月…ですか…」

 

「シオ…元気かな?独りで寂しい思いをしてないかな?」

 

 月には生命体は居ない。ユウキは世界を救うためにそんな何も無いところに独りぼっちで過ごす事になってしまったシオの事を案じている。

 

「…どうでしょう?終末捕食で本当に生命の再分配がなされたなら、月に生命体が居るかも知れません。その子と仲良くなって毎日遊んでる…なんて事になってそうですけどね。」

 

「ハハッ!!ありそうだなぁ。」

 

 終末捕食の本質は破壊と再生による生命の再分配だ。その本質のまま月の終末捕食が完遂したのであれば、新たな生命体も生み出されて居る可能性も高い。

 楽観的ではあるが、ユウキもアリサもせめて寂しい思いをしてないようにと願いながらシオの月での生活について話していく。

 色々と話していくと、一度会話が途切れる。するとアリサは視線を泳がせて、何やら言いにくそうに別の話を切り出す。

 

「…あの、ユウ?今更…なんですけど…」

 

「なに?」

 

「その…朝帰りが多くなってた件…リンドウさんから聞きました。」

 

 朝帰りが続いた件と聞いた時、ユウキは一瞬何の事か分からなかったが、その後すぐに、朝帰りの件でアリサと口論になった事を思い出した。

 

「リンドウさんを必死で探していたのに…酷いこと言って…ごめんなさい。」

 

「いいよ、気にしてない。それよりこっちこそごめんね。怒鳴り散らしちゃって…」

 

「い、いえっ!!それこそ気にしてないでください!!私も多分、ユウと同じような感じになったと思います。」

 

「そっか。じゃあ、おあいこって事で…ね?」

 

「はい…!!?!」

 

 アリサは女遊びをしていたと誤解した事謝ると、今度はユウキが怒鳴った事を謝る。このまま話を終わらせなければ互いに謝り続ける無限ループが始まりそうだったので、おあいこと言うことで手を打ち、この話を終らせる。

 そして今更ながらアリサユウキと視線があっている事に気がつく。瞬間、頬が紅潮して体温が上がる。そしてこの状況を理解し始める。

 満天の星空の下で2人っきり、邪魔者(主にコウタ)は全員就寝中、手がふれ合いそうな距離、シチュエーションとして雰囲気も良い…『もしかしてこれは…チャンスじゃないか?』そう思った途端、アリサは思考が停止したような感覚を覚えたが、アリサ本人はそんな状態でも勝手に動き出す。

 

「あ…あの…」

 

 アリサの意思とは裏腹に、勝手に声を発していく。チャンスだと分かった瞬間から完全に雰囲気流されている。自分が何を言おうとしているか分かると、心臓がバクバクと早鐘を打ち、顔を赤くして熱を発する。

 

「わ、私…その…ユウの事がっ!!」

 

 もう言ってしまえと半ば自棄になり自分の想いを伝えようとする。しかし、最後の一言を言おうとした瞬間、ユウキは『バッ!!』と勢いよく立ち上がり明後日の方向を見つめる。

 

「ユ、ユウ…?」

 

 突然立ち上がったユウキを見て、告白を聞きたくないとでも言いたいのかと思い、アリサは悲しくなったと同時に、ユウキが雰囲気をぶち壊した事に怒りを覚えて困惑する。

 

「…び…」

 

「え?」

 

 ユウキが小さく何かを呟く。しかしアリサにその声は届かず、最後の言葉しか聞こえなかった。

 

「戦闘準備!!!!今すぐ全員叩き起こせ!!!!」

 

 突然ユウキから怒号が飛んできたので、アリサはビクリと跳ねる。その瞬間、テントからソーマとリンドウが飛び出してきた。

 

「おいユウ!!この気配は?!」

 

「なんかヤベェ感じだなぁ…どうする?リーダー?」

 

 ユウキ同様、ソーマとリンドウは何かの気配を感じているようだった。任務で戦闘する時のような険しい表情になって、ユウキと同じ方向を睨んでいる。

 

「俺とリンドウさんで周囲を警戒!!ソーマは神機の用意とコウタを起こせ!!アリサはサクヤさんを!!」

 

「了解!!」

 

「わ、分かりました!!」 

 

 ユウキの指示を聞いて、アリサは困惑しつつもテントに戻り、ソーマはすぐにテントに向かう。そして『コウタ!!起きやがれ!!』と言う声の後『ヘブッ!!』と唸り声が響かせながらコウタを起こす。

 

「ユウ?一体何事なの?」

 

 テントからサクヤが出てくる。まだ事態を把握仕切れていないのか、何故起こされたのか分かっていないようだった。

 

「ヤバいのが近くに居る…!これから調査に向かいます。全員辺りを警戒!!」

 

 簡潔に敵が近くに居る事を伝え、ソーマとコウタが合流すると第一部隊は謎の気配を追うために調査を開始した。

 

 -1時間後-

 

「…なあ、かれこれ1時間くらい歩いてるけど…それらしいやつは見つからないよ?本当にいるの?」

 

「…居るのは間違いない。無駄口を叩く暇があったら辺りを見回せ。目標が見つかるかも知れないだろ。」

 

 捜索の命令を出してから、しばらく辺りを歩いていたが、それらしいアラガミは見つからなかった。思わずコウタが愚痴るが、ユウキが強い口調で嗜める。口調からもユウキには余裕は無い様にも思えた。ソーマやリンドウも同様、鋭い表情になって辺りを探していた。

 

(本当に居るのかなぁ…俺にはそんなのが居るとは思えないけど…)

 

(でも、ユウやソーマ、リンドウさんは気配を感じてる見たいですし…万が一と言うこともあるかも知れないじゃないですか。警戒しておくに越したことは無いです。)

 

(でもなぁ…アナグラの人外レベルの人にしか分からない敵を気配だけで見つけるなんて、どう考えても出来るわけが…)

 

(2人共、今は警戒任務に集中しなさい。ユウの命令でしょ?)

 

 コウタとアリサがヒソヒソと話しているのを聞いたサクヤが、2人に任務に集中するように伝える。

 さらにそこからしばらく歩いて崖まで来ると、白い影が崖下に居るのが目に映る。前方には倒れたヴァジュラが居る辺り、捕食でもしているのだろう。

 

「あれは…!!」

 

「白い…ヴァジュラ…か?」

 

 ユウキ達から見えたのは後ろ姿だったが、ほとんどヴァジュラの後ろ姿と同じだった。

 

「リンドウ…あれが?」

 

「ああ、恐らくな…ユウとソーマも何かしら感じているはずだ。」

 

「そうなの?ユウ?」

 

 リンドウの『何かを感じている』と言う言葉を聞いて、本当に何かを感じるのかコウタがユウキに聞いてみる。

 

「うん…上手く言えないけど、アイツは…ヤバい。」

 

「何だかあの配色…アルダ・ノーヴァを彷彿とさせますね。」

 

 アリサの言う通り、後ろ姿だけだが基本的に白い体に赤紫の模様が入っており、その配色はかつて戦ったアルダ・ノーヴァを彷彿とさせるものだった。

 

「「「「ッ!!」」」」

 

 謎のアラガミがユウキ達の気配に気が付いたのか、頭がピクリと跳ねた後捕食を止め、ゆっくりと振り替える。そしてその顔を見たユウキ達は驚愕して言葉を失った。

 

「アルダ・ノーヴァ…?」

 

 そう、終末捕食による世界の存亡を賭けた戦いでの相手、アルダ・ノーヴァと同じ顔をしていたのだ。驚いたまましばらく固まっていると、白いアラガミはゆっくりとした動作で、その場を去っていく。

 

「…行っちゃった…」

 

「興味なし…いや、見逃した…のか?」

 

「目があってようやく分かったわ…強敵になりそうね…」

 

「アイツは…一体…?」

 

 皆がかつて倒した強敵が、異形な姿で再び合間見えた事に驚きを隠せないでいた。

 

「アイツ…まさか…」

 

 誰もが正体不明のアラガミに困惑する中、ソーマはその正体に何か感付いたようだった。

 

To be continued




後書き
 お久しぶりです。リンドウさんを助けてリザレクション編がスタートしました。
 ここからオリジナル要素が多くなり、面白いと感じてもらえるか不安なところがありますが、何とか読める程度の物には仕上げますので、今後も暇潰し程度に読んでいただければ嬉しいです。
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